ダンジョン探索者は今日も掲示板で駄弁っている   作:どるふべるぐ

3 / 28
この物語には地名や建物名が出ますがフィクションであり実在する物とは一切関係はありません。


その③~VSダンジョンモンスター編~

529:名無しの探索者

お願い、死なないでイッチ! あんたが今ここで倒れたら、スレ民との約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、ロリを分からせられるんだから!

 

530:名無しの探索者

次回『イッチ死す』デュエルスタンバイ!

 

531:名無しの探索者

>>530

死なないんだよなあ

 

532:名無しの探索者

すかさず生存フラグを立ててくるスレ民の優しさ

 

533:伝説になる探索者

おいおいワイはいずれ伝説になる男やで。もちろんこんなんで死なんわ。

 

◆◆◆

 

握った出刃包丁を振り上げて飛びかかってきたゴブリンの胴体に、俺はカウンターで剣先を突き込む。

 

「ヒギャッ!?」

 

上がる醜い断末魔。刃から伝わる皮膚を裂き肋骨を断つ感触。絶命の手応えに獰猛な歓びを感じた。

 

◆◆◆

 

『ゴブリンは抉るように突くべし』ちゅうスレ民のアドバイス通り一撃で心臓貫けたわ。サンクス

 

534:名無しの探索者

ゴブリンが死んだ! 

 

535:名無しの探索者

この人でなし!

 

536:名無しの探索者

>>534

>>535

いやなんでだよ

 

537:名無しの探索者

>>536

気にすんなただのお約束や

 

538:名無しの探索者

さっそくわいらのアドバイスが役立ったか

 

539:名無しの探索者

うむ。やはりゴブリンは抉るように突くんが一番やな。ゴブリンに対する有効なやり方についてアドバイスしたワイの言葉は間違ってなかった

 

540:名無しの探索者

ワイはちょっと捻りを加えんのがええなあ。こう奥をぐりぐりと突くんがええ具合や

 

541:名無しの探索者

わいはあえて浅く小刻みにするんがよう感じるわ

 

542:名無しの探索者

んん?

 

543:名無しの探索者

なんか言い方が……?

 

544:名無しの探索者

あっ(察し

 

545:名無しの探索者

ってあのアドバイス下半身の話かよ!?

 

546:名無しの探索者

ゴブリンを一撃で逝かせるってそういう意味かい!

 

547:名無しの探索者

いつになく熱く語るお前らに変態共も真面目になる時があるんやなって感心してたのに……

 

548:名無しの探索者

変態はどんな時でも変態だったよ畜生!

 

549:名無しの探索者

いや……まあゴブリンを倒せたのは事実だし(目そらし

 

550:名無しの探索者

もうとりあえず良しとしようぜ。とりあえず(思考停止

 

551:名無しの探索者

うむ。ゴブリンに対するアドバイスはこれからも我らゴブリン愛好家に任せるがいい

 

552:名無しの探索者

>>551

君、ちょっと黙れ

 

553:名無しの探索者

とはいえこれでスコア1。ロリに先制点やな

 

554:名無しの探索者

幸先ええぞー。このまま勝利からの分からせまでいったれイッチ!

 

555:伝説になる探索者

なんやあれ下半身の話やったんか。まあ役立ったしええわ。

 

◆◆◆

 

つうわけで早くもゴブリン一体を仕留めた俺は、先を越されて悔しそうな顔をしてるに違いないチビガキにドヤろうとした。が

 

「っしゃオラ早速一体撃破だ! 見たかチビガキこれが俺の──」

「そうですか。私も撃破です」

 

チビガキは物陰から飛び出してきたもう一体のゴブリンを同時に斬り捨てていやがった。細身の刀身でスパッと殺られたゴブリンは鋭利な切断面から血を撒き散らせて真っ二つ。いっそ鮮やかな迷いの無い一太刀は、癪だがやっぱこいつの実力は並外れてるってのを実感させる。

 

「これで同点ですね。それといちいち騒がないでください。たかがゴブリンを一体倒したところで威張るほどのものではないでしょう」

「うぐぐぐぐ。いーやこっからだ! こっからモンスター大量撃破で俺が一気にリードして──」

 

くそ生意気なチビガキにワイが言い返そうとしたその時、廊下の向こうから新たなゴブリンが三匹まとめて現れた。

 

