ありふれた職業と月香の狩人   作:黎殲神 祟

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どうも、前回は前書きが有るなんてのは完全に忘れていたŵとは言え楽しんで貰えても楽しんで貰えなくてもネタとモチベが続くウチは書く所存、今回はステータスオープンとかも在るかも知れないが、マァ……期待はしないでモロて、多分手抜きになるかも知れんから


一話:見知らぬ地、狂人の巣窟

「何処なのだ……此所は……」

 

私は見知らぬ儀式場の様な場所で目覚めた、だが先ずは状況を把握するのが先決だろう、そう思い私は周囲に視線を巡らせる、すると約30名程の子供達ともう一人、気配からは子供か大人かも分からない少女の様な出で立ちの人物が一人、そして中性的な何者かが描かれた巨大で悪趣味な壁画だ、反吐が出る様な気配を絵からは多分に感じる、更に視線を転じれば大理石の床に壁、柱等があり、荘厳な大聖堂の儀式を行う祭壇の上に自分が居るのが良く分かった、そして祭壇を囲む様に錫杖を手に持ち、白に金の刺繍が施された穢らわしい聖職者共の姿が見える、成る程……あの少年達は奴等に呼び寄せられたと言う訳か……だが私は如何なのだ?そんな思案を他所に状況は推移して行く、その中で一際目立つ老いた聖職者《獣候補》が進み出てきた、とは言えあの覇気には目を見張る物があるが……どうせ口八丁手八丁で此の子供達を碌でもない事に巻き込むつもりなのはその目を見れば良く分かる事だ、やはり聖職者は皆獣であるのはどの世界でも変わらないのだろう、何れ奴等は狩らねばならないな、そう思いながら奴の言葉に耳を傾ける

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そして御同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す物。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言う教皇を名乗る獣、勇者?何を言っているのだ此奴は、そして私は獣の名については余り興味は無い、強いのならば覚えておいてやろうとは思うが、目の前に居る物に恐らく大した力は無いだろう。あの作られた好々爺の様な笑みに子供達は騙されているようだが、私はその笑顔の裏には隠しきれない狂気が溢れ出ているのを見逃す筈はない、この男は獣では無かろうが狂人ではあるのだ、何れにせよ狩る必要が在る。そんな事を考えていると狂人イシュタルが口を開いた

 

「こんな場所では落ち着くことも出来ないだろう」と子供達や私を促し、幾つもの長テーブルと椅子が置かれた別の広間へと案内を始めた、私は学徒の装束に身を包んだ子供達の最後尾で奴について行く、未だこの地に於ける情報が足りない、奴から引き出せる情報は引き出した方が良いだろう、その時、一人の少年が声を掛けてきた

 

「あの……教室には居なかった筈ですが……貴方は誰なんでしょうか、さっきから気になっていたので今声を掛けたんですけど」

 

「む?私は狩人だ、目覚めたらあの祭壇の上に居たのだが……貴公は?見たところ学徒であろう?」

 

すると少年は肯定と共に名乗り始めた。

 

「僕は南雲ハジメ、高校2年生です」

 

「ほぉ、やはり学徒であったか、年の頃は17、と言った所か……こんな場所に行き成り連れてこられてさぞ困惑している事だろう、其れは私もなのだがな、先ずは情報を集めねばならんな」

 

「はい……僕の最悪の想定が現実にならなければ良いんですが……」

 

そんな事を言いながら南雲ハジメは不安げな顔をする、マァ此の状況ではそんな顔をするのも仕方ないだろう、そんな話をしている内に目的の部屋に辿り着き、全員が席に着いた、私とハジメは最後の方の席に着く、すると見事と言わざるを得ないタイミングでカートを押しながら給仕達が入ってきた、其れに私は気付かれぬ様に警戒の目を向ける、するとハジメと私に飲み物を差し出してきたのを警戒を解かずに受け取り、ハジメを見遣るとメイドを凝視しようとしていた所に強烈な悪寒を覚えたで在ろう動作である一点に視線を固定している、その視線を辿ってみれば一人の少女が目の笑っていない満面の笑みで彼を凝視していた、アレは嫉妬か何かだろうか……それ以上の思考は発狂の恐れがある為思考を中断し、再びハジメに目を向けると彼は件の少女から目を逸らすように他所を向いている、そして全員に飲み物が行き渡ったのを確認したイシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方に於かれましてはさぞ混乱されていることでしょう。一から説明させておきますのでな、先ずは私の話を最後までお聞き下され。」

 

