ダンジョン探索者は今日も掲示板で駄弁っている 作:どるふべるぐ
シリアス続きで忘れてたけどこの作品はコメディだ!
891:名無しの探索者
(絶対絶命のピンチ! 迫る凶刃からナナちゃんを身を呈して守ったのはイッチだった!)
892:名無しの探索者
まっじかよ平安京をたった一人でここまで突破したんか!?
893:名無しの探索者
まるきり素人がBクラスダンジョンをソロでって普通死ぬやろぉ
894:名無しの探索者
うわぁよく見たらイッチの格好ズタボロじゃん
襲ってくるモンスターを無理矢理振り切ってここまで来たってことか
895:名無しの探索者
すげえ、すげえよイッチ
◆◆◆
『ご主人さま……うそ……何で……』
『はぁ…はぁ…ぐ…っ…大丈夫かい? ナナ』
何が起こったのか咄嗟に理解できず呆然としていたナナだったが、自らに背を向けて盾となった主の言葉で、はっと我に返り
『ご主人さま!? ご主人さま大丈夫ですか!!』
『いや、僕なんかよりもナナの方が……』
『ナナよりもご主人さまです! そんな、こんな……刺されちゃってるじゃないですかあ!!』
悲痛な声で叫ぶナナが目にする主の背中から、鋭い刃の先が突き出ていた。
肉を穿ち、もしかしたら骨すらも断っているのかもしれないそれは、本来ならば自らを貫くはずのもので
『あ、ああ……なんで、なんでご主人さまがナナを庇って、こんな……ッ』
『なんでって……当たり前じゃないか』
顔を青ざめ声を震わせるナナに、彼は答えた。
傷の痛みとここまでの疲労で微かに強張った、それでも自らの愛犬へ精一杯の微笑で
『だってナナは僕の大事なペットで、僕はナナの飼い主だからね』
『あ……』
『ああ、よかった……今度は助けられた』
◆◆◆
896:名無しの探索者
イッチぃ……(´ノω;`)ウルッ
897:名無しの探索者
あだめそのセリフ反則ですワイの涙腺壊れる壊れたうわああああん(号泣)
898:名無しの探索者
まさか本当に土壇場でナナちゃんを救うとはなあ
899:名無しの探索者
これが二人の絆……ペットとの愛の力か
900:名無しの探索者
>>899
くっせえセリフww だけど全力で同意するワイがいる
901:名無しの探索者
それな。とはいえこのままじゃ依然として絶体絶命だぜ。沖田をどうにかしない限りどのみち詰みだ
902:名無しの探索者
うわああああそうだったあああ(゚Д゚ ||)!?
◆◆◆
『はあ? なっにそれ』
そんな、苛立ちの込もったセリフと共に彼を貫いていた刃が引き抜かれる。
なんの容赦も無い強引なそれに、背中の傷口から血が噴き出し、堪らず苦し気な呻き声を漏らす彼。
その様を、狼の瞳は冷たく見下ろしていた。
『せっかくボクから逃げられたのに、わざわざ戻ってきてボクの邪魔をするとか、超ムカつくんですけど』
怒りと苛立ちから舌打ちし、睨み付ける沖田総司。
『それに助けられたってなにさ? ボクはまだぜんぜん殺す気だよ。今すぐにでもキミ達を斬れるっていうのに、な・ん・で・もう助かったみたいな気になってるのかなぁ?』
『ああ……うん、そうだね』
むくり……と、ひどく緩慢な動きで彼は立ち上がる。
ただそれだけでぼたぼたと、傷口から滴る血が地面を赤く濡らした。
『!! ご主人さま、動いちゃ駄目です。血が……っ』
『ぐっ……痛ぅ…ごめんナナ。でも君を必ず助けてあげるから、安心して』
『助けてって……なにをする気ですか? いや、駄目です……だったらナナなんて捨ててください。もうナナのために危ないことをしないでください!!』
『……ごめんね』
ナナの必死の訴えに、だが彼は拒否の言葉と共に顔を逸らす。そして、改めて眼前の敵──沖田総司と対峙した。
『勝負をしよう。沖田総司』
◆◆◆
903:名無しの探索者
勝負!?
904:名無しの探索者
いや勝負てあんた
905:名無しの探索者
はっはっはネームド相手にタイマンとかご冗談を……冗談だよね?
906:名無しの探索者
いきなり何言い出すんだよイッチぃ(゚ロ゚;)!?
