東方劣化伝   作:籠の中の鳥

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かなり自分の中でも難しい所がやってきました
多分ですがこの前後編ではよくわからない、理解できないところが出てくるかと思われます。
それは自分の表現力不足、執筆量、書き方が甘いからだと思います。
なので、分からない所や理解しにくいところがあれば指摘していただけるとありがたいです。

誤字やおかしい表現などがあったら教えてくれると嬉しいです
感想・アドバイス・批評などなど随時受付中です


第八生 その男 別れを経験する 【前篇】

 

 

 後方から爆音が聞こえてくる。

 それと同時に怒号や悲鳴、叫び声などが入り混じったものが聞こえてくる。

 

 何か大きなものが落下したのか、爆音が響きわたり、耳元が痛くなる。

 その余波で、ものすごい突風が巻き起こり、自分はそれに巻き込まれる形で吹き飛ばされてしまう。

 一瞬の浮遊感――

 その時に見えた光景は上空から多くの物体が落ちてくる様子だった。

 

 そしてすぐに地面に叩きつけられる。

 受身などとれるはずもなかった。

 同時に肺の中に溜まっていた空気が一度にすべて出ていき、苦しさから目に涙がたまる。

 息を求めるために数度の咳をし、体全体に力を入れる。

 体が悲鳴を上げているのが分かるが、ここで倒れていても自分という存在が消えてしまうだけだろう。

 

 

 

 誰かの悲鳴が聞こえる――

 誰かの怒声が聞こえる――

 誰かの笑い声が聞こえる――

 誰かの叫び声が聞こえる――

 

 

 

 いくつもの命が潰えていく。

 名前も分からない誰かという存在が消えていく。

 

 入っていた力が徐々に抜けていくのを感じていく。

 これは――夢なのだろうか?

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 そんなはずがない、そんなはずがないんだ。

 私は目の前に映し出される映像に心の中からそう叫んでいた。

 

 計画は完璧だ。

 この地球からの脱出する。

 その理由は二つあった。

 

 一つは穢れ――

 死のにおいが強くなることにより、我々にとって住みにくい環境になった。

 そのため、研究成果により知り得た情報を頼りに月へと移住する。

 

 それが一つ目――

 そしてもう一つ、民間人をパニックにさせぬために伏せられたもう一つの理由――

 

 

 

 それは隕石である。

 これだけで単純な話、明確な理由になる。

 その隕石を逃れるために月へと移住する。

 

 それが二つ目――

 隕石に対しては幾度となく論議が交わされた。

 

 その隕石の軌道を変えられないか。

 規模によっては大丈夫ではないのか。

 いっそのことその隕石の破壊はできないか。

 

 その全ての案はすぐに降ろされてしまった。

 

 理由は簡単。

 隕石は単数ではなく複数。

 小規模から大規模まで大きさはまばら。

 その隕石群の後方にさらに巨大な隕石を発見。

 

 

 そうなると私たちに残されている方法は一つだけだった。

 

 

 そして私たちは次の行動に移った。

 その隕石がいつ飛来してくるのかを観測することだ。

 観測の結果、幸いなことにその隕石群が到来するのに数十年かかるのが判明した。

 この隕石群を発見したのが試作の一号機ロケットを飛ばした後、偶然に発見したものなのだが、あと数年遅れていたら事態はさらに急を要するものとなっていただろう。

 

 数年後にはすべての移住が完遂している予定だった。

 計画がすべて出来上がった時、場の空気が穏やかになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 だが現実は違った。

 目の前に見えるものはいったい何だ?

 それは六年三カ月十二日後に来るはずの隕石群――

 

 計算は完璧だった。

 天才である私が間違えるはずがない。

 完璧である私が間違えるはずがない。

 

 幾度となく計算したはずだ。

 幾度となく推測したはずだ。

 

 では目の前にあるのはいったい何だ。

 後『数時間』でこの地球に降り注がれようとしている状況は……

 

 

 周りの研究員も唖然としているのが分かる。

 事実、私も唖然と『していた』のだから――

 

 

「緊急レベルブラック! 直ちに持ち場へつきなさい!!」

 

 

 いつの間にか私はそう叫んでいた。

 すると研究員たちは少しずつ我に返っていき、慌ただしく行動を開始する。

 

 それにこんな結末を考えていなかったわけではない。

 『もしも』なんて事態はいつ何時でも表れるものだ。

 

 ロケット自体はすでに完成はしている。

 今から動かすことができれば被害は最小限にできるはずである。

 そう『最小限』には――

 

 

「永琳様!」

 

 

 一人の研究員が私に走り寄ってくる。

 その研究員に私はすぐに持ち場へ戻るよう指示しようとしたが、その前にその研究員が口を開いた。

 

 

「ここは私たちで何とかできます! 永琳様は避難を!!」

 

「……馬鹿言わないで頂戴、こんな状態で避難するわけにはいかないでしょう」

 

 

