東方光巨人〜夕映えの戦士が幻想入り〜   作:ナウディ

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第1話 〜目覚める脅威〜

    

 

 

 

   〜???〜

 

 

 

 

「ん……うぅ」

 

  

 

 

 男が目を覚ます。視界の眩しさに一瞬目を瞑るも、すぐに慣れた為か、もう一度目を開ける。するとそこには見知らぬ天井が広がっていた。

 

 

「ここは……俺は一体何を……?」

 

 彼はまだ痛む頭を抱えながら記憶を整理していく。まだ意識がはっきりとはしなかったが、己の違和感に気づいた。

男の体には傷を覆うための包帯が何重にも巻かれていたのだ。

 

(……!そうか、思い出したぞ。俺は月面でベムスターと戦っていた筈だ。奴の自爆を防ごうとウルトラバーリヤを使ったことまで覚えている……)

 

 

 

 そう、彼がこの物語の主人公、ウルトラマンジャック。かつて迫り来る怪獣や宇宙人に勇敢に戦い抜いた『帰ってきたウルトラマン』その人である。

 

(この包帯は……誰かが介抱してくれたのだろうか?それにこの部屋……ここは地球……?)

 

 キョロキョロと辺りを見廻していると襖が開けられる音がする。音のした方へ目をやると1人の少女が立っていた。

 

「あ………!?」

 

 彼と目が合い少女は声を上げる。年は10代後半だろうか。黒い髪でかつての水兵が着用していたであろうセーラー服を着こなし、手には底の抜けた柄杓を持っている。

 

「お兄さん起きたんだ!いやぁ、ビックリしたよ。朝方に星が血塗れのアンタを運んできたんだから!」

 

「え……えっと、キミは…?」

 

「ちょっと待っててね!すぐに聖と星を呼んでくるから!」

 

「あ…ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

 ジャックが言い終わる前に少女はそそくさと部屋から出て行ってしまう。遠ざかる足音を聞きながら彼はため息をついた。

 

(彼女の格好やこの部屋を見る限り、ここは……やはり地球、それも日本のようだ)

 

 

 再び孤独と化した空間でジャックは物思いに耽る。

 

(あのベムスターは一体どうなったのだろうか……それにあの時聞えた悍しい声…)

 

 月面で対峙した宇宙大怪獣と、その背後で怪しく囁く謎の声。彼は声の主に一つの心当たりがあった。

 

(もしかすると奴が再び………確かにメビウスが奴を倒してから幾らか年月は経っているが……ん?)

 

 

 ふと考えを巡らせていた彼の思考がストップする。巻かれた包帯の所為かと思っていたが、それ以外にもっと違和感の感じるものを目撃した。

 

 

(こ……この手は、俺の物じゃない!?)

 

 

 彼自身がこの違和感に驚くのは無理もないだろう。この星にやってきた時、1人の地球人と一体化した彼が地球で過ごす場合は、その地球人が本来この星で過ごした年月に相応しい体が無意識に出る筈だった。

しかし今はそんな事はなく、瞳に映る右手は正しく逞しい若者の手であった。

 

(まさか俺《彼》と分離した……?いや、それはない。俺がちゃんとウルトラの星で過ごした記憶も、地球人として綴った思い出も残っている。それなら何故こんな身体に…?)

 

 

 

 色々と思案するが考えが纏まらない。そんな折、この部屋に足音が近づいて来るのを耳にする。

 

「あ……!目が覚めたんですね!?良かったぁ…」

 

 

 金髪の少女『寅丸星』は負傷者の顔を見ると、ひどく安心して見せた。

 

 

「星が貴方を運んできたときは驚きました…。お医者様からはこれだけの出血なのに生きているなんて相当の奇跡だと言われたんですよ?」

 

   

 

 

 星に続く様に金と紫色のウェーブが掛かった女性が笑みを浮かべる。

 

 

「そうか……貴女達が俺をここに運んでくれたのですね」

 

「正確に申しますと、そこに居る星ともう1人がですが……あぁ、申し遅れましたね」

 

