今回はあのギルドの話ですが、あのギルドは開始100字ぐらいで壊滅してます、ご了承ください。
ユイトくん視線で物語は進んでるので、すみません。
それではどうぞ。
『俺、ギルドに入った。』
というフレンドメッセージを寝起きに見たときは幻覚でも見てるのかと思った。
徐々に覚醒していく意識で、もう一度メッセージを見たときにも、まったく同じ本文が記されていることから、幻覚じゃなかったことを安堵半分、不安半分の気持ちで落ち着かせると、『そのギルドの名前、教えてよ。』と送り返す。
返信はすぐに来た。そのギルドの名前は『月夜の黒猫団』。
ーーそれが、半年後に壊滅する、ギルドの名前だ。
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太陽が沈み、月が真上に存在するような真夜中。
現在の最前線は49層。今俺がいる場所は46層で、最前線より3層下、十分前線と言える場所。
そんな場所に、しかも真夜中に俺がいる理由は、経験値稼ぎ...いわゆるレベル上げだ。
俺の向かう先には、昆虫型、というかアリ型モンスターが通常より多く湧く、通称『アリ谷』がある。
今解放されてる49層の中で、最も効率のいいとされている湧き場である。
1層ボス攻略の際、俺は(本当は俺とキリトなのだが、)自分をβ上がりであることを告げ、情報を独占する悪者のβテスター、それにずるをする人間という意味で使われるチーターを合わせた侮蔑的名称、ビーターであるということをそこで公言してしまった。
こうなることを予知してなかったのかと言われれば嘘になる。
ビーターの生みの親ともいわれるような俺が、全線でパーティないしはギルドに入れるわけないので、こうしてソロで経験値稼ぎをしている。
Yu「...ん?」
ふと、見知った後ろ姿を見かけた。
それは、こんな前線にいれば見知った、それに似ているような後ろ姿のプレイヤーなんてそこそこいるだろう。
でも俺は、あの姿は絶対にあいつだという確信があった。
Yu「キリト、おひさ。」
K「ああ、ユイトか。久しぶりだな。」
Yu「アリ谷をソロ狩りとは...随分と無茶しやがるね、ビーターさん。」
K「それ、ブーメランだぞ。」
久しぶりに会った俺のタッグパートナーは、心身ともにやつれているように見えた。
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Yu「お前、ずっとここやってんの?」
K「まあな。」
Yu「レベル、どんだけになった。」
本来他プレイヤーにレベルやステータスを聞くというのは禁忌であるが、キリトは満更でも無さげに答えた。
K「さっき上がって69だ。」
Yu「あ、抜かれた...さっき上がって68なのに...」
K「てか、そんな無駄話するために俺の後追っかけてきたのか?」
Yu「うわお、手厳しい。...ま、本題はそれじゃない。《背教者ニコラス》の話だよ。」
背教者ニコラスというのはクリスマスイヴの夜、つまり12月24日の深夜12時ちょうどに、フィールドのどこかの森にあるモミの巨木の下に現れる伝説の怪物、の名を被ったフラグMobがポップする。
Yu「『ニコラスの袋の中身にはたくさんの財宝が入っている、もし倒すことができれば、その財宝を手にできるだろう』...か。」
K「ああ。で、その中には...」
Yu「
K「お前もガセだって言う側か?」
Yu「悪かったな。夢物語は好きだけど、あのチュートリアルを聞いてなお、蘇生できるとは、俺は思ってない。」
そう。あの時確かに言った。『この世界でHPを0にして死んだプレイヤーは、現実世界でも脳を焼かれて死に至る』と。
そう考えていると、キリトがでも、と言った。
K「この世界で死んだ後、現実でどうなったかなんて、ここにいる人間は知らないんだ。」
Yu「現実とのコンタクトが取れない以上、確かにそうだ。」
ーーだけど、これで死んでった人間が現実で生きてたら、とっくに俺らのナーヴギアは外されているはずだ。
とは言えなかった。
頓知的に考えれば、『この世界でHPを0にした人間は』と言っていた。
つまり、この世界で死んだプレイヤーに限り、蘇生の可能性があるのではないか。
反対に、この世界で死ぬ以外の要因でこの世界を去った場合、蘇生の猶予はない。
なんて考えてから、いやないなと呟いた。
K「お前の考えてること、大体わかる。俺もそうだって、信じたい。」
Yu「俺が言えたことじゃねえけど、お前もたいがい夢想家だな。」
K「俺もそう思うよ。」
キリトは薄く微笑みながらそう言った。
とりあえず俺も笑い返してから、真面目な口調で続ける。
Yu「で?ニコラスが出てくるとこ、見当ついてんの?」
K「とぼけんなよ。俺がボスの出現場所の情報を買ったっていう情報、お前買っただろ。」
Yu「あらま、ばれてたか。というか情報を買ったっていう情報買うって、お前金余り過ぎでは?」
K「経験値だけ落とすわけじゃないんだ、コルも溜まるさ。」
そう言うとキリトは、アリ谷に戻っていった。
Yu「...気をつけろよ。」
K「...あぁ。」
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5日後、12/24。
俺はとある層に来ていた。
迷いの森がある、ここは35層。
目の前には馬鹿でかいモミの木。
こここそ、背教者ニコラスが現れるとされる最も有力な場所だ。
Yu「きっと、あいつも来る。」
全身を黒で固めたかつての相棒も、きっとそこに行くと、謎の確信があった。
時を進めて、23:30。
俺は迷いの森の目の前に立っていた。
後ろでワープ音が聞こえたのを合図に、俺は後ろを振り返る。
そこにいたのは黒衣の剣士...ではなかった。
Yu「何しに来たのさ、ビーターが一番乗りに来るような場所に。」
L「いやぁ~...RinRinから頼まれちゃってさぁ...」
Yu「俺の監視?あの人も趣味が悪いね。」
L「あはは...」
Yu「...?Lisa、下がって。」
俺はリサを後ろに下がらせて、臨戦態勢をとる。
ぶっちゃけフラグボスなんか誰もが狙ってるもんだし、ここでいがみ合ってもしょうがない...
