投稿に間隔が開きご迷惑おかけしました。しかも少し短い?です。
これからはいつも通りゆっくりペースでやりたいと思います(週二回くらいのペース)
誤字やおかしい表現などがあったら教えてくれると嬉しいです。
感想・アドバイス・批評などなど随時受付中です。
太陽がギラギラと照りつけている。
日差しがまぶしくなっていき、朝が迎えていくのを実感する。
雑魚寝していたせいか、体の節々が悲鳴をあげている。
最悪の目覚めとはこういうのを言うのだろうか、これより酷いものは考えたくもない。
とりあえず近場の水辺まで行き、顔を洗う。
澄み切った川の水がまどろんでいた意識を覚醒させていく。
体を大きく伸ばし、脱力する。
また新たな朝が来たのを感じる。
また――
「あいつの世話か」
とんだ拾い物だと今でも後悔している。
すやすやと寝息を立てながら幸せそうに眠っている男が一人いる。
こいつが悩みの種であり、不思議な存在であり、馬鹿な男である。
「起きなさい、出発するわよ」
「……ルー?」
眠そうな目をこすり、上半身だけ起こす。
少し前から多少喋れるようになってきていた。
だがそれは、『覚えた』というよりは『思い出した』と解釈する方がしっくりくる。
単語は忘れているようだが、その単語の意味だけは覚えている……器用で不器用な存在だ。
「どこ、行く?」
「とりあえず今日は西に行くわ」
「にし? にしにし!!」
なぜか喜んでいるように見える。まあ実際喜んでいるのだが……
つくづく意味不明な男だ、まあただの馬鹿なのかもしれないが……
そういえばこいつには暫定的に『クロ』と呼ぶことにしていた。
名前の由来は髪の毛が黒いから、とても単純で分かりやすい理由である。
「さっさと顔洗ってきなさい、待っててあげるから」
「う、ん!」
若干声が詰まっていたが、元気に返事をして川がある方向……とは逆方向へと走って行く。
本当にどうしようもない馬鹿なのは分かったから、いい加減『方向』という単語を覚えてくらないかしら……
「そっちじゃない、あっち」
「ん?」
不思議そうな顔つきで私の目の前まで戻ってくる。
さらに溜息を吐きそうになるのをこらえ、クロの手を引っ張り川のある場所へと連れて行くことにした。
>――――――――――<
「つ、つ……つめ?つめー?冷たい!」
「はいはい」
満面の笑みを浮かべて騒いでいるクロに対して、私はダルそうな反応をする。
まあ毎日こんなのと一緒に生活していたらこうなるのも仕方ないことなのだろう。
「み、み……みみ? ずみ……みずず!?」
「水」
「水!!」
バシャバシャと川の水で遊ぶ。
さっさと行きたいのだが、クロがこれでは……置いていこうか?
「ルー?」
「何よ」
「いつ、行くの?」
「……」
一回殴りたくなったこの気持ちをどう収めようか?
本気で置いていきたくなったが、まあいつものことだと割り切ることにしよう。
「あんたを待ってんでしょうが……大丈夫なら行くわよ」
「は、いー」
ぎこちない微笑み見せながら、私の手を握ってくる。
その手を優しく握り返し、目的もなく歩を進めていく。
>――――――――――<
よくよく考える。
いや、考える必要もないかもしれないが……
なんで私たちは歩いているのだろうか?
別に何か目的があるわけでもないし、ましてや行きたい所などありもしない。
珍しいところ――
面白そうなところ――
暇をつぶせそうなところ――
それが理由だろうか?
強いてあげるなら、気分や天候に左右されたりするくらいだ。
「ちょーちょ!」
クロの気分もあるだろう。
基本的にブラブラ歩いているだけで、何の目的もないのには変わりないが……
「た、い……おう?」
「太陽」
「太陽!!」
まあ実際やることもなく、ただ歩いているだけの毎日を送っている。
とても無駄にしか感じないが、無駄なことをやっていなければ暇なだけである。
「もくー! もく? もくもく……もく?」
「雲」
「くもー!」
いい加減遮るのをやめてほしいなぁ、いつか爆発すると思うんだよねぇ……
あれよ? 私怒ると怖いわよ? そこ等辺の弱い妖怪は私見るだけで逃げていくのよ?
