ヒロアカ世界で没個性を演じるのはかなりムズイ 作:仁義なき類人猿
俺の名前は
今年で16歳になるピッチピチの高校生だ。
俺の個性は人にはなかなか言いにくい個性をしているので説明するのも一苦労だ。
俺の個性は
俺自身この個性を言語化するのが難しいから『変身』でいいと思っているので別に構わないだろう。
逆に『変身』以外での表現方法があったとしてもそれはその人の別の個性ってことでいいんじゃないかな。
この度俺はあのヒーロー養成学校『雄栄高校』へ入学することになった。
偏差値79もある超がつく難関の高校ではあるがなんとか合格できて嬉しい限りだ。
さっきクラス表を見たときは1年A組だったが、1クラスの人数が22人で、1学年のヒーロー科は2クラスしかないのでほんとに人数が少ないなと思った。
さて学校の説明はこれくらいにして俺もそろそろ教室に向かうか。
なにせ俺のクラスの担任はあの『イレイザーヘッド』なのだから。
教室に入るのが遅れたらその時点で退学なんて措置もあり得ない話ではない。
せっかく入学できたのにあんまりな話だが、学校がその行動を許可しているのだから急がないなんて選択肢はあり得ない。
キーンコーンカーンコーン
この鐘は予鈴だな。
ということはもうあと5分しかない。
雄栄高校はヒーロー科がある為その校内はもう一つの町といっても過言では無いほどに広い。
ただでさえ普通科・サポート科・経営科と4つもある上に全校人数も数千人いるらしいので校内が広いのは当たり前といううやつだ。
それに加えて工校庭や各種施設があるので大変なのだ。
俺は自分のクラスの場所を入学式に貰った資料で確認しつつ小走りで向かった。
(おっここだ!)
校内が広いとはいえ整然と並んだ各種施設はきっちりと案内図通りに並んでいるので迷うなんて事は無く、施設内には学生が勿論使えるエレベーターもあるので移動には全く困らなかった。
1年A組と書かれたクラスプレートを見つけて中に入ると数人の視線を感じた。
(まだこれだけか…少ないな)
俺を含めて10人程しかクラス内にはいなかった。
まだ本鈴まで2~3分あるとはいえこの集まりで大丈夫なのだろうか?
まだ見ぬクラスメイトに不安を覚えながらも俺は自分の席を探す。
一応は名前順になっているのはずなのだが席順表などを見ないと安心できない
俺の席は横に5列ある列の3列目前から3人目の小学校のころからの定位置だった。
誤差こそあれ、入学直後やクラス替え直後は大体この辺に座っていることを考えれば、雄栄のヒーロー科といえど俺は
自分の席に着席すると後ろの席に座っていたやたらとショートケーキを食べていたたらこ唇の人が話しかけてきた。
「よう!俺の名前は
ケーキのクリームがほっぺについているのを気にもしないのか力道君はほっぺは拭かないのに手はしっかり拭う紳士さを持っていることに安心しながら返事を返す。
「こちらこそこれからよろしく!俺は佐藤 太郎だよ!」
俺も一応手を服で拭ってから握手を交わす。
俺たちが握手していることに気づいた他のクラスメイト達もこっちに寄ってきた。
話した感じでイメージがみな好印象だなと思った。
学級委員長ぽい
こっちには来なかった数人はブツブツ言っていて変な人感漂う緑髪の人、女子が数人、顔の左側に火傷負っている人がいた。
入学したばかりとは言えさっそくクラスになじめているようで俺は少し安心できた。
そうこうしているとちらほらとクラスに人が増えていく。
個性を使用して滑り込んでくる人も何人もいた。
キーンコーンカーンコーン
そして本鈴が鳴り『イレイザーヘッド』が入ってきた。
入ってきたのは『イレイザーヘッド』だと思ったのは俺だけだったようで、クラスの皆はざわついた。
「あれだれだ?」「見たことないな?」「あの人もヒーローか?」「なんだ?あのくたびれたおっさんは?」等など様々な言葉がクラス中をで発される。
『イレイザーヘッド』はそんなクラスの喧騒に一瞥しただけで懐からこの学校指定の体操服を取り出した。
