明日の0時に後編を予約投稿するので、間違いはしないと思います。
誤字やおかしい表現などがあったら教えてくれると嬉しいです。
感想・アドバイス・批評などなど随時受付中です。
目が覚める。
見回す。
誰もいない。
ここはどこだ?
自分はなぜここに?
自分は何をやっていた?
意識がもうろうとする。
立ち上がろう。
思い出す。
ここは神奈子さんの神社だ。
そういえば神奈子さんはどこだろう?
足がもつれて転んだ。
足音が聞こえる。
今の音で気づいたのかな?
襖が開く。
神奈子さんの巫女さんだ。
少しずつ意識が覚醒してきた。
目をこする。
巫女さんが心配そうに顔を覗きこんできた。
大丈夫、もう大丈夫なはずだ。
深呼吸をして、話をしよう。
>――――――――――<
「そふぇで、ほぅはったんへぇすか!?」
「えっと……」
「んぐ! ゲホッゲホォ!!」
勢いよく用意された食事をとりつつ話そうとしていたが、案の定喉に詰まらせてしまった。
巫女さんが差し出してくれた水を勢いよく飲み干し、すぐ巫女さんに向き直る。早く聞かないといけない事がある。早く行かないといけない。
「神奈子様は出発されました、もうすでに戦いも始まっていると思います」
「じゃあ早く行かないと!」
「も、もう間に合いませんよ! ここから諏訪までどれほどの距離があると思ってるんですか!?」
「ごちそうさまでした!」
料理を腹の中に収め、手を合わせながらいつもの言葉を口に出す。
はやく、早く、速く、急がないと止められない。巫女さんから聞いた『戦争』の意味、それを聞いたらすぐにでも止めにいかないといけない。
「それに真剣勝負に水など刺してはいけません! あなた自身がどうなるかことか……」
巫女さんの言葉を無視して、自分は出発の準備を進める。
そういえばどっちが諏訪子さん国なのかよく分からなかった。まあ、村人に聞けば分かるだろう。
持っていくものは今着ている服だけだ、それ以外に必要なものはない。
自分の布の靴を履こうと思ったけれど、面倒になって履くのを諦めた。この靴だと走りにくいし、裸足の方が早いと思ったからだ。
もしこういう時、自分が飛ぶことが出来たなら、すぐにでも着くと思ったけれど、今は飛べないから仕方ない。
巫女さんの制止の言葉を無視して、自分は走り出す。途中で村人から方向だけ聞いて、また走りだす。
「もっと……もっとはやく!!」
砂利が足に食い込み、痺れるような痛みが体中に流れるが、今はそんなことを考える余裕はない。
今自分は走ることしかできない、走ってすぐにでも止めさせたい、もっともっと速く走って二人の戦いを止めないといけない。じゃないと、じゃないと……
「はぁはぁ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
奇声を上げつつ力の限り走る。そういえばここまで本気で走り『続ける』のは初めてかもしれない。意識していないからかもしれないが、いつもならここで倒れてもおかしくはないはずだ。
疲労はどんどんたまって行くのは分かるけれど、がむしゃらに走り続ける。疲れなんて忘れるくらいに走り続けることしかできない。
はやく!
はやく!!
はやく!!!
諏訪子さんと神奈子さんの元へ!!!
>――――――――――<
雨が降り始める。
その一つ一つが湖に波紋を作り、一種の造形物を醸し出しているように見える。
その湖の真上に二柱の神が浮かんでいた。
お互いに睨みあい、互いの力量を測っているようにも見える。その二人に割って入ろうとする者がいるならば、殺気だけでその心をへし折ってしまうだろう。
二人は何も言葉をかけずに睨み続けている。来るべき時間を待ちつつ、自身の力を保持し続けている。
その様子を見守り、待ち望んでいる神たちが湖の周りにいた。二人の戦いを、神聖なる戦いを心から待ち望んでいた。
「諏訪よ」
先に声をかけたのは神奈子だった。
鋭い眼光宿している中で、どこか余裕すら見せているその面立ちは、自身の実力を見せつけているようにすら見える。そんな面立ちのままで、目を瞑りつつ話を進めた。
「諏訪がよこした男、あれはなかなか面白いな……見ていて飽きがこない」
「……」
「その件で……少し謝らなければならないことがある」
その言葉を聞いた諏訪子はさらに殺気を高める。
その殺気をひしひしと感じた神奈子は、今の言葉で少し誤解を招いてしまった事を悔やんだ。
「スイを殺したと言うなら……死んでも祟り続けるわよ?」
「ふむ、どうやらあの男は諏訪にとっても大事らしいな」
「答えろ、スイは生きているのか、それとも――」
それ以上諏訪子は何も言わなかった。代わりにどす黒い何かが諏訪子の周りにまとわりついているのが分かる。
神奈子は冷静にそれを受け止め、かつ対抗するかのように自身の神力を放出した。そして、先ほどの言葉を訂正するために口を開いた。
「安心しろ、生きている……が、こちらの不手際で傷を負ってしまった」
「不手際……ねぇ」
「死にはしない、まあ何時目覚めるかは分からないが」
おかしな話だな、と神奈子は小さく付け加えた。
それもそうだろう、『たかが人間一人』に対して怒る神と、『たかが人間一人』のために謝罪めいた言葉を口に出す神、神に似つつかない人間めいた会話なのだから。
諏訪子は今の話を聞いて、落ち着いたかのか周りにあったどす黒い何かが少し晴れた。しかし警戒を解くことがなく、未だにどす黒い何かは諏訪子の周りにたちこめている。
神奈子はそれを心の中で苦笑しつつ、諏訪子に腕を突き出す。それが宣戦布告の合図だったのか、お互いに神力を高めあっていく。
「我は八坂の神! 諏訪の国を貰い受けに来た!!」
「我は諏訪の神! そちらに渡すものなど一つとたりてない!!」
