そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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とりあえずプロローグは書けました。続くかどうかは私の気力と皆様の応援次第みたいなところです。


プロローグ:Please save me and dump my vanity.

スバルメルクーリが屋上で紙飛行機を飛ばしている頃、トレセン学園の生徒会室では3人のウマ娘が真剣な顔をして1枚の資料に目を通していた。

 

「ゴールドシップも大概だが。問題はスバルメルクーリ、彼女だ。フジキセキ、彼女は栗東寮だろう?何とか呼び出すことが出来ないのか?」

「いやそれがね、彼女が寮に帰ってくるのをほとんど見たことがないというか。どうやら毎日帰ってきてはいるらしいんだけどね」

「ッ……!!本当に彼奴は何を考えて行動してるんだか…!!」

 

 

困ったように笑っているのが栗東寮の寮長フジキセキ。対照的に眉をひくつかせながら渋面をつくっているのが女帝こと生徒会副会長エアグルーヴ。

まぁ無理もない。理事長印の指示書には『捜索ッ!スバルメルクーリを見つけ出し、選抜レースに出場させろ!』という文言と共に彼女の写真が載せられていた。

 

というのも中等部のスバルメルクーリといえばトレセン学園内で"いるにはいるけど探そうとしたら見つけられないウマ娘"として有名で、トレーニング場はおろか普段の授業にもあまり出ないためにある種の都市伝説と化しつつある存在だからだ。

 

トレセン学園に入学してからのレースの公式記録もなし、連絡先もなし。どうやら課題や定期試験だけは郵送で提出しているらしい謎のウマ娘をどうやって探せばいいのか。そこまで考えて彼女、いや生徒会長にして日本で初の7冠ウマ娘、皇帝シンボリルドルフはニコりと微笑んだ。

 

「私に考えがある」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 トレーニングの活気で騒がしくなってしまったトレセン学園をそそくさと後にして、私は河川敷でのんびりしていた。今のこの時期は暑すぎず寒すぎないため、河川敷で寝るにはちょうどいいのだ。

 

 おまけにここはちょうど橋の下で人もウマ娘もごく一部の例外以外寄ってこない穴場スポットのため、私的にはありがたい場所だった。

 

「…はふ。頑張ってる人を見たら疲れちゃったし。ここでのんびりしよう」

 

 

 川は好きだ。山に降った雨が何の憂いも縛りもなく、そこに生きている生き物たちを包み込むように、あるがままに流れるから。

 ふと水面に目を向ける。名前もわからない川魚たちがその流れに逆らいつつ、それでもどこか楽しそうに泳いでいた。

 

「ねぇ、君たちはなんで泳いでいる(はしっている)んだい?」

 

 当然だけど魚はなにも答えない。ただそこで泳いでいるだけ。だけどそれで良かった。それがある意味私の求めてたものだから。私は魚を眺める。魚はそんな私に関係なく泳ぎ続ける。この場はそうやって完結していた。それでよかった。

 

 その空間に満足していたからか、それとも本能のどこかで"この人は大丈夫"と安心していたからか。私は直前になるまで後ろに人…いやウマ娘が来てることに気づかなかった。

 

「メルちゃん?」

「ッ!?……なんだスズカさんか。驚かさないでよ」

 

 

 そう言いながら振り返ると明るい栗毛を腰の辺りまで伸ばし、前髪を目にかからないくらいの長さで揃えたウマ娘、サイレンススズカさんがニコニコしていた。

 

「また学校サボってるの?」

「サボってない。今日は屋上で空を見てたから登校はしたもん」

「そっか」

「スズカさんこそトレーニングサボったんじゃないの」

「私は今日は元々おやすみの日なの。だから私もおやすみ。隣、座るね?」

 

 

 それだけ聞くとスズカさんは私の隣に体育座りですわりこんだ。どうせ私がイヤだと言っても座ったんだろうな。

 

 スズカさんと初めて会ったのは入学してすぐのとある日の帰り道。今日みたいに川沿いでのんびりしてる時にたまたま目があったのが初めましてだったんだけど互いにウマが合ってたまにこうして会うくらいの間柄になった。授業もトレーニングもほっとんど出てない私には数少ない友人の1人って認識。先輩だけど。

 

「……」

「……」

「……ねぇ、スズカさん」

「ん?」

「スズカさんはなんで走ってるの?」

「……うーん」

 

 

 普段ならこんなこと聞かないんだけど、今日はなんだかこういうことを聞きたい気分になった。というか聞かなきゃいけない気がした。

 

「なんて言えばいいんだろう。…私は走るのが楽しくて、好きに走りたいから走ってる……?」

「ずっと前を走って1着になるのが好きってこと?」

「……うーん、そういうことになる…?うーん……」

 

 

 多分本能的に走るのが好きってことなのかな…?スズカさんの1番得意な走りは逃げウマからも逃げる大逃げ。ある種典型的なウマ娘の極地みたいなところがあるのかも。

 清々しいまでにウマ娘の本能に従えてるスズカさんを見て、私は……少し羨ましくなった。

 

 

 

 ……私にウマ娘としての価値はあるのだろうか。私は本当にウマ娘なんだろうか。そんな取り留めのない想いが浮かんでは消えて…そんな繰り返しを引き裂いたのはやっぱりスズカさんだった。

 

 

 

「ねぇ、メルちゃんは走るのは好き?嫌い?」

「……えっ!?わ、私?っあぁ、そうですねぇ……。好きですよ、きっと」

「そっか」

 

 

 …またやっちゃった。変に空気を悪くしたくないから自分の気持ちにフタをして相手に送り出しちゃう。

 自分をごまかして。他の人や観衆から逃げて。ウマ娘らしく走ることもせずに私は一体何をしてるんだろう。

 

 

 多分スズカさんは私が思ってもないことを言ったことに気づいてる。そんな使い潰したシューズより薄い見栄を張って私は何がしたいんだろう。

 

 

……私は一体何がしたいんだろ。…この心はどう癒せばいい?

 

 




お気に入り、評価、感想等諸々していただけるとして下さった方々がアプリでエルちゃんやグラスちゃんのガチャでいい結果がでるかもしれません。
嘘です。無理のない呼吸(かきん)を心がけて楽しくガチャしましょう。
配布のゴルシさん完凸すればものすごく強くないですか?レースボーナスがなかったような気がしますけどそれを他のサポカで補えばかなり必須級かも?って思いました。ええ。
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