 女性はハッと気が付くと姿勢を正して自己紹介をする。

 

「私はこの命蓮寺の和尚『聖白蓮』。彼女は私の弟子にして毘沙門天代理の『寅丸星』です」

 

「は、はい!ご紹介に預かりました『寅丸星」です!この命蓮寺で毘沙門天の代理を勤めさせて頂いてます!」

 

 少女は顔を赤くしながら恥ずかしそうに自己紹介した。

 

「君が俺を助けてくれたのか………ありがとう、君は命の恩人だ」

 

「いや、そんな……恐れ多いです!私が恩人だなんて……人間にとって幻想郷は物騒な所ですから、最初に発見したのが私達で良かったです」

 

 星は照れ臭そうに頭をかいた。

 

「幻想郷?」

 

「ええ、博麗大結界と呼ばれる結界によって外界と隔たれたこの地を私達はそう呼んでいます」

 

 

 

  幻想郷

 

 妖怪の賢者『八雲紫』が築き上げた理想郷。外の世界とは博麗第結界で遮断されており、妖怪、妖精、神といった外の世界ではすでに忘れ去られた存在の安住の地となっている。

 

 

「そんな世界があったなんて…」

 

「勿論人里に行けば人間の方も住んでいます。貴方の様に時折外の世界の住人が迷い込んでくる事もあるんですよ」

 

 

(……八雲紫。その人物が俺をこの世界へ連れてきたのか?てっきり()()が誘い込んだと思っていたが…)

 

 

 思案していると聖がパンと手を叩き話しかけてくる。

 

「あら、私としたことが…貴方のお名前、まだ聞いていませんでしたね?」

 

「あ……そういえばそうだった。俺は……」

 

 

 偽名を使おうかと一瞬迷う。しかし親切にしてくれた聖達に出来るだけウソは付きたくないと思い、今は精神をも一体化した地球人の名を名乗った。

 

 

 

 

 

 

「………俺の名前は郷秀樹…郷と呼んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

  その日の昼過ぎごろ、郷は妙蓮寺の住人達への挨拶を済ませた後、縁側で聖達から聞いた情報を基に自分が置かれた状況を整理する。

 

 

 

(幻想郷は忘れ去られた物の行き着く場所と言っていたか……そうなれば自ずと俺の姿が郷秀樹でないのも筋が通る)

 

 

 そう言って郷は自分の手に目をやった。

 

(おそらくこの姿は俺本来のものなのだろう……人工太陽《プラズマスパーク》ができる前の、まだこの星の住人と姿が変わらなかった頃の)

 

 

 

 

 そう、彼の故郷であるウルトラの星はかつて地球人と同じ様な姿をしていた。発達した科学技術を持ち平和な日々を過ごしていたが、M78星雲の恒星が爆発。星は崩壊の危機を迎えていた。

そこでウルトラマンキングを始めとしたウルトラの賢者達の手によって人工太陽が開発され星の危機は回避される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしそれは彼らの運命の始まりにすぎなかった。

 

強力すぎたディファレーター光線の影響で星の住人の姿は変化し、超人の姿、今のウルトラ戦士の始祖といえる存在になった。強大な力を持った彼らは、宇宙の平和のためにこの力を捧げたいと願ったのだ。それが光の戦士達のオリジンである。

 

 

 

 

 

(超人《ウルトラマン》とならなかった自分か…)

 

 

 

 

 故郷での平穏な日々も悪くなかったのかもしれない。 

 

 

 

 

 

(しかし今の姿にならなかったらこの星に来る事もなかったんだろうな…)

 

 

 

 不思議な巡り合わせだと郷は苦笑してみせる。それでも彼は自分と地球を引き合わせたこの力に感謝していた。

郷が色々と思案していると1人の少女が話しかけてくる。

 

 

 

 

「あ、郷さん!こんな所にいたんだ!」

 

「君は……確か村紗だったね」

 

「早速名前を覚えてくれたね!この私こそが妙蓮寺の船幽霊にして星蓮船の船長、キャプテンムラサだよ!」

 

 