◆◆◆
『はぁ? 勝負? 勝負って言ったの?』
『ああ、そうだよ。僕と君で勝負をしよう』
ははっ。
提案する彼の言葉に返されたのは、嘲笑。
『勝負? 勝負ってボクとお兄ちゃんが? あは♪ 何言ってるの。そんなのお兄ちゃんみたいな雑魚がボクに勝てるわけ無いじゃんw 血を流しすぎておかしくなっちゃった?』
クスクスと嘲う沖田。
対して、彼は血を流し顔を青ざめさせながらも毅然と語りかける。
『もちろん普通に戦ったらそうなるね。だから、君が次に出す一撃に僕が耐えられたら勝ちというのはどうかな?』
『は? なにそれ? 我慢比べってこと?』
『そう。とりあえず即死しなければ僕の勝ちでいいかい? そして僕が勝ったらナナ達を見逃して欲しいんだ』
『なら一撃で殺せたらボクの勝ち、ね。……で、なんでそんなのにボクが付き合わなくちゃいけないのかなぁ? バカなの死ぬの? まあすぐ殺されるんだけどねw』
自分にとっては受ける理由の無い戯れ言を文字通り一笑に付そうとする沖田に、彼はニコリと笑い返した。
一見場違いなほど柔らかく、だがどこか挑発的に
『うんそうだね。でも、これからただ僕たちを殺すより、そっちの方が君好みじゃないかな』
『? どういうこと?』
『一縷の希望に必死にすがる愚かな獲物を、その希望ごと斬り捨てて絶望しながら死んでいくのを楽しむ。どう、君ならきっと楽しんでくれる遊びだよね』
それを聞いた沖田は、しばし呆気に取られたようにぽかんとしていたが、やがてその淡い唇を吊り上げ
『ぷっ──あははははっ!』
心底愉しげに、笑った。
『はははははっなるほどへえそうかそうだそうなんだぁ。お兄ちゃん、ボクと遊びたいんだね♪』
左手で顔を覆い、裂けた右側から血を撒き散らしながら
『なんだそれなら最初からそう言ってよぉ。あ、もしかしてわざわざここに来たのも本当はボクともう一度遊びたかったら? うっわお兄ちゃんボクに首ったけじゃんw』
そうしてひとしきり笑い声を上げた後、沖田は改めて彼に顔を向け、頷いた。
『うんいいよそう言うことなら遊ぼっか。ボク色んな人と遊んできたけど、誰かから遊びに誘われるのって初めてなんだ♪ すっごく嬉しいよ!』
『気に入ってくれたなら良かったよ。これが唯一の希望だったからね。──後は君に勝つだけだ』
『うんうんいいね。その希望を斬り捨てた時に君が浮かべる絶望の死に顔が今から楽しみだなあ──勝つのはボクだよ。お兄ちゃん♪』
◆◆◆
907:名無しの探索者
何かすげえのが始まったあああああ!?
908:アル中
ぶひゃひゃひゃひゃ!! やっべえ面白えなこの兄ちゃん! Eランクがネームドとタイマンで勝つ気だぜおい!
909:名無しの探索者
今までもさんざん無茶なぶっこみしてきたけどこれは無理やろイッチぃ!!
910:名無しの探索者
やめてください死んでしまいます
911:名無しの探索者
でもワンチャンこれでイッチ達が助かる目が出来たんだからファインプレーじゃね
912:名無しの探索者
>>911
あんたバカぁ?(新世紀ツンデレ感
913:名無しの探索者
>>911
きみはじつにばかだな(未来ロボット感
914:名無しの探索者
ネームドとタイマンとかAランクでもなけりゃ無理無駄無謀なんだよなあ┐(´д`)┌
915:名無しの探索者
それにイッチのセリフ聞いてたか? 『ナナ達を見逃して』だぞ
916:名無しの探索者
イッチの身体見てみろや。奇跡的に急所は外れてるみたいやが沖田の刀で貫かれてる上、ここに来る間にモンスターに襲われた傷もあちこちあって満身創痍やで。よしんば沖田の一撃で即死をまぬがれたとしても、その後身体が保つとは思えんな
917:アル中
つまりこの兄ちゃんは、勝敗がどうなろうが自分が生き残るとは思ってねえんだよ。くひゃっ。イカすじゃねえかよ
◆◆◆
『だっ、ダメですご主人さま!? そんな身体で…っ…死んじゃいます! ナナが、ナナが代わりにやりますから…っ! ぐぅ……ぅあっ……』
そんな主を引き止めようとナナは必死に起き上がろうとするものの、脳震盪による影響から未だ抜け出せぬ身体には録に力が入らないのだろう、もがくばかりで立ち上がることが出来ていない。
『ごめんね~ナナちゃん。今のボクの相手はお兄ちゃんなんだ。ま、あんなに熱心に誘われちゃたから仕方ないよね♪ ナナちゃんはお兄ちゃんと遊び終わった後でゆっくり相手してあげるから、そこで不様に転がっててねw』
そんな彼女を嘲るように一瞥し、沖田は改めて距離を取り向かい合う彼へと刀を構えた。
『お兄ちゃんの覚悟に、ボクも全力で応えるよ。綺麗に即死できる最高の一撃で──逝かせてあげる』
豪!!
沖田総司の華奢な身体から、膨大な殺気が膨れ上がる。
中継の画面越しからですら感じるほどの凄まじいそれを正面から叩きつけられるは、自らの命をかけて愛犬を救わんとする主。
『気持ちは嬉しいけど、出来るかな? 僕は動物と戯れるのは大得意なんだよね』
彼は死んだ目に決死の意志を宿し、沖田を見返した。
そして──
『沖田総司──参る!!』
今宵三度の《三段突き》。
命の灯火を切り払う無明の剣が今、放たれた。
◆◆◆
918:名無しの探索者
(ついに始まった最後の戦い! 迫る沖田総司の必殺剣! 果たしてイッチの運命は!)
919:名無しの探索者
次回『イッチ死す!』デュエルスタンバイ!
920:名無しの探索者
>>919
おいやめろ
921:名無しの探索者
>>919
ネタになっても洒落にならんわボケェ!!
922:名無しの探索者
イッチ最期の瞬間のスレの会話がこれとかどうしようもねえな
923:名無しの探索者
ッあーーくっそアホにツッコんでて中継から目を離しちまった!?
