ロゼリアート・オンライン   作:ユイトアクエリア

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ようやくここまで行くことができた。
今まで読んでくださった皆様には感謝しかないです、本当にありがとうございます。
それでは、どうぞ。


44話 全ての終わり(始まり)

Yu「っ...はぁ...っ...!」

 

アイツを倒すために振り絞った力が、すべて消え失せた。

体一つ満足に動かせず、地に全身をつけたまま、何もできずにいた。

視線だけをどうにか動かして、アスナたちの方を見る。

キリトが彼女らを縛り付けていた鎖を切り、キリトはアスナと抱擁を交わしている。

 

Yu「ぁ...俺も、いかな、きゃ」

 

どうにか体を持ち上げて、なんとかりんの元に行く。

 

R「あっ...ユイトさん...わっ...!」

Yu「...っはは...だっせぇ、俺」

 

力が抜けて、りんにもたれかかっている俺。

 

R「そんなことは、ないです。ユイトさんは、私たちを、守ってくれました」

Yu「...守って、ないじゃん...!りんも、アスナも...あんなに...!...っ?」

R「自分を責めないでください。私もアスナさんも、無事ですから...」

Yu「...っ...!」

 

りんの言葉で、今まで溜まってたものが、目から滴って吐き出されて行く。

どうにか嗚咽だけは押さえて、声は殺した。

 

R「大丈夫です。あなたは、よく頑張りましたから...」

Yu「...これ、以上...甘やかさないでくれ...これ以上、りんの前で...泣きたくない...」

 

頭を撫でられて、耳元で甘やかされているのに、泣かない男はいないと思う。

 

K「あー...お二人さん、そろそろいいか?」

Yu「...ん、悪い...ありがと、りん。もう、大丈夫」

 

キリトに声を掛けられ、ようやくりんから離れられた。

 

K「とりあえず、帰ろうか」

Yu「あぁ。...けど、俺らって自分の意思で帰れるのか?」

K「そこは、俺の裏技だ。...と言うか、たぶんユイトは帰れるぞ」

 

そう言われて、左手を振ると、慣れ親しんだウィンドウが現れた。

ログアウトボタンを探すと、ちゃんと光っている。

 

Yu「あ、マジだ。...りんがログアウトしたの見てから、俺も帰るよ」

K「了解。...じゃあまずは、りんりんさんから」

R「はい...」

Yu「りんがログアウトしたら、俺もすぐ落ちる。すぐに、会いに行く」

R「はい...!待って、ます...」

 

りんの腕に、キリトの青い指先が触れると、りんは青い光に包まれ、足先から消えていった。

 

Yu「じゃあ、キリト、アスナ。また、後で...になるのかな?」

K「多分な。アスナとりんりんさんの病院一緒だし、たぶんかち合いそう」

As「そうだったら、後でユイトくんも来てね」

Yu「...了解」

 

左手を振り、ウィンドウを出す。

出てきたログアウトボタンを押す。

 

Yu「じゃあ、後で」

K「あぁ」

As「うん」

 


 

唯斗「...ん...?」

 

多少の眩暈を覚えながら、ナーヴギアを外す。

 

唯斗「何してんだ、結奈」

 

俺の布団の上に乗ってたのは、義妹の結奈だった。

 

結奈「だ、だって...お兄ちゃん帰ってこないし...」

唯斗「悪かったよ、ゲーマーの兄貴で」

結奈「それは知ってるから大丈夫だよ...えっと...好きな人は、助けられたの?」

唯斗「うん...今からその人のとこ行ってくる」

結奈「ん、行ってらっしゃい」

 

...本当にいい妹だ。

とりあえず外は寒そうなので、アウターを着て外に出る。

寒そうって言ったけど、訂正。

絶対に寒い。

だって、雪降ってるし。

 


 

唯斗「はぁ...さっむ」

 

病院までの道のりを小走りで行く。

俺はまだ、あの世界でりんを助けたことを現実と思えていない。

いや、現実ではないからおおむね間違っていない。

正確には、事実だと思っていない。

俺はただ偽りの妖精王と切り合ってただけで、束縛を開放したのも、ログアウトさせたのもキリトだ。

正直、俺なんかが会いに行っていいものかとも思う。

 