 そう言って命蓮寺の住人『村紗水蜜』はカラカラと笑って見せる。

 

「星が連れてきた時は傷だらけで心配だったけど、思ったより元気そうじゃないか!」

 

「皆のおかげだよ。それで、どうしたんだい?」

 

「そろそろ夕飯の準備をしようと思ってね。食べられないものがあったら聞いとこうと思ったのさ。ほら、外の世界の人はアレルギーとか色々デリケートじゃない?」

 

 なるほど、確かに昔に比べて現代人はアレルギー持ちが多いのだろう。郷はムラサの親切に感謝した。

 

「いや、特にはない。大丈夫だよ」

 

「それなら大丈夫だね。ああそれと、好物も聞いておこうかな」

 

 

 

「好物か……おはぎかな?」

 

 

 

 

 そう答えるとムラサは少し意外そうな顔をしてみせた。

 

「なんだ郷さん。そんな顔して意外と甘党なんだね!」

 

 ムラサは可笑しそうに笑う。郷は少し赤面するが、かつて弟が地球の守りについた時に、宇宙人が自分に化けたことがあった。その時に星人の偽装を見破ってみせた原因は意外にもおはぎだったのだ。

 

「ごめんごめん!お詫びにおはぎの美味しいお店、紹介してあげるからさ!」

 

 

 

 それからも他愛のない会話が続く。思いがけない形ではあったが、愛する星を再び訪れる事ができた喜びを彼は噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ズン…

 

 

「…あれ?ねえ郷さん、今揺れなかった?」

 

 

「あぁ、今確かに揺れた様な……」

 

 

 

     ズン…

 

 

                   ズン…

 

 

 

「わわ⁈なに地震⁈」

 

 

 

 寺全体が揺れた為か、命蓮寺の面々も様子を見にきた。

 

 

「ムラサ!郷さん!大丈夫ですか⁈」

 

「ああ、俺たちは大丈夫だが……」

 

 

 そう言ってる間にまるで大地震が起きたかの様に地面の揺れが大きくなってゆく。すると住人の1人である『ナズーリン』がある方向を指差しその場にいた全員に質問した。

 

「な、なぁ聖…ご主人。あんな所に山なんてあっただろうか?」

 

「いえ…というよりあれは…」

 

「地面が隆起している…?」

 

 

 

 幻想郷にあんな物は存在しなかったはず……皆が疑問に思っていると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

      

 

     『ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

 

 

     

 

 

  その咆哮は聞く者すべての耳を劈き大地を震わせた。

 

 

 

「な………なに……あれ?」

 

 

 ムラサの言葉に全員が空を仰ぐ。

 

 

その姿は山の如き大きさで黒い体、かつてこの星を支配した恐竜を思わせるが、頭には一本の大きな角が生えていた。

 

 

 

 

 

  

 

 

「巨大な……妖怪……⁈」

 

 

「……いや違う」

 

 

 

 星の発した言葉を否定する。全員が郷の方を見やると、彼は確信を込めて言った。

 

 

 

 

「コイツは………怪獣だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

   凶暴怪獣  アーストロン

 

 それは郷が光の巨人と一体化して初めて戦った怪獣。強靭な皮膚と骨格を持ち、その性格は獰猛。かつて朝霧山に出現し、ジャックと死闘を繰り広げた。

 

 

 

 

 

 

「アーストロン…!」

 

 

「怪獣と言っていたね……郷、あの巨大生物を知ってるのかい?」

 

 

 郷の驚愕に気づいたナズーリンが問う。

 

 

 

 

「人間の人知を超えた巨大な存在、俺たちは怪獣と呼んできた」

 

 

 例外的な存在もいるが、基本的には生物の枠組みを超えた災害、厄災とも取れる巨大生物を人々は畏れを込めてそう呼ばれている。

 

 

 

「ね、ねえ。その怪獣っていうの、人里の方向に向かって来てない…?」

 

 

 

 アーストロンの進行方向、そこには既にパニック状態とかした人里があった。

 

 

もし奴が人里に入り込んだら……

 

 

 

「くッ!」

 

 