924:名無しの探索者
うわーワイもや。せめて最期だけでも見届けよう思うてたのに( ノД`)…
925:名無しの探索者
すげえなあおまいら。ワイなんて見てられなくて中継切ったわ
926:名無しの探索者
同じく。うぅ……イッチ、良いやつだったのに 。・(つд`。)・。
◆◆◆
『──はぁんっ♥️!?』
◆◆◆
927:名無しの探索者
今エロい声出した奴誰だーーーーー!?
928:名無しの探索者
空気嫁バッキャローーーー!!!!!
929:名無しの探索者
先生怒るから正直に手を上げなさい( ;゚皿゚)ノシ
◆◆◆
『やっ……んぅ……あっ!?』
◆◆◆
930:名無しの探索者
ほらまたーーー!!
931:名無しの探索者
先生ぶっ殺してやるから正直に手を上げなさい!(殺`皿´害)p
932:名無しの探索者
先生ワイらじゃありません!
933:名無しの探索者
中継! おまいらいいから中継見ろ見りゃわかる!!
934:名無しの探索者
見りゃわかるって中継先で何があったんだってばくぁwせdrftgyふじこlp
935:名無しの探索者
(○_○)!?
◆◆◆
澄んだ声音が短く跳ね上がっている。
細い喉を震わせ、上擦った声を漏らすのは、刀を握り獲物を貫かんとしていたはずの沖田総司だった。
『うんっ…や、まって…きみ、なにを……んんぅっ!?』
淡い唇を戦慄かせ、言葉を紡ごうとするもすぐに悲鳴のように跳ね上がる。そのたびに身体をビクビクッと震わせ、白い肌に徐々に赤みが差していった。
沖田がそうなっている、否、そうさせられている原因は、沖田と対峙する人物である。その人物は、既に満身創痍で今にも倒れてしまいそうな身体でそれでも両手を伸ばし、沖田の頭に生えた狼の耳を根元から掴んだ——
◆◆◆
936:名無しの探索者
イッチが沖田の狼耳をおもくそ掴んどるんですけどー――!?
937:名無しの探索者
イッチ生きてたんかってか何してんのォ!?
◆◆◆
『っ……お、お兄ちゃん。いつの間にボクの耳を……んくぅ!?』
ともすれば乱れそうになる抑揚を抑え、何とか声を整えようとする沖田。
その言葉どおり、彼の両手によって、沖田の耳は左右とも完全に捕らえられていた。
『んぁっ!? …っぁ…なんだ、これ……突き込んだ瞬間、思いっきりギュって握られて、頭が痺れたみたいに真っ白になって身体がビクンってして……動きを止められた?』
中性的な美貌に浮かぶ驚愕と動揺。信じられないと、見開かれた獣の瞳が震える。
『ボクの三段突きが破られた? ……嘘、でしょ……っつぅ…』
◆◆◆
938:名無しの探索者
まーーじか
939:名無しの探索者
(放たれた沖田総司の必殺剣! 絶体絶命の三段突きを止めたのは、なんとイッチの耳掴みだった!!)
940:名無しの探索者
な、なんだってーーー!?
941:名無しの探索者
あ…ありのまま、今起こったことを話すぜ。『沖田の三段突きと同時にイッチの両手が動いて気付いたら狼耳を掴んでた』催眠術とか超スピードとかチャチなもんじゃねえ。もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
942:名無しの探索者
>>941
いや超スピードだろ
943:名無しの探索者
ほんとコマ落としみたいやったな。沖田がいきなりビクッてして止まったと思ったらイッチが耳掴んでたのは目を疑ったわ
944:名無しの探索者
それな。前スレで飛びかかってくる大猫を反射的に撫で回した言ってたの正直半信半疑だったけどあれ見たら信じざるをえん
945:名無しの探索者
警戒しとる犬や猫は素早くいかんと逃げられるからな
動物に触れる時のケモナーの俊敏さを舐めてはいかんで。ソースはケモナーワイ
946:名無しの探索者
ケモナーのスペックが底知れなくて草
とはいえ沖田の三段突きを止めたってことはイッチの勝ちか
947:名無しの探索者
だよなだよな!
948:名無しの探索者
うおおおお祝え祝えーー!!!!
949:名無しの探索者
ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
950: はくっち
あっはああああああああ♥️
951: 名無しの探索者
ヽ(; ゚д゚)ノ ビクッ
952:はくっち
なるほどいきなり耳を掴まれ沖田は吃驚して思わず止まってしまったというわけだね!
いやはやまさかまさかこんなやり方でかの三段突きを破るとは予想外だ面白い興奮する脳味噌キュンてきたぁっ♥️
953:名無しの探索者
【ヤバい】なんか変態が大興奮してる件
954:名無しの探索者
いいか目を合わせんな関わるなよ邪神と興奮してる変態に関わったらSAN値崩壊待った無しだぞ!!
955:はくっち
ハァハァ……ううんでもでもまだだよまだ終わらない終わってない。確かに三段突きを止められたけどあくまでもそれだけだぁ。沖田はまだ負けを認めていない否むしろ殺る満々だよどうするのかなぁ?
◆◆◆
ぎりっ……ッ!!