「は、は? なーなな、お、はな」
「ちゃんと言えたわねー偉いわよー」
「……」
先ほどの元気がどこかに行ってしまったくらい暗い表情になる。
その視線の先には一輪の花が咲いていた。確か名前は『チューリップ』だと思う。
足まで止め、しゃがんでそのチューリップを凝視しているその様子は、とても集中しており、今までの馬鹿らしさが抜けていた。
こんな風になるのは初めてではない。
今までに何回も見たことがあるが、決まってその時の表情は暗く、泣きだしてしまいそうに目に涙をためている。
こうなると短くて数分、長くて数時間はこのまま動かないだろう。
近くの木に実がなっているのを見つけた。
どうせ数時間待つかもしれないので、待つついでに食べていよう。
背を伸ばしてみるが、当然ながら届くことなんてない。
自分でやっておいて馬鹿らしくなり、溜息を吐いてしまった。
「飛べばいいじゃない……」
最近クロに影響されすぎなのかもしれない。
あいつと一緒にいると何か表現できない……何かがある感じがする。
それにしても久しぶりに飛ぶ気がする。
クロが来てからはまだ飛んでいない気もする……いや、飛ぶ必要がなかっただけか。
軽い浮遊感、久しく感じたそれは心地よく感じることも、ましてや不快に思うこともない。
ただ淡々と作業をこなす時に感じるそれに近い感じがした。
近場にあった木の実を積み、一口かじる。
まだ完全に熟していなかったのか、若干すっぱかったが味に問題はなかった。まあおいしいわけでもないが……
もう一口食べようとした時に視線を感じ、下に視線を送る。
「ルー! と、でんる!!」
「飛んでる」
「とん……でる!」
きらきらとした純粋な瞳で私の目を射抜いて来る。
それに少したじろぎそうになるが、平静を装いつつ地面に降り立つ。
するとクロは手をばたつかせ、跳躍を繰り返し行う。
奇怪なその光景は、唖然とするというよりは頭を抱えたくなる気持ちの方が大きい気がする。
「とーぶ! と、ぶ!! とぶー!!」
「飛びたいのね」
「う、ん!」
何回も何回も何回も、ただひたすら跳躍を続けるその姿は、頑張っているのはよく分かるが無意味なこともよく分かっている。
第一『人間』が空を飛んでいるのを私が知っている限り見たことがない。そうなると、クロはただ無意味に頑張っていることになる。
「と、とーぶ……とーと……」
疲れてきたのか、少しずつ動きが鈍くなっているのが目に見えて分かる。
が、疲れるのが早すぎやしないだろろうか?まだ一分もたっていない気がするが……
「と……」
ばたりといい音を立てて転んだ。
フルフルと震えながら立ち上がろうとしているが、バランスが悪くまた転んでしまう。
よく見ると必死に泣くのを堪えているのが分かる。
しかも、立ち上がるとまたさっきの行動を繰り返し行おうとしていた。
見てられない。
それが私の心情。
馬鹿らしくて見ていられない。
一発頭を叩いてでもさっさと進みたい。
こんなことをしても無駄なのはわかっているのだから。
優しく言ってあげたほうがいいのだろう。
『あなたには飛ぶことはできない、一生ね』
それで済むならさっさと言った方がいい
無駄な時間と――
無駄な体力と――
無駄な努力と――
それをやらなくてすむのだから――
痛みを感じる必要などないのだから――
それでいいのだろうか?
本当にそうなのだろうか?
分からない。
分かる必要もない。
何故なら私は妖怪で――
何故なら黒は人間で――
もう付き合う必要もない。
ましてや付き合っていた時間を返してほしい。
そう思いたくもなる。
無駄な徒労だったなと思えばいい。
こんな馬鹿につきあうほど私は落ちぶれていない。
今すぐにでも殺せてしまうほどの力を私は持っている。
馬鹿らしい――
なんでこんな奴と――
なんでこんな奴と――
なんでこんな奴と――
「そんなんじゃ何時まで経っても飛べないわよ?」
今の声は誰だ?
