東方劣化伝   作:籠の中の鳥

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また約束を破ってしまったことを、深くお詫び申します。
この章自体が難産だったこともあったのですが、流石に時間をかけ過ぎてしまいました。
しかも時間をかけた割には文章は長くないですし、内容も薄い……もう本当に申し訳ないです。

誤字やおかしい表現などがあったら教えてくれると嬉しいです。
感想・アドバイス・批評などなど随時受付中です。


第三十六生 その男 愕然とする

 

 

 まだ鳥も鳴かず、寝静まっているような時間帯に、自分は屋敷の外に立ち、目の前の男を見据えている。

 突然満面の笑みを向けられ、自分は気取られたかのように驚いてしまう。

 一瞬の間の後にそれを笑顔で返すと、その笑顔の持ち主は馬に跨り、すぐにその場から去っていく。

 

 自分の後ろに誰かの気配を感じ、振り返るとそこには一人の少女が佇んでいるのが見える。それが一体誰なのか、そして今さっき出て行った人が誰なのかを、自分は嫌と言うほど分かっている。

 その少女は去っていく男の後ろ姿を見えなくなるまで見続け、そして見えなくなるのが分かると俯いてしまう。

 どのような表情をしているのか、『昔』の自分ならまだしも『今』の自分にはよく分かる、分かってしまう。

 

 

「父上は……どこへ?」

「――言えません」

「でしょうね、どうせ口止めされてるんでしょ?」

「――すみません」

 

 

 真実を言う事が出来ないこの歯がゆさが、もどかしくて仕方なく感じてしまい――少女の顔を直視できない。

少女が俯いていなければ、きっと自分は何かしらの理由をつけてこの場から立ち去っていただろう。

 

 小さなため息が聞こえると同時に、少女が後ろにある屋敷へと歩いていくのが聞こえた。

 自分は少女に何か声をかけたかったが、どんな言葉をかければいいのか分からず、結局気付いた時には少女は屋敷の中へと入ってしまっていた。

 

 どうすればいいのか――

 どうすれば最善なのか――

 

 答えが分からず、自分はその場で佇んでしまう。

 それは昔も今も変わらない情けない姿――

 得られるはずもない物を求めに旅だった男を、自分は止めることはできなかった。

 その先に待っているものが何なのか、それはその時々によって変わるのだろうが、いい結果で終わるとは到底思えない。

 

 少女はどんな気持ちなのだろうか――

 何年も彼女に仕えているからこそ分かってしまう。

 また置いていかれてしまった悲しみ、また忘れられてしまう悲しみ、また一人になってしまう悲しみ……

 少女が去っていってしまった男のことをどれほど思っているのか、どれほどの思いが詰められているのか、自分はよく知っている。

 

 二人がどう考え、どう行動しているのか、板挟みの状態だった自分だからこそ分かる。

 分かっているからこそ、なぜすれ違ってしまうのかが分からない。互いが互いを想っているのに……

 

 

「……掃除、しないとな」

 

 

 気を紛らわすように呟いてしまう。

 ようやく鳥も鳴き始め、新しい一日が始まるのが分かる。

 けれど自分の中の時間は、はたして進んでいるのだろうか?

 先ほどから同じような問答を繰り返し、結局分からなくなり、そしてまた考える。

 ひたすらそれの繰り返し、時間は進んでいるのに自分の中は変わらない。見た目も、体も、声も、考えも――

 

 そこまで考えて、自分が一瞬怖くなる。

 二人の事を考えている自分に、言いようのない恐怖を感じてしまう。

 

 大丈夫、自分は自分だ。

 これからどんな事が起こるか分からないけど、その都度頑張ればいいじゃないか。

 それに今考えるべきは自分の事ではなく二人――妹紅ちゃんと不比等さんの事じゃないか。

 