「ギャギャギャ!」「ギャシャアアア!」

「うっしゃ来たなゴブリン共! いいタイミングだ全員まとめて俺のスコアにしてやん──」

「お先にいきますよ」

 

醜い鳴き声を上げながら迫る奴らに咄嗟に身構えた俺の横で、チビガキが床を蹴りシュッと駆け出した。

白い髪を流星の尾のように靡かせながら廊下を疾走するチビガキは、ゴブリンの集団に飛び込みその剣を閃かせる。上がる三つの断末魔とそして血飛沫。流れるような三連撃で三匹のゴブリンを仕留めたチビガキに、俺らの後ろ一歩離れた位置で見ていた教官も「ほう」と感心の声を漏らす。

 

そんでチビガキは斬り捨てたゴブリンの屍を足下に、俺に振り向いてこう言った。つうか煽りやがった。

 

「で、リードでしたっけ? 私を相手に? ま、頑張って下さい。バカ雑魚あなたにできるものならですが

 

や っ て や ん よ !

 

◆◆◆

 

556:名無しの探索者

はいロリ逆転~

 

557:名無しの探索者

あっさり抜かされてんじゃねえよww

 

558:名無しの探索者

なんとなくこうなる気はしてた

 

559:名無しの探索者

三体突撃は宇宙世紀からの死亡フラグやでゴブリン先生

 

560:名無しの探索者

てかロリつよくない? つよくない?

 

561:名無しの探索者

未攻略ダンジョンのゴブリン三体を正面から瞬殺とか

 

562:名無しの探索者

そうか? ゆうてもたかがゴブリンやろ?

 

563:名無しの探索者

>>562

はい無知

 

564:名無しの探索者

>>562

新人探索者を一番殺してるモンスターやで

 

565:名無しの探索者

>>562

ゴブリン先生は確かに弱いけど舐めたら死ぬよ。僕の同期は才能も実力もあったけどゴブリンならいくらいても余裕だろって群れに突撃して嬲り殺しにされたわ

 

566:名無しの探索者

未攻略ダンジョンのモンスターはコアから魔力供給されてるからタフやし何より凶暴さが段違いやで

 

567:名無しの探索者

攻略済みダンジョンのモンスターは狩りとか生存目的でしか襲ってこないけど、未攻略ダンジョンはコア防衛のために積極的に殺しに来るからな。同じゴブリンでも危険度は比べ物にならんぞ

 

568:名無しの探索者

それをプロならまだしも入学したばっかの一年生が複数同時に相手取って仕留めるとか。やっぱ学年一位の実力はやべえな

 

569:名無しの探索者

なんかブースト系のアイテムとか魔術使ってんの?

 

570:伝説になる探索者

>>569

いや、ワイの知る限りじゃ装備はアカデミー支給の剣だけ。魔術も超能力も使えんはずやから純粋な剣技と身体能力やで

 

571:名無しの探索者

なんだただの天才かよ

 

572:名無しの探索者

うわようじょつよい

 

573:名無しの探索者

ねえ勝てんのこれ?

 

574:名無しの探索者

>>573

勝ってもらわなあかん。イッチと、なにより昨日からパンツ脱いで分からせ画像を待っとるワイのために!

 

575:名無しの探索者

>>574

だからテメーはパンツ履けっつってんだろ!

 

576:伝説になる探索者

はいはい話進めるでー

 

◆◆◆

 

とりまゴブリンの襲撃を返り討ちにした俺らは、本格的にダンジョンの内部へと進んでった。

玄関から続くクッソ長い廊下の先はダイニングでそこを抜けるとキッチン、その先にもまだドアや廊下が続いてて、俺らはそこをいつモンスターに襲われても対処できるよう警戒しながら探索した。

 

ダンジョンの中は分かってはいたが奇妙なもんだった。

内装や置かれとる家具はどこにでもあるようなごく普通のもんだったが、間取りつうか構造が滅茶苦茶だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ダイニングの隣にキッチンがあったかと思えばその次のドアを開ければまた別のキッチン。廊下は曲がりくねって行き止まりや分かれ道が何本もあって、突き当りかと思いきや壁や本棚がスライドして次の通路が現れる。

