ダンジョン探索者は今日も掲示板で駄弁っている   作:どるふべるぐ

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ようやく6話目。
今回はアカデミーの解説回だ!!


その⑥『探索者アカデミーに行こう』

731:名無しの探索者

【悲報】ナナちゃん早速バレる

 

732:名無しの探索者

おいおーーい!?

 

733:名無しの探索者

うっそやろww

 

734:名無しの探索者

やりやがった……やりやがったな猫ちゃーーん!!!!

 

735:名無しの探索者

まさに畜生ww

 

736:名無しの探索者

いやいや草生やしてる場合やないやろ(・∀・||)サアア

(id:r736e) 

737:名無しの探索者

これってもしかしてマズいやつ?

 

738:名無しの探索者

実際かなりマズいで。詳しくは(´・ω・)っ>>436

 

739:名無しの探索者

>>738

お~サンクスって博痴のレスじゃねえかよ糞があああ!?

 

740:名無しの探索者

はいSANチェック入りま~す♪

 

741:名無しの探索者

(σ´Д`)σアヒャヒャヒャヒャ

 

742:名無しの探索者

いや遊んでる場合やないやろナナちゃんのピンチやで!?

 

743:名無しの探索者

ん~でも使い魔になれたってさっきイッチ言ってたし何とかなったんじゃね(-ω-)

 

744:名無しの探索者

>>743

それは分かってても言わない約束でしょおとっつぁん

 

745:名無しの探索者

>>743

あなた嫌いです(見下げ果てた目

 

746:名無しの探索者

いやならこのピンチをどうやって切り抜けたんよ?

 

747:名無しの探索者

というわけで教えてイッチー!

 

748:異世界転移者

スレ民さん達も動揺してますね。はい、僕もあの時は本当にどうしようかと思いましたよ。

正直ナナを連れて今すぐ逃げるか、でなければ口封じをしなければなんて考えましたね。

けど、僕が何か行動を起こすより先に、彼女が動いていました。

 

◆◆◆

 

早く、そして速い。戦いの心得の無い僕でも分かる、きちんとした訓練を受けた者の動きで、彼女はナナの懐に飛び込み、そして

 

「かっわいい~~~っ!!」

 

「──は?」

「──ふぇ?」

 

高らかに響くのは、まったく予想外のセリフ。

思わずポカンとする僕とナナ。一方それを叫んだ彼女は大きく開いた目を輝かせて

 

「うっわヤバ超可愛いじゃんそれ~~! コスプレ? どこで買ったの? そのイヌミミのアクセサリー超似合ってるしっ」

 

どうやらナナのイヌミミを作り物だと思っているらしい。

これはチャンスだ。僕は素早くナナに目配せして、ナナも小さく頷き

 

「そっそうなんですよ! これはご主人さまがナナにプレゼントしてくれたお気に入りのアクセサリーです!」

「ナナに似合うと思って送ったんだ。イメージにぴったりだからね」

「うんうんマジでピッタリ! おにーさん良いセンスしてんじゃんっ」

 

「ヤッバ」「可愛すぎかよ」と歓声を上げながら何度も頷く彼女。

咄嗟の誤魔化しだが上手くいったようだ。

ふぅ……。僕とナナは揃ってホッと息を吐いた。

 

◆◆◆

 

いやあ、あの時はさすがにどうなる事かと思いましたね

 

749:名無しの探索者

はいセーーーーフ!

 

750:名無しの探索者

あっぶねーーー!?

 

751:名無しの探索者

巫女ギャルがええ感じに勘違いしてくれて助かったぁ…ε=(;´д`)

 

752:名無しの探索者

ホント一時はどうなることかと……

 

753:名無しの探索者

これはきっとワイのロリの神への祈りが《届いたからやな

 

754:名無しの探索者

>>753

なんだその邪教ww

 

755:名無しの探索者

いや二人の機転だろ。

イッチとナナちゃんナイスコンビネーション(^^)d

 

756:名無しの探索者

まさに飼い主とペットの阿吽の呼吸。さすが固い絆で結ばれてるだけあるね

 

757:名無しの探索者

ワイとしてはさらりと出た『口封じ』とかいう不穏ワードが気になるんやけど……

 

758:名無しの探索者

>>757

ま、まあ大事なペットを守るためやし……(目そらし

 

759:名無しの探索者

>>757

ナナちゃんが絡むと何やらかすか分からんとこあるよねイッチ

 

760:異世界転移者

飼い主がペットを守るのは当たり前だと思いますけど。

でもナナが絡むと我を忘れてしまうのは僕だけではないみたいですよ

 

◆◆◆

 

なんとか間一髪で誤魔化せたことに内心安堵する。そんな僕に、彼女はニヨニヨと揶揄うような笑みを浮かべて言った。

 

「自分の彼女にこんなの着けさせるなんて、おにーさんもやるじゃん」

「え?」

かかか彼女ぉ!?

 

その言葉に真っ先に反応したのはナナ。ナナは顔を真っ赤にして耳をぴんと立てて

 

ちちちち違いますよ!? ナナはご主人さまのかか彼女なんかじゃないですよ!! いや別にそれが嫌っていうんじゃなくてそんなの畏れおおいというかなんというか……っ」

「うっわ~~照れてる姿もマジやばいっ! ナナちゃん可愛すぎ~っ」

「きゃっ!? なっ何でナナに抱き着くんですかぁ!?」

「いやー無理。無理だわーこれはハグするっきゃないわー。てうわっ!? なにこの肌すべすべプルップルじゃん羨まし~。抱き心地サイコー♪ あ~こんな彼女ウチも欲しいな~」

「ご、ご主人さまぁ~」

 

ぎゅっと抱きつかれ頬擦りまでされてしまうナナ。困ったようにアワアワとする表情は可愛らしいけど、さすがに助けを求められたら放ってはおけない。

 

「盛り上がってるところ悪いけど、ナナは彼女じゃないよ」

「そっそうです! ナナはご主人さまのかっ、彼女じゃないですよっ」

 

二人で否定するも、彼女は更にその口元をニヨニヨさせて

 

「いやいや誤魔化さなくってもいいってば~。そんな仲良さそうにしてて付き合ってないとかありえないっしょ」

 

◆◆◆

 

まったく信じてくれませんでしたね

 

 

761:名無しの探索者

そりゃあなあ

 

762:名無しの探索者

いかにも仲良しこよしの男女が二人きりとかカップル以外の何に見えると?

 

763:名無しの探索者

>>762

ワンチャン血の繋がらない義兄妹とか

 

764:名無しの探索者

>>763

それだとイッチが義妹にイヌミミコスプレさせる変態になるのですが

 

765:名無しの探索者

おいおいその程度で変態とか言ってたら妹にゴブリンコスプレ頼んで攻撃魔術ぶちこまれたワイなんてどうなるんだよww

 

766:名無しの探索者

>>765

変態ですが(断定

 

767:名無しの探索者

>>765

とりあえず変態的要求をされた可哀想な妹に土下座した後に切腹しとけq(^^)

 

768:異世界転移者

なるほど。僕は昔のようにナナとのいつもの散歩みたいな感覚でしたけど、他の人からはそんな風に見えてしまうんですか。

とはいえ誤解されたままというのもあれなので、僕はもっとハッキリと言うことにしました

 

◆◆◆

 

「本当に彼女なんかじゃないって。ナナは──僕のペットだよ

ペットぉ!?

