ロゼリアート・オンライン   作:ユイトアクエリア

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10話です。
今回はあのギルドの話ですが、あのギルドは開始100字ぐらいで壊滅してます、ご了承ください。
ユイトくん視線で物語は進んでるので、すみません。
それではどうぞ。


10話 クリスマスプレゼントはビーターが

『俺、ギルドに入った。』

 

というフレンドメッセージを寝起きに見たときは幻覚でも見てるのかと思った。

徐々に覚醒していく意識で、もう一度メッセージを見たときにも、まったく同じ本文が記されていることから、幻覚じゃなかったことを安堵半分、不安半分の気持ちで落ち着かせると、『そのギルドの名前、教えてよ。』と送り返す。

返信はすぐに来た。そのギルドの名前は『月夜の黒猫団』。

 

ーーそれが、半年後に壊滅する、ギルドの名前だ。

 

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太陽が沈み、月が真上に存在するような真夜中。

現在の最前線は49層。今俺がいる場所は46層で、最前線より3層下、十分前線と言える場所。

そんな場所に、しかも真夜中に俺がいる理由は、経験値稼ぎ...いわゆるレベル上げだ。

俺の向かう先には、昆虫型、というかアリ型モンスターが通常より多く湧く、通称『アリ谷』がある。

今解放されてる49層の中で、最も効率のいいとされている湧き場である。

 

 

1層ボス攻略の際、俺は(本当は俺とキリトなのだが、)自分をβ上がりであることを告げ、情報を独占する悪者のβテスター、それにずるをする人間という意味で使われるチーターを合わせた侮蔑的名称、ビーターであるということをそこで公言してしまった。

こうなることを予知してなかったのかと言われれば嘘になる。

ビーターの生みの親ともいわれるような俺が、全線でパーティないしはギルドに入れるわけないので、こうしてソロで経験値稼ぎをしている。

 

 

Yu「...ん?」

 

 

ふと、見知った後ろ姿を見かけた。

それは、こんな前線にいれば見知った、それに似ているような後ろ姿のプレイヤーなんてそこそこいるだろう。

でも俺は、あの姿は絶対にあいつだという確信があった。

 

 

Yu「キリト、おひさ。」

K「ああ、ユイトか。久しぶりだな。」

Yu「アリ谷をソロ狩りとは...随分と無茶しやがるね、ビーターさん。」

K「それ、ブーメランだぞ。」

 

 

 

久しぶりに会った俺のタッグパートナーは、心身ともにやつれているように見えた。

 

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Yu「お前、ずっとここやってんの?」

K「まあな。」

Yu「レベル、どんだけになった。」

 

 

本来他プレイヤーにレベルやステータスを聞くというのは禁忌であるが、キリトは満更でも無さげに答えた。

 

 

K「さっき上がって69だ。」

Yu「あ、抜かれた...さっき上がって68なのに...」

K「てか、そんな無駄話するために俺の後追っかけてきたのか?」

Yu「うわお、手厳しい。...ま、本題はそれじゃない。《背教者ニコラス》の話だよ。」

 

 

背教者ニコラスというのはクリスマスイヴの夜、つまり12月24日の深夜12時ちょうどに、フィールドのどこかの森にあるモミの巨木の下に現れる伝説の怪物、の名を被ったフラグMobがポップする。

 

 

Yu「『ニコラスの袋の中身にはたくさんの財宝が入っている、もし倒すことができれば、その財宝を手にできるだろう』...か。」

K「ああ。で、その中には...」

Yu「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()...蘇生アイテムの話は俺も聞いた。でも、これはさ...」

K「お前もガセだって言う側か?」

Yu「悪かったな。夢物語は好きだけど、あのチュートリアルを聞いてなお、蘇生できるとは、俺は思ってない。」

 

 

そう。あの時確かに言った。『この世界でHPを0にして死んだプレイヤーは、現実世界でも脳を焼かれて死に至る』と。

そう考えていると、キリトがでも、と言った。

 