「聖、一体どこへ⁈」

 

 

「なんとかあの生物が人里に入るのをを食い止めてみます!星達は里の方々の避難を!」

 

 

 

 そう言って聖はアーストロン目掛けて飛んでいく。

 

 

 

「では私達は里の人たちを命蓮寺に!」

 

 

 

「待ってくれ!俺にも何か手伝わせてくれ」

 

 

 郷は自分も何か手伝いたいと名乗り出た。

 

 

「無茶だよ郷さん!ただでさえ怪我してるんだから」

 

 

「そうですよ!郷さんに万が一の事があれば…」

 

「しかし…」

 

 

 言いかけた郷の言葉をナズーリンが遮る。

 

 

「郷……気持ちは嬉しいが、ムラサの言う通り君は怪我人だ。君にもしもの事があれば、我々も聖に合わす顔がないのさ」

 

「ナズーリン……」

 

 郷の不安そうな表情を見てか、ナズーリンは笑ってみせた。

 

「なに、みんな無事に帰ってくるさ」

 

 

「そうだよ郷さん。だからそんな難しそうな顔しないで!」

 

 

「ええ……では皆、いきましょう!」

 

 

 

 そう言って星達は人里の住人を命蓮寺に避難させる為に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

  ──────────────────────────────────ー

 

 

   

 

 

 

「生ある者を傷つけるのは不本意ではありますが、人々に危害を加えるのであれば容赦は致しません!」

 

 

 里に近づくアーストロンを前に聖が躍り出る。

 

 

「ここから先は私がお相手いたしましょう……いざ、南無三──!!」

 

 

 気合一発、聖は自身のみが扱うことの出来る巻物『魔人経巻』を掲げ宣言。

 

 

 

 

 光魔「スターメイルシュトロム」!

 

 

 

 スペルカード。それは幻想郷内において諍い事を解決するために博麗の巫女が布いた「スペルカードルール」に用いるアイテム。

本来であれば殺傷沙汰にになる前にゲームという形で勝負をつけるのが幻想郷のルールである。

 

 

 

 その直後、眩い弾幕がアーストロンに照射される。だがそのすべてが着弾しものの、怪獣の進撃が止まることはなかった。

 

 

(思っていたよりも硬い……!)

 

 

『グウウウウ……』

 

 

 

 不快そうに聖を見つめるアーストロン。自分の邪魔をした事に腹が立ったのか、その歩みを聖に向ける。

 

 

「……ッ⁈」

 

 

 

『ガアアアアアアア!!!』

 

 

 

 アーストロンが拳を振り下ろしたその時

 

 

 

 

   魔符「スターダストレヴァリエ」!

 

 

 

 再びその巨体に無数の弾幕が降り注がれた。

 

 

 

「よう!遅くなっちまったな!」

 

 

 

「あ、アーストロン⁈どうして幻想郷に⁈」

 

 

 聖が見上げるとそこには三人の少女の姿。

 

「聖、大丈夫かしら?」

 

「霊夢さん!」

 

 

 そのうちの1人「博麗霊夢」が聖に話しかける。幻想の守護者、博麗の巫女として多くの異変を解決して来た彼女の登場に聖は幾らか安堵した。

 

「ええなんとか……しかし思った以上の頑丈さで…」

 

「じゃ、そこはアタシの出番だな!」

 

 啖呵を切ってみせたのは普通の魔法使い「霧雨魔理沙」。霊夢とは親友であり、彼女自身も今までの異変解決に大きく貢献した1人である。

 

「うぅ……まさか幻想郷でアーストロンと戦うことになるなんて」

 

 興奮半分不安半分といった表情を浮かべているのは守谷神社の現人神「東風谷早苗」。かつては異変を起こした事もあったが、霊夢達に退治されてからは、彼女らの後を追うように、自らも異変解決に乗り出している。

 

「そういえば郷さんもアーストロンと呼んでましたね……早苗さんあの怪獣の弱点が何かご存知ありませんか?」

 

 聖が早苗に質問した。

 

「えぇと……弱点…弱点……あ、あります!」

 

 早苗が答える。

 

「アーストロンの弱点は角です!あれを破壊できればアーストロンは大きく弱体化します!」

 

「成る程……それでは私たちで隙を作り」

 

「魔理沙のありったけをあの角にぶつけるってわけね」

 

「うし、作戦は決まったな!」

 

 

  四人は顔を見合わせいざ作戦を結構。聖、霊夢、早苗で足止めと撹乱。動きの止まったアーストロンに魔理沙の最大出力をぶつけると言う作戦だ。

 

「では、参ります!」

 

 

    魔法「マジックバタフライ」!