忍者屋敷かからくり屋敷みてえな仕掛けがそこかしこにあってホント迷路か。

しかもそれが明らかに外から見た広さと合ってないから、まるで頭のおかしい建築家がラリッたまま設計したような違和感と薄気味悪さがあった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「だーくっそなんだよここは! 廊下はぐにゃぐにゃだし間取りはめちゃくちゃだしわけわかんねえぞ!」

 

あんまりにも複雑怪奇な内部構造にイラつく俺に、教官は苦笑しながら言う。

 

「ダンジョンの内部は一種の異空間だ。面積も構造も外界とは異なっている。違和感はあるだろうが一人前の探索者になりたければ早く慣れておけ。言っておくがこんなものは可愛いものだぞ。Bクラスをはじめとする上級ダンジョンは独自の固有法則すら有し、最上のSクラスともなればもはや異世界だからな」

 

うへえこれでまだマシなんかよ。なら上級ダンジョンはどんな人外魔境だってんだ。

 

俺は内心げんなりしながら、ダンジョンの更に奥へと進んでった。

 

◆◆◆

 

577:名無しの探索者

まあ実際こんなもん可愛いもんだ

 

578:名無しの探索者

地面に足がつくだけマシやで

 

579:名無しの探索者

攻撃ができるだけマシやで

 

580:名無しの探索者

物理法則さんがちゃんと仕事してくれる安心感とか最高やん

 

581:名無しの探索者

えなに? ワイまだCクラスまでしか行ったことないんやが上級てそんなヤバいの?

 

582:名無しの探索者

>>581

ヤバいてかイカレとるな。うんいろんな意味で

 

583:名無しの探索者

>>581

モンスターの強さが段違いなのはもちろん固有の法則とか制約がヤバい。つうかキツイ

 

584:名無しの探索者

>>581

戦闘力だけで何とかなんのがCまでで、Bからは下手したら武力による戦闘行為そのものが禁じられてる場合がある。戦うしかできんのなら悪いことは言わんからCクラスダンジョンから上には行くな。死ぬぞ

 

585:名無しの探索者

東京大学がダンジョン化した時はヤバかったな。潜ったんはいいものの、中は仕掛けとデストラップだらけで謎解きしなけりゃ進めんし不正解なら即死や。ワイのパーティーに慶応卒のインテリがいなかったら全滅してたで

 

586:名無しの探索者

日本武道館なんかライブ会場としての側面でダンジョン化したから当然武力戦闘禁止。武器も使えんし格闘すらパンチ一発打とうとしたら体が痺れて動けんくなる。唯一許されてるんが歌とダンスやからモンスターを倒すには歌と踊りの勝負で負かさにゃならんとかいうクソ仕様やで

 

587:名無しの探索者

>>586

そういや前に大手のアイドル事務所が所属アイドル引き連れて攻略しに行ってたな

 

588:名無しの探索者

>>586

セイレーンやらフェアリーを圧巻のアイドルパフォーマンスで次々撃破してったんは流石やわ。まあ最終フロアのボスには負けたけど

 

589:名無しの探索者

>>588

あれはしゃあない。だってあれ武道館で一番最初にライブした伝説のグループのメモリーデータをベースに生み出されたモンスターやで。アレに勝てんのはそれこそプレスリーとかマイケルクラスだけやろ

 

590:名無しの探索者

アイテムと魔術のバフ特盛重ね掛けで速度を超強化したワイ。Bクラスダンジョン中山競馬場に勝利を確信して挑むもユニコーンゴルシに無事惨敗。速力勝負でワープ使うなよぉ(ノД`)・゜・。

 

591:名無しの探索者

競争縛りの中山競馬場と謎解き縛りの東大と歌唱縛りの日本武道館は三大クソダンジョン

 

592:名無しの探索者

Sクラス秋葉原ダンジョン経験者のワイが通りますよっと。BやAで泣いとるおまいらはアキバの中層『ゲームエリア』にいっぺん行ってみ。自分の身体がドットやポリゴンに変換されるあの異常空間体験したら三次元てだけで天国に思えるようになるから

 

593:名無しの探索者

おいおいみんな盛り上がりすぎやろ。気持ちはわかるがイッチの話に戻ろ?