お互いにその言葉を聞いて口元を上げる。
諏訪子は鉄の輪を持つ手に力を込め、神奈子は湖に何本もの御柱を空から降らせる。
「ならば力づくで奪うまで!!!」
「奪えるものなら奪ってみせろ!!!」
開戦と同時だったろうか、雨は激しく降り始めた。
そして二人は自身の誇りと強さをぶつけ始める。この戦いで最後まで立ち続けていたものが――
>――――――――――<
なんだか雨が激しくなってきた気がする。
さっきまで降っていなかったはずなのに、さっきまで晴れていたはずなのに、まあ降ってきたものは仕方ないだろう。
走りながらそんなことを考える。走り続けてどれくらいの時間が経ったのだろう。時計とか そういうものはないので、分からないけれど、とにかく走り続けなければいけない。
ふと、自分の横を何かが通って行く。確認しようと振り向くと、それは明らかに人ではなかった。
では妖怪なのか、と結論が出たのはいいが、そのまま走り続けた。どうやら自分に気づいていないようだ。理由はわからないけれど、それはそれで幸運だった。
そういえば、妖怪に対する物など何も持ってきていなかった。そう考えると怖くなって、徐々に速さがおちてきた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
その恐怖を紛らわせるように叫ぶ。
その叫び声で妖怪が寄ってくるかもしれないなんてことを思いつくほど余裕はなかった。けれど、そのおかげで恐怖はなくなったし、足も軽快に動くようになった。
そう思っていた矢先に石に躓いて転んでしまう。
雨のせいで地面がぬかるみ始め、泥が服と体中についてしまった。顔についた泥だけ払い、自分はまた走り始める。
転んだ拍子に怪我をしたのか、右肘が痛むけれど、今さらそんな痛みで止まる気にはなれなかったし、さほど痛くはなかったので無視した。
でもこのままでは着くころには戦いは終わっているかもしれない。
そんなことになったら二人ともけがをしているだろうし、それに――
『死んでしまうかもしれない』
走る足に力を込める。
少しでも前へ進むために、一歩でも前へ進むために、一秒でも早く進むために――
怖い。
誰かが目の前からいなくなるのはもう嫌だ。
永琳は月に行ってしまった。
ルーミアはどこいるのかも分からない。
そんな中で諏訪子さんと神奈子さんがいなくなるなんて考えたくない!
そんなこと許したくない、許されることじゃない、許してたまるものか!!
怒りとは違う、熱い何かが沸き起こる。
助けたいなんて言葉じゃ収まらない、助けたいでのはない、助けるために行くのではない。
止めに行くんだ。
どんなに理由があったって、どれほど大層な誇りがあったって、自分には分からない方程式があったとしても、止めにいかないといけない。
でも、今のままでは着くことが出来ない、間に合うことはできない、どうしても叶うことはない。
だんだん目から熱いものが流れ始めてきた。諦めからかもしれない、無理だって分かったからかもしれない、初めからから分かっていたからかもしれない。
とうとう足が止まってしまった。
立ったまま、無様に泣いてしまった。
先ほどまで考えていた熱い感情はどこかにいってしまった。
やっぱり自分には無理だったんだ、バカだから駄目なんだ、どんなに頑張っても無駄だったんだ、能力のせいで駄目だしバカなんだ。
雨が自分を慰めてくれる。
雨が自分を馬鹿にしている。
思いきり泣く。
自分の気のすむまで泣く。
このまま戦いが終わるまで泣いてしまおう。
いつか、自分を探しに来る二人のうちどちらかが来るだろう。
本当にいいのだろうか?
本当にそれでいいのだろうか?
自問自答、自分で問題を作る。
自問自答、自分で答えを出す。
バカだから分からない。
バカだから分からな――
「いやだ……」
ぽつりと、消えいりそうな声を出す。
自分でも分かるくらいか細い声で呟く。それでも、答えは見つけるために必死になった。
単純だっていい、バカだって構わない。
自分の信じた事を突き進む、たとえそれが間違いだったとしても、突き通したいものがある。
「いやだいやだ!」
小さな叫び――
小さな咆哮――
自分が小さな存在なんて最初から知っている。でも、知っているからこそ足掻きたかった、頑張りたかった、努力し続けてきた。
その答えがどこに行きつくのか自分は知らない。いや、これからも分かることはないと思う。その答えはこれからずっと探さないといけないものだと思う。
「いやだいやだいやだ!」
足掻いてみせよう。
頑張ってみせよう。
自分の限界を、無理を、その全てを乗り越えてみせる。
能力は自分の足枷なんかじゃない、何度も自分を助けてくれた、何度も自分に答えてくれた。
だからこそ今の自分がいる。
バカで、駄目で、惨めで、そんな自分を形作る大切なものだ。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
これが自分のわがままだって分かっている。
でも、この我がままを突き通すために、自分は走り出す。
走るんだ、二人の元へと!
走るんだ、我がままを通すために!!
その時無意識に、本当に無意識に自分は理解した。
それと同時に聞こえた気がしたんだ、その声は教えてくれているようだった。
『劣る程度の能力』
答えてくれた気がした。
今だけ、使える気がしたんだ。
どう使えばいいのか、なんとなく分かった。
その『なんとなく』をどう表現すればいいのか分からないけれど、本当になんとなく分かった気がした。
そして口に出す。
能力を行使すうために、自分が望むべき未来を手に入れるために――
「『周囲』の『時間』、『自分以外』のその『流れ』を――」
『劣らせる』