「はい! ナナはご主人さまのペットです!」

「うええええっ!?」

 

◆◆◆

 

凄く驚いてたけど、ようやく誤解が解けて安心しましたね

 

769:名無しの探索者

いやそれ更にヤバい誤解されてるからΣ( ̄ロ ̄lll)

 

770:名無しの探索者

【悲報】イッチが彼女にコスプレさせる変態から、年端もいかない美少女をペットにするド変態にレベルアップした件

 

771:名無しの探索者

誤解……か?

 

772:名無しの探索者 

>>771

あ? 誤解に決まっとるや……んん?

 

773:名無しの探索者

実際その通りなんだよなあ

 

774:名無しの探索者

確かに考えてみたらそのまんまやんww

 

775:名無しの探索者

結論。なにも間違ってはいなかった

 

776:名無しの探索者

イッチは年端もいかない美少女をペットにするド変態。Q.E.D.

 

777:はくっち

私の事を散々言ってたわりには君らも大概じゃないかなあ?

 

778:666

正直は美徳ですけど、残酷な真実をあえて心の内に止めておくのも優しさですよ

 

779:はくっち

ふむふむおやおやあれあれ? それはド変態というのを一切否定してないよねえ?

 

780:666

えっ!? ええと……主に背かない限り、その、趣味は人それぞれですから……

 

781:異世界転移者

それ絶対目を反らして言ってますね。

いくら前と違う姿とはいえ、それでお互いの立ち位置や関係性を変えるつもりはありませんよ。

どんなに変わってもナナはナナで、僕は飼い主ですから

 

782:名無しの探索者

あらやだイッチ格好いい……ッ

 

783:名無しの探索者

いや堂々と言ってるけど美少女をペットにし続けるという変態宣言やからな

 

784:名無しの探索者

ドMワイ不覚にもときめいたわ(*≧ω≦)キュン

 

785:異世界転移者

うんもう変態でもいいですから話進めますね。

そうして誤解を解くことが出来て一安心した僕たちに、彼女はある意外な提案をしてきたんです。

それは

 

◆◆◆

 

「うっわ~……マジか~……だからご主人さま呼びかぁ……カレカノどころかペットプレイとかレベル高過ぎっしょ……」

 

僕たちの答えにカルチャーショックを受けたみたいに呆然としていた彼女は、僕に呆れとも感心ともつかない眼差しを向けて

 

「いや~、うちのバカ猫を一瞬で骨抜きにした事とか只者じゃないと思ってたけど、おにーさんってもしかして結構上位の探索者だったりする?」

「いや、僕は探索者じゃないよ。今のところね」

「え? うっそマジで!? ……って、今のところ?」

「うんマジで。これから京都アカデミーまで行ってライセンスを取りに行くんだよ」

「っへーそうなん!? ならウチの後輩になるわけか……。うん、そんならウチがガイドしたげるよ」

「ガイド?」

 

突然の申し出に思わず聞き返すと、彼女は我ながら名案という表情で頷いて

 

「そ。アカデミーまでの道案内とちょっとしたボディーガード。やな話だけど探索者の中にはパンピーに絡むようなろくでもない奴もいてさ。そういう奴にちょっかい出されないようにウチがおにーさんたちを守ったげるよ」

「それは正直ありがたいけど……何でそこまでしてくれるの?」

「ウチのバカ猫が迷惑かけちゃったお詫び。それに、先輩が後輩を世話するのはトーゼンっしょ?」

 

にかっと歯を見せた快活な笑みでそう答える。そんな彼女の様子からは後ろ暗さなどは感じず、別に騙してどうこうしようというのも無さそうだ。

 

きっと根っからのお人好しなんだろう。そんな彼女を内心疑ってしまった事に申し訳なさを感じつつ、ナナに目配せすると、ナナはこくりと頷いてくれた。

 

「うん。ならお言葉に甘えてもいいかい?」

「もち。ウチがしっかりガイドとボディーガードしたげるから安心してね。どんなチンピラもウチのバカ猫をけしかければイチコロだから」

「それは頼もしいね。ならもしもの時はよろしくね猫ちゃん」

 

そう彼女の足下にいる大猫に言うと、任せろとばかりに「にゃうっ」と鳴く賢い猫ちゃん。うん可愛いなあ。もう一度撫でていいかな?

 

「その手は何ですかご主人さま?」

 

思わず手を伸ばすけど、横から掛けられた怖い声に慌てて引っ込める。残念。

そして『邪魔するな』と目で訴える大猫とナナが何やら睨み合いを始める横で、僕は彼女に手を差し出して

 

「君もよろしく。それと自己紹介がまだだったね。僕は──」

「うんよろしくね。おにーさんとナナちゃん。ウチは──」

 

互いに自己紹介をして握手しました。

 

◆◆◆

 

まあそういうわけで、あの娘が同行する事になったわけです

 

786:名無しの探索者

なるほどねえ

 

787:名無しの探索者

巫女ギャルええ娘やん

 

788:名無しの探索者

それな。会話からも面倒見の良さが分かるわ

 

789:名無しの探索者

仲間内から頼られてそう

 

790:名無しの探索者

やっぱギャルはオタクにも他人にも優しいんやな

 

791:名無しの探索者

時代はギャル。はっきりわかんだね

 

792:名無しの探索者

は? ギャルとかほぼほぼビッチだろ

 

793:名無しの探索者

>>792

あ?(ガチギレ3秒前

 

794:名無しの探索者

>>792

なんだぁ……てめえ……?

 

795:名無しの探索者

ギャルの魅力が分からんとは哀れな奴め

 

796:名無しの探索者

むしろビッチなのがいいんじゃねえか

 

797:名無しの探索者

ワイのオカズはビッチギャル物オンリーやで

 

798:名無しの探索者

いやいや性癖で殴り合うのやめーや

 

799:名無しの探索者

性癖の話になるとすーぐ喧嘩するんだからもう┐(´д`)┌

 

800:名無しの探索者

とりあえずこれで一発抜いて落ち着け( ・∀・)っ【ゴブリンオナホ】

 

801:名無しの探索者

>>800

いらねえよ変態!?

 

802:名無しの探索者

>>800

⌒ヾ( ゚⊿゚)ポイッ

 

803:名無しの探索者

( ;´・ω・`)ショボーン

 

804:異世界転移者

ギャルだからビッチっていうのは偏見が過ぎる気がしますが……。それにギャルっぽいとは言っても、いわゆる遊んでそうな感じはしませんでしたよ。明るく爽やかな雰囲気の娘ですね

 

805:名無しの探索者

なんだビッチではないのか

 

806:名無しの探索者

解釈違いなのでスレ抜けます

 

807:名無しの探索者

>>806

おっと忘れもんだぜ( ^-^)っ【ゴブリンオナホ】

 

808:名無しの探索者

だからいらねえよ!!(゚ロ゚*)ノ⌒【ゴブリンオナホ】

 

809:名無しの探索者

ともあれようやくアカデミー到着やな

 

810:名無しの探索者

京都アカデミーといや大阪と並んで関西二大アカデミーやん

 

811:名無しの探索者

京都大阪は特に強力なダンジョンが多くある分、どっちも規模も戦力も他とは一線を画するで

 

812:名無しの探索者

通天閣に新世界……どっちもBクラスの上級ダンジョンやから対抗するには相応の設備と戦力がないといかんしな

 

813:名無しの探索者

特に京都は上級ダンジョンの三つ巴やし

 

814:名無しの探索者

ワイ京都の探索者やけど実際ヤバイで。あいつらそれぞれ互いに隙を伺ってるから、ちょっとでとバランスが崩れたら即戦争や

 

815:名無しの探索者

それぞれの斥候がかち合って市街地でぶつかり合うとか割とあるもんなあ。おかげで京都の探索者はダンジョン以外での戦闘経験が他県より頭ひとつ抜けてるという

 

816:名無しの探索者

そのぶん京都の探索者は割りと癖が強めやけど

 

817:名無しの探索者

いやいや大阪には負けるわww

 

818:名無しの探索者

はっはっは京都は相変わらず冗談キツイでww

 

819:名無しの探索者

あ?(#゚Д゚)

 

820:名無しの探索者

やるんか?(`皿´メ)

 

821:名無しの探索者

だーかーらー喧嘩はやめろって!?