イシュタルの言によればこの地はトータスと言われ、ヤーナムとは異なる地で在るようだ、そして人間、魔人族、亜人(獣の様な外見の者達)が存在していると言う。人間大陸の北一帯、魔人とやらが南一帯を支配しているようだが結局の所人種が違うだけの人間であろう、そして亜人が東の広大な樹海で息を潜めて過ごしていると言う、そんな有様で良く滅ばなかったものだ、そして人間と魔人の何百年も続く下らん戦争を続けている様だ。そして魔人族は数こそ人には及ばぬものの個々の能力は人間を大きく凌ぎ、その力に人間は数で対抗して戦力は五分であったと言う、だが、魔人による魔物という獣共の使役により戦力の拮抗が崩れたらしい。魔物については異能を使う獣だとでも言えば良いだろうそれ以上の言葉は奴等には不要である。そしてそんな獣共を魔人達は使役に成功したのだと言う、其れによって人間の数というアドバンテージが失われ、人間は滅ぼうとしていると言う、とは言え弱者が死に、強者が残るのは世の常だ、其れについては受け入れれば良いものを、往生際悪く彼ら学徒を召喚したと言うことなのだろう、無様なものだと口角が吊り上がったのを手で隠し周囲に気取られないようにする、そうしてイシュタルが再び口を開いた。

 

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を作られた至上の神。恐らく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族が滅ぶと。其れを回避するためにあなた方は呼ばれた。この世界よりも上位の世界の人間であるあなた方は、この世界の人間よりも優れた力を有しているのです」

 

其処で一度言葉を切ったイシュタルは「神託で伝えられた受け売りですがな」と表情を崩しながら言う、最早その内なる狂気を隠すつもりも無いらしい。

 

「あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の元、魔人族を打倒し我等人間族を救って頂きたい」

 

ほぉ?この狂人はその神擬であり上位者擬きの存在が世界を創造したと信じて止まない様だな、世界は全て偶然の産物であるというのに、そんな代物を同じく偶然の産物である神、上位者が作ったと思っているようだ、その脳みそを解剖して覗いて見たいほどの程の狂い様だ、本当に反吐が出そうだ!そんな事を考えていると一人の少女の様な外見だが含蓄をある程度持った彼らの教師と思しき女性がテーブルを叩いてかなりの剣幕で抗議を始めた

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようって事でしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!早く私達を帰して下さい!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

とても生徒達を大切にして居るであろう彼女の姿に私は微笑ましく思ってしまう、ビルゲンワースも似た様な様相だったのだろうか、恐らくウィレームは学徒達から慕われていたのだろう、結局はローレンスを始とした学徒達に裏切られた様だが。そしてイシュタルの言葉が周囲の和ましい空気を凍て付かせる。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

だろうとは大凡の予測は付いていたが灯りさえ在れば私は狩人の夢に戻れるだろう、若しくは眠れば肉体は現実に残して狩人の夢に戻る事も可能だろう、所詮は推測の域を出ないが試してみない手はない、可能であれば肉体も狩人の夢に戻せるかも知れないが、その辺は良く分からないので置いておくとしよう。私は兎も角彼らは如何だ、場は重苦しく冷たい静寂が支配し、誰もが説明を求めるようにイシュタルに目を向けている。

 

「ふ、不可能って……どういう事ですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

彼女の言い分は尤もだ、だが現実とは、悪夢ほどでは無いにしろ非情で無慈悲で、理不尽な物である、悪夢のように行き成り死ぬような事が無いだけマシだろう。

 

「先程言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々があの場にいたのは、単に勇者様型を出迎えるた為と、エヒト様へ祈りを捧げるため。人間に異世界へ干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第と言うことですな」

 

「そ、そんな……」

 

そんな問答の途中にハジメから名を聞いたが彼女、愛子が脱力した様にストンと椅子に腰を落とす。周囲の生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「嘘だろ?帰れないって何だよ!」

「嫌よ!何でも良いから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

ある程度予想はしていたが中々酷い有様である、だが彼らの言い分も分からなくはない、そして私のなまじ高い啓蒙は気付いてしまっている、この世界に寄生している神という名の蟲は、彼らを帰す気は無いと言う事を。やはり神と言う生き物には碌な物が居ないようだ。そしてイシュタルの目には彼らに対する侮蔑が見て取れる、実に御門違いな侮蔑である、やはり狂人は狂人の様だ、私もアイリーンからは脳筋などと言われたりもしたし、気が狂っているのは仕方の無い事だ、あの街で狂うなと言う方が無理な話である。そう考えるとカインの流血烏に殺されるまで気が狂わなかったアイリーンの精神性には賛頌を送る外無いだろう、流石だと。そしてパニックの収まらぬ中、此の学徒達の中心人物と思しき少年が立ち上がり、テーブルを強かに叩いた。その音にビク付き、生徒達が彼に注目する。彼は皆の注目が集まったのを確認すると徐に話し始めた。