歪んだ沖田の口元、噛み締められた牙から音が鳴った。
『はは……なんだそれ。違う違うそんなのボクは認めない……ッ』
叫び、刀を握る腕に力が籠る。その細腕からは想像もできない力で握りしめられた柄が軋み、まるで怒れる獣が唸るようであった。
『完全に破られたわけじゃない。あくまで途中で止められただけッ……今からでも二段目三段目は出来る!』
再び膨れ上がる殺気。必殺の意思と共にその刃が止められた技を再開し——
『ボクの勝ちだよ!! お兄ちゃんはあっ♥!?』
ようとした途端に再度耳をむぎゅっと握られて悲鳴を上げた
◆◆◆
956:名無しの探索者
かーーらーーのーー?
957:名無しの探索者
やらせ(◎ω◎)ねえよ!!!!
958:名無しの探索者
いつから一揉みで終わると錯覚していた?(厨二感
959:名無しの探索者
容赦ねえなおいw
しっかし耳掴みで動きを封じるとはイッチすげえな。最初からこれ狙ってたんか?
◆◆◆
『くっ、うぅっ……またぁ……こんな…っ…卑怯だよお兄ちゃん。やるなら……正々堂々と……っ』
必殺の剣を再度阻まれた沖田は、耳を握られる刺激がよほど強いのか顔を赤らめ呻き声を漏らしつつ、抗議するように言う。
だが、それに応える声は無い。
どころか、一切の反応が無かった。
『おにい、ちゃん……?』
訝し気に彼へと目を向ける沖田は、見た。
彼の死んだ目は薄っすらと開いていても何も映しておらず、微動だにしない表情は何の意思も籠っていない。
彼は、もう——
◆◆◆
960:名無しの探索者
し、死んでる……!?
961:名無しの探索者
イッチはすでに死んでいるーーー!!!!
962:名無しの探索者
いや気絶してるだけだろ(冷静
963:名無しの探索者
マ? マジで意識無いの? なのに沖田の耳掴んでんの? どういうこっちゃ(?_?)
964:名無しの探索者
くっくっく。武の達人は眠っている状態であろうとも襲われれば反撃できるという。訓練されたケモナーもまた同じ。たとえ眠っていようが近くに動物が来たら無意識に愛でることなど造作も無いわ!!(ドヤァ
965:名無しの探索者
あ~そういやうちの嫁がソファーでうたた寝してる時に、飼い猫が手元に寄ってきたら寝たまま無意識に撫でてたわ。器用なことすんな~って思ってたけどケモナーってそういうもんか
966:はくっち
んんっ♥️ 三段突き一段目の牽制・フェイントに動じなかったのを見るに、もしかしたら勝負開始と同時に気を失っていたのかもしれないねえ
もともと満身創痍だったからいつ気絶してもおかしくなかった訳だけど、まさかその状態でこんな事をするなんて……っ
あはぁっ♥️ すっばらしいよイッチもっともっと気持ちよくしてくれ。沖田はまだ諦めてないよさあどんどんいこうか
◆◆◆
『は、はは……なにそれ。とっくに意識を失ってたとか……──どこまでボクを馬鹿にすれば気が済むのかな。お兄ちゃん……ッ!!』
乾いた笑いを漏らしていた口元が怒りに歪み、切れ長の瞳が吊り上がる。
よほど剣士のプライドを傷つけられたのか。沖田は己を虚仮にされた憤怒のままに目の前の彼を叩き斬ろうとし
むぎゅっ
『ぅひんっ!?』
三度の耳揉み。
のみならず、今度は一回で終わらず続けて何度も揉みしだかれる
もにゅっ ふにゅっ むにゅっ
『うあっ!?』『くぅっ』『っぁあ』『お、お兄ちゃん……いい加減、やめ……ふひんっ!?』
全体を握られ、時に耳裏を擦られ、かと思えば根本を揉まれ遂には内側すらも撫でられる。
優しく繊細でありながら傍若無人に弄ぶ彼の指使いに、沖田はビクッビクッと肢体を震わせ声を漏らしていた
◆◆◆
967:名無しの探索者
沖田敏感すぎね(-ω- ?)
968:名無しの探索者
思った。感度3000倍にでもなってんのかこいつ?
969:はくっち
あっ…はっ♥️ そうだねえ。そもそも獸人の耳や尻尾は人や獸と比べても、触れられるのが特に敏感な箇所というのは知っているけど、それでもただ触れられただけで行動不能になるほどではないはずだ
でも沖田は実際に録に動くことも出来なくなっている訳でんっはあ♥️ 何でだろうどうしてかな気になる気になりゅ分からなくて脳味噌疼いちゃうのお!!
970:名無しの探索者
ケモナーならざる者には分からんだろうが、イッチはただ弄るのではなくマッサージも併用しているようだな。熟練のケモナーともなればそのテクは犬を文字通り骨抜きにするほどだが、イッチの指使いも相当なものだぞ。あるいはこれなら気持ち良さで沖田を骨抜きに出来るかもしれん!
971:名無しの探索者
なるほどつまりクソガキをエロマッサージでフニャフニャのアヘアヘにしてやんよぉ!! と言う事だなだいたい分かった( ・`д・´)キリッ
972:名無しの探索者
それはギャグで言ってるのか?
(゜_゜(゜_゜(゜_゜;)
973:名無しの探索者
(エロマッサージVS剣士の意地! 勝負はまさかの我慢比べに! イッチが沖田を骨抜きにするのが先か。それとも沖田が耐えてイッチを斬るのか。最後に立っているのはどっちだ!?)