 

822:名無しの探索者

気にすんないつものことや(高みの見物を決め込む奈良県民ワイ

 

823:名無しの探索者

とまあこんな奴らばっかやけど大丈夫だったイッチ?(いつもこんななのでほっとく和歌山県民ワイ

 

824:名無しの探索者

ナナちゃんとか可愛いから変なのがちょっかいかけてきそう(無益な争いには関わりたくない兵庫県民ワイ

 

825:異世界転移者

心配してくれてありがとうございます。

僕も巫女ギャルさん(なんかスレでこの呼び方が定着してるようなのでそう呼びますね)がいるとはいえ、そのあたりは心配していたのですが幸い何事もなく京都アカデミーに到着することができました。 

 

元々暮らしていた街とはいえやはり違う世界だからか、道や建物が微妙に異なっている箇所もありましたけど、巫女ギャルさんの案内のおかげで迷うこともなかったです。

道中は巫女ギャルと会話しながらでしたが、さすがギャルというべきかコミュ力が高いので僕とナナもすっかり打ち解けて楽しい時間を過ごしましたよ。

 

そうしてたどり着いた京都アカデミーですけど、正面ゲート前からすでに端から端が見えないくらい長くて高い壁に囲まれてて、まるでどこかの基地か要塞みたいに思えました

 

826:名無しの探索者

まあ実際間違ってないな

 

827:名無しの探索者

アカデミーは対ダンジョンの前線基地で攻略拠点や。分厚い壁で囲むのは当然。それに京都やから陰陽道やら呪術やらの結界も張り巡らされてんのやろ

 

828:名無しの探索者

>>827

まあな。昔ダンジョンモンスターから大規模襲撃された時は凄かったで。

普段は不可視化しとる結界が一斉に光ってアカデミー全体が光の曼陀羅みたいなんで覆われたんや。まあそれでもモンスター共の猛攻は防ぎきれんかったけど

 

829:名無しの探索者

あ~そういや京都には魔術師系のモンスターも多いんだっけ。結界破ってくるとかやべえな

 

830:名無しの探索者

あれって結局どうなったんだっけ? アカデミー存続してるから最終的には撃退できたんやろうけど

 

831:はくっち

第三次京都アカデミー防衛戦』だね。その知識ならもちろんあるよあるさあるともさ。

 

普段は争っている京都三大ダンジョンが手を組んでの襲撃から始まった大規模防衛戦。アカデミーへの組織的襲撃自体はこれまでにも幾度かあったが、その時はそのいずれとも規模戦力共に桁違い。

最終的に救援に来た探索者によるモンスター大虐殺によって幕を閉じたが、結果アカデミーは半壊し、所属する職員及び探索者のほとんどが重軽傷問わず何らかの被害を受けた。

 

まあもっとも、精神面における発狂等の被害はほぼ全て救援に来たはずの某探索者の戦闘に巻き込まれた者達らしいけどねえ。ねえねえねえ?

 

832:666

うぅっ……!? こっ後悔はありませんけど反省はしてます。もっと配慮して虐殺するべきでした…… 

 

833:名無しの探索者

ほんとな。あん時一番絶望的だったのが救援に来たのが『聖邪』ってことだったわ。

ワイの当時のパーティーメンバーは今も精神病院にいるで。お前らに絡むのはタブーと分かってるがこれだけは言っとくわ。地獄に墜ちろ

 

834:はくっち

うんさすが『敬虔なる背信者』『真性の悪意』『完全悪』などと呼ばれているだけあるねえ。ファンからの熱いメッセージを送られた感想は?

 

835:666

はい。わたしが墜ちるべきは最も深き地獄。コキュートスのサタンの顎の中。そこで永劫の責苦を味わい続けましょう。それこそがわたしに相応しき報いですから

 

836:名無しの探索者

京都闇が深すぎね?

 

837:名無しの探索者

いやそんな珍しい事でもないやろ。ワイの地元の函館アカデミーだって似たような経験あるし

 

838:名無しの探索者

まあ実際にモンスターの襲撃で壊滅したアカデミーもいくつかはあるもんなあ

 

839:名無しの探索者

とはいえそんな京都アカデミーも今は完全復旧してるで。むしろ前より人も設備もアップしたわ。イッチにはその辺を見てほしいな

 

840:異世界転移者

なるほど、敷地内にあった大きな慰霊碑はそれでしたか。犠牲になった方々のご冥福をお祈りします。

 

アカデミーですが、ええ本当に凄かったですね。

巫女ギャルさんの案内でゲートを潜った瞬間に、僕もナナも言葉を失いましたよ。

 

◆◆◆

 

大きく重厚な正面ゲートを潜った先は、まさに別世界だった。 

 

まず空気が違う。

明るく賑やかでありながら、同時に独特の熱と緊張感のようなものがある。

匂いにしても、花壇や草木といった嗅ぎ慣れたものに、鉄や血や獸臭といった剣呑な臭いが混じっていた。

 

そしてなによりも、音だ。目の前を歩く人々の無数の足音だ。

勇ましく鳴るのは、動きやすそうな服装の上にボディアーマーを着こむなど、思い思いの装備に身を包んだ者達の足音。これから戦いに向かうのか、決断的なリズムには迷いは無い。

 

一方、消え入りそうなほどゆっくりとしたリズムは、とぼとぼと歩く傷だらけの者達の足音。

命からがら逃げ帰った敗残者か。あるいは仲間を失ってうちひしがれているのか。

疲れきったような彼らの身体にはいずれも包帯や絆創膏があり、丸めた背中には力無く、その服にはモンスターのものかあるいは自身のものかも分からない血痕が付いていた。

 

そして最も高らかに鳴るのは、同じように傷つきながらも笑みを浮かべた者達の足音だ。

疲れはあれど一様にやりきった笑みを浮かべた彼らは、きっと勝利者で生還者だ。隣の仲間と笑い合い肩を組み共に喜びを分かち合う彼らが誇らしげな足取りで向かう先は、祝杯の席かあるいは帰りを待つ愛しい者達の下か。

 

そんな表情も装いも異なる者達の出す、囁きが笑い声が嗚咽が擦れる装備の揺れる道具の地面を踏む無数の靴底の音が音が音が──大海の波のように押し寄せてきた。

 

それに包まれる僕の瞳は、呆然と目の前に広がる光景を見る。

広く長く、奥まで続いて先の見えない敷地に連なる幾つもの建物。食堂やコンビニなど見慣れたものもあれば、一見場違いにも思える古めいた日本家屋や神殿のようなものもある。

開いた窓から祝詞か呪文ような声が聞こえるがなんだろうか。途中で爆発したような大量の煙が窓から上るも誰も騒がないのは何時もの事という事か。

 