「はい静かになるまでに8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるねぇ。」
『イレイザーヘッド』がそう言いながら深い溜息を吐く。
「担任の
そう言って『イレイザーヘッド』もとい相澤先生はすたすたと教室から出っていた。
相澤先生が出て行ったあと俺は先生に言われた通りに学校指定の体操服に着替えていたのだが、皆はなかなか動こうとしないことに気が付いた。
不思議には思ったがそれを気にして動かず時間が経って遅刻なんてしたら退学になってしまう。
それだけは避けないといけない。
俺は周りをちらちらと気にしながらも体操服に着替えていく。
「なぁ太郎君、相澤先生ってなんのヒーローか知ってるか?」
後ろの席の力道君が肩をポンポンと叩いて聞いてきた。
「あぁ、知らなかったんだ?相澤先生は『イレイザーヘッド』だよ。」
「えっまじで?!あれが『イレイザーヘッド』かぁ!初めて生で見たよ、よくしってたなぁ」
「一応雄栄に入学決まった段階である程度の雄英の知識は集めたからね。それより力道君も他の皆もそうだけど急がないと退学させられちゃうよ?」
力道君に相澤先生のヒーロー名を伝えると心底驚いていた。
聞き耳を立てていた周りの人たちもざわついているが俺としては知らないほうが驚きだった。
それよりも今は着替えてさっさとグラウンドに向かったほうがいいことを伝える。
「相澤先生って校長から除籍処分の権利を貰っているらしくて気に入らない生徒やダメな生徒はすぐ退学させられちゃうらしいよ?遅刻なんてしたらやばくない?」
俺がそういうと未だ着替えていなかった力道君も、周りで聞き耳立てつつ近くの人と話し込んでいた人も慌てて着替え出した。
皆が着替え出すころには俺の着替えは一番に終わっていたので一応力道君に一言言ってからグラウンドに向かった。
※
俺がグラウンドにつくとそこには相澤先生が一人準備をしていた。
「相澤先生、手伝いましょうか?」
俺は相澤先生に近づくとそう声をかけた。
少しでも退学回避の道を模索するためにも必要なポイント稼ぎはしておかなければな。
「うん?あぁ悪いな佐藤太郎か。じゃああれをここに持ってきてくれ」
俺は先生が名前を憶えてくれていることに驚きつつも先生の指示に従って準備の手伝いを進める。
暫くするとクラスの皆がぞろぞろと集まってきた。
「佐藤、ありがとう。そろそろ戻ってこい。」
校庭に白線を引いていたら先生に呼ばれたので俺はその場にラインカーを置いて皆の元へ戻る。
「「「「「「個性把握テスト!!!???」」」」」
先生の言った内容に皆は見当もつかなかったようで一様に驚きを現した。
俺はすでに知っていたのでそこまで驚きはない。
「入学式は?ガイダンスは!?」
一人の女子生徒、席順で見たときの名前と照らし合わせるのなら
いいなぁ女子かわいいなぁ
女子に目がうつろいでいる間にも先生の話はどんどん進んでいく。
曰く、ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間内らしい。
まあ、わからんでもない。
別に一刻もヒーローになりたいわけでもないが、普通の学生と同じ内容ではヒーローにはなれないだろうとも思う。
「さて、入試トップの成績は
相澤先生が懐から野球ボールみたいな形状の球を1つ取り出しながら1人の生徒の前に向かった。
爆轟と呼んだ生徒の前についた先生はその球を爆轟君に手渡す。
「お前たちも中学の頃にやっただろう。個性なしのやつを。あれを個性ありでやるのが高校生のヒーロー科のカリキュラムだ。」
相澤先生が人差し指を半径2Mほどの円を指して爆轟君の背中を押す。
あそこから投げろということなのだろう。
爆轟君は球を受け取りブツブツと呟きながらサークルに向かう。
「...死ねぇぇぇ!」
ヒーロー科入学者がそれでいいのか?