唯斗「...関係ねえよ、そんなこと」

 

俺が会いたいから会いに行くんだ。

そこに理由なんか必要あるか。

そう自分を騙し、病院への道を急ぐ。

このスピードで行けば、ギリギリ面会ぐらいはできるだろう。

そう考えているうちに、病院が見えてきた。

少し駆け足で、敷地内へ急ぐ。

正門を潜り抜け、さらにスピードを上げようとした俺は、なぜかわからないが足を止めた。

何か、寒気がした。

この先、俺のちょうど真横に存在する白いバンを超え、一歩でも踏み出せばやばいと、体がそう忠告していた。

俺が止まると、

 

「あれ~?なんでバレたのかなぁ...あと、来るのが遅いねぇ...僕が風邪ひいちゃったらどうするんだい?」

 

と、声が聞こえ、一人の男がバンの影から出てきた。

唯斗「あ、あんたは...オベイロン...?」

 

目の前に現れた男は、髪が乱れ、ネクタイが解けかけ、その解けているシャツからは何かの跡が浮かんでいる。

それに、この声。

あの樹の上で聞いた声と同じ。

ならば、今ここにいるこいつはオベイロンで、須郷という人間なんだろう。

 

須郷「そうだねぇ...僕はオベイロンだったよ...お前達ガキのせいでそうではなくなったけどねぇ...!」

 

そう言うと、須郷はポケットからカプセル入りの瓶を取り出し、そのカプセルを口に入れると、かみ砕きながら言った。

 

須郷「まだ痛覚が消えないよ...ま、いい薬があるから構わないけどさ...」

唯斗「あんた、まだなんか企んでんのか」

須郷「当然さ!まぁ、もうレクトは使えないけどね。僕はアメリカに行くよ。僕を欲しいって企業はたくさんある、今までの実験で蓄積したデータだってある、あれを使って研究を完成させ、僕は...現実世界の神になる!...あぁ、まぁ、片付けることはいろいろとあるけどね。とりあえず、君は殺すよ、ユイトくん」

 

そう言い終わるや否や、銀色の物体を持ってこちらに向かってくる。

当たればまずいことになると思い、咄嗟に身を捻って回避したが、バランスを崩したせいで、腕がその物体に掠る。

 

唯斗「...?...っ」

 

その物体に当たった場所が熱い。

見ると、その部分のアウターが千切れている。

いや、切られている。

その部分から何かが流れている感覚。

これは、血だ。

とすれば、須郷が持ってるその物体は...。

 

唯斗「あんた、病院になんてもん持ち込んでんだ...!」

須郷「ほら、立てよ」

 

俺の脇腹あたりに、須郷の尖った靴が蹴りこまれる。

蹴られた部分と、切られた腕が痛覚を送ってくる。

それより、こいつは殺すと言っていた。

須郷の右手に握られているのは、大ぶりのナイフ。

こいつは、これで俺を刺し殺すつもりだろうか。

それとも、首を搔き切って殺すつもりなのか。

前者なら簡単だ、心臓を貫けばそれで終わり。

後者は難しいが、俺を抑え込めばどうにかなる。

故に、この状態は非常にまずい。

 

須郷「ほら、立てよ、立ってみろよ。お前、あっち側で散々調子に乗ってたな?2年の結晶だとか?魔法を掴んだだとか?わかってんのか?お前みたいなゲームしか能のないガキは、本当の力なんて何も持っちゃいない、すべてにおいて劣ったクズなんだよ。なのに...僕の、この僕の足を引っ張りやがって...その罪に対する罰は、当然死だ。死以外ありえない!」

 

須郷が俺の腹の上に足を乗せる。

継続的に、腹と腕から痛覚が送られてくる。

目線をそいつの足から顔の方に移すと、右手を大きく振りかぶっていた。

その手の中には、あのナイフが。

 

唯斗「っ...!!」

 