 

「皆、此所でイシュタルさんに文句を言っても意味が無い。彼にだって如何しようも無いんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。其れを知って、放っておくなんて俺には出来ない。其れに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかも知れない。……イシュタルさん?どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです、ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えて良いでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

「ハジメ、あの戦争や闘争を舐め腐った世の真実すら知らなそうな惨めな少年は何者なのだ?貴公のクラスメイトならば知っているだろう?」

 

私の問いに苦笑いしながらもハジメは答えてくれる

 

「彼は天之河光輝君だよ、このクラスの学級委員長でクラス一番のカリスマだよ」

「……あの様な者がカリスマを持つとは……貴公の世は穢れを知らぬ平和呆け、堕落した世界なのだな……穢れが蔓延り、呪いと病で満ちた世界の私が言うのも何だが……」

「あ、あはは……」

 

そうして軽く言葉を交わし、静かに状況の推移を見守る

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、其れしか無いわよね……気に食わないけど……私もやるわ」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「雫……と言ったか、彼女の様子を察するに戦争の何たるかを知っているが覚悟が決まっていない様だな、覚悟を決めれば、彼女は良き狩人になるだろう」

「そ、そうなの?確かにあの中で一番鋭い八重樫さんなら此の状況の危うさにも気付いてるとは思うけど……でも……人を殺す覚悟なんてそんなに簡単には決められないと思うよ……」

「彼女がやらねばならない時が何れ、必ずと言って良いほど訪れるだろう、今はその時を待つしか無いさ」

「そっか……でも狩人さんがそう言うなら……そうなのかも知れないですね」

 

マァ……こう言った子供達が覚悟を決めざるを得ない状況なぞ、在ってはならない、そんな事は在るべきでは無いのだ、だが彼らはこんなにも命が軽い世界だ、否が応でも彼らは選択を迫られることだろう。

 

そうして狩人の思索と同じ様に事は進み、何時もの坂上龍太郎、八重樫雫、白崎香織が光輝に賛同し、当然のようにクラスメイト達も賛同していき、愛子が「ダメですよ~」と涙目で訴えるも光輝の作った流れの前では無力であった

 

そして南雲ハジメは狩人に対しての印象は何もかもが分からない不思議で、不気味で、少し怖い人だが優しい人物だと印象付けた、その評価は遠からずも当たらずと言った物で、後に彼は狩人の本質を見る事となる、そんな評価も知らぬ狩人は、彼らの現実逃避という名の戦線参加を渋い顔で眺めていた。そして元凶である天之河光輝とイシュタルを静かに、誰も気付かぬ程弱いが、鋭い殺気を以て睨み付ける、其れに唯一、八重樫雫だけが気付いたが、誰から発せられる物なのかは気付はしなかった。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

見ていただけとは言え戦争参加に対して異議を唱え無かった以上、狩人は戦いの術を学ぶ彼らと共に行動せねばならない、彼からすれば業腹ではあるがヤーナムよりも酷い汚物溜まりの様な世界から元居たヤーナムの地へ帰還する術を得る迄は彼等と共に行動した方が得る物がある事に納得はしている彼だからこそ、彼は一人でこの地を出る事は無かったが、ハジメ達の戦力や精神性には不安しか懐いて居なかった、それもその筈だろう、彼等は未だ肉体も、精神も未熟な子供なのだ、大きな力を持てばどうなるかなぞ、目に見えているのだから。そして彼等は平和主義と言うぬるま湯にどっぷりと浸かり、温室で学び、生まれてこの方命のやり取りを知らない彼等は魔物や魔人と戦える筈もないが、イシュタルも抜け目なく、その位は予想に難くなかった様で、イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓にある【ハイリヒ王国】にて受け入れ体勢が整っているらしい、狩人は内心、周到な事だと関心半分、警戒半分で呟く。

王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める神、創世神エヒトの眷属であるシャルム・バーンなる人物な興した国であるというのだからその繋がりは想像に難くないだろう、何方にせよ世界的に神を崇める世界なぞ、教会の力は神の次に強いのも又、容易く予想できるだろう。狩人達は聖教教会の正面門にやって来た。下山し、ハイリヒ王国へ向かうためだ。聖教教会は【神山】の頂上にあるらしく、医療教会の正門もかくやと言う程荘厳な門を潜れば、眼下には雲海が広がっていた。高山特有の息苦しさは誰も感じている様子は無かった為、気にしてはいなかったがよもやこれほどの高所に総本山を構えていたとは思っても見なきった。恐らくこの世界特有の業、魔法とやらで生活環境を整えているのだろう。狩人は久しく日の光を見ることはなかったが故に太陽に目を向け、眩しげに目を細める、彼の眼下では陽光によって乱反射し、煌めく雲海にハジメ達が見蕩れていた。

