ウルトラムチャクチャエクストラハイパーハードボイルド 作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ
ultra - めっちゃ
muchakucha - むちゃくちゃ
extra - ぶっとんだ
hyper - すっごい
hard-boiled(egg) - 固ゆで(卵)
◆
中天に座す太陽が整備された道路に列を為す車両を照らしている。
いずれも無人で鍵はされておらず窓も開いたまま放置されていて辺りには飲みかけのスターバックスコーヒーや踏み跡のついたヌイグルミが投げ捨てられ、けたたましい警報が鳴り響いている。
「――します――」振動する大地。「――緊急事態――市民の――恐れ――」等間隔にアスファルトを叩きつける音。「注意――パニックに――」震えは大きくなる。
巨人が踏み鳴らすかのように。「――気をつけて■■■――」
拡声機は爆発するように圧し折られると、断末魔めいた叫びを最後に沈黙する。
散らばった拡声機の残骸を踏み躙ったのは、
全高五メートルを超す、見上げるほど大きい褐色の
その行く手を阻むように、総合病院の陰から勢いよく青色の巨人部隊が飛び出した。
道路を挟んで散開し壮絶な銃撃戦が始まり、大量に排出される薬莢が雨のように地面にばら撒かれ始める。
戦端は他の居住区でも開かれている。
重機関銃を撃ちまくる褐色機体に防衝シールドを構えながら一気に肉薄し、対巨人用の
背部に積んだ自走式機雷を展開すると腰部左右からケーブルアンカーを射出し、回避しようとした青色機体を足止めした隙に重機関銃で蜂の巣にする褐色機体。
丘の上を移動する青色機体は建物を遮蔽物とする褐色機体を静かに
阿鼻叫喚は至るところで溢れている。
巨人たちの足元では逃げるのも隠れるのも間に合わなかった少女が肉塊となって横たわり、通りに面するフィットネスジムで汗を流す主夫は流れ弾に貫かれ即死している。民家に身を潜めた親子は建物ごと巨人に踏み潰され、車で逃げようとした男は射撃され爆発炎上しながら肉屋に突撃する。
街の奥地から青色の巨人が続々と現れて防衛側に加勢するが民間人を巻き込むことを躊躇わない褐色部隊との戦闘は激化し、防衛側に予期せぬことが起こったのは暫らくしてのことだった。
上空に展開していた
白銀の機体が対峙する青色機体の
閃光弾とも似て非なる白光が拡散しきらきらと“粒子”が降り注ぐ。直後――
遮蔽物越しに撃ち合っていた青色機体が動きを止める。ケーブルアンカーに掴まれたわけでもなく。急に。敵に向けるはずの銃口をゆっくりと下ろし、何故か、いきなり対巨人装甲特殊弾頭の装填された大口径砲を自身のコックピットへと押し付けて。
引鉄。
衝撃。繰り返す。何度も〃々。ついにコックピット内のディスプレイが砕け散り、一瞬で
リアルタイムで指揮する警備指令室が凍り付く――その間にも異変は次々と動き始めている。
銃撃戦の最中に青色チームは走行を突然やめると銃口を互いに向け合い、引鉄を絞る。メタリックブルーの装甲が穴だらけになり機体は横転し信号機や街灯を巻き込んで大破してしまう。自走式機雷が周囲に放出されパイロットが逃げる間もなく起爆/炎上。ケーブルアンカーに姿勢を崩された青色機体が突如として携行型ミサイルを味方に向けて発射/炸裂。肩から瓦礫に突っ込んだ青色機体はコックピット周りから赤色と油圧用オイルを滴らせながら機能停止。部隊を掩護するべく高所に陣取っていた青色機体も頭上に“白光”が飛び散ると大型ナイフで自身の胴を掻っ捌いて永遠に蹲る。別の機体は味方に全速で体当たりし給油所の屋根にダイヴすると、激甚な焔に呑み込まれながら半径一〇〇メートルの構造物を爆轟で吹き飛ばしてしまう。
次々と上がるパイロットたちの断末魔を、指令室は為す術もなく確認している。「操縦が効かない!」掻き消す銃声。炸裂する爆発。「
無人機の視界が回転し高度が下がり出す。
操縦不能。
画面は応答せず、真っ黒な沈黙を続けている。