Fate/Stardust Vendetta―星屑の復讐僤――   作:ソクリ

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第12話「ジョーカーに宜しく」①

――王都『ルプス・コローナ』・スラム街――

 七星陣営側キャスターおよびライダーによる襲撃、キャスターの大規模魔方陣をエドワード・ハミルトンの命がけの魔弾によって破り、ライダーと四狗たちの襲撃は朔姫とキャスターによって辛くも凌ぐことが出来た。

 

 しかし、それさえもあくまでも前哨戦に過ぎない。ライダーの奇襲が失敗に終わった瞬間、襲来したのは七星散華とアサシン、レイジに異常なまでの敵愾心を見せる実験体を引き連れたカシム・ナジェムとキャスター、そして星灰狼である。

 

 奇しくもこの場に七星序列第一位から第三位までのすべての戦力が揃い、朔姫たち側もキャスターの影響力によって闘う事が出来ていなかった桜子たちが参戦を果たした。

 

 ここからが本当の意味での本番、このスラムでの戦いの趨勢を決する決戦となるであろうことは誰にとっても分かることであった。

 

「思ったよりも復帰が早かったな、カシム・ナジェム。もう少しお待ちかねで来てくれると思っていたんだが、急ごしらえでは俺を越えることはできないぞ?」

 

「委細承知している。しかし、座して貴様の到来を待ち続けるなど、己にはできん。グロリアス・カストルムの時と同じであるとは思わないことだ」

 

 ロイの挑発にカシムは真っ向から言葉を返す。グロリアス・カストルムでの戦いでは全身を鋼鉄へと変えながらも、ロイの圧倒的な武力の前に、カシムは敗退を余儀なくされた。再びロイの前に姿を見せた以上、その身体は以前の戦いとは全く別物になっていると考えるべきだろう。

 

「ふふ、桜子さん、また会えてうれしいです。前回は中座となってしまいましたが、今度は逃げるなんてことはしないでくださいよ? 私はずっと貴女を斬る日を心待ちにしてきたんですから」

 

「女の子に好かれるのは嬉しいけど、貴女に好かれるのは別に嬉しくないかな。それに、私、そんな簡単に斬れるほど優しくないよ。貴方の戦い方は前回の戦いで良く分かったから、今回も同じように行くなんて思わないで」

 

「できるんですか? 私の反応速度にまったく追いつけていなかった癖に」

「まぁね、できないって諦めたら斬られるのを待つだけになっちゃうでしょ? 生憎と私は私の帰りを待ってくれている人がいるから。私の命は私一人のモノじゃない。だから、負けられないんだよ、貴女にも、他の七星にも」

 

桜子がそういうと、散華は一瞬、何か言いたそうな表情を浮かべた。しかし、すぐに表情をいつもの柔和な笑みで隠した剥き出しの殺意で塗り固めた表情へと戻した。

 

「そうですか、嬉しいですね、貴女は実に殺しがいのある相手ですから」

 

 散華が自らの武器である刀を抜く。そして桜子も魔力によって編み出される刀を展開するために魔力を練り上げる。共に七星流剣術を使う者同士、前回の激突で相手の手の内を知ることは出来た。今度こそは不甲斐ない戦いをしないと桜子は気を張り、散華の行動すべてに意識を割く。

 

(朔ちゃんがここまで頑張ってくれた。本当なら、まだ実力を隠しておきたかったはずの朔ちゃんに報いるためにも、私は絶対に七星散華には負けられない。少なくとも七星流剣術そのものを使う戦いになれば、私の方が一枚上手だ。後は彼女の反応速度さえ突破することが出来れば、勝機はある)

 

 純粋な七星流剣術の激突であれば、自分に分があると桜子は考える。散華は強い。しかし、その強さの源泉は七星の血を使った超反応にある。もしも、純粋な剣技だけで勝負をするのなら、桜子の方が筋がいい。

 

 少なくとも、散華の剣術能力は自分の兄ほどではないと桜子は冷静に分析していた。

 

「ランサー、アサシンをお願い」

「承知しました、あの時のように不覚は取りません」

 

「あはっ、お姉さん、またフラウと踊ってくださるのかしら? それはとっても嬉しいわ。こんなにたくさんの人に歓迎されたのは初めてよ。どうか、踊ってくださいな」

 

「なによ、あれ。なんかもう色がどす黒いんだけど」

「あれが七星陣営側のアサシン、気を付けてね、ルシア、アサシンに触れられると、何が起こるかわからないわ」

 