そう思ったのは俺だけではないだろう。
かのエンデヴァーのようなヒーローイズムを彼はお持ちのようだ。
さりとて彼の記録は700M越えている。
俺は中学のころ個性なしでしか計測したことがないので分からないがあんなに出るだろうか?
「とまぁ個性を使えば記録が出る奴は出るということだ。」
「すげぇ!!おもしれぇ!!」
個性なし計測が無意味とは言わないが、個性あり計測は段違いだな。
それに確かに誰が言ったか分からなかったが確かに面白い。
だが俺らの反応は相澤先生にとってはあまり面白いものではなかったようだ。
「おもしろい、ねぇ。じゃあこの中で一番成績の悪かった生徒は見込みなしと判断し除籍処分としよう。」
おっまじか。
さっそく相澤節炸裂かぁ。
何が先生の琴線に触れたのだろうか?
怒っているというう雰囲気ではないな...
「それはあまりにも理不尽です!!」
お茶子さんが猛抗議といった風体で先生に食い掛る。
「自然災害・大事故、そしてヴィラン。いつどこで出てくるか分からないことに対応しなければならないのがヒーローという職業だ。そういう理不尽に対して覆すのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったのならお門違いというやつだ。更に無効へ!『プルス・ウルトラ』全力で乗り越えてこい。」
先生は言った。
俺としてはここで出てくるかその言葉!と言わざるを得ない。
少し震えたね。
雄栄高校の校訓『プルス・ウルトラ』
先ほどまでの和気藹々とした雰囲気は一気に霧散した。
皆は思い出したのだ。
自分が何故ここにいるのかを。
俺は今一度気持ちを引き締めて個性把握テストに臨むことを決意した。
ここで俺の個性について改めて話しておこうと思う。
俺の個性表向きには『変身』ということにしている。
正式名称が分からないからだ。
まぁそれは置いといて、俺の個性『変身』は【見たことのある能力を一時的に自分の身に落とし込むことができる能力】がある。
カモフラージュとして能力の書かれた厚紙を手に取って顔の前に持ってきて「ムンッ!」と唸ればその力が使えるようにしている。
なんでそんなことをしなければならないのかは過去に大変な目に巻き込まれたからだと言っておこう。
とにかくその個性のおかげで俺はかなりいい人生を歩めているといってもいい。
閑話休題
一種目 50M走
クラスで挨拶を交わした飯田君が個性を使用して3秒台を記録した。
(飯田君の個性ってインゲニウムと同じ個性か)
俺は今しがた見た光景を思い出しながら個性『変身』を使用。
飯田君の個性を厚紙にプリントした。
そしてポケットに入れていたカードケースから韋駄天ヒーロー『インゲニウム』の厚紙を取り出して見比べる。
(うーん、やっぱり飯田君よりインゲニウムの方が早いよな、当たり前か)
俺は飯田君の個性が記されている厚紙をカードケースにしまい『インゲニウム』の厚紙を取りだした。
「次、佐藤太郎、佐藤力道、来い。」
相澤先生が俺たちを呼ぶ。
力道君はどういう個性を使用するのだろうと胸躍らせるが、俺の個性は見ないとプリントする事が出来ないので意味はない。
今後に期待だ。
そういうことでスタートラインにつく前に『インゲニウム』の厚紙を「ムンッ!」とする。
これで俺は一時的に『インゲニウム』のだ。
ふくらはぎの位置にターボエンジンの排気筒が何本も現れ、靴の裏に車輪がにょきッと現れる。
その姿に飯田君が気付き声を掛けようとしてくるが先生の合図のほうが早かった。
「よーい・・・どん!」
「「「はっや!!」」」
先生の合図でスタートしたのだがすぐゴールしてしまった。
流石プロヒーロー、1秒弱はやりすぎだって。
「佐藤君、それは兄さん…インゲニウムと同じ個性じゃないか?」
飯田君がすごく怖い顔をしながら訊ねてくる。
俺はその追及には慣れているのでいつもの返答をする。
