近未来のファンタジー世界で大戦争の英雄と呼ばれた男が良いとこのお嬢様を拾ってまとわりつかれる話   作:GAB

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プロローグ

 大戦争。

この星……アールドの全てを巻き込むことになった人類の起こした中で最も醜い殺し合い。

 

 

 従来の兵器に加えて新型投入された二足歩行兵器が活躍してしまったことで、戦争はさらなる加速を見せて人の文明や作り上げたものを奥深くまで食いちぎっていった。

 

 

 さらに二足歩行兵器だけでなく既存の魔導技術による兵器は益々の発展を見せ、それは戦争を引き起こした張本人であり最後の戦場にもなったアールド最大の大きさであるジード大陸の国家『ドルイセン帝国』の崩壊によってやっと終結することとなった。

 

 

 戦争が始まって五年、そして戦争が終わって五年―――世界は未だに、平和になんてなってはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ZC(ジードセンチュリー)1200/2/11/AM5:00

スギフ連邦-ドルイセン共和国間緩衝地帯

 

 

 

 

 

 雨に濡れる泥道、戦後と言うにはあまりに信憑性がなさすぎる無数の砲弾痕に黒く火薬で汚染された土、未だ汚い半透明の黒い水を小川として垂れ流す緩衝地帯の風景。

 

 

 そこに、彼はいた。

くすんだ鉄色の所々が朽ちているふうに見える10m程度の二足歩行兵器――バトルアーマードスーツ、BASのコックピットの中に。

 

 

 

 彼がなぜここにいるか。それは護衛任務を受けたからであった。

 

 

 未だ民主革命の嵐が吹き荒れるドルイセンからの没落貴族をスギフ連邦へと亡命させる手伝いをして、一週間は生き延びられる金を得る。戦後四年の経った今でも、こういった亡命の護衛任務は儲けが良い。

 

 

 

「……そろそろだな」

 そしてコックピットに座るのは、まだ20代半ばとも言うべき風貌の男。だが、放っておいた髭のせいで20歳は老けて見える。

 

 

 今回の護衛任務もいつもと同じ。

護衛してスギフ連邦へと送る。その間に襲いかかってきた連中を片付ければいい――が、正直なところドルイセンも厄介払いなのかそのような襲撃はない。

 

 

 リスクの少ない任務は最適だ。少なくともうまくやれば誰よりも金を稼ぐことができる。命を投げ捨ててまで金を得るのはよほどのことで、彼にとってはもはや大戦争の頃のような命の費やし合いは懲り懲りであったのだ。

 

 

 

 

「―――来たか」

 少一時間程度だろうか?

雨霧で男には見えなかったが、数百メートル先からボディに曲面を多用した丸めのライトが特徴的な高級そうな黒色のセダンが男の方へ向かってきた。

 

 

 

 

 

「き、君が我々を護衛してくれるパイロットかい?」

 

「……はい。お目にかかれて光栄です、公爵閣下」

 

「ははは、いや、いいんだ。今はただの一介の市民に過ぎないのだから。それよりも驚いたよ、まさかあの大戦の英雄が護衛をしてくれるなんて」

 

「……」

 男……英雄は押し黙る。

公爵と呼ばれた男はけして悪い人物ではないのだろう。しかし車の窓をわざわざ開けて話しかけてくれている分には構わないのだが、男にとっては早々に任務を達成したかった。

 

 

「閣下。時間が迫っていますので、スギフへとそのまま護送致します」

 

「あ、あぁ!そうだった、すまない!よろしく頼む!私はこのままついていったらいいかな?」

 

「えぇ、それで……」

 ふと、男はモニターに写ったある少女と目があった。

儚げな色素の薄いロングヘアーに、オッドアイ。公爵の運転する車の後部座席へと座った黒色のドレスを着飾った少女。

  

 

(オッドアイか、珍しいな)

 ともあれ、すぐに目を離す。

どのみち誰にも目が合ったこともわからない。モニターを通してカメラに映された写像と目があうことなど、絵画に描かれた貴婦人と目が合うような虚像と同じなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 キュルキュルと走る公爵の車の後ろから護送する男。

時速は40km/h程度。本来はもっとスピードが出せるのだろうが、あんなセダンにとってこんな泥道は不向き極まりないだろう。

 

 

 

 

 雨音の響く中。

ただBASの駆動音と車のエンジン音だけが鳴り響く。

 

 

 このまま静かに終わればいい。

男はそう考え―――、そして目を見開いた。

 

 

 

「公爵閣下!すぐに車を―――!」

 

「え?」

 スピーカーから音が鳴り響いた直後。

とてつもなく早い飛翔体が公爵の車を貫き―――そのまま横転した車は緩衝地帯の泥沼へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

「チッ!」

 任務失敗。

男にその言葉がよぎる―――そして、響く音が一つ。

 

 

 

 

 

『へぇ、まだそんなオンボロのシングルに乗ってるやつがいたのかよ』

『ねぇねぇ、ダーリン。今回はアイツを殺るの?』

『あぁ、そうさベイビー。俺たちにかかれば余裕だぜ』

 

 男の乗る鉄色のBASの視線と相対する位置……空中でホバリングしているのは深い海のような蒼色の刺々しい機体だった。

 

 

 だが、ブラウン管テレビのような視覚に液晶カメラをつけたような男の機体の頭部とは違い、まるでスズメバチのような特徴的な頭部に赤色のデュアルアイが特徴的な機体。更に胸部がより大きく、並列の"複座式"であることを目に見えて感じさせる。

 

 

 

 

「……ツインか」

 

『たまにいんだよなぁ、大戦のころの感覚でシングルに乗ってるやつ。でもさ、そいつらは俺たちと戦ったら尽く落とされんだよ』

 

『アハハ、そうよ!だってツインに勝てるシングルなんていないもの!!』

 

 

 

 シングルとツイン。

それは二足歩行兵器であるBASの種別であり、圧倒的な性能差を意味する言葉である。

 

 

 

 かつて大戦争序盤にドルイセン帝国の開発したBASは多大な性能を誇った。優れた量産性に、優れた機動性、そしてなにより豊富な武装。

 

 

 歩兵の拡張とも言われていたBASだったが、終盤になってドルイセン帝国は敵国が帝国軍のものを模倣して独自開発していった高性能のBASを配備していったことで最新型のBAS開発を始める。

 

 

 それが"ツイン"。

かつての帝国での正式名称は Taktische parallele Doppelsitz-Kampfpanzerung……TPDKと呼ばれていたそれは、本来の単座式BASを駆逐し始めた。

 

 

 ツインの特徴として、相性のいい男女それぞれが搭乗することで魔導的な感応波を上昇させることによる性能の強化、さらに単座型では賄いきれなかった高密度広範囲のシステムを複座によって分業化することで補い、そしてそれによってより巨大化・高機動化したということ。

 

 

 各国は大戦争にてツインに対抗するべく高性能化を果たしたシングルを大量配備したものの、結局は一部のパイロット以外がツインに対抗できることはなかった。 

 

 

 操作の過剰すぎるまでの複雑さ、そして本来は歩兵の拡張であった小型軽量な機体に取っつけたような大推力はあまりにもピーキーな操作性を生み出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 ゆえに、この戦いは圧倒的に不利である。

そう、"男"がただのパイロットならば。

 

 

 

 

 

 

「なら、お前たちを俺が撃墜する」

 

『やってみろよ!オンボロ野郎!』

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