そんな敷地を歩くのは老若男女様々な格好をした者達。

ボディアーマーに身を包んだ者もいれば、よく町中で見かけるようなスーツやラフな服装をした者もいる。かと思えば時代劇やおとぎ話から出てきたかのような鎧や甲冑を纏った者なども普通に混じっていて、一見すると仮装パーティーかコスプレイベントのようだ。

 

だが、それと決定的に違うのは、彼らが纏う雰囲気。

おそらくはそう、戦う者だけが持つ独特の『凄み』が、それらが娯楽やお洒落のための『仮装』ではなく戦うための『装備』なのだと、僕に無言で教えていた。

 

「凄い……」

 

その光景に、思わず感嘆の声が漏れる。

傍らのナナも同じように目を丸くして目の前の光景に見入っていた。

 

見たことの無い光景。前の世界では決して見られない景色。ここにしか、この世界にしか無い場所。

この時、僕は本当の意味で実感しました。ここは異世界なんだと。

 

「にひひ。チョーすごいっしょ。ウチも初めてここに来た時はマジでびっくりしたわ。さっすが関西トップクラスのアカデミーだよね~」

 

僕たち反応を楽しそうに眺めていた巫女ギャルさんは、未知の景色をバックに両手を広げて、歓迎するように言った。

 

「京都アカデミーにようこそ!」

 

◆◆◆

 

あの時の光景と、巫女ギャルさんの笑顔はきっと一生忘れないと思います

 

841:名無しの探索者

ようこそイッチ!(京都アカデミーより愛を込めて

 

842:名無しの探索者

ようこそ~( ^-^)∠.:*:☆パーン

:r842e》 

843:名無しの探索者

地元民を代表して歓迎するでイッチーー!

 

844:名無しの探索者

ワイのホームにイッチとナナちゃんが来たと思うと感無量やなぁ

 

845:名無しの探索者

ほんそれ。それにこんなに感動してくれるかとか誇らしくなるわ

 

846:名無しの探索者

関西トップクラスの敷地と設備は壮観やからな。これがワイらの京都アカデミーやで( ^ω^)ドヤァ

 

847:名無しの探索者

>>846

なんやそのドヤ顔。大阪アカデミーだって負けてへんわ

 

848:名無しの探索者

>>846

奈良アカデミーを舐めるなよ(`皿´)

 

849:名無しの探索者

>>848

鹿と大仏以外に何かあったっけ?

 

850:名無しの探索者

>>849

古墳があるだろふざけんな馬鹿野郎このやろう

 

851:名無しの探索者

奈良だけ古代文明かなにかか?

 

852:異世界転移者

いいですね鹿。本物の鹿に鹿せんべいを食べさせるのは前からやってみたいと思っていたので、いずれ奈良のアカデミーにも行ってみたいですね

 

853:名無しの探索者

おう来て来てイッチ歓迎するぞ~

 

854:名無しの探索者

今なら鹿せんべいあげ放題だ(゜∇^d)!!

 

855:名無しの探索者

あっずりいぞお前ら!?

 

856:名無しの探索者

奈良のくせに生意気だ!

 

857:名無しの探索者

和歌山アカデミーに来てくれたら和歌山ラーメン食べ放題よ~!

 

858:名無しの探索者

ケモナーなら愛でてよし食ってよしの神戸牛と触れあえる兵庫アカデミーに来るべし!

 

859:名無しの探索者

滋賀アカデミーに来て琵琶湖で一泳ぎしようぜ! 

 

860:名無しの探索者

唐突なイッチ勧誘合戦始まってて草

 

861:名無しの探索者

まあ関西以外のワイらだって出来るなら地元に遊びに来てほしくはあるからな。気持ちは分かるで。

ちな美味い茶が飲みたくなったら静岡アカデミーに来てなイッチ

 

862:異世界転移者

すごい歓迎してくれるんですね。皆さんのお気持ち嬉しいです。ナナと一緒に各地のアカデミー巡りをするのもいいですね。もしその時はよろしくお願いします。

 

さて、初めて見るアカデミーの光景に圧倒された僕達は、それから巫女さんに案内されながらその敷地内にを進みました。

見たことのある物からそうでない物まで色んな人や動物や建物が所狭しとある、ゲームかファンタジーの中みたいな場所を自分の足で歩くのはワクワクする体験でしたね。

始めはおっかなびっくりだったナナもすぐに目をキラキラさせて「あれはなんですか!」「これはなんでしょう?」って周りを見ながら次々と聞いてきましたよ。

巫女ギャルさんもそれを元気な子供に向けるような微笑しげな目で眺めながら、僕やナナの質問に答えてくれました。

 

◆◆◆

 

「あれは鍛冶屋だね。武器防具の販売とかあとは修理なんかのメンテナンスもしてくれるとこだよ。あーでも、あれは個人経営の匠がやってるとこだから腕は確かだけど割高。ダンジョンでドロップした武器とかアイテムでもない無い普通のやつなら、町中のショップで十分かな」

「ダンジョンでドロップ……やっぱり宝箱やモンスターを倒したらそういうのが手に入る仕組みなんだね」

「そりゃね。でも宝箱やモンスターから奪ってゲットできるダンジョンアイテムって中には強力なのがあるけど扱いもムズいんだよね~。持ってられない重さだったり規格外なサイズだったりはまだいいけど、呪いかかってたり見ただけで発狂したりとか下手すりゃ三回は死ぬようなのがあったりしてさ。ま、そういうのを使いこなせる上位ランクの奴らはだから鬼強なんだけどね」

「なるほど。なら僕みたいな初心者にはショップで売ってるような普通の武器や装備が良いっていうことだね」

「そゆこと。杉ちゃんは泳ぐ猿の如しってやつだね。後でおにーさんとナナちゃんのを買うときはウチが選んだげるよ。ついでに商店街のおばちゃん相手に鍛えたネギリテクも披露しちゃうからね!」

「ありがとう。何から何まで悪いね。あとそれを言うなら『過ぎたるは及ばざるが如し』だよ」

「お~。おにーさんあったま良い~」

 

「あっ! あの遠くにあるおっきな建物は何ですか?」

「あれは学園エリアの本校舎だよ。探索者の卵の子達があそこで探索者になるための勉強とか訓練をしてるわけ。ウチも去年まであそこに通ってたんだ~」

「ああ、さっきからちらほら見かける制服姿の子供達はその生徒か。大学のキャンパスみたいな造りだと思ってたけどなるほどね。だからアカデミーって言う名称なんだ」

「もともとはなんか違う名前を付けるハズだったけど、なんかゴタゴタがあってそうなったらしいよ」

「ゴタゴタって?」

「いや~歴史の授業で教わったらしいんだけどタルくて途中で寝たからよく覚えてないんだよね~」

「駄目じゃないか」

 

◆◆◆

 

まあ時たま怪しい所はあったけど、明るく丁寧に答えてくれたので道中だけで色々な事が知れましたね。

ナナもすごく楽しそうに話を聞いてましたよ。

 

863:名無しの探索者

あら巫女ギャル親切~(^^)

 

864:名無しの探索者

これは世話焼きお姉ちゃんですね。姉属性の俺は詳しいんだ

 

865:名無しの探索者

巫女どころか姉属性まであるとはやりおるな(後方腕組み

 

866:名無しの探索者

ナナちゃんも安定の可愛さでワイほっこり(*´ω`*)

 

867:名無しの探索者

目をキラキラさせてあっちへこっちへ。初めてのコースを散歩するワンちゃんかな?

 

868:名無しの探索者

そんで大好きなご主人さまとやからなおさら楽しいんやろな

 

869:名無しの探索者

い~な~俺もうんちく語ってナナちゃん楽しませたいな~

 

870:名無しの探索者

>>869

ほうほう例えばなにがあるんや?

