そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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もう今年2週間しかないってウソでしょ…?
阪神JFはウォーターナビレラさんを応援してました。朝日杯はベルウッドブラボーさんに期待してたんですけど回避…。

登場人物紹介の所でこっそりピスを更新してます。もう少し内容増やす可能性はあったりなかったり。
それでは今回もよろしくお願いします。


第38話 水面を漂う:floating on water

「いいぞ〜メル!最後のターンをしたらすぐに必殺スクリューだ!」

「……それ、絶対水泳じゃ、ないよね」

 

 

 年明け最初の練習日。私たちは温水プールで水泳トレーニングをしていた。ちなみにゴルシだけは何故かスクール水着の上からジャージを羽織ってサングラスを装着してるんだけど。完全に泳ぐ気ないよねアレ。ビーチでパラソルの下に引きこもってるセレブかなんか?

…ちゃんとサマになってるのが1番納得いかない、なんだあのプロポーション。反則でしょ。

 

 

 指先に壁が軽く当たるのを感じ、最後の50mに向けて39回目のターンをしてゆったりと水を蹴る。

 ……ふぅ、疲れたんですけど。さっきゴルシにつっこまなきゃよかった…。

 

 

(『持久力がグングン伸びる!プールトレーニング』ねぇ……。あのトレーナーのネーミングセンスでよく真珠星(スピカ)なんてオシャレなチーム名をつけられたな…)

 

 

 あのネーミングセンスのない指示書によると、今日は2000mを3セットも泳がないといけないらしい。

 …目標タイムがないとはいえ、とてもじゃないけど新年最初の練習じゃないと思う。私が水泳嫌いだったら確実にサボってた。

 

 

 なんてぼんやり考えながら泳いでいたら指先にコツッと何かが当たる感覚がした。…これで1セットかぁ。

 

「……はぁ、はぁ…」

「一旦休憩だメル、上がってこい」

「…うん」

 

 

 勢いをつけてプールサイドに上がり、髪を絞っていると、急に頭上にドリンクのボトルが置かれた。それと同時にタオルケットで私の髪が包まれてわしゃわしゃされ始めた。言うまでもなくゴルシの仕業だ。ボトルが落ちる前にさっと取っておいて良かった。

 

「よくやったッ!感動したッ!」

「……ゴルシは泳がないの?」

「アタシか?アタシはライフセーバーだからな、泳ぐときはお前たちが溺れた時だけだぜ」

「…ふーん」

 

 

 意外と力加減が上手いゴルシに為されるがままにしながらもらったドリンクに口をつける。……長時間水泳用なのかちょっと濃い目に作られてるな、これ。

 

 ぼんやりとプールを眺めていると、マヤノとテイオーとマックイーンさんの3人がバ鹿みたいな飛沫を上げながら思いっきり競り合っていた。そういえばあの3人はレースなのか。あのトレーナー、何も考えてないような顔してよく考えてるよなぁ。

 なんでスペさんが飛び込み台に上がってるのかは全く意味がわからないけど。

 

 

 私とマヤノの2人の目下の目標になっている皐月賞への調整としてトレーナーはプールトレーニングの指示を出しているわけだけど、その指示の細かい部分は私とマヤノじゃ多分違う。

 

 今までのレースでスピード的には問題がないけど、マイル戦しか出てなくて距離的な不安がある可能性がある私には心肺機能をあげるために長い距離を継続して泳がせるトレーニングを指示した。

 反対に皐月賞と同じ中山レース場、同じ2000mのホープフルステークスを余裕を持って走り切ったマヤノは距離的な不安はあんまりないからテイオーとかマックイーンさんと競り合わせながら泳がせることでスピードを意識させてるんだろう。

 

 

 

「…よし、髪まとまったぞメル!このまましばらく休憩な!」

「……うん。ありがとう、ゴルシ」

 

 

 ま、そんな立派なトレーニングを組んだトレーナーはいまプールにいないけど。なんかやることがあるらしくて管理をゴルシに一任してた。こんな所に1人だけ男がいるのも…って話なのかもしれないけどね。…ま、深く考えても仕方ないか。

 

「にしてもメルって綺麗な泳ぎ方するよな、最後の方もそこまでペース落ちてなかったろ」

「……あんまり意識したことないけど、そう?」

 

 