 

 

    秘術「グレイソーマタージ」!

 

 

 

 聖と早苗が仕掛ける。再び無数の弾幕がアーストロンを覆った。効いてこそいないが、怪獣はその巨体の歩みを止める。

 

 

「次、第二陣!」

 

 

      夢符「二重結界」

 

 

 

 

 

 もがく怪獣の足元に結界が貼られる。

 

 

『グウウウウウ…』

 

 

「頼んだわよ魔理沙!」

 

「頼まれた!」

 

 

 

 動けないアーストロンの眉間に魔理沙自慢のマジックアイテム『ミニ八卦炉』が向けられる。

 

 

「いくぜ…」

 

 

 

 

 

    恋符「マスタースパーク」!!

 

 

 

 

 

 宣言と同時にミニ八卦炉から極太のビームが照射、着弾と同時にアーストロンの頭部は大きな爆発と黒煙に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ!やっぱり弾幕はパワーだぜ!」

 

 

 箒の上でガッツポーズをとる魔理沙。他の面々もこれで一安心だと感じる。 

しかしそれは糠喜びだと気付くのに時間はそうかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

    『グウウウウウ・・・・・』

 

 

 

 

 

「な……⁈」

 

「おいおい……嘘だろ⁈」

 

 

 

    そこには目を赤くさせ怒り心頭のアーストロンがいた。

 

 

   『ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

 

 

 

 どうやら獣は最初の餌食を決めたらしい。それは眼前にいる魔理沙であった。

 

 

「……魔理沙ッ!」

 

 霊夢は魔理沙の前に飛び出し結界を張る。

 

 

   《i》『グ………ガアアアアアアアア!!!』《/i》

 

 

 

 

 

  真っ赤に燃えるアーストロンの口が大きく開かれる。2人に紅蓮の炎「マグマ光線」が放射される。それは人里からでも感じ取る事のできる熱気出会った。

 

 

 

 やがて満足したかの様にアーストロンはマグマ光線を吐き終える。

 

 

 そこにあったのは…

 

 

「………っ」

 

 

「うぅ……あ…」

 

 

 力なく堕ちていく霊夢、魔理沙両名の姿であった。

 

「そんな…」

 

「霊夢さん!魔理沙さん!」

 

 聖は地面に激突する前に2人をキャッチして見せる。結界のお陰か外傷こそ酷くない2人だが、服の端は焼け爛れ息も絶え絶えだった。

 

 

(圧倒的すぎる…っ)

 

 

 魔理沙の言葉を借りるなら、アーストロンがこれこそパワーだと言わんばかりに四人を見下している。四人とも幻想郷においてトップクラスの実力を持つが、それでも怪獣との差は歴然であった。

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 

(不味いな…)

 

 

 郷は思った。

実際には早苗の着眼点自体は間違いではなかった。惜しむらくは怪獣の頑丈さを見誤った事だ。

確かにアーストロンの弱点はつので間違ってはいないが、同時に最大の武器である。それが柔なはずがない。

 

 

 

「皆さーん!どうか落ち着いて!慌てないでください!」

 

 

 寺の住人の1人「幽谷響子」が必死で里の人間をなだめる。よく通る彼女の声を持ってしても里の住人のパニックは治らなかった。

 

「響子、今でどれ位の人が避難できたんだ?」

 

「郷さん…これでもまだ半分ほどしか避難できてません…」

 

「そうか…」

 

 

 

 状況はあまり良くない。すると少女の声がした。

 