◆◆◆
『んっ……くうぅ!? け、ない……』
指が弛み、掌からこぼれ落ちそうになった刀の柄に、沖田は再び力を込めた。
『こんな、ので……ボクの剣は……止まら、ない!!』
両耳から与えられる刺激に悶え、震え、声を漏らし、それでも手放してなるものかと歯を食い縛り刀を握り締める。
『負けない…よ……んぅっ……お兄ちゃんの指なんかに、ボクは負けない……ッ』
ふるふると揺れる切っ先を、びくんびくんと震える腕で己を捕らえる敵に向け、
『くっ……ぅあん……勝つのは、ボクだぁ!』
決して負けぬと、剣士の意地を叫んだ。
◆◆◆
974:名無しの探索者
エロマッサージなんかに負けない!(キリッ
975:名無しの探索者
ぼく即堕ち負けフラグだって知ってるよ( ^ω^ )
976:666
あの、一応命懸けの真剣勝負なんですけれどこれ
◆◆◆
『はあああ!──くあんっ!?』
そうして振るった刃は、だが彼に届く寸前に耳を強く揉まれた事で勢いを失ってしまう、が
『はぁ…はぁ……まだ、まだぁ……!』
沖田は震える膝から力が抜けそうになるのを堪え、空振りした刀を構え直す。
『もういち……どっ!? ~~~~~ッッッ』
今度こそ渾身の一撃を叩き込もうとした沖田。が、不意にその身体が一際大きくビクンッと震えた
◆◆◆
977:名無しの探索者
なんぞなんぞ?
978:名無しの探索者
お、おい何かイッチの様子が……
◆◆◆
『かっ、は………っ!?』
愕然と目を見開き息すらまともに出来ない様子の沖田の両耳は、彼の手で力の限り握りしめられていた。
傷みか、それとも全身を貫いた強烈な刺激でか、もはや動けぬ捕らわれの狼に、静かな声がかけられる。
『だめだよ……あばれちゃ……』
『お、にいちゃん……?』
微睡んでいるような力のない声音は、未だ彼の意識が戻っていない証だ。
恐らくは寝ぼけているような状態なのだろう。だが
『わるいこ……だね……』
『ひぐぅ!?』
沖田の両耳を掴む指に込めた力に容赦は無く、言い聞かせようとする声には凄みがあった。
『あ……あ……っ。だめ、待って……』
『いうことをきかないこには……おしおきだよ。ナナ』
『まっ──ひぎぃぃ!?!?!?』
◆◆◆
979:名無しの探索者
ヒェッ
980:名無しの探索者
ドMワイ不覚にもゾクッときたわ
981:名無しの探索者
あ、あー不味いですねこれスイッチ入りました。ワイらケモナーが躾のなってないペットを調教する時の目ですわw
982:名無しの探索者
これは即堕ち2コマの予感o(*゚∀゚*)owktk
983:アル中
うひゃひゃひゃ最低ランクがネームド手玉にとるとか最高の肴じゃねえかww良いぞ兄ちゃんやっちまええええ!
◆◆◆
そこからは一方的な責めだった。
『ひぅっ……だめ、指……強いよぉ』『うぁぁ…っ…耳の裏擦らないでよぉ。背筋、ぞくぞく……しちゃうからぁ……っ』『はぁ……はぁ……あっ!? やめ、耳の先っぽは敏感だから摘ままな……ひぃん!?』
全体を掴まれる。根本から揉まれる。表面を撫でられる。
容赦なく執拗な指使いで両耳を好き放題にされ、沖田はもはや抵抗すら出来ず、与えられる強烈な刺激に華奢な肢体をビクっビクっと震わせ、
『や、だめ……だめ……耳の中は駄目だよ…っ。ほんと無理だから…っ…指、入れちゃだ……めえええええ!?』
白い柔肌を林檎のように赤らめさせ、目の端に涙すら浮かべて悶えるその中性的な美貌には、もはや先ほどまでの人を舐めくさった生意気な表情は欠片も無い。
今の沖田が浮かべるのは、成す術もなく分からされる哀れな獲物の顔……ッ。
そして、ついに
『っ~~~~!?!?!?────ぁ、へぇぇ……』
彼が両耳の穴に親指をねじ入れた瞬間、開いた唇からもはや声にもならぬ悲鳴を上げて尻尾をびいんと立てて、沖田はついに膝から崩れ落ちた。
全身を弛緩させて地に倒れたその顔は蕩けきり、唇の間から小振りな舌をだらんと出しているさまは滑稽ですらある。
その姿はまさに負け犬。
恐るべきネームドモンスター沖田総司は、武ではなくケモナーのテクによって打ち負かされたのだ。
◆◆◆
984:はくっち
ふわああああ勝った勝っちゃったあしゅごいしゅごいよイッチきゅん獸人を倒すのにこんな手段があったなんて知りゃなかったのおおおお♥️ あ♥️ だめだめだめ脳味噌疼くのとまりゃないイッチからもらった知識が気持ちよすぎてとんじゃうううううううう♥️♥️♥️
985:名無しの探索者
沖田総司 リタイア! ついでに 変態 昇天!
986:名無しの探索者
やったねイッチ大勝利!