何処か自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな台座が見えてきた。大聖堂で見た物と同様の美しい回廊を進み、促されるままその台座に乗る。

その台座には幾何学的な模様が刻まれていた。柵の向こうはは雲海である為、生徒達は身を寄せるが狩人はただ静かに動かず、ただ周囲に目を配り、辺りを警戒する、するとイシュタルが何かを唱え始めた。

 

「彼の物へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」

 

途端、足下の魔方陣と呼ばれる模様が燦然と輝き、ヤーナムでは有り得ない軌道を描き、斜めに下っていく。どうやら先程の“詠唱”とやらで土台に刻まれた魔方陣が起動した様だ。そして生徒達が初めて見る“魔法”に騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎで微細な音すら聞こえなくなる、最早聴力による警戒は無意味だと悟った狩人は視覚での警戒にリソースを割くことにした。

やがて、雲海を抜けて地上が見えてきた。眼下には巨大な都市、否、国が姿を現す、山肌から迫り出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都で在る。台座の滑走昇降板は王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いている様だ。そして周囲に目をやると狩人は皮肉げに笑うハジメを見た、彼はあの糞のような演出に気が付いた様だと彼の観察眼を賛頌する。狩人達は正しく、天より降臨したる“神の使徒”で在るという構図を体現したのだろう、狩人達の事だけで無く、聖教信者が協会関係者を神聖視するのも無理はない、狩人は反吐が出るような嫌悪感に顔を歪めると同時に、学徒達に憐憫を懐いた、彼等はこの世界の神の真意を知らぬのだから、彼等が其れを知った時、大いに絶望することだろう。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

王宮に着き、狩人達は真っ直ぐ玉座の間に案内された、やはりと言うべきか教会に負けずとも、教会より控えめな煌びやかさを持つ内装を歩く、道中、当然と言えば当然だが、騎士然とした格好の者や文官らしき者、メイドや使用人とすれ違ったが、皆一様に期待や畏敬の念に満ちた眼差しを向けてくる、狩人からすれば非常に鬱陶しいが其れを顔には出さず彼等が狩人達が何者かはある程度理解している様であった。

そうして美しい意匠の施された巨大な両開きの扉の前に到着すると、その両側で直立不動の姿勢を取っていた兵士二人がイシュタルと勇者一行の来訪を大声で告げ、中の返事も待たずに扉を開いた。

イシュタルは其れが当然であるという様に悠々と扉を通る。光輝達や狩人を除き、生徒達は恐る恐ると言った様子で扉を潜った。

扉を潜った先には真っ直ぐに伸びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子、つまりは玉座があった。そして狩人の予想を裏付ける様に玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている、やはりと言うべきか、この世界の立場は国より教会の方が上の様だ。その隣には王妃と思われる女性、その隣には10歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた、更にはレッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服を着込んだ武官が、右側には文官らしき者等が約三十名以上のが並び佇んでいる。

玉座の手前に付くとイシュタルは狩人達を其処に留まらせ、自分は国王の下へと進んだ。

其処で徐に手を差し出すと黒王は恭しく手を取り、軽く触れない程度のキスをした。狩人はやはりか……と言う表情を浮かべ辟易する。

其処からは単なる自己紹介だ。国王の名はエリヒド・S・B・ハイリヒと言い、王妃はルルアリア、金髪美少年は王子のランデル、王女はリリアーナと言うらしい。後は騎士団長や宰相等の地位の高い者達の紹介が為された。ランデル王子に至っては白崎香織に視線が度々向けられていた、白崎香織に一目惚れしたのは間違いないだろう。

 

その後、晩餐会が開かれ、私は早々に隅の方へと退避し、悪態一つ吐いて事が収まるのを静かに見守っていた。

 

「……ヤーナムの外の人間達は何故こうも騒ぎ立てるのが好きなんだか……理解に苦しむ……」

 

王宮では、狩人達の衣食住は保証されている旨を訓練に於ける教官達の紹介も為された。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれた様だ。何れ来る戦に備え親睦を深めて置けという事だろう。晩餐を終え、解散となると、各自一部屋ずつ与えられた部屋に案内された、広い部屋に何の感慨もなく狩人は入り、その先を思案する、幸い狩人は食事や睡民を必要としない、後は試したい事も多数在る為狩人は思案と行動を行う。

 

先ずは狩人の夢へと変える方法だ……回転鋸は余り問題ではないが、問題は聖剣の方である、其れは血晶石に依る物だ……呪われた血晶石の効果により非常に装備の耐久の減りが早いのである、そして狩人の悪夢に戻れば自動的に血の遺志が手に入る事と同義である、ならば先ずは其れを試す他に手は無い

