そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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あけましておめでとうございます、やっと出せた…。
前回の内容が暗めだから早めに出したみたいな話しましたけど、1話2話でストーリーの空気が変わるわけもなくて泣きました。
それでは今回もよろしくお願いします。


第41話 春の嵐に心乱され:Turbulent Air

「……んんぅ…」

 

 

 朝の日差しとちょっとした肌寒さに体が震えて私は目を覚ました。……普段だったらすぐに二度寝を決め込むんだけど、今日はダメだよなぁ。この後移動あるし。

 

「………はぁ、仕方ないし起きるかぁ」

 

 

 起きながらデジタル時計を叩いて光らせる。……5時45分か。結構ちゃんと寝られたな。

 

 

 部屋の電気をつけて思いっきり伸びをする。…こういう時1人部屋なのは勝手が効くからかなり楽。2人部屋だったら相部屋の子が起きるまで待たなきゃいけないし。

 

 

 ……とりあえずご飯食べて、それから部屋に戻って持ち物を一つずつ確認できたらトレーナーの運転する車に乗って行こう。

 

 

 

 ……千葉県、中山レース場に。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

「………」

 

 

 静寂に包まれた中山レース場の控室で私はぼんやり出番を待っていた。さっきまで外が慌ただしかった気がするけど、今は大分落ち着いたらしい。何かあったのかな?

 

 

 3月第二週の日曜日に中山レース場メインレース。G2、弥生賞。クラシック三冠路線の開幕戦みたいな位置付けのこのレースはマヤノが勝ったホープフルと、そして皐月賞(ほんばん)と同じレース場、同じ距離。

 

 

 …ゴルシから聞いたんだけど皐月ってmai(5月)のことらしいね。avril(4月)は卯月らしい。なんでさ。

 

「……んんぅ……」

 

 

 シューズの蹄鉄は確認した、髪飾りもしっかりとつけた。耳カバーもしてる。手袋は……どうしよう。朝もさっき外出た時も薄手の手袋でそんなに寒く感じなかったし、走る時には汗をかくだろうからかえって邪魔になる気はするけど…サウジアラビアロイヤルカップからずっとつけてるし。…一応持っていくだけ持っていこうかな。

 

「………うぬぅ………」

 

 

 目を閉じてさっき見てきたターフを思い返す。…思ったより芝は軽そうだったけど、その代わりに思ったよりも4コーナーの出口の芝がちょっと傷んでたのが少し気になった。アレじゃ思いっきり踏み込んでも土が撥ね飛ぶだけかもなぁ…。

 

 

 

 

 ……逃げた方がいい?

 あの急坂を2回とも先頭で走りきれる?初めての中山レース場で、今まで経験したことのない2000mで?それは流石に見通しが甘いんじゃないだろうか。2周目の急坂で少しでもヨレたら余裕を残してた子に差されかねない。

 

 

 

 

 ……じゃあ自分の末脚を信じる?

 直線は急坂込みで310mしかないけど本当に届く?しかもあのコンパクトなコーナーで外にでられる?内を強引に突こうとしても芝は傷んでるし、何よりバ群に突っ込むのは私の耳とメンタルが保たないのは私自身が1番わかってる。

 

 

 

 …うーん……。

 

 

「…って!メルちゃんはいつまでそのゆったりスピン続けるの!!」

「……んんぅ……ってマヤノ?いつの間に?」

「むーっ!さっきからずっといたよ!!」

 

 

 本当にいつの間に?と思いながら目の前のマヤノを見る。……ちょっとぼんやりしすぎてたかなぁ。

 

「…メルちゃん、ホントに大丈夫??もうパドックだよ?」

「……えっ??」

 

 

 回るのをやめて壁付きの時計を見ると出走時間の35分前、パドックお披露目の5分前を指し示していた。…あれぇ、着替え始めた時は1時間くらい前なのにいつの間にこんなに時間が経ってたんだ…?

