そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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めりーくりすまーす(棒読み)

ウマ娘のアプデでどうやらサークルに関するアプデが入ったようで。どうやらデイリーミッションにサークルに関するミッションが追加されましたね。
……えっ!?それって!!サークルに入ってない私はこれから一生デイリーミッション全クリのジュエル30個が貰えなくなるって…コト!?(違った)
まぁ、ソロプレイヤー気質が強い私はサークルの相互監視的なシステムが苦手なんで入る気もまたないんですけどね。おかけでマックちゃんすら完凸できてませんよ、ええ。


…話が逸れました。それでは今回もよろしくお願いします。




第39話 白いウメ、黄色いミモザ:About to come spring

 とある晴れた早朝、たまたま早く目覚めた私はどこへ行くでもなくふらふらと散歩をしていた。この時期のちょっと冷たくて澄んだ空気、結構好きなんだよね。

 

「……♪…♫」

 

 

 山道…とまでは言わないけど少し急な坂を鼻唄交じりにのんびり歩いていると、ちょっとした広場とベンチを見つけた。

 

 広場に植えられてるのは…ウメかな?樹に白い花がぽつぽつと咲き始めていた。

 …つくづく日本の季節感にはびっくりする。少し前まで手が凍るかと思うくらいには寒かったはずなのに。…結局、雪を見れなかったのは少し心残り。

 

 

 辺りに誰もいない中、ぼんやりと益体のないことを思いながら手袋を取ってみたら、外気は思ったよりも冷たくてぞわりと体が震えた。…どうやら冬はまだまだ終わる予定はないらしい。

 

 

 すぐに手袋をつけるのもなんか違うなと思いつつ、行き場のない両手をポケットにしまって樹上の白珠をどこか呆然と眺めていると、とててと駆けてきた何者かに後ろから視界を塞がれた。

 

「だーれ「…おはよ、マヤノ」だ…って早いよメルちゃん!」

 

 

 すぐに当てた私に少し拗ねたように頬を膨らませたジャージ姿のマヤノが隣に来た。

 

 

 ……早いも何もこんないたずらを私にしようとする時点で候補は絞られるんだよ。私は交友が広い方じゃないし。

 

 まず私にイタズラをしかけそうな人ってだけでゴルシとかテイオー、マヤノ辺りに候補が絞られるわけで、そこから手の位置とか体格でゴルシを外せる。

 

 

 そこからテイオーとマヤノの判別に関しては……正直ズルをした。2人とも私と5cmも違わないから体格で判断しきるのは流石にすこし難しい。難しいから…(ズル)を使った。流石に同じチームでトレーニングしてるわけだし、走ってる音で誰かなんてのは大体判別がつく。テイオーとマヤノは足音の間隔がほんの少しだけ違って……ってなんでもいっか。

 

「…マヤノは朝からホントに元気だねぇ」

「ネイチャちゃんが『朝から元気な大人のレディがモテる』って言ってたから頑張って早起きしてるの!」

「…あぁ、なるほど」

 

 

 またネイチャさんに変なこと教わってるよこの子…。結構イタズラ好きだよねネイチャさん。

 

「で、メルちゃん何見てたの?」

「…あの白いウメ。あんまり実家じゃ見ないし」

「あっ!ホントだ!ってフランスじゃ見られないの?」

「…うん。もうじきミモザ……えっと、アカシアの黄色い花が綺麗に咲く頃だと思うけど、梅とか桜とかはほとんど見なかったなぁって」

 

 

 あんまり騒がしい所は好きじゃないけど、それでもミモザの黄色い花を見るために街に行くのは好きだったなぁ。色が綺麗だし、匂いもふんわりとしてるし。

 

 それと比べたらこの白いウメは花の数こそ少ないかもしれないけど、ひとつひとつに存在感というか、気品を感じるというか。ともかくミモザが咲いてるのとは別の魅力があるんだよね。…詳しいことは知らないけど。

 

 

「………」

 

 

 ベンチから立ち上がり、近くのウメの木を目を閉しながらそっと触れる。ゴツゴツとした幹に生命を感じる気がした。

 

 

 ………こういうのはほどほどに見るだけに留めるのが私の身の丈には合ってる。花を育てようとしたら枯らしてしまうのが(メルクーリ)だから。こういうものは記憶の海にそっと浮かべてふとした時にカンショウするくらいがちょうどいい。

 

 

「………」

「…むぅ」

 

 

 かしゃっ、という音が背後からしたので目を開いて振り向くと、マヤノがさっきよりもさらに拗ねた顔でスマホを向けていた。

 

「メルちゃんってば、たまに今みたいな怖い顔するよね。マヤはメルちゃんのその顔キライ!!キラキラじゃない!」

「……怖い顔?」

「マヤの前ではその顔キンシ!!ユーコピー?」

「……アイコピー」

 