 

そうして狩人は静かに目を閉じ、そのまま眠りに落ち、無事、狩人の悪夢へと帰ることに成功したのである

 

ふむ……狩人の悪夢へは帰れた様だ、之によって私の推測は実証された、だが灯りがないのは如何すれば良いのか……人形に聞いてみるのも一手かも知れないが……此所は啓蒙を得る事で新たな知識を得る事としよう。

 

狩人は余り使う事の無かった狂人の智慧を用い、啓蒙を一つ高めた、其れによって得られた情報はやはりと言うべきか、非常に有用な物であった、其れは死んでも自らが死んだ場所から最も近い場所で目覚めをやり直す事が出来ると言う事だ、つまりは比較的近い位置に血の遺志が遺される事になるのと同義である、実に喜ばしい事だと思った、そして狩人の夢に戻っても獣が再配置される訳では無く、普通に発生すると言う事、つまりは獣を殲滅して狩人の夢戻り、そして目覚めて又殲滅するというマラソンが出来ないという悲しき事実が伴った、だが其れは致し方ない、此所は異世界、異世界には異世界の法則があるのである、狩人はそう割り切り、人形に話し掛ける

 

「ただいま、人形」

「お帰りなさい、狩人様、此度は大変な事に巻き込まれた様ですね」

「あぁ、まさか幼年期を終え、又悪夢に目覚めるものだと思っていたが、まさか異世界で目覚める事になるとは思いもしなかった」

「心中お察し致します、狩人様、他に御用は御座いますか?」

「いや、今回は少し試したい事の為に戻ってきただけだ、又ある程度血の遺志が貯まったら力に変えて貰うとしよう」

「畏まりました、貴方様の目覚めが、有意なものでありますように」

「あぁ、ではな」

 

そう言って私は墓石に対面し、使者に誘われてハイリヒ王国王城の自室で目を覚ます、之で一つの課題はクリアしたと言って良い、いや、狩人の夢に変えれる以上ほぼ全ての課題はクリアしただろう、ヤーナムへ赴き、水銀弾や輸血液マラソンが出来るかは後々行ってみるとしよう、此方の方は無理な気がするが……分からなければ取り敢えずやってみなければ分からない

 

狩人は知らない物は取り敢えず殴ると言う精神で此の問題を後に置き、狩人は朝まで小さなオルゴールの子守唄でも聴いて時間を潰す事にした。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

夜も明け、トータスに来てから二日目のこの日、早速訓練と座学が始まった

先ず、集まった生徒達に20㌢×7㌢程の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒や狩人達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

騎士団長が訓練に付きっ切りで良いのかとハジメは思っていたが、私は順当だと思っていた、現状この国の最高戦力を訓練指南役として立て、効率よく強くなるための訓練を行う、そして監視役としても騎士団長ほどの戦力ならば最適と言えるだろう、私がずぶの素人であったならばの話だがな、この場に居る誰よりも私は修羅場を潜り抜けて来たと自負しているが、彼等は如何だろうか、死ぬ覚悟は出来ていようが本当に死んだことなぞ無いだろう、それもその筈だ、人は本来、死んでしまえば其れで終わりなのだから……

 

そしてメルドはやはりと言うべきか、半端な者に訓練を任せる訳にはいかないと言う尤もらしい理由を述べた、だが本当の理由は後者の面倒な雑事を副団長に押し付ける事が出来ると言う半ば不純な理由だろうと狩人は看破していた、とは言え彼が訓練において手を抜く事はないだろう。だが副団長には後で交信しておくとしようと狩人は狂人らしい思考を発揮したのであった。

 

「良し、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる物だ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失すなよ?」

 

非常に砕けた口調で話すメルド。彼の性格は豪放磊落で、「これから戦友になろうってのに何時までも他人行儀で話せるか!」と、他の騎士団員にも普通に接する様忠告する程である。

狩人からすれば何方でも良かったが、ハジメ達からすればその方が気楽で良かったらしい。遙か年上から慇懃な態度をとられるのは居心地が悪くて仕方が無いらしい。

 

「プレートの一面に魔方陣後刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔方陣に血を一滴垂らしてくれ。其れで所有者が登録される。“ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類いだ」

「アーティファクト?」

 

アーティファクトと言う聞き慣れない単語に光輝が質問する。

 

「アーティファクトっていうのはな、現代じゃ再現できない強力な能力を持った魔法の道具の事だ。未だ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。ステータスプレートもその一つでな、昔からこの世界に普及している物としては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証明に便利だからな」

 

ステータスプレートについてはステータスプレートを其の物を製造するアーティファクトも存在しているらしい、故にステータスプレートは一般普及して居ると言う事だ。

 

