今回から夏休み中の海の動きを数話投稿していく予定です。
それでは楽しんでいただければ幸いです。
--某所 月兎製作所 居住区
『ワールド・イノベイション社』による『MS』の発表から数日、思ったより世界は大きな動きを見せず、IS学園は夏休みに入った。
俺は夏休み初日に両親の居る月兎製作所の居住区に帰った。まあつまるところ里帰りである。
「クロエ、束さんはどうだ?」
「臨海学校の日からずっと研究室に籠ったままです、食事を摂りに出てくることもありませんし私も声をかけたのですが...」
「そっか...ごめんな、俺の所為でクロエにまで迷惑かけて...」
「大丈夫です、人間誰にでも秘密があると認識していますし海様にもそれはあるのでしょう?」
「ああ、理解が早くて助かるよ」
今はクロエに束さんの状況を聞いている最中だがやはり臨海学校から戻ってから様子は変わらないようだ。
「俺も様子を見に行ってみるよ、ありがとうなクロエ、デュノア社の管理とかもやってもらってるのに」
「私は大丈夫です、私に出来ることをやっているだけですから」
「そっか、それでもありがとうクロエ...」
俺は衝動に駆られて思わずクロエの頭を撫でる。
「んっ...」
「おっと...嫌だったか?」
「いえ、また今度撫でてください」
「ならよかった」
クロエと会話した後、束さんが籠っている研究室に向かう。
「束さん、俺です、海です...」
研究室の扉の前に立つとノックしてから声をかけて返事を待つ。5秒、10秒、それ以上経っても返事は返ってこない。
「ちょっと話しませんか?2人だけでちょっとしたものでもつまみながら...」
臨海学校の夜、俺が一方的に突き付けた事実をきっと束さんは信じたくないのだろうと...そう思って束さんとはもっとゆっくり話す必要があると俺は思った。
5分、10分経っても俺は扉の前で待ち続ける。
「俺は...」
束さんに言うつもりもない独り言を呟こうとした瞬間に研究室のドアが開いて伸びてきた手に腕を掴まれて中に引き込まれる。
「おっ...と」
研究室の中に引き込まれた後、掴まれた腕の先を見ると、数日間風呂に入らず、食事も摂っていなかったのであろう髪がボサボサでやつれた束さんが居た。
「束さんを信じてね...かーくん」
束さんはそう言うと掴んだ俺の腕に注射器で何かを注入する。拒否も出来たけど俺は束さんの言う通り信じてそのまま受け入れる。
「えっと...束さん...これは何か教えてもらってもいいですか?」
「それはかーくんの身体を蝕んでるGN粒子の毒素による症状の進行を少し遅くする薬だよ、三日三晩調べ続けてなんとかこれは作れたんだ...」
「それは...ありがたいです、ありがとうございます、束さん」
「でもその薬を使っても...なんとか1年持たせるのがギリギリなの...それにまたあいつらの攻撃をくらったらかーくんは確実に...いや、そうじゃなくても...」
「それは分かってます、でもあいつらは多分直接表に出てくる事はしばらくなさそうですし、助かりましたよ」
「かーくん...」
束さんは俺を今にも泣きそうな目で見てから俺の腕をぎゅっと掴んでくる。
「言いたいことは色々あると思いますけど先ずは...お風呂に入ってきてください束さん、入ってる間にご飯、用意しておきますから」
「うん...」
束さんは素直に頷くと研究室を出て行った。
束さんが研究室を出たのを確認してから備え付けられたほぼ俺専用の厨房に入って束さんと自分の分のご飯を用意する。
「きっと籠りっぱなしで何も食べてないだろうから胃に優しい物が良さそうかな...うどんがあるからうどんにしよう、少し薄めの味付けで」
独り言で作る料理を決めて調理に取り掛かる。といってもうどんなので比較的直ぐに出来るだろう。
「トッピングは束さんの希望に沿えるように用意して...あとはうどんを茹でるだけだから束さんにお風呂の状況を聞いてから茹で始めよう、ゆっくり入っていてほしいし」
束さんに『あとはうどんを茹でるだけなのでお風呂上がる10分前ぐらいに教えてください』とメッセージを送る。
すると直ぐに返信がきて『もう茹でちゃって大丈夫だよ~』とのことなのでうどんを茹で始める。
「俺は...はぁ...」
うどんを茹でている鍋の前で1人、頭に浮かんだ思考を吐露しようとして飲み込んで代わりにため息を吐く。
「かーくん、上がったよー」
「はーい、もう少しで出来るんで待っててください」
束さんがお風呂から出てきたので器にスープを注いでうどんを入れて持っていく。
「束さんの事だから飲まず食わずで研究続けたでしょうから胃に優しいうどんにしましたよ、一応薬味とか卵とかは用意したんでお好みで」