 

871:名無しの探索者

あ~とそりゃあれだ。

例えば巫女ギャルが言ってたアカデミー設立時のゴタゴタとかだな。

 

まず10年代前半のダンジョン発生期に、それまで誰でも自由にダンジョンに潜れたのをライセンス制にしようっていう『探索者制度』がアメリカで始まって、その後各国もそれに倣ったっていうのは知ってるな?

 

872:名無しの探索者

そりゃ小学校の授業で習ったしな

 

873:名無しの探索者

ごめんワイ超寝てたからろくに覚えてなかったわ

 

874:名無しの探索者

ワイもあんま興味無かったからほぼ聞き流してた模様

 

875:名無しの探索者

つまらんぞ~もっとおもろい事言え~p(`ε´q)ブーブー

 

876:名無しの探索者

うっさい。お前らじゃなくて、こっちの世界の事を知らないイッチに説明するなら事の始まりからだろ。

 

まあそんで日本も探索者制度を導入して、その活動の拠点でありいざという時の攻撃防衛能力を備えた施設を各地に作ろうって話になったんだけど、な。

案の定、強烈な反対運動にあったんだよ。

 

877:名無しの探索者

へ? なんでや? 自分たち守ってくれるもんを誰が反対するんだよ?

 

878:名無しの探索者

主に平和主義系の団体と地元民だ。

ダンジョン発生以前の日本人、特に年配の人たちは軍事的な物に対する忌避感が根強かったらしくてな。たとえそれが自分たちを守るための物だろうと軍事施設を受け入れることができなかったんだろうよ。

 

879:名無しの探索者

ほえ~そんなもんかね

 

880:名無しの探索者

わっからんなあ。自分の家はむしろダンジョンの被害に遭いたくないからアカデミーの近くに引っ越したで

 

881:名無しの探索者

まあ実際京都アカデミー襲撃された時は周辺の民家にも被害はでたから、あながち神経質なだけって訳じゃないのか?

 

882:名無しの探索者

若いもんは知らんだろうが当時の反対運動はなかなか凄かったぞ

 

883:名無しの探索者

あ~覚えてるわ。ワイの地元も建設予定地やったからプラカード持った連中が朝から晩まで『防衛基地建設反対』とか叫んでて、うるさ過ぎてろくに眠れんかったわ

 

884:名無しの探索者

防衛基地?

 

885:名無しの探索者

>>884

当初は『対ダンジョン防衛基地』て名前で造る予定だったんだよ

 

886:名無しの探索者

なんだその怪獣映画にでも出てきそうなダセえ名前ww

 

887:名無しの探索者

B級臭がプンプンするぜェーーッ!!!!

 

888:名無しの探索者

いや特撮好きワイとしては悪くないと思うけどなあ。これが何で今のアカデミーになったんや? 

 

889:名無しの探索者

そりゃ当時の反対運動を何とかするための秘策がそれだったんだよ。

本来は単に数ある事業の一つに過ぎなかった未成年者の教育・訓練の方をメインの目的にすることで、軍事機関ではなくあくまで『教育機関』って事にしたんだ。

実際、そうする事で諸々の問題をかなり強引にだが何とか出来た。

 

例えば当時の大臣の発言から抜粋すると

 

『軍事施設? あくまで未来の探索者を育てるための教育施設だよ』

『武装がある? あれは子供達を守るためさ』

『あの兵器や軍事車両? 授業の実習用だが?』

『一般探索者用の施設や研究設備? 生徒達が間近でプロの仕事を観察したり交流する事で、授業では習えないような実践的知識を得る機会を作るために決まってるじゃないか』

『屁理屈だなんて冗談じゃない。天地神明に誓って本当の事だともトラストミー

 

まあどっからどう考えても政治家お得意の屁理屈だが、これを押し通して反対運動を力業で突破。それに伴って名称も教育機関って事を示すために『アカデミー』になったって訳だ

 

890:名無しの探索者

いやいやいや糞屁理屈にも程があるだろ!?

 

891:名無しの探索者

ひっでえ口八丁もあったもんだww てかこれで通したとかマジかよww

 

892:名無しの探索者

汚いさすが政治家汚いwww

 

893:はくっち

ああうんそうだね確かに屁理屈も良いところだけど、これが思いの外上手くいって、結果として若い世代の探索者のレベルが全体的に著しく向上し、今では世界各国がこのアカデミー制を導入しているのだから何だかんだ言っても英断だったのだろうね

 

既に持っている知識だけれど、なるほど視点の異なる他人が語るのを改めて聞くとまた違った味わいがあるね。良い説明だったよありがとう

 

894:異世界転移者

米軍基地問題はもちろんミサイル迎撃装置を置くのですら厳しいこの国で、新たな軍事施設をどうやって造ったのか疑問でしたけど、なるほど教育施設という名目だったんですか。確かにそれはまた何というかある意味日本らしいやり方ですね

すごく興味深い話でした。僕からもお礼を言わせてください

 

895:名無しの探索者

楽しんでくれたようで何よりだわ。よかったらナナちゃんにも聞かせてあげてくれ

 

896:異世界転移者

はい。もちろんそうします。きっとナナも喜んでくれると思いますよ。

 

さて、それから僕たちは巫女ギャルさんに案内されて学園エリアとは反対側にある一際大きな建物の中に入りました。

そこにはこれまで通ってきたどの場所より大勢の探索者がたむろしていて、それぞれが仲間達と話し合ったり壁の掲示板を眺めていたり時には言い争っていたりと思い思いに過ごし、そんな彼らに応待する制服姿の職員たちが忙しそうに働いていました。

 

◆◆◆

 

「ここが学園エリアの本校舎と並ぶ、アカデミーのもう一つのメイン/()b()()()()()()()()()()()/()b()。おにーさん達の目的の探索者ライセンス取得とか他にもいろんな手続きがここでできんだよ」

「ここもここで壮観だね」

「ご主人さまご主人さま。あそこでたくさんの人たちがモニターを見てますよ。よっぽど面白いものでも映ってるんでしょうか?」

 

気になる気になると顔に書いたナナが言う方を見ると、確かに壁に取り付けられた複数の大型モニターの前に大勢が集まっている。その表情は楽しんでいるというより何かを探し、慎重に思案して、あるいは見定めているような様子だ。

 

「あれは企業や個人からの依頼が表示される電光掲示板だね~。『これを採取してきてください』とか『あのモンスターを討伐してくれ』とか、アカデミーに来る色んな依頼が出されてるんだ。アカデミーのホームページでも依頼の受領は出来るけど、ここでしか受けられない依頼とかもあるし報酬が美味しい依頼は早い者勝ちだからみんなが集まってるわけ」

「なるほど。探索者はそれで稼いでるわけか。受けるのは別としてもどんな依頼があるのかは気になるし、ナナ、後で一緒に見に行こうか」

「はいっ!」

 

元気に返事をするナナ。

そんな彼女に、いくつかの視線が向いているのに気付く。

懸念していたことが当たったか。ナナの可愛らしさは魅力だけど、やはり悪目立ちしてしまうようだ。実際、幾人かのガラの悪そうな風体の者たちがナナの健康的な肢体を好色な眼差しで眺めていた。

心の中で舌打ちししていると、巫女ギャルさんもそれに気づいたらしく

 

「ちっ。マジ最悪。いくらナナちゃんが可愛いからってやらしー目で見てんじゃねーよ」

 