 太陽が少しずつ顔を出してきたのか、あたりが少しずつ明るくなっていくのが見える。

 どうすればいいのか分からなければ分かるまで考えればいい、それで分からなければもっと考えればいいじゃないか。

 安直な考えだが、それが今の自分の答えだ。

 考えて結果が変わるなら、自分はいくらでも考えて見せよう。それがどんな結果になるか分からないけれど――

 

 

「――よし」

 

 

 まだ結果が出たわけではない。

 悲観的になるのは『自分』らしくない。

 自分のできる精一杯を、時間いっぱいまでやり尽くそうではないか。

 

 二人は幸せにならないと駄目なんだ。

 だってあの二人は、お互いの事を誰よりも愛しているんだから……

 だからこそあの二人は――

 

 

「――自分が、頑張らないと」

 

 

 一種の暗示のように呟きつつ、掃除の手に一層力を込める。

 この仕事が終わったら、次は妹紅ちゃんの部屋の掃除をしないといけないし、それが終わったら――

 今日やる仕事はまだまだ始まったばかりだ、気合を入れていこう!

 目先の物から片付けて、それから少しずつ問題を解決していけば必ず糸口は見えてくる――はず!!

 

 

「やるぞぉ!!」

 

 

 気合を入れるために新鮮な空気を取り入れ、言葉と共に勢いよく吐きだす。

 やる気や根気、それ以外の何かが震い立ち、勢いよく次の仕事場まで走って移動し――

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

「あー」

 

 

 額にある冷たい布で痛みを抑制し、仰向けに寝転がる事によって疲れを発散させる。

 なんの拍子もなく体の力が抜け、目の前にあった柱に勢いよくぶつかり、そのまま意識を手放した……らしい。

 体から力が抜けて原因は――単なる過労だそうだ。

 おかげで屋敷の使用人さん達に大目玉をくらうこととなった。

 主に働き過ぎだと耳に腫れものでも出来るほど散々言われ続け、一介の使用人とは思えぬほど丁重に扱われてしまい、今こうして布団の中で横になっている。

 

 ちょっと疲れてきたような気がしていたが、まさか倒れるほどまで体が衰弱しているとは……

 反省はもちろんしているのだが、軟弱な体をこれほどまで呪いたくなったのは今回が初めてではないだろうか。

 

 ため息を吐こうとした時、廊下から誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。

 その足音はどこか早足で、その一歩一歩に力を込めているのか、部屋越しでも分かるほど大きな足音に聞こえる。

 

 なんとなく誰なのか想像がつき、すぐにでも部屋から抜けだしたかったのだが、体が思うように動かせず、生暖くなってしまった布だけが落ちるだけだった。

 いよいよもってその足音の持ち主が部屋の前につき、思わず生唾をゆっくり飲み込んでしまう。

 

 

「無一! 貴方が働き者なのは知っているけど、倒れるまで働くなんてどういう神経をしているのよ!!」

 

 

 終わった――

 そんな言葉を心の中で呟くや否や、目の前にいる女性、言わずもがな妹紅ちゃんに怒鳴られてしまった。

 

 勢いよく開かれた襖は、目一杯の力を入れたのか外れかかっている。

 一体どこにそんな力を持っているのか疑問に思うほど細く綺麗な腕は、今にも殴りかかろうとする態勢に入っている。

 しかし、自分が力なく布団に横たわっているのを見た影響か、少しずつ顔色を変えつつ、その腕を降ろしていく。

 

 

「え、えっとお嬢、本当に申し訳ないです。すぐにお部屋の掃除を――」

「……貴方ねぇ」

 

 

 呆れたような溜息を吐かれてしまった。

 その理由を聞こうと体を起こそうとしたが、起き上がる途中で妹紅ちゃんが自分の両肩を掴み、そして布団に押しつける。

 そして落ちた布を拾い、桶の中の水に浸し軽く絞ると、自分の額にそれを乗せてくれた。

 ――布団に押しつけられた時、若干意識がとびかけたのは内緒だ。

 

 

「今の貴方の仕事はゆっくり休むことよ。それまで他の仕事をすることは許さないわよ」

「ですが――」

「言い訳無用、さっさと眠りなさい」

「……」

 