 

594:名無しの探索者

せやな。いろんなトラウマが蘇りすぎて脱線しちまったわ

 

595:名無しの探索者

ごめんなイッチ。ちゅうわけで続きよろ~

 

596:名無しの探索者

ロリの話プリーズ

 

597:伝説になる探索者

気にすんな。アカデミーの授業じゃ習わんようなリアルな話聞けて面白かったで。

 

◆◆◆

 

俺らはちょくちょく出るゴブリンを倒しながらダンジョンを探索していくと、上へと通じる階段を見つけた。

 

 

 

それを上って行った次の階層は、内部構造こそあんま変わらんもののゴブリンの強さつうかタフさがほんの少し上がってた。

深層に行くにつれコアが近くなる分より多くの魔力を供給されとるからモンスターも手強くなるらしいけど、ここまでくると俺もだいぶ慣れてきたんでゴブリンは単体なら多少強くなろうが問題無く仕留められるようになっていた。

 

「うっしまた一体撃破! どうだチビガキ。テメエのスコアに近づいてきたぜ~」

「近づくだけで埋まることはないんですけどね。はい二体スコア追加です」←ゴブリンの首をまとめて撥ねながら。

 

とはいえチビガキとの差はまだまだ開いたまんま。こりゃ何とか一発逆転せにゃと思ってたところに、そいつは現れた。

 

「ブヒッ。ニンゲン……倒す!」

 

でっぷりとした脂肪と筋肉に包まれた大柄な体を持つ豚人間。ゴブリンと並ぶダンジョンの定番モンスター――オークだ。

 

◆◆◆

 

598:名無しの探索者

オーク先輩キターーーーー!

 

599:名無しの探索者

やっぱダンジョンと言えばゴブリンとオークやね

 

600:名無しの探索者

上級ダンジョンでドラゴンやマンティコアとかの強敵と散々やりあってるとこいつらはもう癒しキャラ

 

601:名無しの探索者

>>600

わかる~。たまに遭遇すると地元の友達に会ったような安心感があるわ

 

602:名無しの探索者

いろんな意味で便利すぎるからダンジョンによっては乱獲されてんだよなぁ

 

603:名無しの探索者

ワイの地元の沖縄のダンジョンでは一時期獲られすぎて一つのパーティーにつき三体までって制限かかったことあるで

 

604:名無しの探索者

まあオークは一匹でパーティーが三日は食いつなげるしなあ。そうでなくとも調教すりゃ労働力として使えるし

 

605:名無しの探索者

女の探索者にいたっては奴隷兼性処理要員としてこき使ってる奴もおるくらいやし

 

606:名無しの探索者

オーク先輩カワイソス(´;ω;`)

 

607:名無しの探索者

とはいえベテランからしたらカモやけど学生には強敵やな。膂力はゴブリンの比やないから下手したら一撃でやられるで

 

608:名無しの探索者

そんなっ。イッチ……はまあいいとしてロリがやられたら……ッ

 

609:名無しの探索者

もしロリがオークにやられたら……やられたら……ッ!

 

610:名無しの探索者

密室。むくつけきオーク。負けてしまった美少女ロリ。なにも起きないはずはなく……

 

611:名無しの探索者

うっ!

 

612:名無しの探索者

うっ!

 

613:名無しの探索者

うっ!

 

614:名無しの探索者

……ふぅ。これは由々しき事態ですね。皆でロリの無事を祈りましょう(賢者

 

615:名無しの探索者

そうですね。いたいけなロリがオークに穢されるなどあってはならないことですから(賢者

 

616:名無しの探索者

さあ祈りましょう。神よ。ロリにご加護を世界に平和を(賢者

 

617:名無しの探索者

ロリ&ピース*。・+(人*´∀`)+・。*

 

618:名無しの探索者

一斉に賢者モードになってんじゃねえよロリコン共ww

 

619:名無しの探索者

一番ロリを穢してんのはこいつらじゃねえか

 

620:伝説になる探索者

まあもちろんぶち殺したで。

 

◆◆◆

 

「ブヒヒッ。人間の雌、お前倒して孕ませ――」

「死んでください。豚」

 

チビガキがな!

