ー2日後ー
教室に入ると、クラスの皆がいつも以上に騒ついていた。周りの噂では新たな転校生が2人くると言われているらしい。一人はサキュバスだと思うが、もう一人は俺も知らない。俺は朝のホームルームが始まるまで机に突っ伏して眠る事にした。
30分後……
なかなか眠れない。周りの声が煩すぎて目をつぶってもなかなか意識が落ちてくれない。だが、俺は窓側に席があるから目を開けると日光で目がやられてしまう。どうして今日は曇りじゃないんだ。そう俺が不満に思っていると、担任の先生の足音が聞こえた。ドアを「ガララ…」と開けて担任の先生が「起立!」と言うと俺も含めてクラスの全員が立ち上がった。俺は目をこすりながら猫背の状態でなんとか視界を確保すると、担任が教室の入り口から教卓の前まで歩いて移動していた。
「今日から新しく転校生が二人来たんだ。入って来て良いぞ!」
担任の先生の声と一緒に教卓の前に2人の転校生が移動した。その中には制服姿がなかなか馴染めなさそうなサキュバスもいた。もう一人は男子用の制服を来ているが、髪が肩まで伸びているので一瞬女子だと見間違えてしまった。
「じゃあ、まず女の子から紹介してもらおうか」
「わ、分かりました。私の名前は、
「ハハハ、まあこれからこのクラスをよろしく頼むよ咲川君。それじゃあ次は隣の君、自己紹介よろしくね」
「はい、分かりました」と長髪の転校生は無愛想に返事した。少し担任の先生も戸惑っている状態だ。
「俺の名前は
〈数時間後〉
俺は帰りのホームルームの後、ミカエルにポテチの差し入れを持って行こうと学校の裏山にある十字の建物に移動した。実はウリエルの一件を終えて、俺がいつでもミカエル限定の
天界
天界に入ると、内装が会社のオフィスのようなところに着いた。
(もうここ会社そのものだよね?エレベーターや受付があるんだけど、もしかしたら天界は物質界の文明を真似ているのか?)
そんな事を考えながら受付にいる天使に聞くと、「あ、
「ごめん待った?なかなか休めないもんでさ、そういえばヘブンズホールからここに飛ばした事はなかったよね。ようこそ、
「会社って事はやっぱり天界は物質界の文化をパクってるんじゃねえか」
「は?何を言ってるんだ
「んな訳ねえだろ!嘘も大概にしろクソ天使。さっき『会社を設立する遊びに付き合ってるんです』ってそこの受付の人から聞いたわ!」
「何!?あいつら遊び感覚で付き合ってたのかよ!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!これじゃあ社長の示しもつかんではないか!」
「(そういやコイツ前に違う天使から天界のマスコットとか言われてなかったっけ?本当に天界でトップに立つのかよコイツ)……そういや物質界でウリエルを追いかけてたガブリエルとラファエルはどうしたんだ?」
「おい、今のは流石に同情の目を向けていたのは私でも分かるぞ。次バカにしたら分かっとるよね?」
「へいへい、今から貢物開けるから機嫌直せよロリ天使」
「ろ、ろり!?」
俺は買ってきたポテチの袋を開けてテーブルの上に広げた。すると、ミカエルは不服そうな顔をしながらソファに座ってポテチを一枚人差し指と中指で挟んで口の中に放り込み、足を組みながら口の周りを舌で舐め回して背中をソファに預けた。
「ラファエルは天界に戻ってもらって私の仕事を終わらせるように今肩代わりしてもらってるよ。ガブリエルは物質界の担当だからそのまま物質界に勤務してもらってるけど、最近連絡が来ないんだよね。何か物質界でトラブルでもあったのか心配なんだが、君は何か心当たりはないか?」
「うーん、特にそれと言った事に関しては何もないが大丈夫なんじゃないのか?ガブリエルって確か弓矢持ってたよな。当たると爆発する水の矢、あれがある限りなかなか太刀打ち出来ないと思うけど?」
「遠距離から一方的に攻撃するだけならの話だけどね。ガブリエルの弱点は元々ウリエルの放つ熱で水の矢を蒸発させて高火力の攻撃が発動しなかったり近距離戦に持ち込んで一方的に攻撃をしながらガブリエルに最大火力を打ち出したり、色々攻略方法はあるんだよ。ソースは私r