 …泳ぐのはまぁ嫌いじゃない。実家にいたときは近所の池でたまに泳いでたしね。長時間泳ぐのも慣れてるといえば慣れてる。

 …というかむしろこういった温かいプールで泳ぐことの方が慣れてない。

 

 

 ぼんやりと水面を眺めているとさっきの3人の立てた波のほかにもう2つ、大きな波が立っていた。

 

「私の方が速かった!」

「いいや、俺の方が先に手をついた!」

「「ぐぬぬぬぬぬ!」」

 

 

 顔を上げるとスカーレットさんとウオッカさんがこちらの逆サイドから上がりながらいつものように何か言い争っていた。……泳ぎ終わった直後なのに元気すぎない?

 

 

 …じゃなくて!

 

「…ゴルシは!いつまで私の髪でわしゃわしゃしてるのさ!髪まとまったんじゃないの!?ていうかまた泳ぐんだしそこまで気にしなくて良くない!?」

 

 

 〜〜〜

 

「……はぁ、はぁ………これで2セット目終わり。…疲れたぁ」

 

 

 壁にゆったりと手をついた後、休憩がてら目を閉じてぼんやりと浮かんでいると視界に影が差した。……瞼を開くと目を焼きかねないほど明るい、逆さまの太陽が私を見下ろしていた。

 

「お疲れメルちゃん!これで終わり?」

「………お疲れ、マヤノ。あと一本同じ距離泳ぐよ」

「じゃあじゃあ、マヤも最後メルちゃんと泳ぐ!どれくらい泳ぐの?」

「…皐月賞と同じ距離」

「えっ」

 

 

 水から上がって一息つく。…流石に4000mも泳ぐと体がちょっと重い。疲れた体に濃いドリンクが染みるなぁ。

 

「はい!メルちゃんのタオル!」

「…ありがと、マヤノ」

 

 

 とてて、という音が聞こえそうな足で寄ってきたマヤノからタオルを受け取って髪を軽くまとめる。

 

「メルちゃん、今日どれくらい泳ぐの?」

「…2000mを3セット。合計6000mだけど、まぁ楽しいよ」

 

 

 軽く欠伸をしながら伸びをする。…おお、今のスペさんの飛び込みは綺麗だなぁ。ノースプラッシュっていうんだっけ、さっきの休憩の時よりも洗練されてきてる気がする。何回もやる意味は相変わらずわからないけど。

 

「…なんかちょっと意外だな〜」

「……??何が?」

「そんな大変なメニュー、メルちゃんならめんどくさがってサボりそうだなって思っちゃった」

「…私をなんだと思ってるのさ。っていうかそもそもサボろうと思ってても『メルちゃん!年明け最初の練習一緒に行こ!プールだって〜!』って言いながら部屋の前に張り付いてたのはどこの隣部屋の2人さ」

「えへへ〜☆」

「…むぅ」

 

 

 何も反省してないっぽいマヤノを軽く小突く。……朝早くからこそこそこそこそドアを叩きながら囁かれたら流石に根負けするでしょ。うるさすぎないように声を小さくしたりドアを叩く音をしぼったりして無駄に芸が細かいし。

 

 

 

 ……なんだかんだ練習をサボってるのは私だから、ホントに反省しなきゃいけないのは私…??あれぇ…?

 

 ……考えないようにしよう。

 

 

「…メルちゃんって変なとこでマジメだよね」

「…えっ?」

「だってそうだよね?メルちゃんって練習に来ないことはあっても、練習に来たら練習中はサボらずにちゃんとやってるもん!」

「………気のせいだよ」

「あっ、マヤわかっちゃった!メルちゃんってもしかして「あー、マヤノがそんな変なこと言うからトレーニング終わりたくなってきたなー」…わわわっ!マヤ、何もいってないもん!」

「……トレーニングを最後まで終わらせたいなら、一緒に最後の2000m泳ぐこと。じゃなきゃ今日は疲れたのでやめまーす」

「えへへっ、アイコピー!負けないよ!」

「……元気だねぇ、マヤノは」

 

 

 …勝ち負け考えながら2000mなんてとてもじゃないけど泳げないと思うんだけど。そんなことを思いながら私は体を伸ばし始めた。

 




短いけど許して…許して…。更新間隔開くのも許して…許して…。トレーナー技能試験?サジタリウス杯?知らない知らない…。
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それでは次回もよろしくお願いします!
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