脳内妄想無双は好きだが実現するのは違うと思う   作:大鷹とび

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いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

最近見てくれる人が増えて嬉しい限りです!

今回は主に簪との話になります。


23話 忘れた頃に油断した

---IS学園 食堂

 

俺は一夏と別れた後食堂ですっかり定着した面子である簪さんと本音さんとご飯を食べていた。

 

「簪さん、今日の弐式の開発作業の事なんだけど...どうしたの?」

 

「なっなんでもないっ!」

 

「本当に?さっきから目を合わせてくれないし...俺簪さんの気に障るようなことしちゃってたかな...」

 

「ちっ違うの!そうじゃなくて...えっと...その...」

 

「その?」

 

「サインください!」

 

簪さんは突然俺に向かってマジックと色紙を何処からともなく取り出して突き出しながらサインを求めてきた。いや何故?

 

「...どうして急に俺なんかのサインが欲しくなったの?」

 

俺は止まりかけた脳を何とか動かして簪さんに聞いてみた。

 

「...なの...」

 

「え?」

 

「蒼機兵は今の私の一番の憧れなの!」

 

「ヴぇっ...!?」

 

「あ、むっきーが珍しく固まっちゃった」

 

俺は簪さんの急なカミングアウトに思考が完全に停止し情けない声と共に固まってしまった。

 

「おーい、むっきー大丈夫ー?」

 

本音さんが俺の目の前で手を振っている。

 

「...っは!?」

 

「あ、戻って来た」

 

「ごめんあまりにもびっくりして固まっちゃった...えーっと簪さんの今の憧れが蒼機兵で、つい先日篠ノ之博士からの発表もあって俺が蒼機兵であることが判明したから簪さんは俺に話しかけづらくなって何とか話したけど思わずサインを求めてしまったと...」

 

「そ、そんなに事細かに口にしないで...恥ずかしいから...///」

 

「あ...ごめん簪さん、でも俺...蒼機兵に憧れるのはやめた方が良いよ...」

 

「えっ...?どうして?」

 

「簪さんみたいな真っ直ぐ生きている人が憧れていいような存在じゃないんだ...蒼機兵も...俺も...」

 

「で、でも...」

 

「俺なんかよりもっと簪さんのヒーローにふさわしい人間はいるさ...さて改めて今日の弐式の開発作業についてなんだけど...」

 

簪さんの話を切って俺は別の話を始めた。俺みたいな血濡れの人間は誰かの目標にも憧れにもなっちゃいけない...

 

———————————————————————

 

---IS学園 整備室

 

午後の授業は座学だったため特に問題なく終わって俺は簪さんの弐式の開発の為に整備室に来ていた。

 

「昼に言った通り悪いけど俺は夢幻の整備をするから少し時間を貰うよ」

 

「うん、分かった...」

 

まず俺は昼に二人に伝えた通りに夢幻の整備を始めた。夢幻の待機形態である眼鏡型端末を整備用の台座にセットすると夢幻が展開された。

 

「さてさて、待たせて悪かったな」

 

俺はコンソールに表示されるデータを確認しながら夢幻の頭辺りをポンポンと軽く叩いた。

 

「えーっと...ソフトウェア面では特に問題なさそうかな?ん?なんだこれ?」

 

夢幻のフラグメントマップのデータを確認しているとバグとも何とも言えないデータが隅に少しあった。

 

「こうゆうのは何か起こる前に削除した方がいいだろうな...」

 

俺はキーボードを操作してそのデータを削除しようとしたが...

 

「削除できない?うーん...後で聞いてみるか...」

 

とりあえず今すぐに何か起こるという事ではなさそうだったのでとりあえず放置して俺はハード面の整備に取り掛かった。

 

「まあこっちは武器とSEこそあの時無くなったけどそれ以外は特に問題なさそうだな、武器に関してはまた作り直したし後は装甲を磨いて終わりかな」

 

一通り問題がない事を確認して俺は夢幻の装甲を用意していた布で隈なく磨いてメンテナンスを終了した。

 

「ふう...終わった終わった...また頼むぞ夢幻!さて簪さん達の所に行くか...」

 

自分の作業を終えて簪さん達の所に行くと簪さんが何か難しい顔をしていた。

 

「お待たせ、なんか難しい顔してるけどなにかあったの?簪さん」

 

「あ、海、お疲れ様。何かあったというか詰まっちゃったんだけど...後これさえ出来れば完成なのに...」

 

簪さんが悔しそうにしながら見ている画面にはマルチロックオンシステムのソースコードが記述されていたが、どうやら上手くいっていないようだ。それでもそれ以外を完成させているのだから充分凄いと思うんだけどなぁ...