「よく分かったね、でも自分の個性のことはあんまり喋りたくないんだ、ごめんね」
これで切り抜けられないならもうそいつはヴィランと認識を改めることにしている。
幸いにも飯田君は引いてくれたのでありがたかった。
2種目 握力検査
先ほどの50M走ではクラス1位を獲得できたので後の7種目で中位を取り続ければ除籍処分はないだろう。
ただでさえさっきの種目で注目を浴びてしまっているのだ。
俺の信念「名前と同じに目立たない」を心がけている俺としてはこれ以上の成績は必要ないだろう。
幸いにも順番は名前順なのである程度の基準はわかる。
それにさっきの種目でクラスの1人以外の能力はストックができた。
あとは使いどころを気にすればそれなりの成績で測定を終えることができるだろうさ。
最悪はビリから2番目とかでもいい。
そう方針を決め握力検査は個性なしで臨み36㎏だった。
これでもクラス全体で見れば中盤より低い程度。
女子と混同でよかった。
3種目 走り幅跳び
相変わらず1人だけ個性なしでテストしている人がいる。
彼は何を考えているのだろう?
これまでの検査、これからの検査である程度上位の成績はとっておいた方が得策だと思うのだが彼にはそんな素振りがない。
いや、何か焦っているようには一応見えるのだが行動に表れていないという感じがする。
早く能力のストックを作っておきたいこちらとしてはすごく気持ち悪い。
さて、個性は身体能力を飛躍的に上げる能力が多い事は有名な話だ。
どんな個性でもたとえそれが没個性といわれるようなものでも多少は身体能力が向上する。
流石に雄栄高校に入学できるだけの人間だ。
皆こぞって基礎体力が高いように思える。
俺もそれなりに高いと自負していたが、それでも俺の能力は特殊系統に分類されるので肉体系統の個性持ちと比べると些か劣る。
走り高跳びでは肉体系統の個性持ちがかなり躍動しているし、成績がえげつない。
それに特殊系統の個性持ちは次元が違う。
お茶子さんなんて自分が浮けるからって数100Mも記録出していてもう意味が分からなかった。
彼女の能力は勿論厚紙プリントしている。
1年A組は肉体系統7割、精神系統2割、特殊系統1割ほどだ。
1名不明の人もいるが、もしかしたら彼は精神系統で今のところ力の使い処が無いだけなのかもしれないな。
それだったら可哀そうに。
俺にしてやれることはないが、相澤先生が除籍処分を言い渡したら庇ってあげるくらいはしてあげよう。
頑張れ!緑髪の人!
走り幅跳びの成績は30Mだった。
お茶子さんの個性を使って途中で切ったらいい感じの所で降りれた。
順位は中盤寄より上でちょうどよかった。
4種目 反復横跳び
峰田君が無双していた。
5種目 ボール投げ
爆轟君がデモンストレーションとしてやった種目だ。
ここでもやっぱりお茶子さんが無限とかいうわけ分からん記録を出していた。
照れてる、可愛い。
俺は走り幅跳びの要領でお茶子さんの個性を使用・キャンセルで100M程だしといた。
爆轟君がまた700Mを記録、今のところお茶子さん・爆轟君・俺の順位がついている。
着々と進み緑髪の人の順番になった。
(彼は本当に成績悪いな)
内心で彼はもう駄目だろうと思っている。
すでに4種目が終わり、この種目もゴリゴリに肉体系統の個性が有利なのだ。
推定:精神系統の彼では長座体前屈で1番を取るくらいしなければもう除籍確定だろう。
以外にも身体性能はそれほど低いというわけではないようだが、ボール投げなんて厳しい種目だろうな。
「緑谷君はこのままだとまずいぞ」
「あぁん?」
少し離れたところで飯田君が腕を組みながら1人言を漏らす。
それにすかさずメンチを利かす爆轟君。
あの緑髪の人は緑谷君というのか。
それに爆轟君は正確やばいな。
この人ヴィラン側なんじゃないかと思うんだが。
「ったりめぇだ!無個性の雑魚だぞ!」
はっ?
