まだ、戦わない
Yu「...っ...?ここは...?」
意識と体のコントロールが戻ってきて、一番最初に見えたのは無機質な廊下だった。
今まで見てきたどの町にもあった豪華な装飾もなく、ただ真っ白い壁と床に覆われた廊下。
Yu「キリト?ユイ?」
二人の姿もなかった。
相棒も、ナビピクシーもいない。
ここに来れるのは一人だけだったのだろうか?
いや、そもそも俺たちプレイヤーが来れる場所ではないのだから、人数制限なんて考えるのは野暮か。
Yu「キリトー?ユイー?」
ユイ「はい、ユイトさん」
Yu「良かった、ユイはいた。キリトは?」
ユイ「パパの座標データが確認できません...」
Yu「...とりあえず、アスナとりんを探しつつ、キリトも探そう」
ユイ「はい。ママの座標は...こっちですね」
ユイの後をついて行く。
座標データだけを辿っているが果たしてたどり着けるのか...。
いや、たどり着けなかったとしたらたどり着くまで探し回るだけだ。
借りを返して、感謝を伝えるために。
...こう思ってはいるが、実際アスナとりんが一緒にいるかなんて確証はない。
鳥籠は二つあったし、その間の距離なんて計り知れない。
ユイ「もうすぐ...すぐそこに...」
エレベーターらしきものに乗ったりしたが、あれが本物のエレベーターだったとしたら、ここはどこなのだろうか?
ここは、現実に限りなく近い気がする。
ゲーム内に創られた、現実に近い場所。
Yu「考えても仕方ない、か」
ユイ「ユイトさん?」
Yu「いや、何でもない。アスナの場所は?」
ユイ「すぐ、そこに...!」
そう言いながらユイは俺の手を取って走り出す。
しかし、走り出して少しした後、行き止まりが俺たちの道を塞いだ。
Yu「行き止まり、だけど」
ユイ「いえ、この奥に、通路が...」
そう言って、ユイは壁をなぞる。
すると、壁に青い光が走り、その壁が消えた。
消えた壁の奥に、通路。
ユイ「...っ!」
手の引きが一層強くなった。
この先にいることを確信しているかのような走りと、引きの強さ。
少し走ってまた壁が現れたが、ユイは止まらず、そのままの速度で走り、左手で壁を押し開いた。
Yu「っ...!?」
赤い光が、俺の視界を染めた。
回復した俺の眼に映ったのは夕日だった。
しかし、夕日が少し低く感じる。
それはそうだ、今いるところの高さがとんでもなく高いのだ。
風が強い。
ちゃんと立っていなければ落ちてしまいそうになる。
Yu「...ッ...ここまで、来たんだ」
足元には、もう白い床はない。
大樹の枝に立っている。
後ろを振り返ると、どこまでも伸びる大樹の幹。
そして、無数に伸びる枝。
Yu「...空中都市なんて、存在しないぞ」
道中の白い通路が空中都市だったなってオチであれば、クソゲーもいいところだ。
というかそもそも、ここに入るまでのゲートがシステムロックな時点で、プレイヤーの侵入は想定されていないだろう。
空中都市もなければ、そこにいるはずの妖精王もいない。
なら、妖精王に謁見して上級妖精に転生できるなんてこと、大嘘だ。
Yu「ふざけんなよ...こんなクソゲー....!」
そう言うと同時に、握られている手に力が籠る。
Yu「...悪い、行こうか」
ゲームに文句を言ってもしょうがない。
というか、元よりそんなつもりは毛頭ない。
俺は、りんを助けるためにここにいる。
いくつもの小道を通り、木の葉群を潜り抜けた先に、きらりと光るものが見えた。
金色の何か。
きっと、俺らが求めていたもの。
Yu「あっ...!」
見つけた。
鳥籠だ。
鳥を閉じ込めることもできないような、大きすぎる鳥籠。
エギルさんに見せてもらった、鳥籠の中身。
Yu「っ...!行くぞ...!」
俺とユイは一気に鳥籠までの道を行った。
その音に反応してか、鳥籠の中の人影がさっと顔を上げる。
そして、こちらを見たように感じた。
Yu「アスナ、りん...」
ユイ「ママ...!ママー!」
俺とユイは鳥籠までの道を走る。
ユイが右手を振り上げると、右手が青く光る。
その手を振り払うと、鳥籠のドアが吹き飛んだ。
そのままの速度で、ユイはアスナに抱き付く。
As「ユイちゃん!!」
Yu「...っ...」
母子の感動を見ていて危うく泣きそうになったが、俺の本題はこっちじゃない。
視線を反対側に向けると、黒い髪をを揺らした妖精がこちらを見つめている。
Yu「...悪い、随分と遅くなった」
R「ううん。...ずっと、信じてたよ...っ」
崩れる彼女の体を抱きとめ、彼女の涙を拭いながら、俺はしばらく、この時間を嚙み締めた。
妖精王戦に時間に割きたいので、ここで一回切ります。
正直、ライブレポート。読んでてどう感じた?
-
良かった
-
伝わらない、だめだった