BoB予選から一夜明け、いつものようにRoseliaメンバーと共にライブハウスに向かい、練習を見学していた時。
少し長めの休憩の時に、リサ先輩が悪そうな顔をしながら近づいてきて、少しヤな予感がした。
リサ「ねぇユイト?最近ALOやってないよね?どうしたの?」
馬鹿正直に「死ぬかもしれないVRゲームに潜ってます」とは言えず、適当に答える。
唯斗「あー......えっと、最近課題がたまり過ぎちゃってて......」
嘘ではない。
けれど、すぐ消化できるほどの量だ。
リサ「ふーん?その割にはここに来る時間はあるんだね?」
唯斗「いやその、これは日課ですし......」
......少しだけ、悲しくなったのは内緒にしておこう。
リサ「じゃあ、これはどういう説明をするのかな?」
そう言って先輩が見せてきた携帯の画面には、『第3回《バレット・オブ・バレッツ》本大会出場プレイヤー三十人決まる』と書かれた「MMOトゥモロー」のニュース画面。
先輩が指を指しているのはFブロックのTOP2が載っている。
1位には「Kirito」の文字、そして2位に「Yuito」の文字列。
唯斗「......あ~......同じ名前の人ですね~......いるんですねぇ、そういう人~......」
目を右往左往させながら事実の捻じ曲げを試みる。
あこ「ユイ兄、嘘下手......」
リサ「これは、ユイトだよね?」
再度詰められる。
口ごもって再度事実の歪曲を試みる。
唯斗「結わえる都と書いてゆいとかもしれないですし......一概には言え......」
後ろから殺気。
恐る恐る振り返ると、飲み物を買いに出ていった友希那先輩と紗夜先輩が立っていた。
友希那「仲間に何も知らせず、一人で何をしているのかしら?」
紗夜「それが命の危険があるゲームだなんて、知ったら悲しむでしょうね?」
と、周りを見ると「噓でしょ?」みたいな顔をして囲まれていた。
友希那「それは、どういうことかしら?」
リサ「え、ほんと?」
あこ「えぇ~!?」
紗夜「ちゃんと、説明しましょう」
唯斗「......はい」
流石に先輩相手に「先に説明しといてくれ」とは言えず、自力で説明を始めた。
リサ「うわぁ......それ、ホントに大丈夫?」
唯斗「病院からダイブして、一応心拍も計測してもらっているので、平気だと思います......多分」
説明を終えて、俺がそう返すと、友希那先輩が苦い顔をして口を開いた。
友希那「それは......必ずユイトがやらなきゃいけないことなのかしら?」
唯斗「え?」
友希那先輩にしては弱気な意見だ。
友希那「もしかしたら死ぬかもしれないのでしょう?」
その後に続く言葉を聞きたくなくて、俺は食い気味に謝罪をねじ込んだ。
唯斗「ごめんなさい、先輩。これは、俺たちにしかできないことです。俺たちが、解決しなきゃ、いけないんです」
そう言い切ると、後ろから肩に手を置かれる。
燐子「友希那さん、唯斗君を、信じて、あげてください」
燐子先輩だった。
友希那「......燐子が言うなら、信じるわ。けれど」
言葉を切って、俺の目を真っすぐに見つめる先輩。
友希那「絶対に、無事に帰ってきなさい。燐子を心配させるなんて、以ての外よ。そして、貴方もいて『Roselia』であることを忘れないように」
唯斗「......はい。必ず、戻ってきます」
という会話が、3時間前。
今日はBoB本戦。
時刻は午後5時。
本戦開始は8時からであるが、早めに入ってエントリーだの射撃練だのやってた方が精神衛生上よろしいということで、今現在病院にいる。
指定された病室に入ると、昨日と同じ安岐ナースが病室の椅子に座り、本を読んでいた。
そして、先客。
先にアミュスフィアを被ってGGOにダイブしているであろう和人。
唯斗「こんにちは。安岐さん」
安岐「や、君も早いね。桐ヶ谷君も随分と早く来たよ」
ちらっと和人の方を見て言う。
唯斗「あいつはあれで色々心配症ですから。まぁ、俺もですけど」
安岐「大会は8時からだって言ってたね。モニターはそこからでいい?」
唯斗「はい。ホントすみません」
安岐「大丈夫。いくらでも付き合っちゃうよ」
謝ると、ケロっと言い返してくる。
ダイブ前の精神統一として、軽く深呼吸。
ぶっちゃけ、
その9割は、元々心臓に持病を持ってて、その時にちょうど死期だった、というとんでもなく不謹慎な考えで。
残りの一割は、昨日の和人と会話をしながら考えたことだ。
土曜日、BoB予選後。
病院からの帰り道、和人は異様に暗かった。
唯斗「なぁ、和人。どうした?そんなに暗い顔して」
和人「......SAO
俺は、一瞬だけ安堵した。
けれど、それなら和人の暗さが説明できないと、それをかき消して訪ねた。
唯斗「......《ラフコフ》の、生き残りか?」
和人「あぁ。そして、たぶんそいつが死銃だ」
サバイバーにして、
それが、死銃の正体。
唯斗「なんでわかったんだ、そいつがサバイバーだって」
和人「腕の内側に、あのマークをつけてた」
あのマークとは、棺桶から腕の骨が見えているようなデザインの、不気味なエンブレムのことだ。
俺は、半ば無意識的に口を開いた。
唯斗「......まだ、殺人を楽しんでるのかもな」
それを聞いた瞬間に、和人は俺に掴みかかったが、
和人「そんなこと......!あり得る、のかもな」
そう言って、俺から手を離した。
唯斗「悪い、配慮がなかった」
和人「いや、俺も。引っかいたりしてないか?」
唯斗「あぁ、平気だ。けど、その元気があるなら、明日の本選も平気そうだな」
唇を歪めてそう言うと、和人も同じく薄く笑って、
和人「あぁ。......約束を、果たさなきゃいけないからな」
と、決意を固めた顔でそう言った。
唯斗「そうだな。死銃倒して、ちゃんと借り、返そうぜ」
そう言って拳を合わせ、お互いの帰路に着いた。
唯斗「はぁ......よし」
ベッドに横たわり、アミュスフィアを被る。
安岐「おや、桐ヶ谷君とは違って悩みとかはなさそうだね?」
唯斗「もちろんあります。けど、こんなところでいちいち悩んでたら、出来ることもできなくなるので」
俺の声色を見てか、それ以上の追及はしてこなかった。
安岐「うんうん。でも、ため込みすぎには注意してね?たまには美人ナースを頼ってくれてもいいんだよ?」
そうやってウインクされると、年上耐性があまりない俺にはどうしていいかわからない。
......嘘だわ、いつも関わってる過半数先輩だった。
まぁ、いいか。
唯斗「あはは......その時は、よろしくお願いします」
そういい、肩の力を抜いて、ベッドに全体重をかける。
唯斗「じゃあ、行ってきます。ーーリンク・スタート!!」
安岐「はいな、行ってらっしゃい。《聖剣使い》さん」
ーー今、何て?
と聞こうとしても、既に俺の意識はGGOに吸い込まれて、聞けなかった。
正直、ライブレポート。読んでてどう感じた?
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良かった
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伝わらない、だめだった