ロゼリアート・オンライン   作:ユイトアクエリア

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...Roseliaの影うっす。
ホントにこれRoselia主役?
いやまぁ、主役はユイト君なんだけどね?()
はい、グダってもしゃあないんで行きます、どうぞ。


25話 世界の終焉

Yu「っはぁ...はぁ...あぁ...」

R「終わり...ました...?」

 

 

ボス戦は一時間に及んだ。

あの後も、俺は何度も聖剣を顕現させては聖剣を振るった。

ボスの体がポリゴン片に変わり、《congratulation!!》という文字が出ても、誰一人として歓声を上げる者はいなかった。

 

 

クライン「何人...やられた...?」

 

 

掠れ声でそう聞かれた。

マップを出して、赤い点を数える。

最初にいた人数から逆算して...

 

 

Yu「14人...死んだ」

 

 

自分で言っておいて、信じられなかった。

この上にあと25層もあるのに。

このペースで死人が出ていたら、100層に登るころには三桁を切ってるんじゃないのか。

 

 

Yu「まぁでも...」

 

 

ボス部屋の真ん中で、ただ一人佇む男を見ながら、そう思う。

紅衣の男、ヒースクリフはHPをぎりぎり5割にまで減らしておきながら、悠然と立っている。

 

 

Yu「タフだなぁ...KoBの団長様は...?」

 

 

おかしい。

キリトとアスナのHPを見る。

アタッカーも兼任していたとはいえ、二人とも5割を切っている。

ヒースクリフはタンクに徹していたが、それでも5割でぎりぎりというのも引っかかる。

 

 

ーー一体、こいつは何者なんだ。

 

 

瞬間、キリトとヒースクリフのデュエルとの出来事を思い出した。

最後の一瞬の盾の速度。

 

 

ーーまさか。

 

 

R「ユイト、さん...?」

 

 

という声が聞こえたが、今は返せるような思考を残してない。

右足で地面を蹴って、ヒースクリフに一気に近づく。

隣の黒コートと一瞬目が合った。

どうやら、キリトと考えることは一緒のようだ。

片手垂直斬り《バーチカル》。

当てたところで殺すリスクはない。

ヒースクリフが俺を見て驚愕の顔を浮かべる。

しかし、さすがの反応速度で盾で俺のバーチカルを防ぐ。

その瞬間に、キリトがヒースクリフの腹にレイジスパイクをぶつける。

 

 

ぶつかる直前に、何かに吹き飛ばされた。

ヒースクリフを見ると、明らかにスキルではない紫色のバリアを周りに出現させ、キリトが穿つはずだった場所には《Immortal Object》というメッセージ。

 

 

Yu「何だ。グリーンゾーンから変わらないのって、そういうことかよ」

As「システム的不死...って、どういうことですか、団長...?」

 

 

システムに保護され、何をしようが絶対に死なない最強のプレイヤー。

 

 

Yu「なんかの雑誌か、動画で見たよ。『他人のやってるゲームを、傍から見るほどつまらないことはない。』って」

K「あんたの正体は、茅場明彦なんだろ」

 

 

ヒースクリフはそれには答えす、俺の方を見てそう言った。

 

 

ヒースクリフ「なぜ気づいたのか、参考までに教えてくれるかな...?」

Yu「ボス戦が終わったときの俺らに向ける顔、どう見たって同じプレイヤーのツラじゃなかった。疲弊しきってるはずなのに、顔色一つ変えないで突っ立ってる。タンクやってたら、体力もそうだし、精神も持ってかれる。それで立っていられるのは、ものすごい精神か、あるいは...()()()()()()()()()()()()()()()()か、どっちかだと思ったから」

 

 

俺が言い切ると、ヒースクリフは一つ頷いた。

 

 

ヒースクリフ「なるほど...確かに私は茅場明彦だ。付け加えるなら、このアインクラッド最上層のボスでもある」

Yu「趣味悪いな、アンタ。最強の味方が最凶のラスボスってか」

ヒースクリフ「いいシナリオだろう?君とキリト君は不確定なところが多かったが...まさかここで見破られてしまうとは」

 

 

そう言って笑うゲームマスター。

 

 

ヒースクリフ「全十種類あるユニークスキルの中で、《二刀流》は魔王に対する勇者の役割を。《騎士王》には勇者が倒れた時のサポートの役割を担ってもらうつもりだった。まぁ、後者はともかく、前者は貴重だよ、キリト君」

「...貴様...貴様ぁぁ!!!」

 

 

ヒースクリフの演説終了とともに、右側から斧を持って殴りかかろうとする男。

しかし、その男は突如地面に伏し、動かなくなった。

 

 

R「あっ...!」

Yu「りん!?...あっ...くっ...」

K「ユイト!?...っ!アスナ!」

 

 

麻痺だ。

しかも、茅場が仕掛けた麻痺。

絶対に解けることはないだろう。

 

 

K「何のつもりだ。ここで全員殺して隠ぺいする気か?」

ヒースクリフ「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ。しかし、こうなってしまっては仕方ない。予定を早めて私の最上層の《紅玉宮》で君たちを待つとしよう。だが、その前に...」

 

 

ヒースクリフは右手の剣を床に突き立て、なぜか俺の麻痺を解除すると、言葉を続ける。

 

 