 アサシン陣営もキャスター陣営も自分たちの闘うべき相手が目の前にいるおかげもあって、既に戦意は十分なほどに発露されている。きっかけが生まれればすぐにでも戦いに発展することができると言わんばかりの様子である。

 

 しかし、この場で最も殺意に溢れている戦場はその二つではない。怒りと殺意を携えた二人の少年が対峙する。1人は星灰狼への消えることのない殺意を滾らせる少年、レイジ・オブ・ダスト、そしてもう一人はそのレイジに対して殺意をみなぎらせている実験体と呼ばれている少年である。

 

『相変わらずお前さんに殺意マシマシだのぉ、あやつは……』

『本当は面識あるんじゃないの? じゃなくちゃあんなに怒りを剥き出しにすることなんてありえなくない』

 

「知らん、だが、間接的に俺を憎む理由を持っている奴なのかもしれない。この手が穢れていないなんてことは言えないからな」

「穢れている? 違う、そんなチャチなことじゃない。返せ、返せよ、あの子は俺のモノだ、お前が傍にいさせていいものじゃないんだ……!」

 

 実験体と呼ばれた少年の視線はレイジではなくターニャに注がれる。何かを伝えたい、しかし伝える術を持ち得ない少年は、ただ呻くようにレイジへの恨み言を口にすることしかできない。

 

 レイジ自身もどうして自分がここまで彼に恨まれているのかを理解できない。おそらく彼は人造七星なのだろう。わずかに七星の魔力が彼の身体から漂ってきていることは理解できる。しかし、大した力ではない。これまでにレイジが対峙してきた七星の術者たちに比べればそれこそ、子供だましといってもいい程度の力でしかない。

 

「お前に用はない。星灰狼を出せ、俺が用があるのは奴の方だ」

「愚かな奴だ」

「なに―――?」

 

「愚かだと、言ったんだよ。自分のやっていることが、どんな結末を生み出すのかもわからずに、自分の正しさだけを信じて突き進んでいることはさぞかし楽しいことだろうさ。その裏で犠牲になることがあることをお前は知らない。お前は救世主にはなれない。お前は何処まで行っても血塗られた鬼でしかない」

 

 指を差し、少年はレイジを非難する。お前に平和なんてものは作れない。お前に出来るのは戦禍が広がるだけの世界であると。

 

 地獄の先に花を咲かせる?笑わせるな、そんなことはお前にはできない。悪鬼、いいや、むしろお前は道化に過ぎないのだから、その手で新たに生み出せる何かがあるわけがないだろうと公然とレイジの歩んで行こうとする道を否定して見せる。

 

「七星に復讐をすれば、総てが解決すると思っているだけの道化だ。お前のような奴が彼女の傍にいることが許せない」

 

お前は何も必要ない。ただ、その愚かしい道化のような人生に幕を引けと異常なまでの執念を持ち合わせた少年はレイジを害するために動く。

 

「バカにするなよ、道化なのはどちらだ。俺たちにこんな過酷な運命を背負わせているのは星灰狼だ。お前の後ろでふんぞり返っているそこの男だ。ソイツを何とかしなくちゃ何も変わらないのに、どうしてお前はそうしない? 本当に闘うべき相手がいると分かっているのなら、刃を向ける先を間違えるなよ。お前の事情なんて知らない。だが、お前が戦うべき相手を見誤るなよ」

 

「そうだ、お前は俺が何なのかも知らない。俺がどうしてお前を憎んでいるのかも知らない。けれど、何が正しいのかを知っている。それが正しいと言い切ることができる。そんな自分が歪だと思ったことはないのか? 他人の事情も知らずに、当たり前のように正論を口にするその傍若無人なあり方こそが、お前という存在を何よりも象徴している」

 

「もういいだろう、実験体402号、彼はお前の敵だ。私は約束は守るよ。どだい不可能な所業であったとしても、それを覆したのであれば褒美を取らせる。だから、見事討ち果たして見せるがいい、ただの屑星でしかないお前にそれができるのならば」

「言われるまでもない」

 

 たとえ、自分に命令を下した男が全ての元凶であったとしても、彼に従うことで自分の願いを叶えることができるのであれば、彼にとってそんなことはどうでもいい。人間は本来自分が手に入れて然るべきものを奪った相手にこそ、その怒りをあらわにする。

 

 レイジにとってはそれが灰狼だった。彼はレイジが当たり前に手にしていた者の総てを奪ったのだから。そして実験体402号にとっては、その対象は灰狼ではなくレイジであった。彼こそが実験体402号が持つに相応しいものを奪った。だから許せない。原因ではなく結果として戦うべきことはもはや決定事項なのだ。