 

オークが最後まで言う前に、床を蹴って跳躍したチビガキの刺突が欲望に目をぎらつかせた豚面を貫いた。眉間をぶっ刺されたオークは崩れ落ち、チビガキはその屍をゴミを見るような目で見下ろしていやがった。

 

◆◆◆

 

ちなワイはあまりにも早業だったもんで完全に出遅れてたわ。構えた次の瞬間にはオークがやられてたで

 

621:名無しの探索者

ロリはオークなんかに負けない!(ガチ)

 

622:名無しの探索者

ロリには勝てなかったよ……byオーク

 

623:名無しの探索者

オーク先輩は悪くない。ロリが強すぎるんや……

 

624:名無しの探索者

胴体に攻撃したら分厚い脂肪と筋肉に阻まれる所を眉間狙いで一撃とはなぁ

 

625:名無しの探索者

オークの殺し方を分かってらっしゃる

 

626:名無しの探索者

これにはオークも苦笑い

 

627:名無しの探索者

もしかして鍛えれば将来《災強》にも勝てるんやないかこのロリ

 

628:名無しの探索者

>>627

それはない(真顔)

 

629:名無しの探索者

>>627

今確認されてる全モンスターの中で単純物理なら最強レベルのオークとかSランクでも無理ゲー

 

630:名無しの探索者

>>627

全英国紳士が泣きながらシコッた『円卓の13P事件』の二の舞になるんがオチやで

 

631:名無しの探索者

>>630

私は一向にかまわん!!

 

632:名無しの探索者

てかますますスコア広がってんじゃん大丈夫なのイッチ?

 

633:名無しの探索者

天才ロリに勝てるビジョンが見えない

 

634:伝説になる探索者

なにこれからや。

 

◆◆◆

 

どっこい俺の運もまだまだ尽きてはなかった。

 

オークを倒したロリの背後にゆらりと現れる青白い影。そいつが薄気味悪い呻き声をあげながら、チビガキに襲い掛かってきた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

チビガキは背後の気配にハッと気づいて間一髪回避したが、あいつが振り向きざまに振るった刃は青白い影に当たるも切り裂くこと無くスカッと通り過ぎた。

流石のチビガキもそれには青い目を驚きに見開いてたが、それを見ていた教官は冷静に

 

「レイスか。人死にがあった場所がダンジョン化した場合に多く出現するゴースト系モンスターだ。霊体であるため物理攻撃はほとんど効果は無いぞ。どうする?」

「ちっ……厄介ですね」

 

舌打ちして、青白い影のような人型の亡霊――レイスから距離をとるチビガキ。さすがのこいつも物理がきかん奴にはお手上げのようだ。

ふっふっふ……だが俺は違う。なぜなら奥の手があるんだからなあ!!

 

◆◆◆

 

635:名無しの探索者

お?

 

636:名無しの探索者

ほう?

 

637:名無しの探索者

 

638:名無しの探索者

まさかイッチ……ッ

 

639:伝説になる探索者

せや。昨日おまいらに『ゴースト系は厄介やから対策しとき』てアドバイスされたから作っといたで。ワイ特製のなんちゃって聖水をな!

ぶっちゃけ塩ネキから魔法陣経由で送られた塩を水に溶かしただけのなんちゃってアイテムやが、試しにクラスメイトの陰陽師が使役しとるちっこい猫みてえな妖怪すねこすりぶっかけたらバッチリ七転八倒してたから、きっとレイスにも効くはずや。ワイはこの時点で勝利を確信したで

 

640:名無しの探索者

リアル『こんなこともあろうかと』キターー!

 

641:名無しの探索者

しっかり用意してるやんイッチ!

 

642:名無しの探索者

なんだかんだでワイらのアドバイスを活かしてるイッチ有能説

 

643:名無しの探索者

あの妖怪界隈のマスコットキャラすねこすりに外道行為かましとるけどまあ許したるわ

 

644:名無しの探索者

すねこすりは犠牲になったのだ

 

645:名無しの探索者

私の送った塩がお役に立てるのなら幸いです

 

646:名無しの探索者

おっしいったれイッチ!

 

647:名無しの探索者

ヤッチマイナー!

 

648:伝説になる探索者

もちろんいったるでここで決めな男が廃る!

 

◆◆◆

 

俺は腰に提げたポーチから取り出した瓶の口を開け、中に容れてた聖水を剣の刃にぶっかけてレイスに斬りかかった。ついでに駄目押しで悪霊退散ワードを叫んでな!