こちらは実際に舌打ちして、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

そして横にいた大猫ちゃんを

 

「任せてよおにーさん。あんな奴らはおしおきにウチのバカ猫でちょっと怖がらせてやるからさ」

 

そう言うと同時に、大猫ちゃんが剣呑な唸りを上げてガラの悪い探索者たちを睨みつけた。狩猟性肉食動物のギラギラとした瞳を向けられた彼ら彼女らは、その迫力に恐れをなしたのか不埒な視線をさっと逸らし、中には顔を青ざめさせて後ずさっている者たちまでいる。

 

「おおっ。すごいね一睨みだ」

「でしょでしょ~。ふっふーんウチのバカ猫は碌に言うこと聞かないバカだけど強力な使い魔なんだっ。どう? 朝に言った通り、あんな奴らなんてウチがちょっとコイツをけしかければイチコロだったっしょ」

「うん確かに。君ってば凄いんだね。おかげで助かったよ。君もありがとうね猫ちゃん」

 

不快な連中を黙らせてくれた二人に礼を言う。ついでに猫ちゃんを撫でる。

巫女ギャルさんは得意げに胸を張って、大猫ちゃんは撫でられて気持ちよさそうに喉を鳴らした後、不意にそのしなやかな身体をぐっと屈めた。それはそう、ネコ科の動物が獲物を狩る際に行うような力を溜める姿勢で

 

「フシャーーーーー!!」

「ってまた何やってんのバカ猫―――――!?」

 

猛々しく吠えながらガラの悪い連中へと飛びかかって行った。

「うわあ!?」「なんだなんだ!?」「バカでかい猫がまた襲ってきた!!」「逃げろまたあの猫が暴れてるぞー!!」突然襲われた連中は悲鳴を上げて瞬く間にパニック状態。それを見ていた周囲もなんだなんだと驚いている。

でも一番慌てているのは当の飼い主である巫女ギャルさんだった。

 

「いやいやいやホント何してくれちゃってんのあのバカ猫!?」

「きっと僕が撫でたから、もっと褒められたくてああしてるんだろうね。いやあ可愛いなあ」

「むうぅ……っ。ナナのご主人様に露骨な点数稼ぎとは油断できない泥棒猫です」

「なんでウチよりおにーさんに懐いてんのあのバカ猫は!? っああもう、おにーさん達は受付で手続きしといて。ウチはちょっとあのバカ猫シメてくるから!」

 

そう言って、こらーと怒声を上げながら大猫ちゃんの方に駆けていく巫女ギャルさん。

 

「行っちゃいましたね」

「行っちゃったね。……じゃ、言われた通り僕たちは受付に行こうか」

「はいっご主人さま」

 

◆◆◆

 

そんなわけで、繰り広げられるギャーギャーどったんばったん大騒ぎを横目に、僕たちは受付へと向かいました

 

897:名無しの探索者

あ~。あの騒ぎはそういう事ね

 

898:名無しの探索者

京都アカデミーのサポートセンターで使い魔が暴走して大騒ぎになったって聞いたけどこのことか

 

899:名無しの探索者

てか前にもこんなこと無かったっけ?

 

900:名無しの探索者

あーーーあったあった思い出した! この巫女ギャル前にも使い魔暴れさせた奴やん!?

 

901:名無しの探索者

女性探索者が絡んできた奴らを使い魔で追っ払おうとしたらそのまま暴走したって奴だろ? 俺騒動に巻き込まれてお尻引っかかれたわ(T_T)

 

902:名無しの探索者

マジかww 大猫ちゃんヤベェなww

 

903:名無しの探索者

草生やすな。ああ見えて上級ダンジョンのモンスターとやりあえるくらい実力のある奴やから割とシャレにならんで

 

904:名無しの探索者

そして肝心の主はそれをろくに制御できてないという

 

905:名無しの探索者

それはもうただの猛獣では(´・ω・)?

 

906:名無しの探索者

私の愛猫は狂暴ですよ

 

907:名無しの探索者

逆にそれを一発で手懐けたイッチ何もんだよ?

 

908:名無しの探索者

>>907

末期のケモナーだろ

 

909:名無しの探索者

>>907

たぶんイッチの手は触れられたら撫でポ不可避のゴッドハンド

 

910:名無しの探索者

>>907

間違いなく【獣】特攻持ちだよねw

 

911:異世界転移者

いやいやそんなとんでもないものじゃないですって! 単に何回も動物を撫でてきたから気持ちのいい撫で方が身に付いたってだけですよ

 

そしてその後ですが、僕は受付に行ってライセンス取得のための手続きをしました。といっても試験のようなものは無く、書類の記入と2時間の講習だけであっさり取れたのはちょっと意外でした。そのままナナの使い魔申請も完了して無事に登録できましたよ。

巫女ギャルさんとは手続きをすべて終えた後に合流しました

どうにかこうにか騒ぎは収まったものの、巻き込まれた探索者や職員にこってり絞られたようでげっそりと疲れ切った様子でしたたね

その姿があんまりにもアレだったので、とりあえずみんなで休息がてらちょっと遅めのランチを食べようと誘って今に至るというわけです

 

912:名無しの探索者

おっ、イッチ探索者ライセンス取得できたんかおめでと~

 

913:名無しの探索者

イッチおめ!

 

914:名無しの探索者

おめでとさーーん\(^o^)/

 

915:名無しの探索者

まあ未成年とは違って成人済みなら簡単に取れるから心配はしてなかったけどな

 

916:名無しの探索者

実際大人の場合は単にダンジョンへ潜る許可証みたいなもんやしな。とはいえこれでイッチもワイらの後輩になったわけかあ

 

917:名無しの探索者

ダンジョンの事なんて何も知らんかったイッチがもう探索者に。なんか感慨深いもんがあるなぁ……

 

918:名無しの探索者

困ったことはワイら先輩にどーんと頼ってくれやイッチ

 

919:異世界転移者

はい。まだ右も左も分からない新人なので、これからも頼らせてもらいます。ナナともどもよろしくお願いしますね皆さん

 

920:名無しの探索者

おう任せろ!

 

921:名無しの探索者

ワイらがついてるさかい、これからも大船に乗った気持ちでいてくれや~

 

922:名無しの探索者

>>921

なお行き先は割とカオスですが

 

923:名無しの探索者

>>922

スレ民はとりあえず面白そうな所に爆進するもんだルォ!?

 

924:名無しの探索者

とはいえこれでひと段落やな。イッチはこれからどうするん?

 

925:名無しの探索者

とりあえずナナちゃんを愛でるのかしら? もしくは大猫ちゃん

 

926:名無しの探索者

大穴で巫女ギャルを推すワイ

 

927:名無しの探索者

なにエロいことするの? とりま事後に報告よろ。もち画像付きで

 

928:名無しの探索者

その話詳しく聞かせてもらおうか(ガタッ

 

929:異世界転移者

いやしませんからね!! まあ今日一日で歩いたナナには帰った後で労ってあげようとは思ってますけど、いやらしい事なんてしませんよ。

 

この後の予定ですが、実は巫女ギャルさんにダンジョン探索に誘われて、ランチを食べ終えたら一緒に行ってみようという事になりました

 

930:名無しの探索者

ほうダンジョン探索!

 

931:名無しの探索者

探索となっ!?

