新訳・機動戦士ガンダム0083~星屑の光、裁きの剣~   作:アライズ

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第6話「この悲しみを燃やし尽くす時まで」

新訳・機動戦士ガンダム0083~星屑の光、裁きの剣~

第6話

この悲しみを燃やし尽くす時まで

 

ガトー:ケリィ、大丈夫なのか?

 

ケリィ:駄目だろうな。命はあったが、足をやられちまった。

 

ガトー:そうか。流石に無理をさせるのは忍びない、そこでラトーラと余生を過ごすんだな。

 

シーマ:ケリィとの話は終わったかい?本当、男ってのはよく分からない生き物だね。

 

ガトー:御託はいい、そちらの首尾はどうだ?

 

シーマ:あんたを男扱いするのも変な話だけど、抜かりはないさ。

 

カリウス:間違えてお前の戦艦(ふね)に降りかけた時は肝を冷やしたがな。

 

シーマ:木馬もどきに居るカスタムタイプのジム一機落としたが、その近くにバッタみたいなガンダムが居てね。おかげで幾らかゲルググをやられた。

 

ガトー:(ガンダム?よもやあの時の……)そうか。で、そいつが邪魔しに来るってのか?

 

シーマ:キャノンタイプのジムも一緒だろうさ。

 

ガトー:ソロモン……そこを連邦は『コンペイ島』と呼んでいる。あの屈辱を奴らに返す時が来たのだ。

 

一年戦争末期・ソロモン

 

ガトー:戦艦が妙に硬い……

 

ジオン軍兵士A:ガトー大尉、あれは連邦軍が開発中と情報があった『ビーム撹乱膜』とやらでしょう。

 

ガトー:実弾兵器が役に立つ場面だな。私のゲルググはこういう時役には立たん。

 

ジオン軍兵士B:報告します。連邦が謎の巨大兵器を発射、ソロモンが燃えております!

 

ガトー:何だと!ガンダムを有する木馬も居たというのに、あの艦隊は囮だったというのか。

それにしても巨大兵器か、それは南極条約違反では無いか?

 

※この時点でガンダムの名前はジオンに広く知られている。

 

ジオン軍兵士B:それがどうも巨大な鏡のような物で太陽の光を一点に……ドズル中将が出ます!

 

ガトー:何だと!まさか?

 

ドズル:私は既に妻と娘を退避させた。総員軍を引け、もはや持ちこたえられん!

 

ガトー:ドズル閣下を無駄死にはさせない……私も殿を勤めよう。

 

連邦兵士A:何だあのモビルスーツ?他とまるで動きが違うぞ!

 

連邦兵士B:それだけじゃない、ジオンがモビルスーツサイズのビーム兵器を……うわああ!

 

連邦兵士A:よくも、よくも仲間を!

 

ガトー:オープンチャンネルで叫ぶとは、未熟者め!

 

連邦兵士A:ビームの、ナギナタだと!?コクピットは……偶然外れただけか。動力系が滅茶苦茶だ、録に動きやしない。

 

ガトー:まだ少しだけ動けるようだが……戦えない奴に構っている暇はない。

 

連邦兵士A:どうやら、俺にはトドメを刺す価値すらないらしい。

 

ガトー:一人でも多くこの宙域から脱出させる。『悪夢』はここで終わりにするんだ!

 

連邦兵士A:お前にとっちゃこの戦況、悪夢だろうな。だが俺にとっちゃ、お前が……

 

連邦兵士Aは疲弊のあまり力尽きたが、友軍に拾われ命は助かった。

彼はアナベル・ガトーの鬼神のごとき強さの生き証人となり、連邦はガトーのことを『ソロモンの悪夢』と呼んだ。

 

ソロモン周辺宙域

 

ガトー:地獄の撤退戦だった。私は『ソロモンの悪夢』と連邦から呼ばれているが、私にとってはあの日こそがまさに『ソロモンの悪夢』。

 

カリウス:だけど、そのおかげで今こうして私も生きているんです。やりとげてみせましょう!

 

ワイアット:宇宙歴0079・・・つまり先の大戦は、人類にとって最悪の年であった。

 

ワイアット:この困難を乗り越え、今また三年振りに、宇宙(そら)の一大ページェント・観艦式を挙行出来る事は、

地球圏の安定と平和を具現化したものとして慶びに堪えない。

 

ワイアット:その観艦式は地球歴1341年、英仏戦争の折り、

英国のエドワードIII世が出撃の艦隊を自ら親閲したことに始まる。

 

ワイアット:この共有すべき大宇宙の恩恵を、一部の矮小なる者どもの蹂躙にまかせることは……

 

ガトー:これは散っていった者への冒涜だ…

 

コウ:間に合え、間に合え、間に合え…、間に合えぇぇぇぇ!

 

カリウス:砲撃で道は開けていますよ、ガトー少佐!

 

ガトー:再びジオンの理想を掲げるために…星の屑成就のために…ソロモンよ、私は帰ってきた!

 

試作二号機の核弾頭は発射され、ソロモンは燃え盛る。

 

ガトー:なんと他愛の無い…鎧袖一触とはこのことか。

 

コウ:ガトーォォォ!

 

ガトー:いくらその機体が速くとも、来るのが遅くては意味がない。お前も弁えるのだな。

 

コウ:ガトー! 俺は決着をつけるまで、お前を追い続ける!

 

ガトー:しかし、怨恨のみで戦いを支える者にこの私は倒せん! 私には義によって立っているからな!!

 

コウ:黙れ!お前たちのやってることはただのテロリズムだ!

 

ガトー:違う、これは戦争だ。軍事基地を攻撃することの何が悪いというのだ?

 

コウ:連邦とジオンの戦いは三年前に終わっているんだぞ!

 

ガトー:終わってなどいない。そもそも、宗教や文化の違いを無視して強引に統一政府を作ったのが間違いだった。

 

コウ:でも統一政府があったからお前らが一年戦争を起こすまでは平和だったはず!

 

ガトー:アメリカが中心になってキリスト教を国教として、天皇や自分達の信仰の保護と引き換えに日本人が追従した。

それを受け入れなかった右派も多くは天皇の言葉で収まったが、それに反発した一部の日本人が居た。

 

コウ:その言い種。まさかジオン……いや、サイド3は!

 

ガトー:お前の考える通りだ。

 

コウ:日本人の信仰は神道や大乗仏教……厳格な仏教徒はそれに反発したし何よりムスリムが『全ての民は我らが神に恭順するべきだ』と反発した。

 

ガトー:ムスリムも世俗化した連中が石油資源を持っていたこともありその信仰を認めさせることには成功したがな。だがそれで納得した奴は全体の三分の一にも満たなかった。

 

コウ:そういうお前はムスリムなのか?

 

ガトー:懲罰的に宇宙へ上げられた彼らは、宇宙という過酷な環境に耐えるため自らの信仰を捨てねばならなかった。

 

コウ:その結果バラバラだったはずの連中はジオニズムというイデオロギーで纏まったわけか。

 

ガトー:信仰を守るために戦った者が、真っ先に信仰を捨てる。皮肉というしかあるまい?だからサイド3に住む者は独立気質が強かった。

 

コウ:それがギレン・ザビの独裁にも繋がったわけか。

 

ガトー:独立気質が強いというだけで景気が停滞した頃合いに経済制裁をかけられた我らの苦しみがお前達は理解できないのか!

 

コウ:ああ、理解できないな。コロニーへの毒ガス攻撃が一部の人間の暴走だったとしても、コロニー落としのせいで地球では無関係の人間が多く死んだんだ!

 

ガトー:歯車となって戦う男には解かるまい!

 

続く

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