脳内妄想無双は好きだが実現するのは違うと思う   作:大鷹とび

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いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は演劇シンデレラの回となっています。

楽しんでいただければ幸いです。


49話 2人の王子と6人の灰被り姫

---IS学園 第4アリーナ 男子更衣室

 

楯無さんに引きずられ俺達は劇の衣装を渡されたのち第4アリーナの男子更衣室に放り込まれた。

 

「この衣装...一体何なんだろうな」

 

一夏は童話でよく見るような青い上着に白のズボンという典型的な王子様スタイルで俺に話しかけてくる。

 

「それを言うなら俺の方が謎だよ...」

 

一方俺の服装は一夏のような王子様スタイルにも見えるのだが色が全体的にダークだった。あと無駄にマントが長くてかっこいい

 

「闇墜ち王子みたいな?」

 

「謎過ぎるだろ...」

 

お互いの衣装に疑問を感じながら着替え終わったタイミングで更衣室の扉が開く。

 

「一夏くん、海くん、ちゃんと着たー? 開けるわよ」

 

「開けてから言わないで下さいよ!」

 

「楯無先輩俺努力はしますけど消し炭にされても知りませんからね...」

 

扉を開けてから確認を取る楯無先輩にため息を吐く俺と一夏。

 

「なんだ、ちゃんと着てるじゃない。おねーさんがっかり」

 

「何を期待してたんですか、あなたは」

 

「はぁ...俺1人で逃げりゃ良かった...」

 

「そしたら校内放送で呼び出してたわよ、そういうシンプルなの効くでしょ?波風立てる訳にいかないものねぇ」

 

「後で簪さんに言いつけますから覚悟しておいてください...」

 

「そ、それだけはやめて...海くんが絡んだ時の簪ちゃんのお仕置きシャレにならないんだから...

まあいいわ、はい、王冠。大事なものだから、なくさないでね?」

 

「あの、楯無さん。俺達脚本とか台本とか一度も見てないんですけど...」

 

「全部アドリブでやれと?」

 

「そうよ、基本的にこちらからアナウンスするから好き勝手動いて頂戴」

 

それは劇として成立するのだろうか...やっぱり逃げたい...原作内容的にも俺が専用機組に狙われる可能性皆無だし問題ないのでは?

 

「因みに一夏くんが第一王子、海くんが第二王子ね」

 

「俺が第一王子?」

 

「何故第二王子の服の色合いがダークなのかは教えてくれます?」

 

「何となくよ、何となく、それじゃあ二人とも、頑張ってねー」

 

俺と一夏は不安な表情を浮かべながら第4アリーナに入る。

 

 

「す、すげぇセットだな...」

 

「金かかってそうだな...」

 

俺と一夏が入った第4アリーナは完全に様変わりしていて、アリーナの限界まで高くそびえ立った西洋風のお城、地面には芝が生え揃い、赤絨毯が敷かれている。

 

どうやってこれほどのクオリティのセットを用意したんだろうか...

 

『さあ! 幕開けよ!!』

 

楯無先輩の声が響くと同時にアリーナのドームが閉じて、辺り一面が真っ暗になった。

そしてステージの中央らしき場所にライトが集中した、俺達はそこに行けという事だろう。

誘われるがまま、ライトの中心に立つと、客席から歓声が巻き起こった。

 

「一夏、やばくね?」

 

「そ、そうだな...」

 

「とりあえず手でも振っておくか...」

 

「お、おう...」

 

俺達が手を降ると、客席からの更に歓声が沸き上がった。

 

「一夏ぁぁあ!!海ぃぃぃぃい!! へますんなよぉぉおお!!」

 

何処かから聞き覚えのある声が聞こえた。あいつらも見ているのだろうか?

 

と思っていると...俺達を照らしていたライトが落ち、代わりに巨大なホログラフィック・スクリーンが現れた。

 

『むかしむかし、あるところに。シンデレラという少女がいました』

 

「あれ?意外と普通――」

 

一夏が意外だと口にしようとしたが...