無意味と分かっていながらも、反射的に目を閉じた。

すると、耳元で金属が当たる音がした。

それと同時に、頬を切られたのか、熱を帯びている。

そっちの方を見ると、ナイフがコンクリートを数ミリ抉っている。

そんな威力で降り下ろされたら、俺の顔はどうなってしまっていたのか。

そんなことを考えている間にも、須郷の右腕はもうさっきの場所にはない。

また、大きく振りかぶっている。

 

須郷「あれ、おかしいな...ちゃんと狙ったはずなんだけど...まぁ、いいや」

 

ナイフの切っ先が、さっきの衝撃で少し欠けている。

そんな些細なことはどうでもいい。

ここらは逃げる術を探さなければ。

そう思ったとき、ふと腹の重みが消えてることに気付いた。

須郷の足が俺の腹の横に移動している。

チャンスは今しかない。

 

須郷「死ね、小僧ぉぉぉ!!!」

 

ナイフが下りてくる。

人間は死の狭間で走馬灯を見るという。

一説によると、今までの経験から、どうにかその死を回避する方法を脳内検索しているとのことだ。

なんでもいい、この状況を打破する何か。

方法は...!

 

 

 

ーー頭の中に、無意味な(浮遊城:アインクラッドにいた時の)映像が流れてくる。

内容は、最近押し倒してくるエネミーが多いから、それの対処法を考えようというものだった。

そう言えば俺も、それに参加して。

なんか有効打を見つけて。

そんな会話が、あったような...

 

 

 

 

唯斗「...!!」

須郷「ぐっ!...何!?」

 

俺は右足を思いっきり叩きつけ、その反動で体を浮かせながら、左足で須郷の背中に蹴りを入れた。

 

右足は痛むが、この程度、動じるほどじゃない。

対して、俺が避けたことに対し、動揺半分、怒り半分で表情でこちらを見つめる須郷。

 

唯斗「ほんとの力は何も持ってない...それはそうだよ。俺はまだ学生だし、その手の習い事もしてない。けどさ、あんたはどうなんだよ、須郷さん。あんたは、ナイフ術の訓練でも受けてるのか」

須郷「はっ!うるさいねぇ!ガキが僕に説教なんかしてんじゃないよぉ!!」

唯斗「論点ずらすなよ...この、クズ野郎っ!!!」

 

俺は怒りのまま、須郷に突撃し、ナイフを持ってる腕ごと掴み、そのまま押し倒した。

ショックでナイフを手放した隙に、それを掴んで突きつける。

 

須郷「ひぃっ...!」

 

形勢が逆転したことで、須郷から余裕が消え、代わりに恐怖が現れた。

ナイフをちゃんと握り、そのまま奴の首まで持っていく。

 

須郷「ヒィッ!!ィィィ!!ヒィィィィ!!!」

 

奴の奇声で、自分が今何をしようとしているかを理解した。

このままこいつの首を切って殺してしまっては、俺はこいつと一緒、あるいはそれ以下になる。

正当防衛という言葉もあるが、別に俺は瀕死になったわけでもない。

殺すのは過剰防衛になって、それは罪になる。

それだけは、越えてはいけない一線だから。

 

須郷「ヒィィィィィィ...」

 

俺の下で、奇声が止んだ。

顔を叩いてみても、反応がない。

あまりのショックで気を失ったらしい。

これ以上乗りかかる理由もないので、とりあえず降りて、ナイフをバンの上に置く。

奴の首からネクタイを取り、手首同士を交差させ、その状態で縛る。

病院側から見えるように寝かせ、一息つく。

この時間ではもう面会の時間は過ぎてしまっただろうか。

そう思ったとき、後ろから足音がした。

 

和人「...唯斗」

唯斗「何だ、和人か」

 

そういえば、こいつも面会に行くと言っていたか。

 

和人「お前、その傷...」

唯斗「...須郷に、やられた」

和人「っ!?大丈夫なのか!?」

唯斗「脅したら気失って倒れたよ。そこで寝てる」

 

バンの方を指さすと、和人は顔を歪めた。

 