そして私はアーティファクトの説明を聞いて唯一浮かんだのは月光の聖剣であった、何せアレは新宇宙的神秘の結晶とも呼べる代物であるが故に

 

本来は狩人の持つ仕掛け武器は全てこの世界においてはアーティファクトと言って相違ない代物だが彼からすれば仕掛け武器は身体の一部であり常識であるが故にそんな事に気付く様子は無い

 

メルドの説明に「成る程」と頷きつつ、生徒達は顔を顰めながら指先に針をチョンと刺し、プクッと浮き上がった血を魔方陣に擦り付けた、すると魔方陣が一瞬淡く輝いた。狩人も同じく血を擦り付ける。

すると狩人のステータスプレートも一瞬淡く輝き、真綿にインクが染み込む様にドス黒い血の様な色へと変色していった、顔色一つ変えずにその様子を見守る狩人。他の生徒達やハジメは瞠目している。

そんな生徒達にメルド団長が説明を加える。曰く、魔力という物は人それぞれ違う色をを持っているらしく、プレートに自己の情報を登録すると、所有者の魔力色に合わせて染まるのだそうだ。つまり、そのプレートの色と本人の魔力色の一致を以て身分証明とするのである。

 

私の魔力色は正に血色か、血塗れの狩人には相応しい色ではないか

 

狩人は何の感慨もなく内心でそう独りごちて周囲に視線をやると主要な人物のステータスプレートの色が目に入った、天之河光輝は趣味が悪い程の純白、坂上龍太郎は深緑色、白崎香織は白菫色、八重樫雫は宝石を彷彿とさせる瑠璃色、南雲ハジメは美しく澄み渡った空の様な色をしている。

 

「珍しいのは分かるが、しっかり内容も確認してくれよ」

 

苦笑いしながらメルドが確認を促す。その声で、で生徒達はハッとなった様に顔を上げ、直ちに確認を開始した、そして狩人も又、ステータスの確認を行った

 

──────────────────────────

 

■■■ ■■歳 男 レベル1

天職:狩人

種族:上位者

筋力:■■■

体力:■■■

耐性:■■■

敏捷:■■■

魔力:■■■

魔耐:■■■

技能:言語理解、狩人の業[+ヤーナムステップ][+内臓攻撃][+秘文字][+秘技][+血弾補充][+目覚めの再開][+格納][+血の誓約][+血の遺志継承]・大剣術、鋸術、槌鉾術、大槌術、剣術、双剣術、大鎌術、曲刀術、弓術・抜刀術・戦斧術・操杖術・操鞭術・縮地・神殺し・神喰らい・上位者狩り・獣狩り・気配感知・微音感知・先読・聞き耳・気配隠蔽

──────────────────────────

 

と、表示されていた、名前や年齢、ステータスは秘匿されている、更には種族まで表示されているが……これについては他の者達のステータスプレートには表示されて居るのだろうか、其れについては聞いてみるとしよう、直ぐ近くに丁度ハジメも居る事だ

 

「ハジメ、貴公のステータスはどうだったのだ?」

「僕は……これは強いのか良く分からないけど……」

 

──────────────────────────

 

南雲ハジメ 17歳 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:言語理解・錬成

 

──────────────────────────

 

「ふむ……ステータスについてはこの様な調子だから全く分からんな、だが種族の項目は無いらしいな……」

「えっ……?狩人さんには種族の項目があるんですか?」

「そうなのだ、みてみると良い」

 

そうして狩人はハジメにステータスプレートを手渡す

 

「うわっ…!?何この色!?ドス黒い何か……血みたいな色だね……」

「私を体現するに十分な色だと思うが……そんな事よりも内容を確認し給え」

「あ、うん……。……!?なっ、何これ!?名前も年齢もステータスも全部表示されてないじゃないか!?其れに上位者って何!?其れに神殺しに神喰らい!?どっ、どういう事!?」

「確かに私はこの世界で言う神に匹敵する深宇宙の上位存在を狩り、確かに私は上位者となったが……」

「そうなんだ……僕も取り乱してごめん、にしても技能だけなら凄いね、ステータスは見えないから分からないけど」

「そうだな」

 

そうしている内にメルドからステータスの説明が為された

 

「全員見られたか?説明するぞ?まず、最初に“レベル”があるだろう?其れは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100で其れが人間の限界を示す。つまりレベルとは、その人間が到達できる領域の現在値を示しているというわけだ。レベル100と言うことは、自分の潜在能力を全て発揮した極致ということだからな。そんな奴はそうそう居ない。」

 

どうやらレベルアが上がるのとステータスが上がるのは=では無いらしい

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることも出来る。又、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことは分かっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前達専用に装備を選んで貰うから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開方だぞ!」

