ロゼリアート・オンライン   作:ユイトアクエリア

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今回詰めすぎで5,000字とかになっちゃった。
ま、どうぞ


35話 デュエル後、平和な時間

Yu「勝った...」

 

そう言うと同時に、下から低めの女性ボイスと次いで高い女性ボイスが聞こえてきた。

 

「見事、見事!」

「すごーい!ナイスファイトだヨ!」

 

それを金切りに、拍手と声援や止まなくなった。

 

俺はそれらに手を上げることで答え、続いて奴の炎に蘇生魔法をかける。

人の形を取り戻すと、奴は地面に降りた。

次いで、俺も地面に降りる。

 

Yu「...気分はどうです?お頭さん」

「悪くない。しかし、見事な腕だな。今まで見た中で最強のプレイヤーだ、貴様は」

Yu「サラマンダーの頭に褒めてもらえるなんてな...で、俺らの話、飲んでくれるか?」

 

俺がこいつとやり合ったのはあくまで俺の、というかどうにかしてキリトの話を通して、会談を襲わせないようにするためだ。

 

サラマンダーの頭はなおも目を細めつつ黙りこくっている。

すると、サラマンダーの前衛隊から一人、長槍を携えた奴が出てきた。

 

「ジンさん、ちょっといいか?」

「カゲムネか、なんだ?」

 

...あとで教えてもらったが、カゲムネというのはキリトとリーファが初めて会った場所で、リーファを追っていたサラマンダー隊の隊長だそうだ。

 

「昨日、俺のパーティが全滅したのは知ってると思う」

「ああ」

「その相手、そこにいるスプリガンなんだけど。確かに連れにジンさんと戦ったそいつがいた」

 

Yu「(おうおう。すげえことしてやがんな)」

 

まさか自分の部隊の頭に嘘をつくとは。

 

 

「それに、エスの情報でメイジ隊が追ってたのもその男だ、確か。どうやら撃退されたらしいけど」

 

 

カゲムネというプレイヤーが話し終わると、サラマンダーの頭はカゲムネを見て、軽くうなずいた。

 

「そうか。...そういうことにしておこう」

 

そして次はキリトに向き直って言う。

 

「確かに現状で、スプリガン、ウンディーネとも事を構えるつもりは俺にも領主にもない。この場は引こう。...しかし、お前たちとはいずれもう一度戦うぞ」

Yu「勘弁してほしいけどね」

K「望むところだ」

 

向こうから出された拳に、控えめに拳を当てる。

そのままサラマンダーは、元来た方向に帰って行った。

 

 

Yu「...あぁ~!」

K「なんだうるさいな」

Yu「あいつ強すぎるよ!属性的には俺の方が有利だろうがよ!」

K「いや知らねえよ」

Yu「相棒が辛辣で俺辛い。...というか、こうなったのキリトのせいだよな!?お前が下手に俺をウンディーネ側の大使とか言うから!!」

K「いやぁ、引いてもらうにはそれしかないかなって...サラマンダーにも話が分かる奴がいてよかったじゃないか」

Yu「よくねえよ!危うくこっちは死にかけたんだよ!他人事みたいに言いやがって...」

 

とまぁ、こんな口喧嘩をしちゃいるが、ぶっちゃけ空中戦のデュエルは楽しかった。

 

Le「あんたたち、ほんとムチャクチャだわ」

 

俺らの口喧嘩が止んだのを見て、リーファが声をかけてくる。

 

Yu「こいつはいつもそうだよ」

K「よく言われるよ」

 

乾いた笑いをしていると、リーファの後ろの方から軽い咳払いが聞こえた。

 

「すまんが、状況の説明を頼む...」

 


 

リーファが説明を終えると、シルフ・ケットシーの全員がそろってため息を漏らした。

 

Yu「今のリーファの話を聞いて、ちょっと疑問に思ったことがあるんだけど」

Le「ん?」

Yu「その...シグルドってやつは、なんでスパイなんかやってたんだろうな」

 

そう漏らすと、シルフの領主が入ってきた。

 

「君は、次のアップデートを知っているか?」

Yu「アップデートとスパイに関係が?」

「あぁ。どうやら《転生システム》が実装されるらしい」

 

転生システム。

きっと別の種族に転生できるシステム。

それとスパイ。

 

Yu「なんとなーくわかった。シルフの領主の首を持ってくれば転生させてやるって口か」

「そうだろうな。君は頭が回るな」

Yu「人の闇には多く触れてますから」

 

自虐交じりに返す。

 

K「...プレイヤーの欲を試す陰険なゲームだな、これ」

 

キリトも苦笑をにじませて言う。

 

Yu「デザイナーはヤな性格してんな」

Le/K「ははっ」

 

ひとしきり笑うと、シルフの領主...サクヤさんが隣のケットシーの領主...アリシャ・ルーさんに声をかけた。

 