唯斗「...とどめさそうとか、考えんじゃねえぞ」

和人「...いや、バレたか」

唯斗「二年一緒にいれば、わかるさ。憎い奴を殺したい衝動ぐらい、抑えろよ」

和人「わかってるよ...」

唯斗「さ、二人を迎えに行こうぜ。今頃起きて待ってるよ」

 

そう言って、自動ドアをくぐる。

 

唯斗「あの...まだ面会って、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。何号室でしょうか?」

 

この場面で、頬の傷に触れられないのは、ありがたかった。

 


 

エレベーターを一番上のフロアで降り、和人と途中まで同じ道を行く。

 

唯斗「アスナは...そっちだっけ」

和人「あぁ。...またあとで、になるのか?」

唯斗「今日は遅いし、リハビリの時にでも見学しに行くよ」

和人「わかった。アスナにも言っとくよ」

 

そう言って、ちょうど現れた分かれ道を、俺は左に、和人は右に。

 

病院内は走ることを禁止されているが、今くらいは目を瞑ってほしい。

早く、一秒でも早く。

彼女の元にたどり着きたい。

 

視線を名前のプレートのところで固定しながら、小走りで抜けていく。

 

唯斗「...ここだ」

 

『白金燐子』と書かれたドアの前で止まる。

ドアの右側に設置されたスリットにカードを通し、ドアのロックを解除する。

 

アンロック状態であることを意味する緑色のランプが光ると、ドアが開く。

何かの花の香りがする。

この香りは、確か薔薇だったか。

嗅いだことは数えるぐらいしかないが、なぜかそう思った。

 

室内の照明はすでに消え、雪の名残で白い光が外の窓から差し込んでいる。

その部屋の中を、一歩一歩、地面を踏みしめるようして歩く。

 

カーテンの目の前までたどり着いた。

 

けれど、ここから腕が伸びない。

 

カーテンを開けて、なおナーヴギアを被っている姿を見るのが、何よりも怖い。

何度も見てきたその光景を振り払い、腕を伸ばしてカーテンを掴む。

そのまま、一気に開けた。

 

 

 

 

 

唯斗「っ...あ...」

 

上体を起こし、濃い青のヘッドセットを膝に乗せ、外を眺める少女。

今まで望んでいた光景が、今目の前に広がっている。

 

唯斗「...りん」

 

小さく、囁きかける。

黒髪の少女はその言葉に反応して肩を震わせ、続いてこちらにゆっくり振り返る。

まだ、どこにも焦点が合ってないような眼が、俺を捉える。

そして、彼女の口が小さく震える。

 

燐子「ゆいと、さん」

 

あの世界でずっと聞いた、けど響きの違う声が聞こえる。

左腕をこちらに伸ばしているが、その腕は細く、弱々しい。

その手を支えるように腕を持ち、そのままりんの方へ歩く。

 

唯斗「全部、全部、終わったよ...」

燐子「はい...あまり、聞こえないけど...ユイトさんのこと、わかります」

 

右手が俺の頬に触れ、指が俺の傷の上を往復する。

 

燐子「終わったん、ですね...全部...」

 

弱い力で、抱きとめてくる彼女に従って、りんの肩口に顔を埋める。

抑える間もなく、涙がこぼれる。

止まらないそれを、どうにか拭って、りんの顔を真正面で見つめる。

 

唯斗「自己紹介、しておこう?」

燐子「...はい」

 

息を吐いて、緊張を無くす。

 

唯斗「...俺から。蒼闇、唯斗」

燐子「私、ですね。白金、燐子です」

 

どっちからともなく笑いかけ、互いを抱きしめ合う。

 

唯斗「お帰り、燐子」

燐子「はい...!ただいま、唯斗くん...!」

 

目を閉じると、金の剣を背中に吊った男と、白い剣を腰に吊った女が、手をつなぎ、向こうへ歩いて行った。

 

唯斗「...これで、終わった。何も、かも」

燐子「終わって、無いですよ...?ここから、始めるんですから」

唯斗「あぁ、そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前書きでも本編でもこれで終わりみたいな感じ出したけどね、まだ一話だけあるの。ごめんね。

正直、ライブレポート。読んでてどう感じた?

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