ここには私とクロしかいないはずだ。
気配も感じない、ここにいるのは二人だけなのは確かである。
では一体誰が……
「もっとこう……考えるのよ、空を飛んでいる自分の姿を」
また聞こえた。
声からして女性のようだ。
嫌に聞きなれたその声は親近感すら感じる。
なぜこの馬鹿を構う必要があるのか、声の主に直接聞きたいくらいだ。
「多分今すぐ飛ぶことは無理よ……でも、いつかは飛べるようになるかもね」
嫌に前向きなその声は、クロを親身になって応援している。
馬鹿らしい……そんなの無意味だし、何よりこの馬鹿が飛べるようになるはずがない。
「まあ……練習くらいなら手伝ってあげるわよ、どうせ暇だし」
こいつは狂っているのだろうか?
飛ぶ練習に付き合うなど、どうせ口だけでそのうち呆れてどこかに行ってしまうだろう。
そんなの目に見えている。
忠告した方がいいだろう、こいつには無理だと……
「こんなに砂まみれになって……涙も拭きなさい、みっともないわよ?」
視線が動く。
周りには誰もいない。
視線が揺れる。
目の前には……
「ほら……もう一度飛んでいるとこ見せてあげるから」
>――――――――――<
結論から言うとやはり無理だった。
まあ最初から分かりきっていたことだが、まさか日が落ちかけるところまでやるとは思わなかった。
思わぬところでクロが努力家で、諦めが悪いことが分かったのは収穫と思うべきか、やはりただの徒労だと思うべきか……
「む……みゃーー!!」
奇声まで放ち始めた。
まあどちらにせよ今日のところは終わりにしよう。
「と、ぶー!!」
疲れているのは目に見えて分かるのに、それでも跳ねまわるのをやめない。
ここまで来ると、執念というより諦めが悪いただの駄々っ子と言ったところだろう。
「いい加減にしなさい……体壊すわよ」
「むー」
とても残念そうに溜息を吐く。
私のほうが溜息を吐きたい気分である。
「と、びたー、い……」
若干声が震えてきている。
なぜそこまで飛びたいのかは分からないが、ここまで来ると憐れみが出てくる。
仕方ないな。
まあここまで頑張ったことだし
また明日もある――
また明日がある――
まだ明日もある――
まだ明日がある――
言い放とうとして、やめた。
多分飛ぶことなんて不可能、どんなに努力をしてもだ。
それでもクロは夢をあきらめないだろう。
なんとなくだがわかってしまう、それがクロだから……
「クロ」
「な、に?」
だったら私はこの小さな人間の夢を――
――応援してやろうではないか
>――――――――――<
「た、かーーーーい!!」
「少し高すぎたかな」
「おち、るーーー!!!」
先ほど飛ぶ練習を行った森が小さく見える。
ここまで思い切り飛ぶのは本当にいつだっただろうか。
クロは私の背中に必死にしがみつき、顔も背中にぴったりとくっつけている。
流石に高すぎて怖いのだろう、そう考えるとクスリと笑みが漏れてしまう。
「ほら、見なさい」
諭すような柔らかい口調でクロに語りかける。
おずおずと視線を上げて、パッと表情を変える。
「れ、いー!」
「綺麗」
「きー、れ、いー!!」
耳元がうるさいが悪い気はしない。
心地いいかと言えばそうではないが……うるさいのには変わりない。
「で、もー」
フルフルとまた震えだす。
でも、表情は笑っている。
「たか、いーー!!!」
「フフ……そろそろ降りるわね」
少しずつ高度を下げようとすると、肩を叩かれた。
クロが叩いたのは分かるのだが、理由が分からず聞こうとしたが……
「も、ちょっ、ここ……いた、い」
何も言わずにその場で留まる。
気のすむまでここにいてあげよう。
それによって私に利害などないし、得をするのはクロだけだろう。
それでも――
花のように咲いた笑顔の表情と――
それでもキラキラとしたクロの目と――
――まあ悪い気はしない
いつかきっと
どこまでも飛べるようになる
「と、ぶー」
今はルーミアが寝ているから起こさないように静かに練習をする。
いきなり飛べるようになってビックリさせたいからでもある。
「とーぶー」
今日も飛べないかもしれない。
それでもやめない、やめたくない。
理由があった気がするけど……忘れてしまった。
思い出そうとすると頭が割れるくらい痛くなる。
これだけは覚えている。
いや、やりたいことがある。
「つ、きー!! ルー、と、いしょーに!!!」
クロは優しく月の光が照らされていた。