K「この世界で死んだ後、現実でどうなったかなんて、ここにいる人間は知らないんだ。」

Yu「現実とのコンタクトが取れない以上、確かにそうだ。」

 

 

ーーだけど、これで死んでった人間が現実で生きてたら、とっくに俺らのナーヴギアは外されているはずだ。

 

 

とは言えなかった。

頓知的に考えれば、『この世界でHPを0にした人間は』と言っていた。

つまり、この世界で死んだプレイヤーに限り、蘇生の可能性があるのではないか。

反対に、この世界で死ぬ以外の要因でこの世界を去った場合、蘇生の猶予はない。

なんて考えてから、いやないなと呟いた。

 

 

K「お前の考えてること、大体わかる。俺もそうだって、信じたい。」

Yu「俺が言えたことじゃねえけど、お前もたいがい夢想家だな。」

K「俺もそう思うよ。」

 

 

キリトは薄く微笑みながらそう言った。

とりあえず俺も笑い返してから、真面目な口調で続ける。

 

Yu「で?ニコラスが出てくるとこ、見当ついてんの?」

K「とぼけんなよ。俺がボスの出現場所の情報を買ったっていう情報、お前買っただろ。」

Yu「あらま、ばれてたか。というか情報を買ったっていう情報買うって、お前金余り過ぎでは?」

K「経験値だけ落とすわけじゃないんだ、コルも溜まるさ。」

 

そう言うとキリトは、アリ谷に戻っていった。

 

Yu「...気をつけろよ。」

K「...あぁ。」

 

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5日後、12/24。

俺はとある層に来ていた。

迷いの森がある、ここは35層。

目の前には馬鹿でかいモミの木。

こここそ、背教者ニコラスが現れるとされる最も有力な場所だ。

 

Yu「きっと、あいつも来る。」

 

全身を黒で固めたかつての相棒も、きっとそこに行くと、謎の確信があった。

 

 

時を進めて、23:30。

俺は迷いの森の目の前に立っていた。

後ろでワープ音が聞こえたのを合図に、俺は後ろを振り返る。

そこにいたのは黒衣の剣士...ではなかった。

 

Yu「何しに来たのさ、ビーターが一番乗りに来るような場所に。」

L「いやぁ~...RinRinから頼まれちゃってさぁ...」

Yu「俺の監視?あの人も趣味が悪いね。」

L「あはは...」

Yu「...?Lisa、下がって。」

 

俺はリサを後ろに下がらせて、臨戦態勢をとる。

ぶっちゃけフラグボスなんか誰もが狙ってるもんだし、ここでいがみ合ってもしょうがない...

という俺の考えは、ワープゾーンから出てきた黒髪の少年の顔を見たことにより、すべて飛んで行った。

 

K「お前もここにかけたクチか?」

Yu「まあな。ゲーマーの勘がそう言ってた。」

K「へぇ...。それで、そこの人はお前の連れ?」

Yu「いや、尾けられた。」

 

という会話の直後、またワープしてくる影が30体以上。

 

Yu「尾けられてたの、キリトもだったな。」

K「そうみたいだ...!」

L「え、あれ《聖竜連合》じゃないの!?」

 

攻略組、最前線に拠点を構えるギルド、聖竜連合。フラグボスなどの珍しいMob狩りには一時的に犯罪者プレイヤー(オレンジプレイヤー)になってもいいと考える連中。

 

Yu「キリト、先行ってろ。俺もあとから行く。」

K「...!」

 

キリトは最後のワープ場所に飛び込んだ。

それを横目で確認すると、剣を抜いてギルドのやつらを牽制する。

 

Yu「リサ、俺が合図したら、すぐにそこにワープ場所に飛び込め。」

K「で、でも君は...!」

Yu「RinRinさんに伝えといてくれる?「49層のボス攻略、頑張ってくれ」って。」

 