 

「成る程...マルチロックオンシステムか...見せてもらってもいいかな?」

 

「うん...お願い...」

 

簪さんから端末を借りてソースコードを見てみると、かなり複雑なプログラムが組まれていて一筋縄ではいかなそうな事が一目で分かった。

 

「これは中々...でも何とかできないことは無いかな?」

 

「ほんと!?」

 

「でもデバッグしながらじゃないと出来ないから簪さんには弐式を使ってアリーナで実際に『山嵐』を撃ってもらうことになるけど大丈夫?」

 

「だ、大丈夫!そのぐらいだったらいくらでもやるから!」

 

「分かった、じゃあアリーナの予約が取れた日に他の項目の最終確認も兼ねてやることにしよう」

 

「う、うん!、良かった...やっとここまでこれた...」

 

「良かったねぇ、かんちゃん...」

 

簪さんは弐式の完成が見えてひとまず安心したようだ。これなら俺も手伝った甲斐があるな。

 

「じゃあとりあえず今日はこれで解散かな?」

 

「うん、じゃあまた今度よろしくね」

 

「もちろん」

 

外も暗くなり始めていたので今日の作業は切り上げて俺は簪さんと部屋に戻った。

 

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---IS学園 学生寮 1035室

 

<簪視点>

 

今日の弐式の開発作業を終えて私と海は自室に戻って少し弐式の資料やプログラムの整理をしてから、そのままゆっくりと過ごしていた。

 

「あ、簪さん、この前時間ある時にクッキー焼いたんだけど食べる?」

 

「そうなの?じゃあ少しもらってもいい?」

 

海はこうやっていつの間にかお菓子を作っていていつも私に食べさせてくれるから、本音程じゃないけど私も結構海のお菓子に懐柔されちゃってるような気がする。

 

「じゃあ飲み物と一緒に持ってくるから少し待ってて」

 

海はそう言って簡易キッチンに向かって行った。

 

「どうして自分に憧れちゃだめなんて海は言ったんだろう...」

 

海がクッキーを取りに行っている間に私はふと今日の昼の会話を思い出した。

 

蒼機兵の正体が明らかになった今、海に接触しようとする人間も多いだろう。もちろん自分の利益になるからという理由だけで近づく人間が8割だろうけど...『白騎士』とは違ったロボットアニメの主人公機のような見た目の機体に惹かれて純粋にファンだという人間もいるから...

 

私もその一人だし...なんなら蒼機兵をモチーフにしたアニメは全部見てるし円盤もコンプリートしてる。海本人もまるでアニメの主人公みたいに強いし、なんでも出来て優しくて...この前襲撃の事件の時も守ってくれて...

 

「私何考えてるんだろ...」

 

「どうしたの?簪さん」

 

「なっなんでもない...」

 

「そう?ならいいけど」

 

ほんとに何考えてるんだろ私...最近海を見るとなんかもやもやするし...今は弐式の事に集中しなきゃ...

 

「クッキーとココア持ってきたからどうぞ?」

 

「ありがとう、いただきます」

 

海が自分で作ったクッキーをテーブルの上に置いてくれたので声をかけてから一つ食べた。

 

「うん、やっぱり海の作るお菓子は美味しい...」

 

「それなら良かった、そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」

 

海のクッキーを食べたら落ち着いたし弐式が完成したら少し余裕も出来るだろうからその時に改めて海の事は考えよう!