 

 妹紅ちゃんなりに心配しているのは分かるのだが、その分自分のふがいなさが身にしみてしまう。

 自分の体を管理するのも大切であるのだが、そんなことも忘れて仕事に没頭している自分が恥ずかしくて仕方ない。

 考えれば自分がほとんど睡眠をとっていなかったし、休息らしい休息も取っていなかったような気も……

 

 

「分かりました。今日一日は休ませていただきます」

「別に明日も休んでいいのよ?」

「いえ、明日には復帰したいと思います」

「……もう好きにしなさい」

 

 

 妹紅ちゃんが呆れながら呟いているの横目で見ながら、生暖かくなった布を裏返す。

 ひんやりとした心地よさに浸っていると、睡魔が襲ってきたのか、だんだん瞼が重くなってきた。

 せめて妹紅ちゃんが退室するまでは起きていようと努めているが、少しずつ妹紅ちゃんの言葉が遠くなってきている。

 

 

「無理に起きてなくていいわよ」

 

 

 それに気がついてか、妹紅ちゃんがため息混じりに呟いたような気がして、自分は小さく頷くとそのまま意識を手放した。

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 昔――

 一人の男がいたそうな――

 

 その男は生まれた時からその人生は決まっていたそうな。

 位の高い家系に生まれたその男は、それなりの学問を学び、それなりの食事をとり、それなりの位についた。

 不自由がないと言えば嘘になるが、それなりの生活を送れることに不満はなかったと言えよう。

 

 ある日、その男は気まぐれに屋敷を抜け出したのだ。

 理由なんてありやしない、なんせ気まぐれなのだからな。

 その時、男は一人の女性に目を奪われてしまい、一日中彼女を影から見続けてしまっていた。普段ならば男は堂々と前に出るはずなのだが、今回ばかりはなぜか話をすることすらできなかった。

それほどまで美しい、と言う訳ではなかった。

 しかし、男はその女に魅入られてしまい、暇を作っては見に行き、暇を見つけては見に行く生活が続くこととなる。

 

 ある日、その男は意を決してその女性に身の内をさらけ出した。

 女性は驚きつつも、その言葉に偽りがないことを知ると、喜んで男を受け入れた……のだが、実は問題が存在していた。

 男が貴族に対して、その女は庶民、位の違いから表立っての付き合いは不可能――

 しかも男はすでに何人もの妻をもっていた事もあり、身内であっても信頼のある者にしか伝えていなかった。

 

 それでも男の情熱は冷めることはなく、ついに女の腹の中に子を宿してしまった。

 幸せだったと言ってもいい、様々な事が二人の間を阻害していたが、女の前では毎回幸せだと呟き続けた。

 しかし出産後、女はやるべき事を果たし尽くしたかのように永遠の眠りについてしまった。

男は嘆き、悲しみ、涙を三日三晩流し続け、決意を固めた。

 

 産まれてきたこの子にだけは、幸せに生きて欲しい。

 そう願っていたが、それも中々果たすことはできそうにはなかった。

 赤ん坊を連れて屋敷に戻った男は、事のあり様を妻たちに伝えたが、あまりいい結果に収まる事は出来ず、赤ん坊が成長していくごとに何時出来たかも分からぬ傷が増えていった。

 それと共にいよいよ男の仕事も増えていき、その子供と接することすら出来ない、そんな状態が続いていく。

 男は悔やんだ、悔やんでも悔やみきれなかった。

 こんなことならば、子など生まなければよかったと――

 子供が辛い目にあうのであれば、生まれる前に女と共に死んでいれば――

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 まるで全速力で走った後のような感覚――

 ただ眠っていただけのはずなのに、どうしてこれほどまで苦しいのだろう。

 全身からとめどなく流れる汗は、あまり気分のいいものではない。少し外の空気を吸って来るのもいいかもしれない。

 