 その研究員の言ったことに内心驚きつつも、今私がやるべきことを考え、そう述べた。

 しかし、その答えに異議を唱えるように、周りにいた研究員は緊急のはずの手を止めて、私を見つめていた。

 

 

「貴方様は私たちの光です! ここまで発展できたのは貴方様があってのこと! それがこのような所で潰えてはいけないのです!」

 

 

 研究員の一人が数人の兵士を連れて私の目の前にやってくる。

 そして兵士の一人が、無理やり私を連れて行こうと腕を掴んできた。

 純粋に研究員の願いは嬉しいが、このままでは指示を続ける研究員たちの命は――

 

 

「あなた達……こんな勝手な行動は許されないわよ!」

 

「構いません、貴方様が救われるならば本望です!」

 

 

 兵士の力に対抗などできるはずもなく、難なく私はその部屋から連れ出されてしまう。

 そんな私が最後に聞いた言葉……英雄たちの言葉はこうだ。

 

 

「永琳様に代わり私がここの指揮を取る! みんな……死ぬ気で働けよ!!」

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 そして私は護送用の車に乗り込まれている。

 あの研究員たちに対する様々な感情が渦巻き、車のドアを思いきり叩く。

 

 

「永琳殿、このまま例の場所に向かいますが、構いませぬか?」

 

 

 一人の兵士がそう質問してくる。

 私は大きな溜息をはくが、無理もないだろう。

 なにせここまでアクシデントが立て続けに発生するのだから……

 

 

「ええ、構わな――」

 

 

 答えが途中で止まる。

 一人の存在――馬鹿の存在を思い出した。

 

 

「私の家に向かってちょうだい、資料を残していくわけにはいかないわ」

 

 

 私にとっての資料を回収するために――

 たった一人の人間を回収するために――

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 カチカチと針が時間を刻んでいく。

 目の前にある時計が一秒ずつ、淡々と時を刻んでいっている。

 

 意味もなく時計を見つめているだけだが、もしかしたら意味が出てくるかもしれない。

 そう考えながらただひたすら時計を見続ける作業が、約一時間前から開始されている。

 はたしてこの行動で生まれるものがあるのか、それを検証するのが今回の実験である。

 

 カチカチと針がさらに時間を刻む。

 ただひたすらその針を凝視し続ける。

 

 まるで我慢比べのようなこの光景を誰も見ている者はいない。

 今回の実験のテーマは『意味』である。

 『意味のない』行動は、はたして『意味がある』のかどうか。

 

 カチカチと時計の針が揺れる。

 そのリズムに合わせて頭を左右に振る。

 

 全く意味のない行動だ。

 どう考えても意味がない。

 

 

 そこで答えが出る。

 いや、答えのようなものである。

 

 

 『意味がない』行動――

 この後半の『行動』という意味に着目してみた。

 

 『行動』は『おこなう』に『うごく』と書く。

 それがどういった意味になるのかを考えてみる。

 

 今行っているのは『意味のない行動』である。

 それを先ほどの言葉を使って考えてみるとこうなる。

 

 『意味のない動きを行う』

 こう解釈することにしよう。

 すると少しずつ答が見えてくる。

 

 この行動ははたして『意味がない行動』なのか?

 今までの考えを再構築して考える。

 

 

 つまりだ――

 今こうして行っている行動は確かに『意味のない行動』である。

 そして、その後ろにこの言葉をつけたすことによって全てが解決することが可能になる。

 

 

 『意味のない行動』という『意味になる』――だ。

 結局は『意味のない行動』という言葉の『意味がある』になる。

 

 

 今こうして行っている事柄に関してはこうなる。

 

 

 『意味のない行動という行動をしている』

 

 

 『意味のない行動』事態を一つの行動ということにすることによって、この実験の結果を生み出すことが出来る。

 結論は――『意味のない行動』にも『意味がある』だ!

 

 

 

「うん! 我ながらよく考えた!」

 

 

 自分は時計から目を離し、大きな伸びを行う。

 とても気持ちがよく感じるのは一つの答えを、自分の力だけで求めることが出来たからだろう。計算の問題を解けた時も同じ感覚になるのだから。

 

 

「あれ……夕焼け?」

 

 

 右肩をほぐしながら見た外の光景はなぜか夕焼け色に染まっていた。

 それが幻想的に見えて、少しの間見とれてしまう――が、すぐに疑問が出てくる。

 

 先ほどまで見ていた時計をもう一度見る。

 時間を告げる短針は2のところで止まっている。

 数時間ほど前に昼食を食べたのも覚えている。

 

 

 外に出てみよう。

 

 

 その考えに行きついた自分はとりあえず外に出てみることにした――

 が、未だに寝間着だったのに気付き、急いでいつもの服に着替えるために自室に移動した。

 

 

 

 

 

 外に出た感想――

 周りが異様に夕焼け色で染まっている。

 単純な答えではあるが、それゆえにおかしな答えだった。

 

 『異様』なのだ。

 今までこんなことがあっただろうか。

 ――あったかもしれないが多分忘れている。

 