「うわぁ、天使でもパワーハラスメントなんか起こすんだ。そのうち天使達がミカエルにストライキでも起こすんじゃねえのか?」
「大丈夫、私には総隊長としての威厳があるんだ。そう簡単に裏切られはしないよ」
「でもこの前ラグエルって天使が精神年齢10歳の総隊長さんとか言ってなかったっけ?」
「………グスン」
「おい待て!何故そこで泣く!?受付の天使が目を引きつって見てるからやめて、俺が悪かったから!これ以上泣かないで、な?」
「じゃあ、次はコンソメ味のポップコーンお願いね?」
「ちょっと此処で
「やめて!もっと仕事が増える!」
〈一方その頃、物質界では〉
ガブリエルサイド
〈大浦海岸周辺〉
私は今、身体中が傷だらけの状態で羽もろくに動かす事が出来ずに悪魔の力を操る人間から首を片手で締め上げられている。
「話せ、
「く、何が…狙いだ。お前、この世界の…人間じゃないな」
「質問に答えろ、
「く、貴様のような…危険な奴に、教えるわけないだろ」
「そうか、らもうお前に用は無い。海の藻屑となって消え失せろ。」
私は人間から首を離されて海に落とされた。
「(クソ、こんなところで終わる訳にはいかないのに…だが、水を司る私にとって海の中で死ぬのは私の中で本望なのかもしれないな。ん?誰だ?こっちに泳いで近づいてきてる奴は、まあどうでも良いか。私はもうどちらにしろ助からん、最後に総隊長の顔でも拝みたかったな。)」
〈数時間後〉
「ん、……ガハガハ!」
何故か私は石垣の上に寝転がっていた。なんだか体が怠い、海に浸かっていた所為だろうか?日差しが身体全体に当たって痛い。
「やっと起きた?」
目の前に私の顔を覗くように麦わら帽子を被ったウリエルが私の視界に入ってきた。
「何故、ウリエルが此処に?」
「聞いてないの?淳君はこの近くに住んでいるの。此処は自然がいっぱいで近くに海や山が広がってるこの地域では釣りを良くやるの。それにガブリエルが海に落ちていく姿が見えたからさ、居ても立っても居られないしね。」
「そう、ですか。すいません、少し…休みます」
私はもう少しの間目を瞑って休む事にした。
「今目を閉じるとザドキエルに起きた瞬間抱きつかれて傷が開くかもしれないわよ」
「はあ、そういえばこの世界にあの
「ほら立って、肩貸して上げるから…一先ずは私の寝泊まりしているザドキエルの家に行くわよ」
「え!?」
「何か文句でもある?」
「そうじゃない、何故そこまでする?私は仮にもウリエルを殺す為に追いかけ回した天使だぞ」
「だから何よ?その理由は自分で招いた事だから今更ガブリエルやラファエルを恨むなんて筋違いじゃない。それに、困った時にはお互い様でしょ」
「参ったな、……私がウリエルの立場なら絶対ウリエルを助けないよ」
「案外そうでもないかもしれないわよ。」
「ん、それはどういう事だ?」
「ガブリエルが私の立場にあるなら、淳君と会う事で違う選択肢を選ぶキッカケを作ってくれるかもよ?///」
「ハハハ!」
「何か私変なこと言った?」
「嫌、なんでもないよ」
「何よ、教えてくれたって良いじゃない」
「嫌、まさか顔を真っ赤にしながら言われると妬けちゃうなって思ってね」
「な!?///」
(これからもウリエルを大切にしろよ、人間俺はあの後ミカエルに家の前にエンジェルホールを出してもらった後、帰宅をして自分の部屋のベットの上で本来隣の部屋にいるはずのウリエルと物質界を担当している天使であるガブリエルが俺の服を着て寝ていた。お母さんに事情を聞くと、どうやら海に溺れていたガブリエルをウリエルが助けて家に帰ろうと思ったがザドキエルがまだ帰ってなくてびしょ濡れの状態でお母さんが見つけたらしい。そこで、俺の服を勝手に着せて休ませているらしい。俺は今何をしているかというと、夏休みの宿題を出して早速リビングにあるテーブルでやっていた。
「ん、う〜ん…」
ガブリエルがそう目をこすりながら声を出して俺の部屋のドアを開けてリビングへと移動してきた。
「よ、久し振りだなガブリエル」
「お前は人間か、すまないな…さっき負傷したところをウリエルから助けてもらい君の家で休ませてもらった。って、それよりもお前に話しとかないといけない事がある」