サクヤ「ルー。確か闇魔法スキルを上げていたな?」

アリシャ「うん。何かに使うの?」

サクヤ「あぁ。シグルドに《月光鏡》を頼む」

アリシャ「いいけど、夜じゃないからあんまり長く持たないヨ?」

サクヤ「構わん、すぐ終わる」

 

そう言うと、アリシャさんは一歩下がって高く澄んだ声でスペルの詠唱を始めた。

詠唱が終わると、周囲が暗くなり、真上から月の光のような、黄色の光が降り注いだ。

その光は、アリシャさんの前に、液体のように溜まっていき、円形の鏡を作った。

そしてその鏡の表面が波打って、別の場所の風景を映し出した。

 

鏡に映ったのは、どこかの一室。

そこにある机に脚を投げ出して座り、腕を頭の後ろに組んで、いかにも偉そうな男。

あれがシグルドというやつなんだろう。

初対面だが、俺は既にそいつのことが嫌いだ。

 

サクヤさんは鏡の前に立つと、一つ呼びかける。

 

サクヤ「シグルド」

 

そう呼ぶと、鏡の向こうのシグルドはまずはっとした顔をして、続いて飛び起きて、サクヤさんと目を合わせて硬直した。

 

「サ...サクヤ...?」

サクヤ「あぁそうだ。残念ながら、まだ生きている」

「な、なぜ...い、いや、会談は...?」

サクヤ「無事に終わりそうだ。条約の調印はこれからだがな。ああそうそう。予期せぬ客があったぞ」

「きゃ、客?」

「ユージーン将軍が、君によろしくと言っていた」

「な...!」

 

スパイがバレて絶句をしているシグルド。

シグルドは目線をサクヤさんから外すと、後ろにいるリーファとキリトを捉えた。

 

「リー...!?」

 

会談の場所にリーファがいるのが不思議だったのだろう。

驚きの声を漏らしてから、端正な顔を歪めながら机をたたいて唸った。

 

「無能なトカゲ共め...で?どうする気だサクヤ?懲罰金か?執政部から追い出すか?だが、軍務を預かる俺がいなければ...」

サクヤ「いや、シルフでいるのが耐えられないのなら、その望みをかなえてやることにした」

 

そう言うと、サクヤさんは手を振って、ウィンドウを出した。

一般プレイヤーと作りが違うから、たぶん領主用のやつなんだろう。

そのうちの一枚のタブを引っ張り、指を滑らせて、向こうのシグルドの前にウィンドウが現れる。

そのウィンドウを見たシグルドが、顔色を変えて叫んだ。

 

「貴様ッ...!正気か!?俺を...この俺を追放するだと!?」

 

追放。

先のシルフでいられないのならという発言と、今の発言が意味するところは、シルフの領地からいなくなることか、それともシルフではなくなるのか。

なんにせよ、もしこれから自分の種族の領主に会うことがあったら、機嫌を損ねないようにしようと思った。

 

サクヤ「そうだ。レネゲイドとして中立域を彷徨え。いずれそこにも新しい楽しみが見つかることを祈っている」

「う...訴えるぞ!権力の不当行使でGMに訴えて...!」

サクヤ「好きにしろ。...さらばだ」

 

サクヤさんが指を滑らせると、鏡の向こう側のシグルドは消えた。

やがて、鏡が砕け散った。

 

サクヤ「私の判断が間違ってたのかは、次の領主投票で問われるだろう。ともかく...礼を言うよ、リーファ。執政部への参加をかたくなに拒み続けた君が救援に来てくれたのはとてもうれしい。それにアリシャ、シルフの内紛のせいで危険にさらしてしまった。すまない」

アリシャ「生きてれば結果オーライだヨ!」

Le「私は何もしてないもの。お礼ならそこのお二人にどうぞ」

 

リーファがこっちに目線を向ける。

釣られて二人の領主もこっちを向く。

 

サクヤ「そういえば...君は一体...」

アリシャ「ねェ君たち?スプリガンのウンディーネの大使ってホントなの?」

 

俺とキリトは目を合わせて、そろって、

 

K/Yu「もちろん嘘だ(です)」

 

と言った。

領主二人は絶句していた。

 

サクヤ「無茶な男たちだな...あの状況でそんな大法螺を吹くとは...」

K「手札がしょぼい時はとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

Yu「俺、被害者。手札がしょぼかったら勝負は降りる人間ですよ」

 

真逆のことを言っているが、俺もキリトもゲーマーなので、自分より強い相手と戦いたいと思うのはゲーマーの性である。

 

アリシャ「おーうそつきにしてはキミ、随分と強いネ?」

 

アリシャさんが俺の方に向かってくる。

 

アリシャ「知ってる?さっきのユージーン将軍はALO最強って言われてるんだヨ?それに正面から勝っちゃうなんて...ウンディーネの秘密兵器?」

Yu「いやいや!俺が勝てたのは単なるまぐれで...それに、ほら!そっちの黒いののほうが俺よりもっと強いですから!」

 

アリシャさん、ボディタッチが激しい。

女性耐性がない俺にとってはSAN値ががりがりと削られていく。

 

...それに、向こうに押し付けようにも、向こうにも先客がいる。

 