 

「ビックリするほどユートピア!!」

 

おもくそかました全力の斬り下ろしで、レイスは脳天から真っ二つ。そのまま口惜しげな声を漏らしてすうっと消えていった。

 

◆◆◆

 

はいワイ大勝利。讃えろスレ民ども

 

649:名無しの探索者

ビックリするほどユートピアww

 

650:名無しの探索者

ビックリするほどユートピアてww

 

651:名無しの探索者

そこでビックリするほどユートピアかーいwww

 

652:名無しの探索者

ビックリするほどユートピア! レイスは死ぬ!

 

653:名無しの探索者

聖水とユートピアやられたらそら死ぬわww

 

654:名無しの探索者

【死因】ビックリするほどユートピア

 

655:名無しの探索者

>>654

レイスは元々死んでるのでは?ボブはいぶかしんだ

 

656:名無しの探索者

聖水はともかくユートピアって効くのかよ

 

657:名無しの探索者

>>656

効くで。単なる眉唾物の都市伝説だろうが大勢に信じられてるってのはそんだけで力をもつからな。むしろ威力はガチのお祓いには劣るけど、何も信仰してへん奴でも使えるぶん使い勝手はダントツや。以上解説は魔術師ワイがお送りしたで

 

658:名無しの探索者

>>657

へ~。なら俺も今度ダンジョン青木ヶ原樹海を探索するとき使ってみよ

 

659:名無しの探索者

>>657

明日恐山にアタックかけるんやけどAクラスダンジョンのモンスターでもいける?

 

660:名無しの探索者

てかなんでレイスじゃなくて剣に聖水かけたの?

 

661:伝説になる探索者

>>660

最初にすねこすりで実験した時、あんの妖怪いっちょまえに避けやがったんや。まあ二回目でしっかり命中させたけどな。やから実戦ではそのままぶっかけずに剣に浸けて刀身ごとぶつけたんやで

 

662:名無しの探索者

イッチが、工夫しとるやと……ッ!?

 

663:名無しの探索者

バカなのに……ッ……年下ロリを本気で分からせようとする大人げないバカなのに……ッ

 

664:名無しの探索者

バカはバカでも進歩するバカなんか!

 

665:名無しの探索者

なにをしようが揺るがぬバカ評価で草。 

とはいえやったやんイッチ! ゴースト系は倒しにくいぶん配点高いはずやで

 

666:名無しの探索者

イッチは勝利に一歩近づいた!

 

667:名無しの探索者

このまま逆転勝利まで一直線や!

 

668:名無しの探索者

見えてきた。分からせのビジョン!

 

669:名無しの探索者

ねえねえロリはどんな反応してたの? 悔しがってた? 悔しがってた?

 

670:伝説になる探索者

ふっふっふ。それはなあ……悔しがってたでえ。

 

◆◆◆

 

見事レイスを撃破した俺。

 

「おうどうよチビガキ。テメーと違ってバッチリ対策してた俺にかかればレイスなんざ一撃だ! 『備えあれば嬉しいな』ってやつだな!」

「っ……。……正しくは『備えあれば憂いなし』ですよ」

「あん? まあ大体同じだからいいんだよ。ちなみに聖水入りの瓶はまだまだ用意してっからレイスが何体出ても倒せるぜ。だからレイス相手は俺に任せとけチビガキ。なんたって倒せるのは俺だけだからな! お・れ・だ・け!!

 

ドヤ顔決めた俺に、チビガキは

 

「……そうですか。ならレイスの方はお任せしますね。ゴブリンやオークを私より倒せない分、せいぜいレイスでスコアを稼いでおいてください。ま、それでも勝つのは私ですけどね」

 

なんて涼しい顔で言ってやがったが俺はバッチリ気づいた。そう言っとる唇の端っこがピクピクしとるのをなあww

 

よく見りゃ細い肩も微妙に震えとるし悔しがっとるんを一生懸命押し隠しとんのよな~ww

 

◆◆◆

 

ぷぷぷ。思い出すだけでニヤけてくるわ

 

 

671:名無しの探索者

あら~ (^^)

 

672:名無しの探索者

あら~ (о´∀`о)

 

673:名無しの探索者

本当は悔しいのに隠してツンとすましてるロリっ娘……お可愛いですねぇ (*≧з≦)

 

674:名無しの探索者

ロリが悔しがってんのを楽しむとか最低やなあ……ワイも同じ気持ちやでえ(ニチャア

 

675:名無しの探索者

これはニヤけざるを得ない

 

676:名無しの探索者

っは~かわいい。もはやキャワイイ

 

677:名無しの探索者

イッチはこれを生で見とるんやなあ。っあー羨ましいわ

 

678:名無しの探索者

ワイもロリの悔し顔見たい~!