「あの、どなたか!どなたか小鈴を見かけませんでしたか!」

 

 少女の名は稗田阿求

 

人里に住う御阿礼の子であり、妖怪が跋扈する幻想郷において人間の安全を守るために作られたとされる書物『幻想郷縁起』の編纂に携わる少女だ。

 

「阿求さん、どうかなさいましたか?」

 

「あ…響子さん。小鈴を見かけませんでしたか?」

 

 友人の名前だろうか。阿求は不安そうな顔をして響子に尋ねた。

 

「すいません…私はまだ…まだ人里の方にいるのかもしれません」

 

「そんな…」

 

 阿求の顔が青くなる。自身の一度見た物を忘れない程度の能力でここまで探しても、おそらく自分が見落としたものと希望を持っていたが、誰も友人の姿を見てない事で事実がはっきりとしてしまう。

 

「うぅ……小鈴…」

 

「あ、阿求さん!そんな、泣かないでください!私が見落としてるだけかもなんで!」

 

 膝から崩れて泣く阿求を響子はなんとかして慰める。

 

「そうだ、郷さんは見かけませんでしたか?鈴の髪飾りをした女の子なんですけど…」

 

 ひょっとしたら郷が見ていたかもしれないと響子は声をかけるが…

 

「あ、あれ……?郷さん?」

 

 

 そこには既に郷と呼ばれた男の姿はなかった。

 

 

 

 

──────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

  

 

 

 負傷した霊夢と魔理沙を早苗に預け1人でアーストロンと対峙する聖であったが、額には汗が浮かび、息も絶え絶えの状態である。事実幾たびもの弾幕を放ったところでアーストロンには通用せず、足止めをするので精一杯出会った。

 

 

「このままでは…」

 

 

 ちらと人里を見遣る。すると1人の少女が動けないのを見つけた。

 

 

(あれは……小鈴さん⁈)

 

 足を挫いたのか、その場に動けないでいる小鈴は目に涙を浮かべ恐怖の色が窺えて取れる。

 

 『グウウウウ』 

 

 

 その唸り声から聖は見る。アーストロンが再びマグマ光線を吐き出そうとしていた。いや、それだけではない。怪獣の視線の先には人里がある。もはや聖達に興味はないと言わんばかりに、アーストロンはその先の障害物である人里を焼き払うつもりだ。

 

 

「いけない!」

 

 人里を遮る様にアーストロンの前に飛び出すと目一杯手を広げる聖。残された魔力を全開にすればなんとか人里への被害は出ないはず、彼女はそう考えた。

 

 

(星…皆…後を頼みます)

 

 

静かに目を閉じる聖。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(聖……)

 

 

 そんな彼女を見つめる男が1人、ウルトラマンジャックこと郷秀樹である。彼自身はあくまで小鈴を探しに来ていたが、怪獣相手に孤軍奮闘する聖の姿を発見したのであった。

 

(貴女の決意……確かに見届けた!)

 

 

 郷はこの世界が好きだ。この世界の住人が命を賭して自身の生きる世界を守ろうとするのを見た彼は闘志を燃やす。

次は自分がこの世界の盾になろう。愛する星を守るため、郷は右手を高く掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……?)

 

 

 いつまで経っても来ない衝撃に聖が疑問を抱く。まさか痛みを感じることも無いままに自分は死んでしまったのではないか?恐る恐る目を開けるとそこには信じられない光景があった。

 

 

 

 

「何……あれ……?」

 

 

 

 誰かが呟く。

 

そしてその場にいた誰もが自分の目を疑った。そこには怪獣と人里を間にそびえ立つ銀色巨人の姿があった。自分たちとは似て非なる異形の人型。しかしそこには怪獣の様な禍々しさはなく、神秘に輝くその姿はまるで光の化身であり、見た者全てが不思議な安心感に包まれる。

 

 

 

 

「うぅ…霊夢…あれって…」

 

「わ、分からないわよ…」

 

 

 突然現れた巨人に困惑する一同であったが、その中でたった1人、巨人の正体を知る少女が喜ぶ。

 

 

「………ウルトラマンだ」

 