 太陽はすでに沈みきっているのか辺りは暗く、少し欠けた月も顔を出していた。

 少し肌寒いくらいの寒さが丁度よく感じ、額を伝う汗もなぜだか心地よく感じるような気がする。

 冷水を一気飲みしたい気持ちに駆られるが、生憎近くに井戸などない。台所にいけばあるだろうが、流石にそこまで行く気にはなれない。

 ふと、先ほど見ていた『夢』のことを思い出し、物思いにふけるように縁側に座る。

 服にしみこんだ汗が気持ち悪いが、それも寒さの影響からかすぐに冷たくなり、逆に心地よく感じてしまう。

 

 不比等さんの、そして妹紅ちゃんの過去――

 不比等さん自身から打ち明けてくれたその内容を聞いた時、自分はますますどうすればいいのか分からなくなった。

 本心では不比等さん達に幸せになって欲しいのだが、現実がそれを許してくれない。

 輝夜さんにその事を打ち明けたとして、それで了承してくれるだろうか。いや、あの人に限ってないだろう。

 

 ではどうする?

 嘘でもいいから付き合って欲しい、そう言えばいいのだろうか?

 それも駄目だ、そんな関係では不比等さんも、ましてや妹紅ちゃんだって輝夜さんだって幸せになれない。

 

 ではどうする?

 無理やりにでも説得して、無理やり結婚させればいいのだろうか?

 駄目だ駄目だ、そんな方法は最低な行為、決して行ってはいけない。

 

 ではどうする?

 ではどうする?

 ではどうする?

 

 知りたい――

 方法があるものなら知りたい――

 

 もし『彼女』がいれば、解決してくれただろう。

 不可能を可能にする『彼女』ならば、こなせないことなど絶対に存在しないはず――

 

 

 

 ――駄目だ。

 『彼女』はいない。

 それに『彼女』ばかりにも頼ってばかりでは駄目に決まっている。

 

 

 

 ではどうすればいい?

 どうすればいい?

 どうすれば――

 

 

 

 

 

「――はぁ」

 

 

 

 

 

 静かな暗闇の中に囁くようにして溜息を吐く。

 実は出発前に不比等さんから、言伝が書かれた手紙を頂いたのだ。

 内容は簡潔であり、明瞭であり、簡単な言葉だった。

 

 

『何もするな』

 

 

 それだけである。

 もう何も干渉することなく、ただ見ていればいい。

 輝夜様が付き合わないと言ったとしても、必ず付き合わせてやる。

 そういう意気込み、諦めない姿勢、もはや執念をも感じる物を不比等さんは持っていたのだ。

 おそらく自分ならば彼女を振り向かせる事が出来ると、確信に近い自信を持っているのだろう。

 そういった意図を、簡潔な言葉から感じる事が出来た。

 

 

 

 これから自分が何か手を使おうとしたら、不比等さんは怪訝な顔をしながら、私にできないとでも言うのか、と言うのだろう。

 それでも手を出してしまえば、不比等さんの威厳を傷つけてしまう可能性もあり、求婚自体危うくなってしまうかもしれない。

 不比等さんは頭がいい、だからこそ手紙を置いて行ったのだと思う。そうすれば自分は何もしないだろうと考えて……

 

 

 

 

 

「――はぁ」

 

 

 

 

 

 この暗闇に溶けてしまいたい――

 それほどまでに静かな常闇は、まるで自分を優しく包んでいるようにさえ思える。

 不甲斐なさから出た溜息さえも、暗闇はそれを受け止め、優しく見守っているように見えた

 

 黒――

 ただひたすらに黒――

 先ほどまで考えていた事が馬鹿らしくなるほど、夜は自分を優しく介抱してくれている。

 

 クロ――

 ただひたすらにクロ――

 黒い空が、黒い暗闇が、黒い黒い空間が――

 ただ自分を優しく、諭すように、言葉を、かけて――

 

 

 

 

 

 『クロ』

 

 

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

「あれ? もう大丈夫なんですか?」

「平気だよ! 自分の仕事沢山残ってるしね!」

「そ、そう?」

 