「俺に?なんだよ話しとかないといけないことって、物質界の事情はミカエルに報告した方が早く解決されると思うけど」
「そうなんだが、今回は解決されるまでに
「ということは今回も天界絡みか?」
「嫌、今回はもっと面倒な奴が相手になるかもしれん」
「面倒な奴?」
「嗚呼、ウリエルがまだ寝ているな。これはウリエルに内緒にして欲しいんだが、今回の事件はどうやらルシフェルが関わってそうなんだ」
「ルシフェル?」
「聞いていないか、ウリエルが天界から出た1番の理由だと聞いたが?」
「……………あ!?思い出した、確か天界が殺したって表向きで発表したけど生きている可能性があるってウリエルが情報を掴んで
「今回の相手はルシフェルじゃない。ルシフェルは200年前に
「ルシフェルの生まれ変わり?それって何処の誰だよ」
「少なくとも天界の住民ではない。だが、それ以外の情報は私も分からない。だが、奴はお前と同じ学校の制服を着ていたんだ。あれほど禍々しい魔力は感じた事がない」
「ふーん、じゃあ今回ミカエルに情報が渡らなかったのもそれが原因なんだな。それにしたってガブリエルが海で溺れるって、ガブリエルは意外とおっちょこちょい?」
「んな訳あるか!ただ、今回お前と同じ学校の制服を着ている奴に海に落とされたんだ」
「ガブリエルが?」
「嗚呼、相手はルシフェルと同じ魔力を感じた。魔力量的にはそうだな、丁度お前程はあるんじゃないのかと思う程はあるな」
「俺と同じくらいの魔力を持っている禍々しい魔力を操ってガブリエルを圧倒するくらいの実力者か、確かガブリエルってウリエルの炎とミカエルのような近距離で集中砲火するタイプが苦手なんだよな」
「総隊長はそんな事まで話すのか、ハア。今はそんな事どうでもいいか、そうだな、確かに私はウリエルの炎と総隊長のような近距離の火力馬鹿は苦手だ。だが今回は違う、系統が違うんだ」
「どんな風に違うんだよ」
「相手は影を操ってきた」
「影?」
「嗚呼、影だ。どうやら相手の能力は相手の影を取り込んで肉体ごと影に取り込んで吸収する技と影を操って相手を拘束したりする事も出来る。はっきり言って影に捕まったら総隊長でも手を焼くと思う」
「そこまでなのか、でも魔力なんてうちの高校の生徒から感じないけど?」
「まだ来たばっかりでお前も気づいていないだけかもしれない。忠告はしといたぞ、後奴は私に「
「さあ、まだ学校から出てないんじゃないか?もしくはショッピングモールで買い物とかかな。いつもならもう帰ってきてる時間帯だと思うけど、いきなりどうしたんだよ、そんなにザドキエルが嫌いなのか?」
「ま、まあそれもあるんだがアレでも天使なんだ、この物質界で潜り込んでいる天使といえばザドキエルしかいない」
「ということは、まさか!?」
「嗚呼、次はザドキエルを狙われるかもしれない」
「おい、どうする!もしそれが本当ならザドキエルが今何処にいるかなんて俺分かんねえぞ」
「く、仕方がない。魔力信号でザドキエルに連絡して場所を聞くしかないか」
ガブリエルはそう言うと、痛そうにしながら目をつぶって片耳に白い羽の模様が付いたピアスを付けた。
(そういえば天使って天界の補助装置を使って天界から
「あ、総隊長殿。ザドキエルは今何処にいるか分かるか?…え、関わりたくないからオフにしてる?今はそんな事言ってる場合じゃないんだ、早くいる場所を教えてくれ!………………そうか、了解した。こちらも急ぐ!」
ガブリエルはそういうと、ピアスを外しながら「ここから先にある電停で女子高生と一緒に帰っているらしい。急いで向かうぞ!」と言って玄関に走っていった。俺は追いかけるように外へ出ると、いきなり俺とガブリエルの間に紫のオーロラが現れた。
「な、なんだ!?」
「一体何処の誰だ、こんな時に邪魔しやがって!その紫のオーロラは恐らく魔力結界だ。絶対に触れるなよ、魂だけ残される仕組みになっている。私の魔力信号を裏で聞いていたのか、クソが!」
「ガブリエルは先にザドキエルの方へ向かってくれ!俺はここでこの魔力結界?をなんとかする!」