 

679:名無しの探索者

見たい見たい見たい~((ヾ(≧皿≦メ)ノ))

 

680:伝説になる探索者

くっくっく羨ましいやろロリコン共。まあぶっちゃけワイもスカッとしたわ。入学以来負け続けなこのチビガキに初めて一矢報いたわけやからな。

でもこんなもんでワイは満足せんで。目指すはあくまで完全勝利しての分からせや。

 

◆◆◆

 

そっからは俺がレイスでチビガキはゴブリンやオークてな具合に、自然と相手を分担するみたいな形でダンジョンを進んでった。

そうしてしばらく廊下を歩いて部屋を抜けて階段を上がってを繰り返して、俺らはついにこのダンジョンの最奥――ダンジョンコアとそれを守るボスが待っとる最終フロアにたどり着いた。

 

そこは今までの部屋とは明らかに違っていた。

ここまで通ってきたどの部屋にも無かったベッドがあり、壁にはポスターが貼ってある。ひときわ生活臭が濃いここは、この家の家主だった奴の部屋か。

 

その中央には、ボーリングの玉くらいの大きさの球体が宙に浮かんでいる。光沢のある表面にダンジョンの紋様をぼうっと浮かび上がらせたこれが、このダンジョンのあらゆるシステムを司る中枢《ダンジョンコア》

そしてそれを守るガーディアンであるボスモンスターが、俺らの前に悠然と立ちはだかる。

 

「これは人形……いえ、マネキンの一種ですか?」

「こ、こいつは……っ」

「ほう、これは……」

 

現れたそいつの姿に、チビガキは怪訝そうに形のいい眉を寄せ、俺と教官は思わず驚きの声を漏らした。

等身大サイズの白人女性型ボディ、雑なベタ塗り塗装の全裸、特徴的なんは口と下半身にぽっかりと空いた卑猥なホール。チープでアメリカンなパツキン女を模したこいつは――ッ

 

「ダッチワイフじゃねえか」

「ダッチワイフだな」

 

どっからどう見てもダッチワイフやった。それもかなり安っぽいやつ。

 

……いやなんやこれ?

 




お読みいただきありがとうございます。地獄の暑さの中で茹蛸になりながら執筆してる作者です。

前話投稿から引き続き評価と感想ありがとうございます! おかげで二話目にして評価バーに色がついて作者大喜びです。読者様には足を向けて寝られねえなこりゃ。
そんなわけでこりゃはりきって続きか書かにゃと頑張ったわけですが張り切り過ぎて文字数が多くなったのでとりあえず区切りのいいとこで投稿することにしました。
いやあ掲示板形式に慣れてないもんで文字数の管理が全くできないのです(´;ω;`);`) この続きは明日に投稿するので許してください。

おまけ
ざっくり解説。

『アカデミー制服』
アカデミーから支給される制服。各地のアカデミー毎にデザインや性能が微妙に異なり、それぞれの地域のダンジョンの傾向に合ったものとなっている。
学校生活はもちろんダンジョン探索においても着用が義務付けられているため、防塵防弾などの物理的なものから耐電耐魔術まで幅広い防御力を備えている。
軽量で堅牢という優れた防具だが、アカデミーの学年が上がる毎にその性能が下がったものに変更されていく。
これはいつまでも制服を頼りにしていては成長できないという方針からであり、事実2・3年生はアイテムや魔術によって防御力を自前で補う、または改造が許されているため鎖帷子を仕込むなど各自様々な工夫を行っている。

男子制服は長袖長ズボン。女子は長袖スカート。
男女共に腰のベルト周りには様々なアイテムを取り付けるためのフックやリングが複数あり、バカはここにミリタリーポーチを吊っていた。
なお女子制服のスカートには視覚阻害機能──通称『ファッキン黒塗りモザイク』──が付けられており、これによってスカートの中は何も見えない真っ暗闇となって、捲れでもしないかぎりは中を見ることが出来ない仕様となっている。

『ビックリするほどユートピア』
悪霊退散呪文。意味は不明だが誰でもできる除霊方としてファ⚫リーズと双璧を成している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。