「早苗?」

 

「ウルトラマンが……来てくれた!」

 

 

 圧倒的な力の差に絶望すら抱いていた少女の瞳に輝きが戻る。

 

今まで幾多の怪獣や侵略宇宙人から人々の平和を守って来た外の世界の人間ならば誰もが知っている不滅のヒーロー。

今ここに楽園を危機から救うため、遂に勇者が立ち上がった。

 

 

『ジェアア!』

 

 

『グウウウ…』

 

 アーストロンに対して戦闘態勢をみせるジャック。

それを見たアーストロンの目に警戒の色が強まる。それは怪獣の本能として目の前の相手が強敵である事を認識したからだ。

 

『ガアアアア!』

 

「あ…危ない!」

 

 アーストロンの剛腕が振り下ろされる。鋭い鉤爪のついた一撃に対して、聖はジャックに注意を促すが、杞憂に終わる。

 

『ガァァ⁈』

 

 放たれた一撃をジャックは易々と片手で受け止めてみせる。彼の強靭でしなやかなボディーは怪獣の攻撃に貫かれる事はなかった。

お返しとばかりにジャックのウルトラチョップが炸裂する。その鋭い一撃にアーストロンは体を退け反らせた。

 

『ジュワッ!』

 

 

生まれた追撃のチャンスを逃すまいと間髪入れずに後ろ回し蹴りを放つジャック。その攻撃は見事にアーストロンの腹部にヒットし、その巨体は宙を舞った。

 

 

「あの巨体を軽々と吹き飛ばした…なんてパワーなの」

 

 幾たびの異変を解決して来た霊夢にとってもジャックの存在は規格外であった。

 

「…どうやらそれだけでは無い様です」

 

「聖、それは一体どういう事なんだよ」

 

 いつの間にか霊夢達のそばにやってきた聖に魔理沙が問いかける。

 

「決して力だけでは無いのですよ……怪獣に対して放たれる一撃一撃の鋭い攻撃、あの域に達するにはどれだけの死線を潜り抜けてきたか…」

 

 

 繰り出される重たい打撃の嵐。アーストロンを寄せ付けない技の数々に一同は見惚れた。

 

 

 

『…グウウウウ!!』

 

 

 しかしアーストロンも負けじと大きな口を開く。格闘で敵わないなら焼き尽くしてしまえばいいとばかりに、口の中が赤く燃え上がる。

 

「不味いぜ⁈アレを喰らっちまったら、あの巨人だってただじゃ済まない!」

 

 自身に来るだろう大技にジャックも警戒する。しかし彼はその場から動こうとしない。

 

「まさか人里を守る為に動こうとしないのか⁈」

 

「無茶よ!いくら頑丈だからってアレを貰ったらアンタだってタダじゃ済まないわよ!」

 

 ジャックに向かって霊夢は叫んだ。その声には荒いながらもジャックに対しての心配も混ざっている。

しかしジャックは動かない。ここで自分が避けてしまえば、命をかけて里を守ろうとしている彼女達の勇気を無駄にしてしまうと思ったからだ。

 

 

 

『…ガアアアアアアアア!!!』

 

 

 放たれたマグマ光線に対してジャックは怯まない。迫りくる熱エネルギーに対して腕をクロスする。

 

「う、嘘でしょ!」

 

 霊夢は驚いた。ジャックはマグマ光線を交差した腕だけで防いで見せているでは無いか。

 

「アレも防いじまうのかよ!」

 

 

 これぞウルトラVバリヤー

神秘のパワーが秘められたウルトラ戦士の腕は、腕を交差するだけで通常の何十倍もの強度を誇る盾と化す。ジャックの他にもセブンや80が怪獣の強力な一撃を防いで見せた。

 

『シェアア!』

 

 今こそ反撃だ。相手の攻撃を弾いたジャックの腕が十字に組まれる。

 

「あ……あの構えは!」

 

 早苗は目を輝かせながら言った。外の世界では誰もが知っているであろう、それは多くの強敵から平和を勝ち取ってきた必殺光線。

 

 