 

「よし!」

 

「急にどうしたの?簪さん」

 

「私個人の事だから気にしないで」

 

「分かった」

 

そうして私は海のクッキーとココアを完食した後また明日に向けて床に着いた。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ

 

<海視点>

 

「OK、簪さん、ある程度飛行してから訓練用ターゲットに山嵐を撃ち込んでみて?」

 

「分かった!」

 

あれから2日後に打鉄弐式の最終テストの為にアリーナを借りることが出来たので俺と簪さん、本音さんはアリーナにいる。今は山嵐のテストの真っ最中だ。

 

「前にもテストしたから飛行は問題無し...ここからか...」

 

「ターゲットロック...山嵐発射!」

 

弐式から発射された大量のミサイルはそれぞれロックオンした目標へ向かって飛んでいき見事に命中した。

 

「やった...!」

 

「よしっ!」

 

色々と苦労したが夜なべして作った甲斐あってマルチロックオンシステムは無事に完成したようだ、これでまずは一安心出来そうだ。

 

≪ビーッ!ビーッ!≫

 

「えっ!?なっ何!?」

 

突然簪さんが見ていた弐式のコンソールから警告音が鳴ると弐式はPICが切れたのか、動力が切れたのか、急に力が抜けたように失速して地面に落下し始めた。

 

「かんちゃん!?」

 

「マジかよ!?ここから復旧は...間に合わない...くそっ...」

 

俺は持っていたタブレットを放り投げて簪さんの方に向かって走った。

 

「夢幻っ!!」

 

ISを受け止めるには夢幻よりもエクスエクシアの方が良かったがそんなことを考えている余裕も無かった。

 

「簪さんっ!」

 

俺は即座に夢幻を身に纏って最速で飛び立ち落下中の簪さんに向かって手を伸ばした。

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

「エラーが取れない!?このままじゃ...」

 

私は真っ逆さまに落下している中で何とか復旧しようとプログラムを操作したが間に合いそうには無かった。

 

「いや...死にたくないっ...」

 

せっかく弐式の完成手前まで来たのに...やっとお姉ちゃんに追いつけると思ったのに...

 

「もっと海と話とかしたかったのに...」

 

「簪さんっ!」

 

「っ!?海!?」

 

「しっかり掴まってて!」

 

そういって海は私と速度を合わせた後に体勢を変えて私を抱きかかえた。

 

「止まってくれよ!夢幻!頼む!」

 

海の専用機である夢幻がスラスターを逆噴射して速度を殺していく、いつの間にか特殊兵装である夢現も追加ブースターの様になっていてすさまじい勢いでエネルギーを噴射していた。

スラスターを全開で噴射した甲斐あってか私と海が落ちる速度はだんだんとゆっくりになってそして地面に着く頃には停止してゆっくりと着地することが出来た。

 

「間に合って良かった...」

 

私は海にそっと降ろしてもらうとそのまま弐式を解除して地面にへたり込んでしまった。

 

「かんちゃん!むっきー!大丈夫!?」

 

「俺は大丈夫!簪さんは!?どこか怪我したりしてない!?」

 

「わ、私も大丈夫、びっくりして腰が抜けちゃっただけだから...」

 

「そうか...良かった...」

 

海は安心したような表情をした後、急に私に向かって土下座してきた。

 

「俺の確認不足だ!申し訳ない!簪さん!」

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「俺の確認不足だ!申し訳ない!簪さん!」

 

弐式の突然のトラブルによって簪さんが地面に激突しかけたのを何とか止めることが出来た俺が次にしたことは簪さんへの謝罪だった。

 

「なっ!?海は悪くないよ!だからそんな土下座なんてしないで!」

 

「いや俺が悪いんだ!もっと念入りにデバッグするべきだったんだ...飛行中に使用したら発生するエラーを見つけられなかった俺の落ち度だよ...」

 

この世界に転生してきてなんでも出来るようになって油断していた...こんな分かりやすいエラーを見逃すなんて...だから俺は...