987:名無しの探索者
(○´∀`人´∀`○)イエーイ
988:名無しの探索者
うわぁ勝っちまったよ……あの沖田総司をこんなアホなやり方で( ゚д゚)ポカーン
989:名無しの探索者
逆に言えばこんなやり方でもなければイッチ達じゃどうにも出来ないレベルの奴なんだよなあ
990:名無しの探索者
運良くイッチのケモナースキルが役に立ったとはいえ、純粋な武力対決だったら間違いなく全滅してたな
991:名無しの探索者
ほんとな。とはいえ沖田は倒せたしこれでもう憂いは無いな。後はとっとと脱出するだけや
◆◆◆
戦いは終わった。
一騎討ちの勝者である青年の身体が、ふらり……と揺れて、ゆっくりと倒れていく。
もともと体力の限界をとうに超えていたのだろう。彼は糸の切れた人形のように地面にぶつかる──
『ご主人さま!!』
寸前に、ナナが抱き留めた。
『大丈夫ですか! ご主人さま!』
何とか動けるようになったのか慌てて駆け寄ってきた彼女は、主を真っ青な顔で覗き込むが、彼が確かに息をしている事を確認して、小さく安堵の息を吐いた。
『よかった……』
だが、安心してはいられない。
未だ彼の身体が満身創痍なのに違いはなく、一刻も早く治療を受けさせなければ命が危ういのだから。
『こうしてはいられません。早くご主人さまを安全な所まで運ばなくちゃ……っ』
焦りを帯びた声で呟き、細くも力強い腕で彼を抱え上げようとした時、
『くぅ……いかせ、ないよ』
『──!?』
かけられた制止。ハッと顔を向けた先で、ナナは地面に横たわったままこちらを睨み付ける沖田と目が合った。
『認めないよ…っ…こんなの。ボクは…はぁ…まだ、死んでない』
弛緩しきってろくに力が入らないのか、あるいは強烈な刺激に腰が抜けてしまったのか、ガクガクと震えて立ち上がれぬ身体で、それでも両目を執念めいた闘志でぎらつかせるその姿は、まさに狙った獲物は逃がさぬ狼。
『だから、戦える……ッ!!』
◆◆◆
992:名無しの探索者
【悲報】沖田戦闘続行キボンヌ
993:名無しの探索者
だだだだ大丈夫もう動けんし恐れることはなな無いやろろろ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
◆◆◆
『あなたは、なんでそこまで……っ』
鬼気迫るその様に、ナナが思わず戦慄した時
『ナナちゃん!』
『にゃん!』
そんな彼女を守るように現れる人影。
雷撃を受けて行動不能に陥っていたはずの巫女ギャルと大猫が、二人のもとに駆け寄ってきた。
『みなさん!? 動けるようになったんですか!?』
『はは、まだちょっち痺れて正直しんどいけど、そうも言ってられないからね。遅くなったけど助けにきたよ』
やや苦しげながらも安心させるようにウインクして、巫女ギャルは青年の身体を大猫の背中にもたれ掛かるように乗せて
『おにーさんはウチのバカ猫が運ぶけど、ナナちゃんは大丈夫? 走れないならウチが背負ってくよ』
『いいえっ。ナナは一人でも大丈夫です。でも、あの人はいいんですか……?』
答えつつ、沖田に目を向けるナナ。止めを刺すなら今ではないかと言外に問うそれに、巫女ギャルは
『だめだめ!! 手負いのモンスターほどヤバいのは無いから。ましてネームドとかどんな奥の手があるかも分かんないし、動けない今が逃げるチャンスだよ!』
『──っ。はい! 分かりました。逃げましょう!』
そう切羽詰まった表情で言われて、ナナも直ぐに頷いた。
そして
『逃げる途中でモンスターに遭ってもスルーして。無理ならウチが撃退するから、ナナちゃんはおにーさんを早くダンジョンの外に連れてって治療を受けさせてね』
『はい! ご主人さまは絶対に死なせません!』
『それね。じゃ──ダッシュ!!』
『わん!』
絶対に皆で生き延びる。
そんな決意が込められた叫びと共に、彼女らは地を蹴り駆け出した。
『待、て…はぁ…待てよ……くぅっ……逃げるな卑怯者! ボクはここにいるぞ! ボクと戦えええええ!!!!』
手の届かぬ闇の向こうへと逃げ去っていくその背中を、倒れ伏す沖田の慟哭めいた叫びが引き留めようとする。
だが、その声に振り返ること無く、彼女らの姿は中継の映像から消えたのだった。
◆◆◆
994:名無しの探索者
巫女ギャル最後の最後でやりおったww
995:名無しの探索者
いい仕事だぜ拍手してやろう(*’ω’ノノ゙☆パチパチ
996:名無しの探索者
これでほんとのホントにイッチ達は大丈夫だよな?
997:名無しの探索者
大丈夫やろ。というかそうであってくれ
998:名無しの探索者
中継も切れたし、このスレも終わり。ワイらに出来るんはもう無事を祈りながら待つだけやな。また次のスレで会えると信じてるで。イッチとナナちゃん
999:名無しの探索者
(戦いは終わった。だがイッチ達の探索者としての日々はまだ始まったばかり! イッチとナナちゃんの冒険は続く!)