 

932:名無しの探索者

わりといきなりやな

 

933:名無しの探索者

いやワイもライセンス取得した直後に軽く腕試しにダンジョン潜ったで。まあ案の定ボッコボコにされて命からがら逃げ帰ったけど

 

934:名無しの探索者

>>933

ダッセwww お前は俺かよwww(同経験者

 

935:名無しの探索者

新人あるあるだな。まあ生きて帰れただけマシだったろうが

 

936:名無しの探索者

禿同。ワイの知り合いはそれやって帰ってこれんかったわ。イッチ大丈夫? 無茶したら死ぬで?

 

937:異世界転移者

心配してくれてありがとうございます。

巫女ギャルさんの話では何でもそのダンジョンに大手のパーティーが潜るらしくて、そのすぐ後に行けば割と危険は少なく探索できるという事らしいですよ

 

938:名無しの探索者

なるほどハイエナか

 

939:名無しの探索者

実力者ぞろいの大手パーティーなら強いモンスターでも行きがけに倒してくれるから、そいつらが行った後のエリアはしばらくは安全なんだよな

 

940:名無しの探索者

そんでその後に新しいモンスターが現れるまでの間に素材やら宝箱を漁るんやが美味しいんだよなあ。探索者同士の早い者勝ちにはなるけど上手くすりゃそこそこのレアアイテムが楽に手に入るから、ワイも新米の頃はそれで稼いだわ

 

941:名無しの探索者

あ~懐かし~。レアとはいっても浅層で採れるのはたかが知れてるから、実力が付くと自力でその先に潜るけど、まあ新人にはいい小遣い稼ぎだよな

 

942:名無しの探索者

だな。モンスターとの遭遇率も低いしイッチ達が最初にする探索としてはいいんじゃないの? もし遭遇しても巫女ギャルが付いてんならなんとかなるべ。アカデミー卒業してんなら最低でもCランクのはずだし

 

943:異世界転移者

はい。巫女ギャルさんもいざという時は戦闘は任せてと言ってくれましたし。もちろん頼り切るつもりは無いですが、それでも皆さんの言う通り無茶しないよう探索しますね。

 

今丁度ランチも終わったところなので、そろそろ皆でダンジョンに向かいたいと思います。次の報告は帰ってきてからになりますので、またしばらくはお待ちください。では

 

944:名無しの探索者

お~いってらイッチ~

 

945:名無しの探索者

行ってらっしゃ~い(^^)/~~~

 

946:名無しの探索者

無理すんなよ~

 

947:名無しの探索者

安全第一。逃げ帰っても誰も笑わんからな

 

948:名無しの探索者

報告楽しみにしてるで~

 

949:はくっち

私も楽しみにしているよ。君が見る未知を得る経験を知る知識を楽しみに楽しみに待望し待ち焦がれ期待しているよイッチ

 

950:666

主に背きし罪深き身ですが無事を祈っていますよ。あなた方に主の加護があらんことを

 

951:名無しの探索者

イッチにロリの神の加護があらんことを

 

952:名無しの探索者

>>951

だから何なんだよその邪教

 

953:名無しの探索者

そういやイッチ達の行くダンジョンって結局どこなんだ?

 

954:名無しの探索者

あ、それもそうやな。ワイとしたことが聞くの忘れてた

 

955:名無しの探索者

なんやうっかりやなお前らw ワイもや

 

956:名無しの探索者

んじゃちょっくら調べるわ。これから京都市内で大手のパーティーがアタックかけるダンジョンだっけ

 

957:名無しの探索者

市内と明言はされてないけどまあそうやろな。とりまワイも調べるか

 

958:名無しの探索者

京都の大手って言ったら《巫剣流(ふつるぎりゅう)》とか《御門家(みかどけ)》あたりか

 

959:名無しの探索者

片や退魔剣術の一大流派。片や陰陽道の大家か。まあ京都の大手いうたらそこらが他のパーティーとは頭一つ抜けてるな

 

960:名無しの探索者

つーことはそのどっちかか。どや、いいかげん調べ付いた?

 

961:名無しの探索者

てかなんか返答遅くね

 

962:名無しの探索者

おいおいどーしたよリサーチ班

 

963:名無しの探索者

サボりか~?

 

964:名無しの探索者

あーうん……調べはついたで……

 

965:名無しの探索者

ワイも。どうやら《巫剣流》が今日これからダンジョンアタックかけるらしいわ

 

966:名無しの探索者

ふーんそっちか。で、どこにアタックすんだよ

 

967:名無しの探索者

あーそれなんだけどな……いやこれマジかよ

 

968:名無しの探索者

もったいぶるなあくしろよ

 

969:名無しの探索者

例の人外魔京

 

970:名無しの探索者

え?

 

971:名無しの探索者

え?

 

972:名無しの探索者

え?

 

973:名無しの探索者

( ゚д゚)え?

 

974:名無しの探索者

…………マ?

 

975:名無しの探索者

京都三大ダンジョンの一つの?

 

976:名無しの探索者

ガチ上級ダンジョンの?

 

977:名無しの探索者

法則厄介すぎてAランク率いるパーティーが連合組んでも攻略できなかったあの人外魔京の?

 

978:名無しの探索者

……うん

 

979:名無しの探索者

 

 

980:名無しの探索者

 

 

981:名無しの探索者

 

 

982:名無しの探索者

 

 

983:名無しの探索者

…………イッチ達ヤバくね?

 

984:名無しの探索者

正直ヤバい(@_@;)

 

 

 

………………

……………

…………

………

……

 

 

カツン。カツン。

ダンジョンへと続く道を、僕たちは足音を鳴らしながら進んでいく。

未知の場所へと足を踏み入れる緊張感と微かな高揚で、徐々に高鳴っていく胸の鼓動を感じながら。

 

「それじゃおにーさん。ナナちゃん。心の準備はオーケー?」

 

隣を歩く巫女ギャルさんからの問い。それに僕とナナは、揃って頷いた。

 

「うん。ナナはどうだい?」

「ナナもバッチリです。ご主人さま。どんな相手が来てもナナがご主人様を守りますっ」

「頼もしいね。でも一人で無理しちゃだめだよ。いざという時は僕も命を懸けて

ナナを守るからね」

 

フンスッと気合を入れるナナのかわいらしくも勇ましい姿に笑みを浮かべながらそう言った僕に、巫女ギャルさんは口笛を吹いて

 

「ひゅう。おにーさんカッコいいじゃん。ま、安心してよ。探索するのは一番浅いエリアで強いモンスターは大手が倒してるだろうし、もし出てきてもウチとバカ猫がやっつけたげるからさ」

「にゃうっ」

 

こっちは自信満々に胸を張り、足下の大猫ちゃんも『任せろ』とばかりに一鳴きする。

それを頼もしく感じながら、僕は足を進め、そして遂にダンジョンへの門を潜り抜けた。

そうしてたどり着いたその先の光景に、息を飲む。

 

そこにはもう、今までの慣れしたんだコンクリートの色は無かった。

代わりにあるのは、木と、石と、漆喰の色。木で作られた家々と、敷き詰められた瓦屋根。土が剝き出しとなった地面には、アスファルトなどどこにも見当たらない。

それは旧く、過ぎ去ったはずの時代の街並み。

まるで時代劇に出てくるような街が、目の前に広がっていた。

 

だが、僕が息を飲んだのは、そんな目に映る物だけではない。

空気だ。重く、どんよりとして、ぶるりと背筋が寒くなるような街全体を覆う怪しく不吉な空気だ。

墓場や廃墟、市事故物件などの心霊スポットがこんな雰囲気なのかもしれない。

ねばつくような生暖かい風が吹く。ほんのりと臭うのは、血と屍の臭いか。

気配がする。人でも獣でもない、この世ならざる何かの気配が。

 