 

ほぉ?尤も、私に合う装備なぞそこには無いだろうが。

 

「次に“天職”ってのがあるだろう?其れは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分に於いては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない、戦闘系天職と非戦闘系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人は居るな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持ってる奴が多いな。」

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍か数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

メルドの説明を聞き、そんな事を考えながら狩人はハジメからステータスプレートを受け取り、メルドの元へと向かい、真剣な眼差しでメルドに問いかける

 

「貴公、私のステータスが出たのだが、周囲に言うのは少し憚られるかも知れん代物なのだ、出来れば貴公には虚偽の公開と技能について少し助言を願いたい」

「おう狩人、何故ステータスを隠したがるんだ?まさか自分のステータスが低いからか?」

「いや、ステータスについては良く分からんのだ、だからこそ、不味そうならば虚偽の公開を願いたいのだ、其れについては見て貰った方が分かり易いだろう」

 

狩人はメルドにステータスプレートを渡すと、ステータスプレートに目を通したメルドは硬直し、絶句する

 

「狩人、良いか、名前は仕方ないとしてと種族とか言う訳の分からん項目と年齢、ステータス、神殺しと神喰らいは隠蔽しろ、何があっても見せるんじゃないぞ、俺もこんなステータスプレートを見るのは初めてだがまさかこんな事になるなんて誰も思いもしないだろうからな、ステータスについては俺が誤魔化しておいてやる」

「助言と虚偽の公開に感謝する、其れでは」

「あぁ……、皆、狩人はステータスも相当優秀だし技能もほぼ全ての武器を得意とする代物だ、しかも俺も見た事の無い技能まで持ってる程だ、天職も狩人と初めて見る物だ、此奴は相当強いと思うぞ」

 

そして狩人はハジメの元へと戻る、しっかりと指定された部分を隠蔽しながら。

 

「如何だったの?ステータスの事」

「やはり異常だったようだ、尤も、神殺しなぞ異常なまでに神を信仰するこの世界では異端も異端だろうがな、助言も得てステータスの隠蔽を教わったのは実に助かったがな、救国の勇者御一行とやらに神殺しが居ては不味いだろうからな」

「うん……そうだね、其れで勇者達の立場が危うくなるかも知れない、正直な所、勇者の一団が神殺しを企ててると思われたら其れこそ殺されるかも知れないからね」

「そうだな、結局の所神の信奉者は総じて獣、或いは狂人の様な輩だ……」

 

そんな風に言葉を交わし、狩人は再び状況の推移を見守っていると、天之河光輝がステータスを報告しに前に出た。ステータスの内容と言えば

 

──────────────────────────

 

天之河光輝 17歳 男 レベル1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・限界突破・言語理解

──────────────────────────

 

正にチートの権化であった

 

「ほぉ~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は三つなんだがな……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

 

メルドは先程狩人のステータスを見て少し深刻な表情をし、冷や汗を流していたが光輝のステータスを見て頼もしげに顔を綻ばせる。

 

「いや~、あはは……」

 

メルドの表情に気付く事は無く、照れたように頭を搔く光輝。因みにメルドのレベルは62。テータスは平均300前後。この世界でもトップクラスの強さを持つ強者である。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では直ぐに容易く追い抜くことだろう。

因みに、技能=才能である以上、先天的なもの故に増えたりはしないが、元々の技能から派生する後天的な“派生技能”が存在するらしい。

これは一つの技能を磨き続けた末、所謂“壁を越える”に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかった事が、ある日突然コツを摑み、凄まじい勢いで練度を増すと言うことである。

光輝だけが特別かと思えば、他の者達も又、光輝には及ばずも十分なチートであった。そして特出すべきは殆どの者が戦闘系天職である事だ。

そうして居る内にハジメに報告の順番が回ってきてメルドにステータスプレートを渡すと先ほど迄ホクホク顔をしていたメルドの「うん?」と声を漏らしながら表情が笑顔のまま固まったのが遠目からでも分かる。次いで「見間違いか?」とプレートをコツコツ叩いたり、光に翳したりする、そんな滑稽なメルドの姿に笑いが零れそうになったが必死で押さえ込む。そして物凄く微妙な表情でステータスプレートをハジメに返した。

 

「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛冶職の事だ。鍛冶する時に便利だが……」

 

歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド。

その様子にハジメを目の敵にする者達が食いつかない筈が無く。鍛冶職と言う事は明らかに非戦系だ。クラスメイト達が皆戦闘系を持ち、これから戦が待っている状況では役立たずである可能性が大きい。

その内の一人、檜山大介がニヤニヤしながら声を張り上げる。

 