「なんとかって魔力結界を解く算段は付いているのか?」
「嗚呼、大抵こういう時は術者を倒せば解けるやつだ。さっさと結界を作った奴を倒したらすぐそっちへ俺も向かう」
「無理はするなよ!」
ガブリエルはそう言うと、白い羽を羽ばたかせて空中移動した。
「さて、出てこい魔力結界を作ったクソ野郎!俺が相手になってやる!」
俺が大声でそう叫ぶと、下からどんどん黒い影が生まれた。その中からゆっくりと褐色の肌を露出していて、悪魔のような牙を見せながら大量の蝿と一緒に現れた。
「ふふふ、腐りかけの死体を探すとするか。ん?なんだお前は、そこを退けてくれないか?さもないとその身体が腐りかけの腐敗臭を漂わせる死体に変貌するぞ」
「え?アンタがこの魔力結界を出したんじゃないのか? 」
「何を言っておる、妾は物質界へ来たばかりの只の悪魔じゃよ?それになんじゃお主?先程からその指輪とネックレスから妙に眩い光が出ておるぞ。早くそれをしまってくれないか?」
「え?嗚呼、すまない。悪魔にはエンジェルリングと焔の剣はキツイよな」
「エンジェルリング?………フフフフフフ、そうかそうか。お主が我らの王の天敵なる存在か、」
「王?天敵?何のことだ」
「今は分からずとも時期に理解出来るじゃろう。それよりも、今はこの魔力結界を解くのが先じゃ、少し手伝ってくれんか?」
「え?いいけど、丁度俺もこのオーロラを消したかったし色々手伝ってもらうぞ。それと名前教えてもらっていい?」
「お主が妾の名前を聞くか、フフフフフフ!まあよい。教えてやろう、妾の名はベルゼバブじゃ。腐った死体や果実を好む。お主の名はなんじゃ?」
「俺の名前は中山淳、一応
「お主は魔力結界がどう作られるのかも知らんのか?」
「俺はまだこの界隈に疎くてあんまり魔力の絡む事に慣れてねえんだよ。それに元は物質界の人間なんだから魔法なんて知るわけねえだろ」
「はあ、仕方ないのう。魔力結界とは特定の魔法陣を3つ作る事で完成される壁なんじゃ。と言っても魔力結界は魔力と生命の宿る物だけを除外する力があるだけで自然の力は通してしまうところがあるんじゃ。ただでさえ魔素が少ない物質界だからこのくらいの範囲しか魔力結界を産むことは出来ないがな。予測して計算すると、ここから2メートル付近に同じ魔力結界用の魔法陣が描かれているはずじゃ。どうにか自然の力で魔力結界の魔法陣を3つのうち1つでも破壊できたらここから出ることが出来るじゃろう」
「そうか、でも自然の力でしか魔法陣を消せないんだろ?どうやって消すんだ?」
「魔法陣とは術者の血で描かれるものじゃ。という事は、勿論水で洗い流すのが一番早かろうて」
「そうか!ありがとう、それじゃあ急ぐか!」
俺は慌てて魔力結界にそりながら魔法陣を探した。
〈一方その頃、ザドキエルは……〉
ザドキエルサイド
「サキュバスちゃんどうしたの?顔が暗いけど、荷物重かった?」
「い、いえそんな事はありません。ただ、後ろから誰か付いて着てませんか?」
「ん〜?あら、誰かと思えば貴方と同じ転校生の浅野君じゃない、でもなんだかおかしいわね。表情がやけに暗くて、まるで殺気を向けられてるような感じだわ」
その瞬間、浅野君の影から大量の黒い手が飛び出てきた。私は羽を広げてサキュバスちゃんを抱えながら建物の屋上に飛びながら移動した。黒い手は追いかけるように私達を追って来たが、日当たりの強いところに出ると黒い手が浅野君の元に戻っていった。
「なんのつもり?鈴ちゃんは貴方に渡さないわよ!」
私がそう言うと、浅野君は私を睨みながら「用があるのはアンタだ座土器先生、悪いが
「あら、浅野君どうしてその事を?まさか物質界の人間じゃないの?」
「アンタに話す事は一切ねえ」
「その姿はまるで悪魔を体現させるような姿ね。それにしても悲しいじゃない。仮にも副担任である私にそんな冷たい言葉を使うんじゃありませんよ」
「話すつもりがないなら痛い目に遭ってもらうが、覚悟はいいな」
この時、浅野君の背中から紫の鮮やかな羽が勢いよく「ドシュ!」っと音を立てて羽を広げた。
「浅野君、貴方もまさか!?」
「さっさと
後編は明後日出します