東方劣化伝   作:籠の中の鳥

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感想・アドバイス・批評などなど随時受付中です 11月17日21時36分改稿



第三生 その男 生死を彷徨う

 八意永琳は悩んでいた。

 無一のことについてである。

 

 無一が馬鹿であることは見つける前には予想がついていた。

 だが……と、永琳は付け加える。

 

 

 あそこまで度が過ぎるのは流石におかしい

 

 

 もしかしたら演技かもしれない。それこそ私の命を狙っていて、油断しているところ一突きする。

 そう考えてみたが、それにしてはあまりにも無防備だったのだ。

 隙を見て寝込みを襲ってみたのだが、それに気づくこともなかった。

 それどころか心底幸せに寝がえりまでしてみせた。

 

 これも演技だとも考えた。

 しかし、それをふまえて逆に考えてみたのだ。

 

 これが素であったならば?

 ただ単純に馬鹿だからなのではないか?

 

 実はこれが一番しっくりしてしまう。

 だが、自分の奥底で何かがもやもやしている……これはいったい何なのだろうか?

 

 

 単純に馬鹿……

 それとも何か……

 

 

 理由があると考えるのなら様々なものがある。

 まずは病気であること、これを最初に考えてみた。

 試しに彼の体を調べてみたが……健康そのものであった。

 

 

 次に考えたのは……

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 様々なことを調べて早一ヶ月、これといって分かったことはほぼなかった。

 分かったことと言えば彼が私の刺客でないことと、筋金入りの馬鹿であるということ。

 

 本日調べるのは能力の有無についてである。

 これに関しては単純に能力があるかを調べるだけだ。

 

 私としても仕事が多くなってきたのでそろそろ糸口が知りたいところである。

 そして、無一の能力を調べる検査をしている時……ふと思った。

 

 

「何で私はここまで必死になってるのかしら?」

 

「何か言った? それよりもお腹すいたなー」

 

 

 無一が何か言っているが……残念ながら聞こえない。

 なぜ今更そんなことを思ったのかは分からない。だが、確かに何故ここまで無一に執着する必要があるのだろうか。

 それこそ私自身の仕事を放置してまで……

 

 物思いに耽っているうちに結果がでてきたようで、一枚の紙が機械から出てきた。

 その機械をまた改造するかと考えながら結果の紙を見た。

 

 

 

 

 

 私はその紙に幾つかの書き込みをする。

 考察する必要はあったが概ねこれであると断定することができた。

 

 

 

 

 

 無一が能力持ちだった。

 これだけならばさほど驚くことはない。

 能力を持っている者など数えきれないほどいるし、私が知らない能力が一つや二つあったとしても不思議ではない。

 

 さきほど能力を持っている者が多いと述べたが、確かにそれは正解ではある。

 ただし、能力の性能に関していえば論点が異なる。

 

 最近では簡易的な能力を発現することにも成功している。

 火を操り、水を流し、雷を轟かせ、風を吹かし、光を照らす……

 

 人工的な物以外にも生まれながら持っている者も存在しており、それには規則性がなく、まばらである。

 しかし、それでも決まった種類がある。

 攻撃的なもの、守りの堅いもの、生活に役立つもの、神にも届くもの……

 

 私が見たものは大体そういうものである。

 私自身それ以外にも能力があること自体は推測がいらないほど分かっていた。

 分かっていたつもりだった。

 

 

 

 

 

 しかし……ここまで捻ったものはどう表現すればよいのか分からなかった。

 

 この機械は能力の名前を調べるものではなく、あくまで能力の数値を読み取るものである。

 それからその数値に近い能力に合わせ、命名される。

 能力の数値を測るなど不可能だ、能力は数値化できるものではないというのが常識であった。

 そう言っていた人物たちの口を閉めることができたのはその数秒後であったが……

 

 

 

 閑話休題――

 

 そこから計算された無一の数値を見る。

 見て初めて思ったことは……意味が分からないということであった。

 

 数値がほぼ動いていないのだ。

 それだけなら微弱な能力だと解析が出来る。

 だが、その横にある数値を見ると、その部分の数値が書かれていないのだ。

 

 0という数値は見たことがあったが、何も書かれていないものは初めてみた結果だった。

 その部分の数値の意味を簡潔に表現するならば、今現在の発動化率といったところである。

 厳密には能力の力だったり、他多数の物もある。

 しかし、その部分の数値が書かれていない、そこから考えられることは……

 

 

 

 

 

 単純に機械の欠陥か――

 単純に表記できないほどの――

 

 

 

 

 

 私は無一を解放した後、仕事を忘れて作業に入っていた。

 本当に仕事を忘れていたわけではないが、義務があるはずでもないと理由づけて放置した。

 それほどまで興奮していた……のかもしれない、実際二日三日寝ずの作業だったのも覚えているし、無一がお腹をすかせて目の前に来たのも覚えている。

 

 分からないことを徹底的に調べる……『科学者』としての血がたぎるのを感じる。

 少しずつ解明されていくのが明確に分かる。

 時間を忘れ、寝るのを忘れ、料理を作るのを忘れ――

 

 結果が出るまで、一週間かかってしまった。

 ここまで手こずるのはいつ以来だろう、普通ならば一、二時間程度で終わるものをここまで延ばしてしまった。

 

 ここまで延びたのにも理由がある。

 まず無一自身が能力の自覚がないということ。

 さらに、能力自体が半分……どころか、ほぼ完全に暴走に近いのもだった。

 

 そして……前例がないことだ。

 ここまで勝手に発動しているものを少なくとも私は見たことがなかった。

 

 

 

 

 

 さらに調べなくてはいけないこともある。

 さらに検討しなければいけないところもある。

 さらに解明しなければならないところがある。

 

 

 

 

 

 それを踏まえて暫定的に能力の名前を付けることができた。

 無一が久しぶりの料理を鼠のように口に入れている。

 能力が分かったと言ってはみたものの料理に夢中で気づいていない……これも能力のせいかなと考えつつとりあえず呟いた。

 

 

 






『劣る程度の能力』


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