ああ、なるほど。確かにここは違う場所だ。僕たちが今までいた日常の世界とは異なる真の異界だ。

その証拠にほら。天を見れば、そこにあるのは今まで燦燦と世界を照らしていた太陽ではなく——満月。丸く大きく、一片の欠けも無い青白い満月が、不気味な瞳の様に夜闇に染まった空を煌々と照らして僕たちを見下ろしていた。

 

「んじゃ。おにーさん達の初めてのダンジョン探索を始めよっか」

 

そうして、彼女は言った。

僕たちがこれから足を踏み入れる場所、人ならざる者たちの異界、探索するダンジョンの名を。

 

「Bクラスダンジョン《平安京》へようこそ。おにーさんとナナちゃん」

 




お読みいだたきありがとうございます。某FG●で筆頭局長の実装を心底願っている作者です。

あさて前にも書いた通り、この章は基本世界観の説明回なので、バトルはこれまでお預けでした。でもようやく次からは解禁ですよ。ダンジョンに潜るまでに六話使うとか自分の計画性の無さにびっくりだね。←プロットとか全然書けない人
そんなわけで次回からは主人公たちのダンジョン探索となります。
前章とはあらゆる意味で比べ物にならない上級ダンジョン。未知の法則とそして新たなモンスターに翻弄されつつわちゃわちゃする主人公たちをお楽しみに。あでゅー


おまけ短編

『人外魔京の狼』


闇がある。
深く、重く、不気味な夜の闇だ。
その中を、その探索者は駆けていた。

息を切らせ、ふき出す冷たい汗で全身を濡らし、荒い息で舌さえ出して目を血走らせ、恐怖に震えながらダンジョンの街並みを走っている。

その震える瞳にもはや仲間と共にダンジョンに挑んだ時に宿していたはずの覇気は無く。戦意は仲間が目の前で全て斬り殺された瞬間に恐怖に呑まれた。
故にもはや彼は勇敢な戦士ではなく哀れな逃亡者となり、逃げ続けているのだ。

畜生。畜生。
何だ。何なんだアイツは。
みんなアイツに殺られた。俺たちは決して弱くなかった少数パーティーだが皆経験豊富なBランクで、装備も体調も整えて万全の体勢だった。
なのに殺された。アイツたった一人に全滅した。
皆アイツに、あのチビで華奢で、糞生意気なニヤついたガキに笑って斬り捨てられた。

糞。糞。糞が!
ああ畜生痛え。腹が頭が中からかきむしられるように痛みやがる。
俺が仲間が殺されてくのにビビって逃げたからか? 助けを求めるあいつらに背を向けたからか? 
うるせえ馬鹿野郎しかたねえだろ。だいたい俺一人立ち向かったところで死体が増えるだけだろがッ!!

ダンジョンの法則によって身の内より生じる激痛に顔を歪めながら、それでも足を止めない。止められない。
聞こえるのだ。
家々の中から。物影から。街を覆う闇の向こうから、自分の醜態を嘲笑い喰らってやろうと舌舐めずりをする人外の者共の息づかいが。

ひひひ。くくく。けけけ。けたけたけた。

幾重にも連なるその声に、探索者はひきつった悲鳴を漏らしながら逃げ回る。

死にたくない。死にたくない。助けっ誰か助け──




「だ~れも助けになんて来ないよ。お・じ・さん♪」




耳元で囁かれたその言葉に、探索者は驚愕し、驚きと恐怖に足をもつれさせ地面に倒れこんだ。

「あらら大丈夫おじさん? 仲間がいたら助け起こしてもらえたかもしれないのに残念だね」

そんな彼にかけられる、鈴を転がすように澄んで、だが嗜虐的な音色でくすくすと嗤う声。

「だっておじさんの仲間。み~んなボクに斬られちゃったもんねぇ」

うつ伏せに倒れた男は、その主の顔を見ることはできない。

「あとはおじさん一人だけ。でも頑張れるよね?こんなもんじゃないよね? ほらほらせっかくここまで走ってきたんだから諦めちゃ駄目だって。歯を食い縛って立ち上がろーよ。ね♪」

だが、分かった。

「それで立ち上がったら~もっと逃げるのも良いし~。なんならボクにもう一度立ち向かうって言うのも良いね~。あはっ。うんうんそれが良いよ! 仲間の仇を討とうよおじさん! 仲間を見捨てたヘタレ野郎の汚名を返上しようよ! だからねえガクガク震えてないで立とうよ立ち上がろうよ~。ほ~ら頑張れ頑張れっ♪」

こいつは、この糞餓鬼は俺を見下して、俺の恐怖も後悔も足掻きも心底嘲笑っていやがるのだと。

糞。畜生。糞糞糞がああああ………ッ!!!!

噛み締めた唇から血を流し、怒りと屈辱に身体を震わせる。が、それでもなお戦意は湧かなかった。
もう敵わないと、心がとうに折れていたから。

「え~。なにおじさんここまで言われてやり返そうって思わないの? こんな糞生意気なガキに見下されてるのに分からせてやろうって思わないわけ? うっわ情けな~い」

足が震えて立ち上がることもできず、這って逃げようとするその姿に、背後の気配は失望したように言う。

「他のやつらが手応え無さすぎだから、どうせなら足掻くおじさんで遊んでやろうって思ったから生かしてやったのにつっまんないの~」

せっかく買った玩具が期待外れだった子供のようなその声に、悔しさのあまり涙が滲んだ。
それでもなお、逃げようともがく彼は

「じゃあもういいや。バイバイおじさん。最期までくっそ期待外れだったよ。ざ~こ」

しゅっ………ごとり、と。
刃が閃き、自らの首が落ちる鈍い音を聞きながら、その意識を闇に呑まれた。




「あ~あ。つっまんないなぁ」

そうして一人の哀れな探索者がダンジョンに屍を晒した後、それを成した者は不満げに溜め息をついた。
新たに生まれた屍を一瞥する事すらせず、もはや路傍の石以下の興味すら無く、柔らかな頬をぷくりと膨らませて

「このあたりの探索者はみ~んな雑魚ばっか。一人くらいは斬り甲斐のある奴がいるかと思ったけど、結局全員斬っても揃って雑魚雑魚ざ~こ。ボクもううんざりだよ」

心底飽き飽きしたとばかりに呟く。
その様子はまるで玩具に飽きた子供のよう。
然り、それの本質は正しく子供だ。
凶器を遊具として振り回し、人間という玩具で遊ぶ無邪気な鬼子。かつてのオリジナルがそうだったのかはもはや分からぬが、今のそれはそういうものだった。

それからしばらく、ぶつくさと不満を漏らし続けて多少すっきりしたそれは、ふと思い立つ。

「たまには場所を変えてみよっかなぁ。そしたら新しい出会いがあるかもしれないし」

うん。うんそれがいい。たまには自分達の守護する縄張りから外に出かけるのもいいだろう。
まあ仮に雑魚しかいなくても気分転換にはなるか。

「そうと決まればさっそく行ってみようか。楽しい玩具が見つかるといいな~っと」

期待なんて正直あまりしていない。
半分暇潰しのようなものだ。
でも、ああもしも

「もし見つけたら一杯い~っぱい楽しませてもらうね。未だ見ぬ玩具さん♪」

そして人ならざる狼の瞳に嗜虐に満ちた愉悦を浮かべ、それは新たなる獲物を求め、魑魅魍魎が跋扈する人外魔京の闇の奥へと進んで行った。その身に纏う、浅葱色の羽織を翻して。
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