いわゆる過去話。前後編の予定です。シリアス注意です。
それでは今回もよろしくお願いします。
「……トレセン学園に入るために日本に帰ってくる直前。私は1人のウマ娘を殺しちゃったの。それもとっても慕ってくれてた大切な娘を」
「……どういうことだ?」
「もちろん物理的に殺したわけじゃないよ?そんなことをしてたらトレセン学園になんか通えてないよ」
…そう、物理的に殺したんじゃない。でもだからこそ、私は赦されない。赦されることなんてありえてはならない。
彼女は今こうして話を続けている間もずっと
「……ねぇ、トレーナー。走るために生まれてきたウマ娘が"死ぬ"のってどういう時だと思う?引退をする時?それともそのウマ娘の命が消える時?」
「…それは」
「私はそうじゃないと思うの。……たとえ思うように走れなくて引退をしたとしても、寿命を迎えたとしても、その走りを誰かが……誰かが覚えてくれてたらその人達の中でその娘は死ぬことなく、生き続けられると思うの」
すぅっ…と軽く息を吸って、吐く。都会とも実家とも違う匂いの空気が肺の中にすっと入り、出ていった。伸びをしながら私は左耳の耳飾りを……金色の花型の飾りを取ってトレーナーに見せる。
「私がいつもつけてるこの耳飾りの金色の花さ、フランス語で直訳すると
「じゃあそれがお前の…「出来ないんだよッ!!」……メルクーリ……」
「……ごめん、大声出して。出来ないの。私のせいで。……さっきの質問の答えね。走ることを心の底から望みながら、それすら許されずに競技者としての道を閉ざされること。私はこれが"死ぬ"ってことだと思ってる。そういう意味で私は完全にあの娘を……フルールドールっていうウマ娘を殺したの」
耳飾りを左耳に戻してトレーナーに向き直る。
…これは私の罪の告解。ホンモノと違ってしたところで赦されることなんてないけど。
「ルゥが得られるはずだった栄光の道を
「そんな、こと」
「あるんだよ。……トレーナーはさ。お母様から私のこと、どのくらい聞いたの?」
「…お前が実家のフランスに帰った理由は聞いたが、そこから先は『メルが直接話すまで待ってあげてください』って言われてな。そこからは何にも」
「……そっか、じゃあそこから話そっか」
「むかーし、むかし。とある田舎に移り住んだ銀色のウマ娘がいました」
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その田舎は雑音ひとつないのどかで空気のとても澄んだ場所でした。天気が荒れることも少なく、ヒトが来ることもそれほど多くない。……そんな場所で初めに銀色のウマ娘は実家のかかりつけのお医者様からの診察を受けました。
『うーん、心因性の発熱ですね。要は過剰にストレスを受け続けたことが原因の生理的反応です。娘さんの場合ですと聴力が良過ぎることが原因の1つとして考えられますので、まずはその聴力を上手く使いこなすための練習をすると少し改善するかもしれませんね』
『つかい、こなす?』
『例えば、知ってる人の声と知らない人の声だと知ってる人の声の方が鮮明に聞き取りやすいよね?それは君が無意識に知ってる人の声と知らない人の声を区分けしているからなんだけど、これを意識的にやってみよっか』
そうして銀色のウマ娘はある程度知ってる声と知らない声を区別するための練習を始めました。とは言ってもここは実家。お母様やお婆さまをはじめに、基本的には知ってる人の声しか聞こえてきません。
これでは練習にならないなぁと思っていたある時、表門の方から何やら知らない声がしました。
『……あのー』
銀色のウマ娘は家族の誰よりも耳聡くその声が聞こえていたので、お母様に相談しました。
『お母様お母様、玄関にどなたか来ていますけどお客様ですか?聞いたことのない声ですけど』
『…えっ、お客様なんて来る予定あったかしら。私が見てくるから貴女はここにいなさい』
その時、自身ですらも何故かはわからないまま銀色のウマ娘はお母様の服の袖を摘み、そしてこう言いました。
『私もついていってはダメですか?』
珍しい様子の銀色のウマ娘に驚いたお母様ですが、銀色のウマ娘の目を見て首を縦に振りました。
こうして銀色のウマ娘と金色のウマ娘は出会うことになりました。
『わたしはメルクーリ、メルって呼んでね!あなたは?』
『わたしは…その…』
『んー?』
『………フルールドール、です』
『うーーん、じゃあルゥちゃんだ!よろしくね!ルゥちゃん!』
『……えっと、よろしくお願いします。…メルちゃん』