 

 すっかりヘソを曲げたマヤノをほっとくわけにもいかず、寮まで一緒に帰った私はそのまま屋上にでも行って二度寝しようと思っていた。思っていたのに…それを察知していたマヤノとテイオーの2人に教室に連行されてしまうのであった。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 退屈な授業をなんとか凌ぎ、私はトレーナー室でトレーナーと仮の出走スケジュールを組んでいた。

 

「……はぁ」

「どうした、メルクーリ。さっきから溜息ばっかりじゃないか。体調悪いなら休みにするか?」

「…大丈夫だからさっさと決めよ。皐月賞のトライアルから決めるんでしょ」

「あ、あぁ…。まぁメルクーリの場合は朝日杯を勝ってるから優先出走権を取りにいくっていうよりは長さに慣れてもらうって面が1番大きい」

 

 

 ……今から出られる皐月賞と同じ長さくらいのレースって言えば数えるほどしかないし、中でも中山レース場で開催されるのは1つしかないと思うんだけど。これじゃ決めるというより確認じゃん。

 

「…弥生賞ね」

「おう、昔から多くのG1ウマ娘を輩出した名レースだ。ここで中山特有の短い直線と坂を体感してもらおうと思ってる」

「……ふーん」

 

 

 資料になにかを書き連ねてるトレーナーをぼんやりと眺めながらもらったお茶を啜る。…あちち、もうちょっとさませば良かった。

 

「よし、と。弥生賞が終わったらすぐ皐月賞だ。弥生賞で出るであろう課題を元にトレーニングを組むからそのつもりでな」

「……トレーナーって、本当にトレーナーだったんだね」

「…ったく、お前から見て俺はどう見えてたんだよ…」

「…レースの作戦指示はいつも『好きに走れ』、技術指導もほぼなし。むしろもうちょっとトレーナーらしくしてもいいのに」

 

 

 …もっとも、それが私に合ってないってわけじゃないけどね。なんて思ってたら不意にトレーナーが資料から目を離して私に向き合った。

 

「…あのなぁ、メルクーリ。お前はもうちょっと自信を持て」

「……自信?」

「お前の走り方…いや、走り『型』は俺が口出すまでもなく完成されてるんだよ。お前の体格とか並外れた体幹とかを考えたら、体勢を低く落として歩幅を大きくしながらスパートってのは最適だし目線を下に落とすデメリットもお前の並外れた耳の良さがあるから無視できる。だから基礎トレに力を入れられるんだけどな」

「はぁ…」

「…ったく、本当にどんな奴から教えてもらったんだか。おかげで俺が教えられる技術(コト)なんて数えるほどしかないし、小手先で教えられるものじゃないんだよ。んでそんなものよりも圧倒的にお前に足りてないのはコッチ」

 

 

 そう言ってトレーナーは自分の左胸をトントン、と叩いた。メンタル、あるいは心技体でいう心ってことかな。

 

 

「ソッチに関しては例外を除いて一瞬で身につくものじゃねぇし、むしろどんどんいろんなことを経験していかないといけないわけ。ともかく、次は弥生賞。お前の好きなように走ってこい!」

「…わかった」

 

 

 …心、ねぇ…。コース研究でレースの映像を見たり、ほかのチームメンバーが走ってるのを見てるとイヤでも分かる。

 

 

 レースに勝ったウマ娘は笑顔を。

 負けたウマ娘は悔しさや涙を。

 併走トレーニングから帰ってきたウマ娘は楽しそうな表情を。みんなが心から浮かべてる。

 

 

 

 それに比べて私はどうだろう。最近で言うなら朝日杯で勝ったとき、心から笑えてただろうか。サウジアラビアロイヤルカップは?デビュー戦は?選抜レースは?いつものトレーニング中は?

 

 

 きっと出してから時間が経ったジャガイモのスープ(ビジソワーズ)の表層のようなうっすい膜で笑顔を貼り付けてたような気がする。

 

 

 …結局、覚悟が決まってないのがここまで響いてるってことなんだと思う。ならいつ決まるの?って言われたらなにも言い返せないけど。

 

「メルクーリ」

みゃっ」

「考えすぎだし焦りすぎ。これでも飲め」

「…うん」

 

 

 もらったにんじんジュースに口をつける。…やけに酸っぱいなと思ったらレモンが入ってるやつだこれ。




忙しくて書けない期間に他の方の作品読んでると文章と展開の美しさに語彙力がログアウトする奴。

小説情報確認してたらUAの桁が1つ増えててお気に入り件数も1300件超えててびっくりしました。いつも本当にありがとうございます。そのタイミングで相変わらず重バ場ちっくなのはもうなんかしゃーないかなって。
評価、誤字報告も含めいつもありがとうございます。
それでは次回もよろしくお願いします!
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