サクヤ「ふむ、君も相当に強いということだな。...キリト君と言ったかな?どうかな、個人的興味もあるのでこの後スイルベーンで酒でも...」

K「いやあの...えっと...」

 

キリトはサクヤさんにくっつかれている。

...サクヤさんは、なんというか...あれだ。

いろいろとボリュームがすごい。

そのボリュームがキリトの腕に押し付けられ、形が変わっているように見える。

...キリトには彼女がいるんだからもう少しデレデレしないでほしいものだが。

 

Le「二人ともストップ!二人は...私の...」

 

リーファが俺たちの襟首を引っ張りながら叫ぶ。

しかし、私の、で止まってしまった。

 

Yu「あ~...その...俺もキリトも彼女にアルンまで連れてってもらう約束をしているので...」

 

そう言うと、領主はそろって肩を落とす。

 

サクヤ「アルンに行くのか。物見遊山か?それとも...」

Le「領地を出る...つもりだったけどね。いつになるかわからないけど、きっとスイルベーンに帰るわ」

サクヤ「そうか。ほっとしたよ。必ず帰ってきてくれよ、彼らと一緒に」

アリシャ「途中でうちにも寄ってね、歓迎するヨ!」

 

アリシャさんが言い終わると、サクヤさんが改まって頭を下げた。

 

サクヤ「今回は本当にありがとう、リーファ、キリト君、それにユイト君。今回の件で、何か礼がしたいが...」

Yu「いや、そんな...頭は下げないでください...」

 

それがそう宥めると、リーファが何か思いついたように言った。

 

Le「ねぇ、サクヤ...アリシャさん。今度の同盟って、世界樹攻略のためなんでしょ?」

サクヤ「あぁ、まぁ...究極的にはな。二種族共同で世界樹に挑み、双方ともにアルフになれればよし、そうでなければ次のグランド・クエストも共に挑む...というのが条約の骨子だが」

Le「その攻略に、私たちも参加させてほしいの。それも、出来るだけ早く」

 

そうリーファが言うと、領主たちは顔を見合わせた。

 

サクヤ「同行は構わない。むしろ、こっちから頼みたいほどだよ。しかし、なぜ?」

 

リーファが俺たちの方を見る。

 

K「俺たちがこの世界に来たのは、世界樹の上に行きたいからなんだ。そこにいる人に会うために...」

サクヤ「人?妖精王オベイロンのことか?」

K「いや...リアルで連絡が取れないんだけど...どうしても会わないといけないんだ」

アリシャ「それって運営サイドの人?なんだかミステリアスな話だネ?」

 

と言った後すぐに、アリシャさんの耳と尻尾が垂れ下がる。

 

アリシャ「でも...攻略メンバー全員の装備を整えるのにしばらく時間がかかりそうなんだヨ...一日二日じゃとても...」

Yu「いや、それはそうだ...十人二十人とかそういう規模じゃないだから...あ、そうだ」

 

俺はウィンドウを出して、革袋をオブジェクト化する。

それに習ってキリトも同じことをした。

 

Yu「よかったら、資金の足しにしてください。いらなかったら...まぁ皆で分けてもらって」

 

そう言いながら、サクヤさんに革袋を手渡す。

サクヤさんは少しよろけ、持ち直した。

アリシャさんも、キリトから同じものをもらったらしく、中身の確認をしている。

 

アリシャ「サクヤちゃん、これ...」

サクヤ「あ、あぁ...これは...」

 

出てきたのは青いコイン。

 

サクヤ「十万ユルドミスリル貨...これ全部...?...いいのか、君たち?一等地にちょっとした城が建つぞ?」

Yu「大丈夫です。俺らには必要ないので」

 

そう言うと、領主は自分のウィンドウに革袋を収納した。

 

アリシャ「これだけあれば、目標金額にかなり近づけると思うヨ!」

サクヤ「大至急装備をそろえて、準備ができ次第連絡させてもらう。...しかし、この金額を抱えてフィールドをうろつくのはぞっとしないな。マンダー連中の気が変わる前にケットシー領に引っ込むとしよう」

アリシャ「そうだネー。領主会議の続きは帰ってからだネ」

 

そう言って、アリシャさんは後ろの護衛っぽい人に合図する。

すると、長テーブルだの椅子だの諸々が片付けられていく。

 

サクヤ「何から何まで世話になったな。君たちの希望に極力沿えるよう努力するよ」

Yu「役に立てたなら、幸いです」

Le「連絡、待ってるわ」

 

サクヤさんと握手を交わす。

 

アリシャ「アリガト!また会おうネ!」

 

そう言うと、俺の腕に尻尾を巻き付けて俺の頬に唇を触れさせてきた。

 

 

...これがりんにバレたらどうなるんだろ、俺。

 

 

 

そう思いながら、シルフとケットシーを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了感謝です。

なんだか迷走してる気がする...気のせい?

正直、ライブレポート。読んでてどう感じた?

  • 良かった
  • 伝わらない、だめだった
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