「おいおい南雲。もしかしてお前、非戦系か?鍛冶職で如何やって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しんっすか?」

「……いや、鍛冶職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

檜山が非常に癪に障る調子でハジメに肩を組む。見渡せば周囲の生徒、特に男子はニヤニヤと笑っているのが分かる、彼等にも又、獣の兆しが見えている様だ、とは言え未だ子供、引き返す道は幾らでも在る、そう考えた狩人はゆっくりと静かに、だが堂々とハジメの元へと歩んで行く

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボい分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

メルドの表情から内容は察しが付いて居るであろうに、態々執拗に聞く檜山。実に歪んだ性格をしている。取り巻きと思われる三人も囃し立てる。強き者には媚び、弱き者には強く出る典型的な小物の行動だ。事実、香織や雫などは不快げに眉を顰めている。

香織に惚れているくせに、何故其れに気付かないのか。そんな事を考えながらハジメは投げやり気味にプレートを渡す。

ハジメのプレートの内容を見て檜山は爆笑した。そして斎藤達取り巻きに投げ渡し、内容を見た彼等も爆笑なり嘲笑なりをしていく。

そろそろ良いだろう……そう思った狩人の動きが目に見えて変わるが、其れに気付ける者すら居ない、彼は気配を断ち切っているのだから。

 

「ぶっはははっ~、何だこれ!完全に一般人じゃねぇか!」

「寧ろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

「ヒャハハハ~、無理無理!直ぐ死ぬって此奴!肉壁にもならねぇよ!」

次々と笑い出す生徒に香織が憤然と動き出す。しかし、その前に狩人が檜山達の背後に立ち、その眼からは赤い眼光を思わせる殺意が炯々と輝き、檜山達を一瞬で怯ませる。

 

「なっ……何だよお前……!俺はただ友達と遊んでただけだろ!?」

「ほぉ?其れが友人と遊ぶ態度か?どうも貴公等は友好的には見えなかったが……?」

 

狩人が檜山の腹に拳を入れようと握り拳を作った瞬間、狩人の行動を知る由も無い愛子がウガーと怒りの声を発し、檜山達の所へと向かう。

 

「こらー!何を笑っているんですか!仲間を笑うなんて先生許しませんよ!ええ、先生は絶対許しません!早くプレートを南雲君に返しなさい!」

 

非常に小さな身体で精一杯怒りを表現する愛子。その姿に毒気を抜かれたのかプレートがハジメに返され、狩人は殺意を霧散させて握り拳を解く、そして愛子に一言礼を言って元居た場所へと戻る。

 

「貴公の彼等に対する叱責、感謝する、では」

「えっ、えっと……如何致しまして……?て言うか貴方は誰なんですか!!」

「名乗っていなかったな、愛子殿、一応始から貴公等と共に居たのだが……私は狩人という者だ、では」

「はい、よろしくお願いします……?」

 

困惑する愛子を他所に狩人は生徒達の最後尾へと消えて行く、漸く困惑から抜け出した愛子は始に向き直り、励ますように肩を叩いた。

 

「南雲君、気にする事は在りませんよ!先生だって非戦系?とか言う天職ですし、ステータスだって殆ど平均です。南雲君は一人じゃ在りませんからね!」

 

そう言って「ほらっ」と愛子は始に桜色に染まった自分のステータスプレートを見せた。

 

──────────────────────────

 

畑山愛子 25歳 女 レベル1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

──────────────────────────

ハジメは死んだ魚のような眼をして遠くを見だした。

今、彼には今頃蒼褪せた血の空と血の様に赤い月が見えている事だろう。

「あれっ、如何したんですか!南雲君!」とハジメをガクガク揺さぶる愛子。確かに全体ステータスは低いし、非戦系だろう事は一目瞭然なのだが……魔力だけならば勇者に匹敵し、技能数ならば超えている。食料問題は戦争には付きものだ。ハジメの様に幾らでも優秀な代わりの居る職業では無いのだ。つまり、愛子も十二分にチートであった。

少し。一人ではないのかも知れないと期待したハジメのダメージは深い

 

「あらあら、愛ちゃんったらトドメ刺しちゃったわね……」

「な、南雲君!大丈夫!?」

 

反応が無くなったハジメを見て、雫が苦笑いし、香織が心配そうに駆け寄る。愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げている、ハジメに対する嘲笑を止めるという目的自体は達したが、彼の前途多難さに狩人も苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。




えぇ~……比較的長くなってしまったのだが、普通に読んで頂けると幸い、中々ゴリ押し気味なんで色々可笑しいとは思いますが、その際はアドバイス一つ頂けると助かります

狩人の能力値、99のカンストを越えさせる?

  • 越えさせる
  • 越えさせない
  • 任せる
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