ヒースクリフ「キリト君、それにユイト君。君たちには私の正体を看した報酬(リワード)を与えなければな。私と戦い、勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがログアウトできる。どうかな?」

 

 

R,As「だめです(だよ)、ユイトさん(キリト君)!」

 

 

後ろで声が聞こえる。

 

 

Yu「悪い、りん。それにRoseliaのみんな。俺は、こいつを、許したくない」

K「ごめんな、ここで逃げるわけには、いかないんだ」

Yu,K「決着をつけよう、茅場」

 

 

K「悪いが、一つだけ頼みがある」

ヒースクリフ「なにかな?」

K「負けるつもりなんてないが、もし俺が死んだら、しばらくでいい。アスナを自殺させないようにしてくれ」

ヒースクリフ「よかろう。彼女の座標をセルムブルグで固定しよう。...君は良いのかな、ユイト君?」

Yu「りんは、俺が死んだぐらいで動じないさ。負けるつもりも毛頭ない。...でも、心配だな。言いたくはないが、Roseliaのこと、よろしく頼む」

ヒースクリフ「いいだろう。フローリアで座標固定しておこう」

 

 

ヒースクリフは頷き、左手でウィンドウを操作する。

俺とキリト、ヒースクリフのHPが同じになった。

そしてヒースクリフの紫のバリアに【changed into mortal object】と表示され、バリアが消える。

この瞬間、ヒースクリフは俺たちと同じ存在になった。

 

 

Yu「2対1だけど、勝てるか?」

K「勝てるか、じゃない。勝つんだ」

Yu「...了解」

 

 

ヒースクリフは突き立てた剣を抜くとこちらを冷たく見据えた。

俺もキリトも、剣を構えなおす。

茅場の言葉を借りて少しもじるなら、『これは決闘であってもデュエルではない』というところか。

一つ息を吐き、スイッチを入れなおす。

これはクエストじゃない。

ましてやデュエルでもない。

命のやり取りだ。

 

 

K,Yu「殺すっ...!」

 

 

俺とキリトは同時に飛び出した。

キリトが右、俺が左から攻撃を仕掛けるが、剣と盾で受け止められる。

相手はこのゲームの創生者、故にソードスキルは使えない。

だから、己の力だけで戦うしかない。

 

 

K「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

キリトが叫ぶ。

その二振りの剣に光が宿る。

今までの攻撃より格段にスピードが上がる。

しかし、その攻撃はシステムに乗せられただけのもの。

そんなものをゲームマスターとの対決中に使ってしまえば...

 

 

茅場はキリトの攻撃をすべて捌いている。

動き回る二人を追うのは至難の業だ。

ここで茅場の後ろから攻撃できればどれだけ楽か。

不意に、ぱきんっという音が響く。

キリトの水色の剣が、砕けた音だった。

 

 

ヒースクリフ「さらばだ、キリト君」

 

 

ヒースクリフは剣に赤い光を宿し、振り下ろそうとしていた。

 

 

Yu「さ...せるかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

叫び、レイジスパイクで強引に間に入り込むと、ヒースクリフの剣を弾く。

そのまま突進技を出そうとしたところで、腹に衝撃が走った。

 

 

Yu「っ...?」

 

 

 

 

 

 

 

見ると、十字の盾が、俺の腹を貫いていた。

 

 

ヒースクリフ「寂しい退場だ、ユイト君」

 

 

無感動にそう言うと、盾を振って俺を投げ飛ばした。

壁に背中を叩きつけられて、うつ伏せに倒れこむ。

左上のHPゲージを見る前に、目の前に【You are dead】の文字が赤く表示される。

 

 

Yu「(俺は、死ぬのか?ゲームで強いだけで、ボスの正体を見破って、持論を垂れてイキっただけで、死ぬのか?)」

 

 

体の感覚が薄れていく。

文字通り体も薄くなっていく。

 

 

Yu「(まだ、死ねないのに。やりたいこと、いっぱいあったのに。)」

 

 

しかし、その願いはもう叶わない。

 

 

K「ユイトっ!」

Yu「(...最後まで、俺の身を、案じてくれる。優しい、奴だ。)」

R「ユイトさんっ...!」

Yu「(人が、好きじゃ...なかった...そんな俺が、唯一、愛せた人。幸せに...生きて...)」

 

 

もう、終わりだ。

HPはない。

体の感覚も残ってない。

主人公なら発動するお得意の主人公補正だって、この世界には存在しない。

だから、せめて。

 

 

Yu「キ、リ、ト...これ...使って...」

 

 

ありったけの力で、キリトにカリバーンを投げ飛ばす。

最後は、俺とキリトの力で。

なんていう、そんなことが言いたかった。

けど。

もう。

無理だ。

 

 

Yu「(さよなら、皆。)あ、り...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、アインクラッドから消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い剣と金色の剣を持ったプレイヤーは、薄れゆく意識の中、金色の剣を持った手を、軽く上に掲げる。

 

 

K「勝ったぜ、ユイト...!」

 

 

 

ゲームはクリアされました。

ゲームはクリアされました。

ゲームはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





















































「...助けて、ユイト君...」


鳥籠に入った黒髪の妖精は、今日もそう呟く。
届きもしない声を、何度も。

正直、ライブレポート。読んでてどう感じた?

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  • 伝わらない、だめだった

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