 

「誰にでもミスはあるし海は直ぐに私を助けてくれた...だからもういいよ?」

 

「でも...」

 

「なら、少しでも早く弐式が完成するように頑張ろう?それでいいから」

 

「分かった...全力でやらせてもらうよ!」

 

 

それから俺は簪さんの弐式を完成させるために今までより早く、かつ隅々まで確認しながらプログラムを打ち込み、なんと今日の内に弐式を完成させることが出来た。

 

「完成したな...」

 

「完成したね...」

 

俺は完成した弐式を纏っている簪さんを見ながら、簪さんは自分が纏っている弐式を見ながらしみじみと言った。

 

「「やったぁぁぁ!」」

 

俺達はぴょんぴょんとジャンプしながら喜んで簪さんに至っては弐式を解除して俺に抱き着いてきた。

 

「本当にありがとう!海がいなかったら絶対に完成してなかったと思う!」

 

「そんなことないよ、簪さんの努力の結果だ」

 

俺も簪さんも弐式完成の興奮のまま会話していたのだが...

 

「かんちゃんとむっきーは本当に仲が良いんだねぇ、そんなにくっついちゃって」

 

「え?」「は?」

 

本音さんの言葉に冷静になって俺と簪さんは自分たちの状況を自覚した直後にぱっと離れた。

 

「ひゃあ!」

 

「ごごご、ごめん!」

 

「だ、大丈夫!私も弐式が完成して嬉しくてつい...」

 

「と、とりあえず今日はもう時間もギリギリだし部屋に戻ろうか!」

 

「そ、そうだね、弐式も完成したから今日はもう休んだ方がいいかも」

 

「そういうことでお疲れ様本音さん!」

 

「じゃあね本音!」

 

「かんちゃん!むっきー!いっちゃった...結局部屋は同じなんだからあれじゃ意味無いんじゃないかなぁ...まあいっか~」

 

こうして俺達はそそくさと寮の部屋へと戻っていったのだった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

「「気まずい...」」

 

弐式を完成させて戻って来たのはいいものの俺も簪さんも部屋が同じであることをすっかり忘れて部屋に戻り、お互いに一瞬硬直したのちいつもの順番でシャワー等を済ませて今に至っている。

 

「「あの...」」

 

「「あ...」」

 

「海からどうぞ...?」

 

「いや、ここは簪さんから...」

 

「「...」」

 

「ふっ...」「くすっ...」

 

「「あっはっは!」」

 

「なんだか気まずくなってたのがバカみたいに思えてきちゃった」

 

「俺もだよ、簪さん、とりあえず弐式完成おめでとう!」

 

「ありがとう!海!これから私も訓練に参加できるからよろしくね!」

 

「もちろん!じゃあ今日は弐式完成記念ということで2人だけだけどぱーっとやろうか!」

 

「いいの?やったぁ!」

 

簪さんも同じように思っていた良かった、気まずかった雰囲気も無くなったし今まで作り溜めてたお菓子を大量に放出してパーッとやることにしよう!

 

「かっ海!助けてくれ!」

 

「きゃあ!」

 

俺がお菓子や飲み物を用意しようと立ちあがった瞬間に部屋の入り口の扉が急に開いて一夏が入ってきてそれに簪さんが驚いて声を上げた。

 

「一夏お前なぁ、人の部屋に入るときは絶対にノックしろって散々小学生の時から言ったろうが!簪さん大丈夫!」

 

「う、うん、びっくりしたけど転んだりはしてないから...」

 

「わ、悪い海...」

 

「はぁ...この事は千冬さんに報告しておくとしてどうしたんだ?そんなに焦ってるってことは何か問題があったってことだろ?」

 

「そっそうだ!そうなんだよ海!」

 

「具体的には何があったんだ?」

 

「ここじゃ言えないからとりあえず俺の部屋に来てくれ!」

 

「はぁ...分かったよ...簪さん、悪いけど少し待ってて、遅くなりそうなら連絡入れるから」

 

「うん、分かった」

 

「じゃあ行くぞ一夏」

 

「ありがとう海!」

 

簪さんに断ってから俺は一夏の後に続いて歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「クーちゃん!クーちゃん!あの女かーくんのお菓子いっぱい食べてるし仲良くしててずるい!何よりハグしてた!!ずるい!!消してもいいかな?」

 

「落ち着いてください束様そんなことをしたら一発で海様に嫌われてしまいます」




と言う訳で弐式はこの段階で完成させました。そして束さんよりも強いフラグを立ててしまったかもしれない簪との関係はどうなるのか、それはまだまだ先の話です。

オリ機体の設定は出来てるのに中々出せないのがもどかしい...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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