 だけど、最低限ここ数十年の間には一度もないのは覚えている。

 物覚えはよくなってきてはいるので、これは間違っていないはずだと胸を張って言える。

 

 しかし、こうなった原因が分からない。

 そもそもなんでこんな夕焼けに染まっているのか。

 もしかしたら今日はそう言った日なのではないか。

 

 そう思いながら空を見上げる。

 いつも通り太陽がギラギラと輝いている。

 

 

 そう――

 『見上げた』のだ。

 

 

 そこでさらに疑問が生まれる。

 今この時間に太陽が『真上』にあるはずがないのだから

 よく見渡すと、少し斜めのところに『もう一つの太陽』を見つけた。

 

 

「太陽が……二つ?」

 

 

 太陽が分裂したのだろうか?

 太陽に弟がいたのだろうか?

 

 もしかしたら見間違えたのかもしれない。

 ぎらぎら輝く太陽を目を細めながらもう一度見る。

 

 今度は両目に一つ一つ太陽を見ることが出来た。

 そこに太陽が『二つ』存在しているのだ。

 

 本来はあり得ないその光景――

 

 

「わー! 綺麗だなー!!」

 

 

 今から数瞬前の自分はそう思っていた。

 その能天気な自分は光の速度で通り過ぎ、新たな自分が目の前に現れる。

 

 

「永琳に聞くべきだ」

 

 

 思いたったらすぐ行動――

 永琳がこの前教えてくれた言葉だ。

 

 玄関の近くに小さな電話があることを思い出しつつ歩を進める。

 その途中で後方から声が聞こえる。

 

 その声は自分が一番見知っている声で――

 今この瞬間会いたいと思った人の声で――

 

 

「永琳?」

 

 

 そして新たに生まれた疑問で声が疑問形となる。

 なんでこの場に永琳がいるのだろうか?

 そう考えたが、その答えはこの数分後に解決した。

 

 

 

>――――――――――<

 

 

 

 家に着いた私は兵士の言葉を無視して車から降りる。

 若干早足になっているが、今はその考えも無視する。

 

 空が夕焼けに染まり――

 陸が夕焼けに染まり――

 家が夕焼けに染まる――

 

 時間はあまりない。

 迅速に行動しなければならない。

 

 

「無一!」

 

 

 目当ての人物が玄関に入ろうとしているのを見つけ、すぐに声をかける。

 その無一は少し驚いた表情をしつつ言葉を返してくる。

 だが今この瞬間、その言葉を聞く暇もないし、その言葉を返す時間も惜しい。

 

 

「来なさい、理由は車内で話すわ」

 

 

 なるべく冷静に、無一が怯えないように、そう気遣いながら手をひいて来た道を引き返す。

 その行動に驚いているようだったが、どうやら言葉の意味を理解してくれたようで、黙ってついてきてくれる。

 

 そして門を隔ててあるはずの車へと歩を進める――

 途中に、聞いてはならない音が聞こえてしまった。

 

 

 ダダンッ!

 

 

 発砲音――

 今この瞬間には絶対にあるはずのない音――

 なぜ発砲音が聞こえたのか――

 

 私は無一のほうに振り返り、口元にチャックをするようにジェスチャーで指示した。

 その意味も理解した無一は手で口元を押さえる。過剰ではあるが、そのことを伝えるのは後回しにしよう。

 

 

 ダダダダンッ!!

 

 

 先ほどより長い発砲音きこえた。

 無一が心配そうに私を見つめるのが分かる。

 それを優しく頭を撫でることにより気持ちを落ち着かせる。

 

 なるべく音が出ないように――

 なるべく気配を隠しながら――

 

 門から数メートル離れた塀に到着する。

 無一が明らかに疑問の表情をしているがそれを無視し、塀に耳を当てる。

 今ではもう発砲音も聞こえなくなったが――

 

 

 

 そして事がどうなっているのかが理解できた。

 しかしそれは今どれほどの境地に立っているのかも理解してしまう行為だった。

 

 

 

 

「なんで――なんで妖怪がこんなところに」

 

 

 私は無一の腕を無理やり引きながら門との反対の方向へ移動する。

 無一が何か私に話そうとしているが、先ほどの指示通りに従ったままなので、口を開くことができずにいる。

 それを幸か不幸か、最小限の音だけを残し移動することが出来た。

 

 先ほどの幸ならば次に起こったことは不幸なのだろう。

 そう数瞬後に思った。

 

 

 それは一瞬だった――

 後方から聞こえる爆音――

 後方から来る突風爆風――

 

 

 軽く吹き飛ばされそうになる。

 無一を心配するが、まだ手を握っているので大丈夫だろう。

 そして原因となった後方に目を向ける。

 

 そこには無残にも半壊している我が家――

 未だに倒壊していない部分があるのがやけにリアルに思える。

 

 いや違う。

 これが現実なのだ。

 もう引き返すことが出来ない。

 

 

 

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