緑谷君無個性なの?
よく雄栄高校合格できたね?!
驚いたのは俺だけではなかったらしく、飯田君・お茶子さんまでもが声を上げている。
「無個性?!彼が入試時に何を成したのか知らんのか?」
「はぁぁん?」
飯田君が爆轟君の弁に食い気味に返答する。
爆轟君は意味が分からないという風にメンチを切っていた。
俺は二人から視線を外し緑谷君に視線を戻す。
緑谷君が無個性だとして、飯田君の言いたいことがいまいち分からない。
飯田君が言うには入試の時のどこかで何か大きなことをやったっぽいのだがどの試験だ?
緑谷君はボールを見つめながら何か決心を決めたかのような表情へと変わった。
そして思いっきり振りかぶって投げた。
ボールはひょろひょろ~と45M程飛んでいき落ちた。
その期待外れな飛距離にため息が漏れそうになる。
彼は何かをしようと決心して居たっぽいのに結局はやらなかったのだから。
「個性を消した!…つくづく合理性に欠く入試だ。お前のような奴が合格してしまう。」
相澤先生が先ほどまでのけだるそうな表情を一変させ目に力をこれでもかと入れた状態で緑谷君を睨みつけていた。
「見たところ、個性が制御できないんだろう?」
相澤先生は首元に巻いていた布をスルリと取ると目にも止まらぬ速さ緑谷君を縛り上げた。
「一人を救って怪我をして木偶の坊になるような奴はヒーローには成れないよ。」
相澤先生は緑谷君を縛り上げつつも話し続ける。
相澤先生が緑谷君の戒めを緩めた。
「行動不能になるようならまた個性消すからな」
戒めを完全に解きいつもの相澤先生になった。
周りの皆は緑谷君が始動されていたように見えたが、俺は
(なるほどね、それで今まで使ってなかったってわけか)
とんだ地雷個性だな。
緑谷君は絶望した表情でまたサークルに戻っていく。
さて、緑谷君はどう対応するのか見ものだな。
制御不能個性使用して除籍になるか、最下位取って除籍なるか。
俺としてはどんな個性でもいいから見せて欲しいな。
そんな最低な気持ちが芽生えてきていたが次の瞬間俺も相澤先生も、本質は理解できていないクラスメイトもみな衝撃を受けることになった。
「スマァァァッシュュゥゥゥゥゥッッッッ」
緑谷君が大声で叫びながらボールを投げた。
それは空高く飛んでいき、風圧がこちらに届いていたことから音速を超えた速さだったのだと思われる速度で彼方へと去っていった。
「相澤先生、まだ動けます」
緑谷君が相澤先生に苦悶の表情で言う。
よく見ると人差し指が赤黒く変色していた。
「緑谷君、その指!」
俺はかなり慌てて緑谷君の赤黒く変色している指に指をさして指摘した。
俺のその声に反応して皆が視線を移し悲鳴半分・歓声半分を上げる。
「うわぁ!どうしたんだいその指!」と飯田君。
「きゃぁぁl!」と叫ぶお茶子さん。
「騒ぐな!」と恫喝する相澤先生。
俺は今の緑谷君の個性をさっそく厚紙にプリントしようとした。
一応できたが、緑谷君のあの様子を見て使用することがないように封印を施す。
俺の個性『変身』で使用できる個性は基本的に十全に使うことができる副次効果がある
あるにはあるが使用したら反動で怪我をする個性なんか使いたくないのが普通の心理ではないだろうか?