 

『否、それはもはや名前ではない』

 

もちろん 普通ではなかった。

 

楯無先輩のモノローグと共に、スクリーンの泣いていた少女が、剣や重火器を持つドレスのお姫様に変わる。

 

「「は?」」

 

『幾多の舞踏会を潜り抜け、群がる兵士を薙ぎ倒し、灰塵を纏うことさえ厭わぬ地上最強の兵士達、彼女らを呼ぶに相応しい称号...それがシンデレラ!』

 

カッと、ステージ全体がライトアップされ、舞踏会エリアに立たされる俺達が再び照らされる。

 

「は?」

 

「終わった...」

 

『今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる。王冠に隠された軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女達が舞い踊る!!』

 

「はあ!?」

 

「もう嫌...」

 

シンデレラはそんな殺伐とした物語だっただろうか?訳が分からないと頭を抱える一夏ともうやってられんと目からハイライトを消し項垂れる俺。

 

「貰ったぁぁぁ!!!」

 

雄叫びと共にそんな俺達の頭上に何かが舞い降りてきた。

 

「危ねえ!!」

 

「巻き込まんでくれ...」

 

先程まで一夏が居た場所に刃が降り下ろされる。そこには白地のシンデレラのドレスに銀のティアラを被り中国の刀、青竜刀を手に持った...

 

「り、鈴!?」

 

鈴の姿があった。

 

「王冠、寄越しなさいよ!」

 

柱を背に立つ一夏をキッと睨んでから、すぐさま中国の手裏剣である飛刀を投げてくる。

 

投げられた飛刀は真横の柱に見事突き刺さった。

 

「ヒィっ!?ば、馬鹿!死んだらどうするんだよ!?危ねぇ!?」

 

即座に投げられる飛刀を避ける中、楯無先輩の呑気なアナウンスが鳴った。

 

『大丈夫よー。ちゃんと安全な素材で出来てるから』

 

「信じられねぇ!?」

 

慌てながらも一夏はその場にあった蝋燭台で飛刀を防ぐ。だが鈴は直ぐ様それを蹴り上げ、そのまま踵落としを決めてきた。

 

「わあ、馬鹿!パンツがっ」

 

「はあっ!」

 

床が陥没する程本気の踵落としにドン引きすると、一夏はあることに気付く。

 

「って、おい!ガラスの靴履いてんのかよ!?危なすぎるだろ!?」

 

「大丈夫!強化ガラスらしいから!」

 

「どっちにしろ死ぬわ!」

 

「死なない程度に殺すわよ!!」

 

「意味が分からん!」

 

そう言ってから逃げようとする一夏の眼前を何かが掠めそのまま地面に当たり弾痕が付く。

 

「おわぁ!?狙撃!?セシリアか!?」

 

ビスッビスッと立て続けに一夏の近くの床に空いた弾痕から逃げ出すべく一夏は第4アリーナを飛び出していった。

 

「疲れた...」

 

完全に蚊帳の外になっていた俺はゆっくり歩いて一夏とは別の方向から第4アリーナを出て行った。

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

「今回、一夏くんと海くんの王冠を手に入れたシンデレラには、本人との同室同居権を与えるわ」

 

私達専用機持ち達は更衣室にいたお姉ちゃんの現実場馴れした言葉にきょとんとした。

 

「た、楯無様?そんなことが可能なのですか?」

 

「大丈夫、生徒会長権限で可能にするわ」

 

というお姉ちゃんの言葉に私以外の全員が奮い立った。

 

「ただし、手にいれる王冠は間違えないこと、じゃないと、お目当てじゃない人と同居しちゃうことになるから、気を付けてね♪」

 

にっこりと笑うお姉ちゃんの言葉に専用機持ちの目の色が更に変わる。

 

私を除いて...