1000:はくっち
………ふう。
いやあ実に愉いスレだったね。濃厚で刺激的な知識がどぴゅどぴゅ脳味噌に流れ込んできて何度も絶頂してしまったよ。
ああイッチ達の事なら心配はいらないよ。スレの途中で我慢できなくなったあの娘がそろそろ駆けつけている頃だろうからね。
私たちは今夜の知識をオカズに脳味噌クチュクチュさせながら、イッチが帰ってくるのを心待ちにしていようじゃあないか。
ああ嗚呼本当に早くはやく帰ってきてくれよイッチ君。
いやはやさてさてどんな話が聞けるのか、今から楽しみすぎてまた疼いちゃうね♥️
1001:名無しの探索者
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お読みいただきありがとうございます。なんとかかんとか決着にまでこぎつけた作者です。
我ながらがんばりました疲れたもおおおおん!
この後はエピローグが続きますのでまだ少しお待ちくださいね
おまけ
「うぅ…っ…くそ、まだだ」
平安京の闇の中、独り倒れ伏す狼は、逃げ去った獲物への執念を今だに燃やしていた。
満足に力の入らぬ華奢な肢体で、それでも再び立ち上がらんと藻搔き続ける。
「ボクはまだ戦える…はぁ…はあっ……戦えるんだ……ッ」
唇を噛み歯を食いしばり、激情の声を漏らす沖田。その淡い胸の内では、想いが溢れている。
どれほど戦いたくても戦えぬ歯がゆさ。剣士として強者と剣を交えたくともそれが出来ぬ己への悔しさ。
「待ってろぉ…っ…すぐに立ち上がって……追いかけて……っ」
それらは沖田の——あるいは自らの基礎となった者から受け継いだ無念の残滓か。
分からない。が、いずれにしても耐え難いものであり、ゆえに沖田は胸の内で荒れ狂うそれに突き動かされ、再び立ち上がろうと足掻いて
『——無様よのう』
かけられた嘲りの声に、目を見開いた。
ハッと眼差しを向けた先にいたのは、中空に浮かぶ白い紙の人形。人を模したそれは、陰陽師が儀式や式の依り代などで用いるものである。
『ほ・ほ・ほ。格下相手に随分とやられたようじゃのう沖田総司よ』
式を通じて声を届けているのだろう。鈴を転がすようなあどけない声音にたっぷりと毒を含んで嘲笑う声の主に、沖田は舌打ちしてその名を呼んだ。
「……うるさいよ安倍晴明。覗きとは相変わらず趣味が悪いね」
伝説に語られる陰陽師の名で呼ばれた者は、苛立ちと不快感を隠そうともしない沖田にますます笑みを深めたような調子で
『ほういつもは飄々としておるお主が今宵は随分と感情的よのう。それに悪趣味とはいえこれが存外に楽しめる。特に先程はなんとも面白いのものを見ることができたしのう』
「くっ……」
己の痴態とすら言えるものを見られていた。その屈辱に沖田の白い肌が怒りと羞恥に染まる。
「うる、さい……ッ。ボクはお前なんかに構っている暇なんかないんだよ。あいつらに……お兄ちゃんに、ボクを虚仮にしたらどうなるかを分からせてやらなくちゃいけないんだ……!!」
ああそうだ。許せない。このままで終わらないし終わらせない! 彼との一騎打ちは遊びであったが本気だった。真剣だったのだ。だからこそ己の最高の業で応じたというのに、なのに、なのに……あんな——
「~~~~~~~っ!?」
己の最も敏感な部分の一つを握られた感触とその刺激が、脳裏に蘇る。
巧みな指使いで根元から先端まで摩られ撫でられ摘ままれ、あげく中にまで容赦無く入れられた時に感じさせられた筆舌に尽くしがたい痛みと刺激と快感は今でもその記憶と肢体に刻まれていて、思い出すだけで全身がぼっと熱を持ち、身体の奥、とくに下腹部がキュンと疼いいてしまうのが自身でも分かってしまった。
明らかに様子の変わった沖田を、式神を通して眺める晴明は一層愉し気に
『ほ・ほ・ほ。これは異なことを。分らせられたお主が分からせるとな?』
「はあ? ボクが、分らせられたって……?」
もはや殺意すら帯びた沖田の問いに、答える。
『分らせられたじゃろう? 他でもないあの男の手で存分に。いくら刀を振り回していようが、己はいざ雄の掌に囚われれば成す術も無く愛でられ弄ばされる——雌にすぎないのだと』
「—————ッッッ!!!」
もし動けたなら間違いなく目の前の式神を叩き斬っていただろう憤怒に顔を染める沖田。だがそのような表情を浮かべても、その貌はどこまでも美しく、常は小生意気な表情を浮かべているために中性的な美少年に見える沖田も、今この時ばかりは受けた恥辱に華奢な肢体を震わせる乙女にしか見えなかった。
それを一層引き立てるように、倒れたまま藻搔き続けたため自然とはだけてしまった着物の胸元からは、微かに、たが確かに膨らんだ乳房が覗いている。
『気持ち良かったのじゃろう? 夢心地だったのじゃろう? 誰とも知れぬただの人間の雄に忘我の境地に上り詰めさせられたのじゃろう? 立ち上がれぬのはあまりの快感に腰が抜けたせいかの? ちょろいのう滑稽よのう。いくらオリジナルが幕末随一の益荒男とはいえ、そのメモリーデータから造られたに過ぎないお主はただの雌。強き雄に愛でられれば蕩けるしかない雑魚雌よのう。ほ・ほ・ほ。愉快愉快』
「貴さ——」