俺は使いたくないと思ったからコレクション目的にプリントしただけで封印したわけだ。
俺が緑谷君個性カードをケースにしまっていると爆轟君が叫びをあげながら緑谷君に突貫し相澤先生に捕縛されていた。
いつの間に!と思う反面、やっぱり爆轟君はヒーローよりヴィランが似合うと思った。
絶対言わないけど。
「何度も俺に個性を使わせるなよ?俺はドライアイなんだ!」
(勿体ねぇぇ)
凄まじい個性持ちなのにドライアイなんてデメリット持っているとは可哀そうだな。
相澤先生がその場をささっと締めて次の種目に移るように促すと、皆は指示に従い体育館に移った。
その後の種目は無難に乗り切ることだけに注力した。
俺もそうだが、皆も痛々しい緑谷君と何故かめちゃくちゃ不機嫌な爆轟君を遠巻きに見つつ無難に終わらせていたように思う。
「よーし成績発表するぞー」
先生が手元にモバイルスクリーン投影機を出した。
空中に投影できるタイプで確か最新型のはず。
(金持ってるなぁ雄栄)
テストでかなり時間を食い若干疲労があるふやけた思考でそんなことを考えつつ投影された成績を見る。
(9位かぁ、まぁぼちぼちだな)
成績は中盤。
狙い通り。
そして気になる最下位は5種目に爆轟君の成績を抜き2位だった緑谷君だった。
逆に言えばそれ以外の成績が振るわなかったとも言える。
緑谷君を見れば案の定可哀そうな表情になっている。
(まああんなデメリットある個性じゃあヒーローは無理だろう。ご愁傷様)
心の中で手を合わせていると相澤先生が「静かに」と注意を促す。
「ちなみに、除籍は嘘な。」
「「え?」」
は?除籍なし?相澤先生が?
「君らの個性を最大限引き出す合理的な虚偽」
「「「はぁぁぁぁぁ!!??」」」
「よく考えれば分かりますわ」
俺には関係ないけどそういうパターンもあるんだ。
良かったね緑谷君。
それを締めとして個性テストが終了した。
※
個性テストから数日が経ち。
授業自体は平穏極まりない日常を過ごした。
なんといっても高校生活、普通に授業があり雄栄と言えどそのカリキュラムを崩すことはしないようだ。
その代わりと言ってはあれだがヒーロー科のある高校ならではの授業が勿論ある。
ヒーロー基礎学。
ヒーローを志す者が必ず学ぶことになる学問だ。
主に実技になるこの学問は、ヒーロー活動を行う上で必須の技能を学ぶことができる。
ヒーローとは弱きを助け、悪を挫く。
そのためには学ばなければならない項目が多くある。
その一つが基礎学だ。
俺は席に座ってその時を心待ちにしていた。
それはクラス全員気持ちが一緒だと思う。
俺がこの学校に入学する、それが分かったときに情報取集した際ににわかに噂として流れていた不確定情報が一つあった。
『オールマイト』が教師として
俺は嘘だろうと思いつつも全否定はできなかった。
むしろそうあってくれたらものすごく嬉しかったからだ。
そしてその期待は見事に叶った。
「わーたーしーがぁーあーあ」
教室の外からTVでしか聞いたことのない憧れるあの人の声が聞こえてきた。
「ねぇ太郎君、どこからくるかな?」
一度席替えをしたので後ろの席が力道君からお茶子さんへと替わっている。
神に祈りを。
そんなお茶子さんが肩をポンポンと叩いて話しかけてきた。
「奇をてらった天井からとかくるんじゃないかなぁ?」
『オールマイト』はユーモア溢れる人物だ。
登場一つとっても他のヒーローではできない行動をよくテレビで見かける。
そう言った行動から俺は天井から現れると思ったのだが、お茶子さんはねじが1本吹っ飛んでいるらしい。