 

 早朝――

 使用人達はすでに起き、それぞれの持ち場の仕事をこなし始める時間帯――

 自分は気分よく起き、その使用人たち同様、己の仕事をこなそうと張り切っていた。

 

 

「あっ! 自分外の掃除してくるね! この前は中途半端だったし!!」

「え、ええ」

 

 

 いつにもまして体が軽く感じ、軽快な足取りで外へと向かう。

 体もそれに応じるようについて来ることもあって、なんだか調子がいい。

 昨日まで難しいことばかり考えていた自分が嘘のように、気分は外の天気同様晴れ渡っており、顔が緩んでしまう。

 

 

「よーし! まずはこの庭を掃除しよー!!」

 

 

 まるで子供のようにはしゃいでしまい、仕事に支障がないかと心配する……ことすら念頭にない。

 いつもならば自制し、自重し、踏みとどまるのだが、人が変わったように掃除を始める。

 

 楽しい――

 踏みとどまれ――

 何かがおかしいと心の奥底で叫ぶが、今の状態がどこか心地よくて仕方なく、やめるにやめられない。

 

 

「お掃除楽しいなー! 綺麗になるって気持ちいい!!」

 

 

 たのしい――

 もうやめろ――

 自分の中で何かが起こっているような気がする。

 怖くて仕方ない、けれど楽しくて仕方ない、相反する感情を同時に持ってしまい、何かが壊れてしまうような錯覚に陥る。

 

 

「みんなみんな、お掃除すればこんな気持ちになるのかな?」

 

 

 そうなのかな――

 もうやめてくれ――

 恐怖、何か『自分』ではない『自分』が勝手に話しているように思えてきた。

 そうだ、そうに違いない、これが自分なわけがない、こんなものが自分の訳がないんだ。

 

 

「みんな……みんな……」

 

 

 さびしい――

 さび……しい……?

 

 胸が締め付けられる。

 恐怖の代わりに、それに近い感情が巻き起こる。

 ついさっきまで相反していた考え、行動、介錯が一度に止まる。そして同じ考え、行動を起こした。

 

 

「あ……え……?」

 

 

 泣く――

 泣くという行動をした。

 自分の事のはずなのに、客観的に見る事が出来てしまった。

 

 『自分』ではない『自分』が泣いている。

 訳の分からない答えが出たと同時に、嗚咽を漏らしつつ、小さく小さく泣きだす。

 それが何に対して泣いているのか、何に対しての感情か、何に対する嘆きなのか、自分自身全く分からない。

 

 近くに誰もいない御蔭で、誰にも気づかれていないが、その内不審に思った誰かが来てしまうかもしれない。

 それもたまらなく怖い、こんな自分を見られたくないからだ、意味もなくただ泣き続けている惨めな自分を――

 

 

「だから……だから!!」

 

 

 そして『自分』ではない『自分』が決意する。

 何を決意したのか、なんとなく分かってしまった。

 それは多分、『自分』は――

 

 ――走る。

 ある場所まで一直線に走りだす。

 その目当ての場所にいるであろう物を目当てに――

 

 

「起きて……た!」

 

 

 『そいつ』は、まるで待っていたかのように鎮座していた。

 そして、流れるような動作で膝をつき、自分が来るのを待ち始める。

 

 

「行くよ!!」

 

 

 『そいつ』――輝夜さんに貢物を持っていく時に乗っている愛馬だ。

 そいつは上機嫌に一度唸り、自分が乗ったのを確認するとすぐに走り始める。

 ここまで来たときには、自分が何をやりだすのかを容易に理解することが出来た。

 

 

 

 自分は――

 『自分』は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「輝夜さんところに、出発!!」

 

 

 ――必死に頑張ろうとしていた。

 

 

 






 クロとは何か?
 黒ではないクロ?

 自分にはまだ分からない。
 『彼女』と一緒にいた『自分』とは何かが違う気がする。

 自分は――

 自分は――

 自分は――





 ――ダレダ?



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