俺は返事を待たずにギルドのやつらに突撃する。

 

Yu「うおおおおっ!!」

 

ソードスキルなんて必要ない。

ここでこいつらの動きを止めるだけ。少し装備の耐久値を削ってやるだけ。

頭じゃそんなことを考えているのに、体はこいつらを殺すために動いていた。

 

「さばききれねえぞこの攻撃!!」

「ひっ!タワーシールドが...!」

「死にたくねぇよぉ...!」

 

その言葉で、俺の本能に任せた行動は止まった。

その場で一度息をつくと、俺はそのままモミの木へのワープゾーンに入る。

入る途中で連合のやつを見たけど、あいつらはもう、フラグボスを狩る気など、一ミリもなさそうだった。

 

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深夜12時から5分遅れでニコラスを見た俺は、想像以上の大きさに身をすくめた。

しかしその震えを無理やり抑え、ニコラスに突貫する。

 

Yu「せぇりゃぁっ!!」

 

ニコラスにノックバックを押し付け、叫ぶ。

 

Yu「スイッチっ!」

K「おおおっ!!」

 

型もローテもくそもない、たった二人のパーティで、ニコラスのHPを削る。

 

 

戦利品がウィンドウに入っているのに気づいたのは、ニコラスのHPがなくなってから少し意識を落とした後だった。

 

Yu「はぁ...はぁ...」

K「......!!」

 

キリトは目当てのアイテムを見つけたようだ。

震える指先があいつの動揺を示している。

しかし次の瞬間、そのアイテムを投げ捨て、何度も踏みつけ始めた。

 

Yu「キ、キリト...?」

K「...あぁ...悪い。」

 

そう言うと、キリトは顔に影を落としたまま、迷いの森を出た。

俺はキリトが投げ捨てたアイテムを拾い上げ、情報を見る。

 

『《環魂(かんこん)聖晶石(せいしょうせき)》:このアイテムのポップアップメニューから使用を選ぶか、手に保持したまま、『蘇生:【プレイヤー名】』と発声することで、対象プレイヤーが死亡してからその光が完全に消滅するまでの間(約十秒間)であるなら、そのプレイヤーを蘇生させることができます。』

 

()()()()。そのプレイヤーが死んでから、たった十秒。

この世界でHPを0にしてから、現実の脳を焼くまでの時間。

その時間の中でしか、この世界にそのプレイヤーの脳データは残らない。

 

Yu「は...ははっ...」

 

さすがに俺も乾いた笑いしか出ない。

俺ですらこのリアクションなのだから、キリトの心の内は想像に堪えない。

 

Yu「とりあえず戻るか...」

 

ワープゾーンをくぐってさっきまでの場所に出ると、キリトのコートの裾にカタナ使いらしきプレイヤーが縋り付いていた。

 

「キリト...キリトよォ...オメェは...オメェは生きろよぉ...!!」

K「...じゃあな、クライン」

 

そう言ってキリトはどこかに転移してしまった。

 

Yu「ほんと、冷たいやつ。」

 

あのギルドの中に、キリトの心の支えになるような人間でもいたのだろうか。

それが分かったのは、キリトが50層のボス攻略会議で、「ようみんな!」と笑顔で言った後のことだった。

 

 

 

 

 

 




あとがき、読了感謝です。
今回は黒猫団の話でした。
まずごめんなさい。原作順守のために黒猫団は犠牲になりました、ほんとごめんなさい。
斬り方がぶつ切りなのはほんとにすみません。
週一投稿するとか言っといてこれはキレます、私が。
次回はあのテイマーの話です、きっと。
私事ですが、先日から夏休みに入りましたので、できるだけ投稿してみようと思います。
ただ、投稿間隔はばらつきます、ご了承ください。
お気に入り登録、感想、評価などしていただけると、私がスラッシュライズします。

正直、ライブレポート。読んでてどう感じた?

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