「私はね、窓ガラス突き破ってくると思うんだぁ」
どう考えても校舎内で声が響いているのに、思考回路が彼女はぶっ飛んでいるらしい。
ただそれも見たいと思うのは登場人物が『オールマイト』だからだろう。
ガララッ
「普通に扉を開けてきた!!」
ある意味で期待を裏切る形での登場に寒気がした。
絶対スベッてる。
そう思った俺は間違っていなかったらしい。
オールマイトが苦笑いしながら教室に入ってきてコスチュームを配り始めた。
「君たちが入学前に発注していたヒーロースーツが届いていてね、それを着てグラウンドβに集合だ!」
「「「はーい」」」
そして俺たちは各々スーツを装着して移動を開始した。
グラウンドβ前
俺は自分のスーツを見下ろして「ヤッチャッタ感」に苛まれていた。
俺の個性『変身』は簡単に言えばどんな個性をも使用可能。
その特徴上、巨大化したり、極小化したり、体から火を噴いたりなんて事が出来るのだ。
そのことがむしろデメリットになるとはスーツの構想を考えるまで思いつかなかった。
一つの個性だけに変身するようにスーツを作ってしまうと他の個性に変身した時に動きを阻害してしまうのだ。
それに個性には特殊系統・肉体系統・精神系統の3種類あるためどれに変身しようとも体を阻害してしまう恐れがあったのだ。
俺は考えに考えた。
基本締め切りの3日前には完成させないと気が済まない質の俺が締め切りギリギリまで構想が定まらなかったのだ。
考えに考え抜いた結果、特殊な処理が施された全身ぴちぴち白タイツの変態装備に仕上がったのだ。
その時は合理的な判断だと思っていた。
ヒーローが活躍するために必要な装備品であるスーツは勿論補助道具を開発するのは、雄栄にもあるサポート科卒業生が仕事として選ぶ通称;道具屋さん。
そこでは日夜ヒーローのための開発が進んでいる。
そして雄栄はそこと提携している為ヒーロー科入学生に入学前に測った測定結果と本人の希望をもとにスーツを作ることになっている。
そこで開発された、主に特殊系統個性持ちのためのスーツである『特殊ラバー』は火を体から噴き出す個性持ちのために自身の髪の毛を媒体にラバースーツを作成することで火を纏ったとしてもスーツが燃えることがない仕様とすることができるようになったのだ。
話が逸れたが、俺も自分の髪の毛を書類と一緒に送って作ってもらったのがこのぴちぴちラバーの変態スーツだったのだ。
白1色の為周りと比べるとシンプルすぎてより変態感が強い気がする。
しかしまわりをみればそんなことは無いようだということが分かった。
俺の変態性は一旦横に置いといて、峰田君も黒ラバーにマントでかなり仕上がっている。
お茶子さんも良い、とても良い。
女子勢ありがとうと声を大にして言いたいがとてもそんなことは言えません。
この数日で俺のクラスの評価はそこそこ優秀だけどあんまり目立たないやつポジションを確立しつつあるのだから。
そういう発言は変態性を公開している峰田君に任せるよ。
さてそうこうしていると全員が集まったようだ。
こうしてみるとなかなか奇抜な恰好してる人もちらほらいる。
『インゲニウム』のコスプレになっている飯田君なんかはその最たる例だろ。
『オールマイト』が「静かに」と皆に言うとこれから行う授業内容について話し始める。
「今日は入試の時の2段階進んだ内容を行うことになる。2対2の模擬戦だ。ヒーロー対ヴィランで屋内戦をしてもらうからそのつもりで」
そう言って俺たちの初の実技が始まろうとしていた。