心底愉し気な煽りにおもわず怒声を上げようとした沖田だが、そのセリフは突如眼前に現れた刃によって止められる。
まるで沖田の言葉を文字通り断ち切るように鼻先のほんの数センチ先に差し込まれた刀は、冷たく光る刃の表面に沖田の驚愕の顔を映し出していた。
その剣——和泉守兼定の持ち主の名は
「土方さん!」
己と同じ浅葱の羽織を纏う長身の女性。これまた同じ狼の耳が生えたその顔の目元は、恐ろし気な鬼の面で覆われていた。
新選組副長の名で呼ばれたその女性は、己の足下で倒れ伏している沖田に顔を向け、ふるふると顔を横に振る。その拍子に腰まで流れる烏の濡れ羽色の髪が艶やかに揺れた。
「もう止めろって言うんですか。……そんな、ボクはまだ戦えます!!」
『いいやここまでよ』
必死に訴えるその声に答えたのは、晴明。
「ふざけるな!! なんでボクがお前の命令なんて——」
『わしのではない。これは我らが首魁。ダンジョンボスからの勅命である』
「っ!?」
告げられた事実に、沖田の抗議が潰える。
ダンジョンボス。それはコアを守護するダンジョン最強のモンスター。自分のような言わば中ボスというべき者とは違なる真のラスボス。
「そんな、なんで……」
『やれやれまだ分らぬか。この悍ましき気配に』
呆れたようなその物言いに、どういう意味か問いただそうとした所で、沖田はようやく『それ』に気づいた。
その瞬間、全身が硬直し、背筋が凍り鳥肌が立ち、耳と尻尾の毛が一瞬で逆立った。息も出来ぬほどのプレッシャーと吐き気を催す生理的嫌悪に襲われた彼女が、それを感じる先に反射的に目を向けて見たものは——はるか遠くの街並み、そのうちの一軒の屋根の上に佇む、小さな小さな人影だった。
それはあまりにも遠く、夜闇を見通す狼の目を以てしてもシスターの服を纏っていることが辛うじて分かるくらいで、顔立ちすら判別できぬ。
だが、分かってしまった。分からされてしまった。
ただの一目で。ただの一瞬で。
あれは怪物だ。
己などより遥かに悍ましく強大で狂い壊れて危険でどうしようもないこの世にあってはならない真性のバケモノだと。
その証拠に、普段ならば常にどこかで響いているモンスター達の鳴き声や蠢く音が一切聞こえない。
皆怯えているのだ。あのただ一人の小さな怪物に。気づかれぬよう目につかぬよう息を潜めて、まるでお化けに怯える子供の様に震えている。
その強さに? 否。その悪意にだ。
小さな総身から溢れるのは悪意そのもの。殺す嬲る虐げ辱め壊し犯し苛めて苦しめ——虐殺してやる。
そんな全人類の悪意そのものが形を成したかのようなそれが、今このダンジョンに降臨し、こちらへと殺気を向けている。
「あれは、まさか……」
沖田は、その姿を知らない。かつての京都アカデミー襲撃の時には、彼女はまだ造られていなかったから。
だが、本能で理解した。こいつは、こいつこそが……ッ!!
『Sランク探索者《聖邪》。人類の対ダンジョンに於ける決戦存在。そしてこの国においては核兵器に代わる最終兵器よ』
「あれが、賀茂と近藤さんを虐殺したっていう……」
そのあまりの威容、肌で感じる脅威に戦慄する沖田。
『なぜあれが突如現れたのかは分からぬが、もはや雑魚などには構ってはおれぬ。全幹部はこれより防衛態勢をとり、全員でダンジョンの防衛にあたれとのことじゃ』
その言葉に、ようやく納得する。
たしかにこれはダンジョンの全戦力でもって当たらなければならない相手だ。
当然幹部の一人である自分もまた。
だが、それでも……ッ。
青年の顔が頭から離れない。自分をふざけた手段で虚仮にして、弄んで、あげく今この瞬間にも逃げおおせようとしている彼を追いかけたいという想いが抑えられない!
ダンジョンの守護者の一人としての理性と戦士の本能が鬩ぎ合い、どちらも譲らず自身の中で争っているのを感じる沖田は、それでも決断しようとして——
『ほう?』
「……え?」
恐るべき存在感がふっと消失したのを感じた。
慌てて《聖邪》がいた位置に目を向けると、そこにはもはや誰の姿も無く。あの怪物の姿はまるで幻だったかのように消え失せていた。
あまりにも突然現れそして消えたその事実を上手く呑み込めずぽかんとする沖田の横で、晴明が呟いた。
『これはこれは、あっさり消えたものだのう。まるで用は済んだと言わんばかりだが。はてさて、いったい何用があったのやら』
そう首をかしげるように言った後、
『ともあれ何事も無く終わったならば善哉。わしはこれより我らがボスに事の次第を報告するゆえ。ここで失礼するさせてもらうとしようかのう。ではな』
その言葉を最後に、形代は物言わぬ紙人形となって地面にぽとりと落ちた。
Sランクは去った。おそらくはこの場に来た何らかの目的を達して。
そうしてその場に残されたのは、浅葱の羽織を着た二匹の狼。
鬼面の土方が沖田を起こそうと手を伸ばすも、沖田はその手を取らず、自分の刀を杖代わりにし震える足で——立ち上がった。
今にも崩れ落ちそうな身体を必死に支えながら
「ぜったいに……ぜったいに……逃がさないよ。お兄ちゃん」
怪しき月の下、今より己の全てを懸けて一人の男を追い続けるのだと、美しき狼は誓った。