「うーん...流石かーくん、束さんの生活周りについてはすっかりお見通しだ」
束さんはそう言いながらちゅるちゅるとうどんを啜っていく。
「食べながらでいいので話を進めましょうか」
「ん...そうだね」
俺もうどんを時々啜りながら話を始める。
束
「えっと...まずは束さんの状況から確認したいんですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、えっとね、かーくんの身体を蝕んでるGN粒子の研究だけど、さっきかーくんに打った薬が物的な最新成果で、データ的には完全治療までこぎつけてるんだ」
「え?本当ですか?」
「うん、でも治療を実践するのに必要な準備が束さんでも最速で1年ギリギリかからないくらいの時間が必要なんだ」
「だからこそのあの薬ってわけですか」
「そうゆうこと、だから...準備が終わるまで絶対に無茶しないでね!」
「約束は出来かねますけど...善処します」
俺はずいっと顔を近づけてきながら俺に無茶をしないように釘を差してくる束さんに返事をしながら次の話を切り出す。
「次は俺の報告ですね、奴ら...まあ俺が打倒すべきだと思ってる『敵』ですがしっかりと表舞台に出てきました」
「束さんもみたよ、『MS』だっけ?動力部はブラックボックス化してるけどそれ以外は改造・分解自由、大量生産出来てISにも匹敵する性能、そして男でも使えると...」
「楯無先輩が国内の購入企業や団体を監視してるみたいですけど全世界で大量に購入されるでしょうね、そして...」
「ISに恨みつらみ積み重ねてきた人間が復讐を始めると」
「戦争が始まりますよ、もう...一夏達にも伝える時でしょうね...」
「案の定そうなっちゃったか...ISの生みの親としては悲しい限りだよ...男性用ISも研究してたんだけど...」
「遅かれ早かれこうなっていたでしょう、戦いを引き起こすのが奴らの目的でしょうし、いくら束さんが男性用ISを研究していたとしても、直ぐに実物が出来ないならと信じてくれないのが世界...いえ世論や大衆というものです」
「...」
「それでも...血が流れるような事はあっちゃならない...そうでしょう?束さん」
「うん、そうだね!世界を変えちゃったなら責任を取らなきゃ!」
「じゃあ俺達も準備をしましょう、MSが本格的に普及しきるのは早くてもIS学園の夏休み明けになるはずです、それまでにやれることを」
「まずは束さんは防衛システムを作るよ、どこにでも簡単に構築出来て防御力があって非殺傷の!差しあたってはMSのデータがあると完璧なものが作れるんだけど...」
「それなら...ユメ、束さんの手元にある端末に俺のまとめておいたデータ送ってくれ」
『分かった、はい、送ったよ!』
ユメに頼んであらかじめまとめておいたMSのデータを束さんの手元にあった端末に送信する。
「今データを送ったので見てみてください」
「ふむふむ...えっ、これスペックデータどころかブラックボックス化されてた動力のデータ、予想される改造パターンやバリエーション機まで全部網羅されてる!?どうやってこれを...」
「前に言ったじゃないですか、元々あいつらは俺の世界ではアニメの存在だって...俺結構コアなファンだったので完璧に覚えてるんですよ」
「これならかなり有効な対策が取れそうだね!ありがとうかーくん!」
「ちなみに赤い方のMSの疑似太陽炉は改良型なので毒素は無いと思います。ここは一つ安心ですね、それでは俺は一夏達に話すための資料でもまとめてから説明することにしますよ」
「分かった、じゃあお互い頑張ろうかーくん」
「束さんも気を付けて」
「絶対に、ぜーったいに無茶しちゃだめだよ?」
「分かってますって」
お互いにうどんも食べ終わって食器の片付けも終わったので、束さんが最後まで俺に無茶しないように言ってくるのに返事しながら研究室を出る。
「五体満足で勝てればいいけど...そんなに奴らは甘くない...だから俺も...」
俺の覚悟は長い廊下に吸い込まれて消えていった...
「君がこちらの事を知っているように僕達も君の事を知っているんだよ、武藤 海」
今回は一途な束さんのオリ主への想いと曇りまくってるオリ主の心情を表した回でした。
そして最後のセリフの意味とは...?
それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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