『ジェアア!』

 

  スペシウム光線

 

 右腕のマイナス、左腕のプラスのエネルギーが蓄えられたジャックの腕が十字に組まれた時、50万度という熱量が放出される。かつて彼の兄が宇宙忍者を葬った際に名付けられた光線は、アーストロンを撃破するのに十分な威力であった。

 

 

『グ……ガ…ァァ…!』

 

 闘いは終わった。炎の中に崩れ去る怪獣をジャックが見送る頃には陽は暮れて、夕焼け空が戦士の勝利を祝福しているかの様であった。

里の人々に危害がなかった事に安堵したジャックを多くの瞳が見つめる。

 

「あの巨人…博麗の巫女様でも敵わなかったバケモノを退治しちまったぞ…」

 

「ひょっとして幻想郷の守り神なんじゃ…」

 

「凄い…」

 

 様々な考えが飛び交うなか、1人の少女が声をかける。

 

「あ……あの!」

 

 ジャックが声の主の方を向く。そこには命蓮寺へ逃げ遅れた少女「本居小鈴」の姿があった。言葉が通じるかも分からなかったが、彼女は勇気を出してジャックに言った。

 

「その…里を守ってくれて有難うございます!」

 

 小鈴は目の前の巨人に感謝の意を伝えた。ちゃんと伝わったのだろうかとビクビクと顔を上げる。

 

(…なんだか懐かしい気分だ)

 

 怪獣頻出期の頃、どんなに辛いことがあっても決してくじける事のない勇気を与えてくれたあの声援。我ら兄弟を支えてくれた力の源を幻想郷で受け止めることができた事をジャックは嬉しく思った。

そしてジャックは小鈴に対して優しく頷いて見せた。

 

「わぁ…!」

 

自分の言葉が伝わった事で小鈴は顔を綻ばせる。小鈴だけではなく、黄昏に浮かぶ勇姿を誰もが見惚れる中ジャックは上空へと飛び去っていった。

 

「ウルトラマン…ねぇ」

 

「なんだよ……ちょっとカッコいいって思うじゃんか」

 

 霊夢と魔理沙も異変解決者として悔しい思いを抱えながらも幻想郷を厄災から救った英雄の姿を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

「やはり幻想郷にも脅威が迫っているという事か…」

 

 

 人里付近で変身を解いた郷が呟く。

 

「今この世界から離れるわけにもいかない。何とか兄さん達と連絡をt「郷さーん!」

 

 郷は振り向く。そこには全身汗だくの星とナズーリンがいた。

 

「郷さん!響子から聞きましたよ!いきなり郷さんが命蓮寺からいなくなったと」

 

「まったく…アレだけ動くなと言ったのにね」

 

 1人は心配そうな顔で、1人は呆れ半分に郷を見つめる。

 

「いやぁ…その、申し訳ない。阿求さんの友達の行方が心配で」

 

「まぁ私たちも響子から聞いたからね。それでもみんな不安がってたんだから」

 

「ひとまず怪我がなくて良かったです。とりあえずこの事は聖に内緒にしておきますから帰りましょう」

 

 それでも異議を唱えるナズーリンを星が宥めながら一同は帰路に着く。

 

(ここが外の世界でも幻想郷でも俺のやる事は変わらない。この楽園に真の平穏が訪れるまで俺がこの世界の盾となろう)

 

 

 郷…いや、ウルトラマンジャックは決意を胸にこの世界で過ごす事を決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

    〜次回予告〜

 

 

 

 

 聖の勧めで傷の具合を診察してもらいに永遠亭へと訪れた郷の前に現れた郷の前に現れた謎の女性「八意永琳」。

静かなる竹林でのひと時に突如として空が割れる。迫りくる生物兵器を前に左腕のブレスレットが神秘の力を発揮した!

 

 

     次回「月の友人」

 

 

 

 

 

 




意外と見てくれた方が多いので続けたいかなと。


郷秀樹ではないジャックの人間態はウルトラマンSTORY0をイメージして描いています。

文才のない身ではありますが、暖かく応援してくださると幸いです。
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