 

「……行ってくる」

「いやメルちゃんは8枠9番だから最後の方でしょ!というかゼッケン忘れてる!!」

「…えっ?あっ…」

「もー、しっかりしなよメルちゃん!」

 

 

 ……だからわざわざ来てたのね。

 マヤノから『9』とかかれた赤いゼッケンを受け取ってジャージの上から着用する。最後に髪を外に出して…っと。

 

 

「おー、今のだけ見てたらオトナっぽい!」

「…だけって。私は普段からちゃんとしてるでしょ」

「えっ?」

「…ん?」

 

 

 ……テイオーといいマヤノといい、たまに私を三白眼で見るのはやめてほしい。そんなにおかしいことは言ってない……と思う。

 

 

 〜〜〜

 

『中山レース場、本日のメインレースはG2弥生賞。次は圧倒的1番人気、昨年の最優秀ジュニア級ウマ娘が登場!無傷の4連勝を目指して8枠9番!スバルメルクーリです!』

 

 

「………いやいやいや、過剰すぎない?ってうるさっ、しかも風つよすぎ…」

 

 

 遠くまで流されないように軽くジャージを放りながら愛想笑いを浮かべて手を振ると、これまで経験したことのないくらいの歓声が沸いた。…耳カバーしてなかったら卒倒してたかもしれない。

 

 

『前走の朝日杯では直線での強さを存分に発揮して見事にG1ウマ娘となりました』

『逃げるのか、追い込みなのか、見当がつかないのが彼女の強みにもなっています。初めての中山でどんなレースを見せてくれるのか、期待です』

 

 

 そそくさとジャージを回収して一礼する。……もしかして朝日杯の時より人来てない?

 

 

「メルクーリちゃーん!!頑張ってー!!」

「ぅわわっ……ありがとうございます

 

 

 ステージから降りながら声をかけてくれた方に軽く手を振る。『お披露目はファンの方との交流の1つ、しっかりアピールしなさい』ってトレーナーにもお母様にも言われたっけ。

 

 

「メルクーリ!今日はアクロバットしないのか〜?」

「……あはは、いつもありがとうございます」

 

 

 ……流石に今日は風が強くて怖いからバク転出来ないかなぁ…。パドックで怪我して競走除外は割と笑えない。なんなら今怪我したら皐月賞も出られなくなるオマケ付きだし。

 

 

 足は重くない。昨日もちゃんと寝たし、寝つきもいつも通り。だから調子は悪くないはず。天気も風が強い以外は総じて晴れ良バ場だしちゃんと実力を出し切るだけ。

 

 

 

 ……そう、それだけ。

 

 

 

『……以上で出場ウマ娘のパドックお披露目は終了です!出場するウマ娘はターフの方に移動をお願いします』

 

「……ふぅぅ」

 

 

 深ぁーく息を吐いて空を見上げる。…また少し風が強くなってきたけど、これが春一番って奴なのかな。

 

 

 

『トゥインクルシリーズG2、弥生賞!まもなく発走です!皐月賞に向けて勢いをつける勝利を飾るのはどのウマ娘か、注目です!』

 

 

 ……『トゥインクル(ひかりかがやく)』シリーズ、かぁ。つくづく私に相応しくないネーミングだと思う。

 

 

 

 

 

Ça ne me(彼女を) convient pas qui(殺してしまった) l'a tuée.(私なんかには)

 

 

 

 

 

 

 パドックからレースコースに移動して芝の感触の最終チェックをする。いわゆる返しウマって奴。

 そこでは中山の急坂を逆に下るんだけど、これがかなり楽。当たり前だけどね。

 

 …今回だけでいいからコース左回りにしません?

 

「来た!去年の最優秀ジュニアウマ娘!三冠筆頭候補!」

「メルクーリちゃん!頑張って!」

 

 

 ファンからの声援に手を振りながら応えつつ、内ラチ側をゆっくりと…ほぼ歩くくらいに踏みしめる。……今日は()()()かなぁ。

 

 

 




無料10連期間でファイン殿下とアヤベさんのSSR引けてホクホク顔。…キャラ?ちょっと何を言ってるかわかりません。
短距離チャンミは芝S距離適正Sのブルボンさんにお願いしてるんで育てる時間が短縮されました、ラッキー。
評価、感想、誤字報告等いつもありがとうございます。
それでは次回もよろしくお願いします!
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