という俺の考えは、ワープゾーンから出てきた黒髪の少年の顔を見たことにより、すべて飛んで行った。
K「お前もここにかけたクチか?」
Yu「まあな。ゲーマーの勘がそう言ってた。」
K「へぇ...。それで、そこの人はお前の連れ?」
Yu「いや、尾けられた。」
という会話の直後、またワープしてくる影が30体以上。
Yu「尾けられてたの、キリトもだったな。」
K「そうみたいだ...!」
L「え、あれ《聖竜連合》じゃないの!?」
攻略組、最前線に拠点を構えるギルド、聖竜連合。フラグボスなどの珍しいMob狩りには一時的に
Yu「キリト、先行ってろ。俺もあとから行く。」
K「...!」
キリトは最後のワープ場所に飛び込んだ。
それを横目で確認すると、剣を抜いてギルドのやつらを牽制する。
Yu「リサ、俺が合図したら、すぐにそこにワープ場所に飛び込め。」
K「で、でも君は...!」
Yu「RinRinさんに伝えといてくれる?「49層のボス攻略、頑張ってくれ」って。」
俺は返事を待たずにギルドのやつらに突撃する。
Yu「うおおおおっ!!」
ソードスキルなんて必要ない。
ここでこいつらの動きを止めるだけ。少し装備の耐久値を削ってやるだけ。
頭じゃそんなことを考えているのに、体はこいつらを殺すために動いていた。
「さばききれねえぞこの攻撃!!」
「ひっ!タワーシールドが...!」
「死にたくねぇよぉ...!」
その言葉で、俺の本能に任せた行動は止まった。
その場で一度息をつくと、俺はそのままモミの木へのワープゾーンに入る。
入る途中で連合のやつを見たけど、あいつらはもう、フラグボスを狩る気など、一ミリもなさそうだった。
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深夜12時から5分遅れでニコラスを見た俺は、想像以上の大きさに身をすくめた。
しかしその震えを無理やり抑え、ニコラスに突貫する。
Yu「せぇりゃぁっ!!」
ニコラスにノックバックを押し付け、叫ぶ。
Yu「スイッチっ!」
K「おおおっ!!」
型もローテもくそもない、たった二人のパーティで、ニコラスのHPを削る。
戦利品がウィンドウに入っているのに気づいたのは、ニコラスのHPがなくなってから少し意識を落とした後だった。
Yu「はぁ...はぁ...」
K「......!!」
キリトは目当てのアイテムを見つけたようだ。
震える指先があいつの動揺を示している。
しかし次の瞬間、そのアイテムを投げ捨て、何度も踏みつけ始めた。
Yu「キ、キリト...?」
K「...あぁ...悪い。」
そう言うと、キリトは顔に影を落としたまま、迷いの森を出た。
俺はキリトが投げ捨てたアイテムを拾い上げ、情報を見る。
『《
この世界でHPを0にしてから、現実の脳を焼くまでの時間。
その時間の中でしか、この世界にそのプレイヤーの脳データは残らない。
Yu「は...ははっ...」
さすがに俺も乾いた笑いしか出ない。
俺ですらこのリアクションなのだから、キリトの心の内は想像に堪えない。
Yu「とりあえず戻るか...」
ワープゾーンをくぐってさっきまでの場所に出ると、キリトのコートの裾にカタナ使いらしきプレイヤーが縋り付いていた。
「キリト...キリトよォ...オメェは...オメェは生きろよぉ...!!」
K「...じゃあな、クライン」
そう言ってキリトはどこかに転移してしまった。
Yu「ほんと、冷たいやつ。」
あのギルドの中に、キリトの心の支えになるような人間でもいたのだろうか。
それが分かったのは、キリトが50層のボス攻略会議で、「ようみんな!」と笑顔で言った後のことだった。
あとがき、読了感謝です。
今回は黒猫団の話でした。
まずごめんなさい。原作順守のために黒猫団は犠牲になりました、ほんとごめんなさい。
斬り方がぶつ切りなのはほんとにすみません。
週一投稿するとか言っといてこれはキレます、私が。
次回はあのテイマーの話です、きっと。
私事ですが、先日から夏休みに入りましたので、できるだけ投稿してみようと思います。
ただ、投稿間隔はばらつきます、ご了承ください。
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