運命、あるいは必然とでも言うべきだったのでしょうか。何はともあれ銀色のウマ娘にとっては初めての同年代のウマ娘の友人。彼女にとっての運命が大きく動き出した日には違いなかったのです。
〜〜
それは銀色のウマ娘と金色のウマ娘が知り合ってから数日経った日のことでした。家の近所の湖で軽いピクニックのようなことをしながら2人でお喋りをしていたときのことでした。
『…へぇー、メルちゃんってニッポンから来たんだ。ニッポン、知ってるよ!たまにこっちのレースに来て良いレースするよね、ニッポンのウマ娘』
『っていってもあんまり勝ってるイメージないけどね。ルゥちゃんレースに興味あるの?』
『興味あるっていうか…ちょっと走ってみる?』
『……お、自信ある感じ?』
『うん、今日は大丈夫。じゃあ、あそこの桟橋までね』
こうして唐突に銀色のウマ娘にとってフランスでは初めてのレースが決まりました。出走者は2名。距離は大体500mくらいのごっこ遊びみたいなものですが、それでも銀色のウマ娘は負けるとは一切思っていませんでした。銀色のウマ娘のお母様やその友達のウマ娘の方に走りの基礎はあらかた教わっていてその全員から『速いね』と褒められていた彼女は自分の脚を疑うことすらなかったからです。
突き抜けるような晴天の下、木の実が落ちるのを合図にして2人は駆け出しました。
ぽーんと先に前に出たのは銀色のウマ娘。ほらやっぱり、私に勝てる娘なんているわけない。そんなことを思いながら悠々と脚を進めていました。
『このまま逃げ切っちゃうもんね!』
半分を過ぎて3バ身くらいの差をつけていたため、銀色のウマ娘はほぼ勝利を確信していました。
…その時でした。突然後ろから聞こえる踏み込みの音が大きく、重くなったのは。
『……よし、ここからッ!』
『…えっ?えええっ!?』
シューズに蹄鉄を打ち込むときのように重く鋭い音がしたかと思うや否や、後ろから一気に金色のポニーテールが突き抜けていき、そのまま桟橋まで駆け抜けていきました。言うまでもなく銀色のウマ娘の惨敗、金色のウマ娘の圧勝でした。
遅れること2バ身ほど、銀色のウマ娘は息を整えることすら忘れて金色のウマ娘に問いかけました。それほど銀色のウマ娘にとっては今のレースが衝撃的だったのです。
『はぁ、はぁ。ルゥちゃん…速くない?』
『……けほ。私、こっち来る前はユース入ってたから』
『ゆーす?』
『…ようは将来レースに出ることを夢見てるウマ娘の中から優秀な娘を育成する場所みたいな感じ』
『……ええっ!?ルゥちゃんそんなすごい子だったの!?』
『…もうやめたけどね』
『なんでやめたの?』
銀色のウマ娘は不思議で仕方ありませんでした。だって目の前のウマ娘は自分をあっさりと交わすだけのすごい実力があったから。それだけにそのユースなるものを辞めた理由がわかりませんでした。
それに対して金色のウマ娘は湖を眺めながらぽつりと一言。
『…環境が合わなかったんだよね〜』
ほぼ同年代のはずなのに、その声は銀色のウマ娘には重く聞こえました。
『…えっと、ごめんね。今のはデリカシーなかった』
『あー違う違う、重くとらえないで!メルちゃんはほんとに悪くないの。っていうか逆にメルちゃんが速くてびっくりしちゃった』
『…ホント?』
『ホントホント。スタートが上手くてフォームも悪くないからびっくりしちゃった。最後に本気出さなきゃあのまま負けてたよ』
『…やっぱり私って速いのかぁ。にへへ…』
『……調子乗ってると今日みたいに足元すくわれるよ〜?』
『…はい』
『…でもホントに速かった!メルちゃん自信持っていいとおもうよ』
ようやく息が戻った銀色のウマ娘は、金色のウマ娘の隣に座り込んで顔を覗き込みました。
『…なに、どうしたのメルちゃん?』
『決めた!ルゥちゃん、私のライバルになってよ!』
『…えっ?』
『ライバルだよ、ラ・イ・バ・ル!それでいつか2人でG1レース出ようよ!』
金色のウマ娘の目が僅かに大きくなるのを銀色のウマ娘は見逃しませんでした。
『…メルちゃん、それは私に勝てるって思ってるってことでいい?』
『ふっふっふ。私、先生はたくさんいるから!負けないよ?』
『……ふーん、じゃあたくさん練習して強くなって戦おっか。世界で一番美しい…ロンシャンで』
こうして、銀色のウマ娘と金色のウマ娘は互いの耳飾りを交換しました。銀色のウマ娘は金色の花の耳飾りを左耳に、金色のウマ娘は銀色の
ーー2人でG1タイトルを取り合う、そう誓いあって。
ゲームに推定エアジハードくん出るってマジ?あの世代のお馬さんで一番好きな子なんだけど?全然天井するけど?なんだぁ…?
感想や評価本当にいつもありがとうございます!
それでは次回もよろしくお願いします!