あの中は走り抜けたい。
リーファがメッセージの相手と連絡を取ると言って、いったんログアウトしてから5分が経った。
俺は、リーファがいなくなった瞬間に見えた武器屋に直行し、今振るっている剣より重い奴を買った。
二刀にする気は毛頭ないし、新しい方を使うのは世界樹に行ってからだ。
で、今は試し切りというか素振り中。
Yu「ふっ...!はっ...!」
K「お前も物好きだなぁ。「もっと重い剣が欲しい」って」
Yu「仕方ねえだろ。...あの世界じゃ、もっと重い剣振ってたんだ」
K「こいつ、使うか?」
そう言って、キリトは自分の背にある剣を指さす。
Yu「あいにくと俺には人の剣を借りるようなことはしないんでな。ま、緊急時には借りるさ」
K「はいよ。...お。帰ってきたみたいだぞ」
キリトの声に目線をあげれば、リーファの目が開くところだった。
Yu「おかえり」
K「お帰り、リーファ」
しかしリーファは、少し目線を逸らして申し訳なさそうな顔をした。
そして。
Le「キリト君、ユイト君。ごめんなさい」
俺らに向かって頭を下げた。
K/Yu「え?」
当然リーファに謝られることをされてない俺らは困惑。
Le「あたし、急いでいかないといけない用事ができちゃった。説明してる暇もないし、ここにも戻ってこれないかもしれない」
K「そうか。じゃあ、移動しながら訳を聞くよ」
Le「え?で、でも...」
Yu「どっちみちここは飛べないなら、足使うしかないしな?」
Le「...うん、わかった。じゃあ、走りながら説明するね」
リーファの話を簡単にまとめよう。
リーファの種族である
その会談の内容は、シルフ・ケットシー間の同盟。
しかし、その会談を
しかもその情報源はシルフにいたサラマンダーのスパイからだという。
K「質問、いいか?」
Le「どうぞ」
K「サラマンダーにとって、同盟を邪魔するメリットはどこにあるんだ?」
Le「シルフから漏れた情報で領主を討たれたら、ケットシー側はたまったもんじゃないよね。最悪シルフとケットシーで戦争になるかもしれない。シルフ・ケットシー軍になったら、サラマンダーより多くなるし、強くなるだろうから、それは阻止したいんだと思う...」
Yu「戦力の増強の阻止、あわよくば他種族の潰し合い...」
Le「それに、領主を討つって、それだけでボーナスがあるの。まぁ、そんなことはめったに起こらなかったんだけどね」
K「そうなのか」
Le「だから、二人とも。これはシルフの問題だから、これ以上君たちがかかわることはないよ。会談場に行ったら生きて帰って帰れないだろうし...また戻ってくるまで時間がかかるし...ううん、もっと言えば」
リーファのスピードが少し落ちた。
Le「世界樹の上に行きたいっていうキリト君の目的のためには、サラマンダーに協力した方が良いと思う。スプリガンなら傭兵として雇ってくれると思うし...それにユイト君も、もしキリト君と同じ目的なら...ウンディーネでも、メイジ隊ぐらいには...」
そういうリーファの声は、震えていた。
かつての剣の世界、β版のSAOで俺は、パーティをとっかえひっかえしながら攻略に励んできた。
ゲーマーの考えに則り、こっちよりあっちのパーティの方が、なんて理由で。
その際に捨ててしまったパーティメンバーの声に、よく似ていた。
K「所詮ゲームだから何でもありだ。殺したきゃ殺すし、奪いたきゃ奪う。そんな風に言うやつは何人も出くわしたよ。昔は、俺もそれは真実だと思ってたよ。でも、仮想世界だからこそ、どんなに愚かしく見えても、守らなきゃいけないものだってある。俺はそれを、大切な人に教わった...」
Yu「...俺も同意見だな。追加意見になるが、ロールプレイにおいて、普段の人格と大きくかけ離れた人格は演じれないんだ。仮想だからってやりたいことやってたら、それは現実でもいつかやらかす。俺もキリトも、こんなに優しくしてくれたリーファを無視してまで、世界樹には行けないよ」
Le「二人とも...」
リーファが完全に停止する。
それにつられて、遅れて俺らも止まる。
Le「...ありがとう」
今まで聞いた中で、一番気持ちのこもった感謝だと思う。
そう思っていると、キリトが頭を搔きながら言った。
K「ごめん、偉そうなこと言った。悪い癖なんだ」
Le「ううん、嬉しかった。...じゃあ、洞窟出たところでお別れだね」
K「や、一緒に行くよ、もちろん」
Le「え?」
Yu「ここまで聞いといて、後は頑張ってって言うのは後味悪いしな」
Le「え、え?」
K「...しまった。結構時間使っちゃたな」
キリトは胸ポケットの小妖精に声をかけると、リーファの手を掴む。
K「ちょっとお手を拝借」
Le「え、あの...!?」
瞬間、キリトが消えた。
正確には、今までとは比にならないスピードで走りだした。
Yu「はっや!?」
旧SAOにあった聖剣による代償で、俊敏性を8割型失くしている俺が追いつけるわけがなかった。
Yu「でも、この世界には魔法がある...!」
現実の自分じゃ絶対に言えない速度でスペルワードを二文唱え、速度と筋力を上げる。
Yu「...行くぞ...っ!」
脚に力を籠め、蹴り出す。
体が軽い。
景色が流れる。
Yu「...!見えた...!」
黒と緑の背中が見えた。
このまま追いつく。
しかし、洞窟の横からポップしたモンスターに視界を遮られる。
Yu「オークなんか...知るかっ!」
片手間に詠唱した氷槍を放つ。
まともに食らえばノックバック。
脚などに当たればそこが凍るという便利な代物だ。
幸いマナにはまだ余裕がある。
向かってくるオークには氷槍を当て、当てきれなかった分は叩き割ろう。
K「おっ、出口かな」
キリトのその声が聞こえるのと、俺の足元から地面が消えるのは同時だった。
慌てて羽を広げ、滑空体制を取る。
顔を上げた先には大きくそびえる巨大な樹。
あれが世界樹というものなんだろう。
距離の関係上か、件の鳥籠は見えない。
Yu「あの、向こうに...」
りんは、いる。
だから。
必ずたどり着く。
はい、熱出してぶっ倒れて更新遅れたユイトです。
とりあえず某感染症じゃないことは報告しておきます。
...さて、34話はいつ仕上がるのやら。(この回も一日で書き上げて出してます)
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