 

「あの、お姉ちゃん...」

 

「簪ちゃんも頑張ってね!」

 

「頑張ってと言われても...私入学してから海と同室のままだし...」

 

「なら余計に頑張らなきゃ!一定時間経ったら他の生徒も参加できるようになるから海くんの王冠も奪われちゃうかもしれないわよ?」

 

「えっ...」

 

「そうなったら簪ちゃんと海くんは同室じゃなくなっちゃうわねぇ」

 

「それは...嫌!」

 

こうして、結局私も焚きつけられてしまったのだった。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

鈴達に襲われて出て行った方向とは別の出口から出た俺は特にあてもなく廊下を歩いていた。

 

途中で『王子様にとって国とは全て。国の未来を左右する重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によって、電流が流れまぁーす!』

 

というアナウンスがされたが知ってしまえば解除すればいいと思いフラフラと彷徨いながらゆっくり王冠を解除できる場所を探していた。

 

「専用機持ちは大概一夏狙いだし平和なもんだ」

 

時折すれ違う人に好奇な目で見られながらも歩き続けていると...

 

「あ、海...」

 

「んえ?簪さん?」

 

俺の目の前にシンデレラのドレスを着た簪さんが現れた。よく似合っている、かわいい。

 

「簪さんはもしかして...俺の王冠が欲しかったりする?」

 

「う、うん...出来れば渡してくれると嬉しい」

 

「渡したいのは山々なんだけど、流石に電流で痺れたくはないから外すための手伝いしてくれないかな?」

 

「ん...分かった、どうすればいい?」

 

「丁度そこに空き教室があるからそこに入ってどうゆう仕組みで電流が流れるか見てくれないかな?」

 

「了解...私に任せて、すぐに助けてあげるから...」

 

「ありがとう簪さん」

 

俺と簪さんは空き教室に入り、俺は簪さんに王冠がどうなっているか調べてもらった。

 

「これは頭から外れるとセンサーが反応して電流が流れるようになってるから、持っている手から痺れる仕組み...つまり絶縁体を手に付けて外せば痺れずに脱げるはず...」

 

「成る程...意外とシンプルに出来てるんだな、じゃあ丁度良く教室の掃除用具ロッカーに入っていたゴム手袋を付けて外せば...」

 

簪さんに言われた通りに俺は教室の掃除用具ロッカーからゴム手袋を取り出してそれをはめてから王冠を頭から外した。

 

想定より強い電流だったのかゴム手袋越しでも少しパチッとしたが静電気レベルだったのでそのまま完全に脱ぐことが出来た。

 

「ちょっとパチッとしたけど...無事に脱げたよ、という訳で簪さん、はい、王冠」

 

俺は脱いだ王冠を簪さんに手渡す。

 

「あ...ありがとう」

 

「いやいや、俺もなんか巻き込まれてよく分かんないまま彷徨ってたし簪さんのお陰で痛い目に合わずに済んだよ」

 

簪さんは何故か少し顔を赤くしながら俺の渡した王冠を大事そうに抱えているが気にしないでおく。

 

『パンパカパーン!更識 簪!見事第二王子武藤 海の王冠をゲット!コングラッチュレーション!!流石簪ちゃん!私の妹は世界一ぃぃぃぃ!』

 

会長の個人的な感想の混じったハイテンションな放送が流れる。

 

「さて...俺達の出番はもう終わったわけだし、せっかくだからここでこのまま休憩してようか...」

 

「うん...私も少し疲れた...」

 

『さあ!ここからはフリーエントリー組の参戦です!王子様の王冠は残り1つだけになりましたが、皆さん、がんばってくださいねー!』

 

簪さんと会話していると再度楯無先輩のアナウンスが聞こえた後、廊下を大量の女子生徒が一夏の事を叫びながら走り抜けていった。

 

「うわ...ご愁傷様だ...」

 

「流石に織斑君に同情する...」

 

俺と簪さんはこれから一夏に襲い掛かるであろう悲劇を想像して心の中で手を合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人は本当何を考えてるんだー!」

 

俺達が休んでいる頃、一夏は予想通り、大勢の女子生徒に追われながら叫んでいるのだった。




という訳で学園祭での生徒会の出し物、シンデレラの回でした。

次回から原作より大きくずれていく予定です。

満を持してあの機体達が登場するかも?

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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