 

「さて、彼らは放っておけばいいが、随分と逞しい表情になったね、ターニャ・ズヴィズダー」

「白々しいね、あなたがそう仕向けた癖に」

 

「何のことかな?」

「貴方は私が倒す」

 

「できるのなら、やってみるといい」

「私だって、以前のように貴方に怯えるだけじゃないわ。レイジの力になることができるのなら、私は貴方とも戦う!」

 

 以前、灰狼に捕らえられて、自分の境遇に怯えることしかできなかった頃のターニャと同じ人物であるとは思えないほど、彼女はたくましい言葉を口にする。周囲に纏っている魔力は紛れもなく七星の魔術、自分自身が七星の魔力に呑まれてしまうのではないかと恐怖に怯えていたころの彼女はもはやどこにもいない。

 

「いいね、恋は少女を女に変えるとはよく言ったものだ、王よ、先ほどの一戦を終えた後にすぐに戦うことを求める愚かさをお許しいただきたい。さしもの私もセイバーを相手に戦って、勝てると豪語できるほど向こう見ずではありません」

 

「フッ、要らぬ心配だぞ灰狼、四狗たちよ、今だ吠える気概はあろう。肉体が滅びる間際であろうとも、我が軍を率いて来たものとして、最後の花を咲かせるがいい!!

 ライダーが再び戦闘態勢へと入ると、何ということだろうか、ライダーの背後にまるで守護霊であるかのように四体の幻獣が再び姿を見せる。まるで消え去る前の最後の輝きであるかのようなその威光、並みの英霊であればそれだけで恐れ戦き、状況に呑まれてしまうだろうが……、

 

「誤算と言えば誤算だったな、侵略王よ、貴様は儂が自ら滅ぼさなければ誰にも倒せぬと思うていたが……、足元を掬われたなどとは言わんぞ。このまま押し切らせてもらう」

 

 ライダーを迎え撃つようにターニャのサーヴァントであるセイバーもまた姿を見せる。セイバーにとっては、ターニャのサーヴァントとして自分を脅かす可能性のある存在であるライダーをここで排除することができるのであれば、渡りに舟である。

 

 キャスターの活躍見事であった、そのまま逃走しないその戦士としての闘争心も受け入れたうえで、救世王はこのまま、侵略王を屠ることを決断する。

 

「セイバー、お願い、私に力を貸して」

「無論、それがこの場における最適解であろう」

「では、始めようか。聖杯戦争を」

 

 それぞれの因縁がぶつかり合う戦場の中で最初に火ぶたが切られ、真っ向から激突したのは、遠坂桜子と七星散華、そしてそれぞれのサーヴァントであるランサーとアサシンの戦闘である。

 

「七星流剣術、陰陽崩し――――時雨繚乱!!」

「ふふっ、七星流剣術――不知火!」

 

 魔術によって生み出された形を持たない桜子の剣、それらが式神を介して一斉に展開して、散華の周辺を覆うように斬撃の結界を生み出していく。

 

 斬撃結界の動きは全て、式紙を介して、桜子の魔力を通して機能する。言うまでもなく、桜子とランサーがどれだけ動き回ったとしても、その斬撃結界に切り裂かれることはなく、散華とアサシンだけが対象となる。

 

 決して周囲一帯を覆うような空間ではなくとも、その斬撃結界が機能している以上、空間の中に逃げ場はない。超反応の意味などないと思われるが、それは素人の発想でしかない。それで捕らえられるようでは、七星宗家の後継者を口にすることなどできないだろうと、散華は斬撃結界の斬撃が自分に降り注ぐよりも早く動き、その空間の中を突破して桜子へと刃を振るう。

 

「見事ですね、並みの七星であれば、桜子さんの斬撃結界避けることなど不可能です。攻防一体、七星の魔術と神祇省の技術を合わせた素晴らしい出来ですが、私の前には通用しません」

 

(速すぎる――――ッッ、速度に七星の魔力をすべてつきこまれたら、私の攻撃すらも届かない……!!)

 

 桜子の七星魔術はあらゆる状況で戦闘行為を可能とし、術者の魔力増強、あるいは修練によって上限なく強くなることができる、想像力に寄与した能力である。対して散華は能力の拡張性自体はそこまで高くはない。剣術も桜子に劣るであろう。

 

 しかし、七星の血を誰よりも濃く継いできた彼女の真価は、あらゆる経験則を以って、最適な能力の使い方を選ぶことができることにある。桜子の技が迎撃、あるいは反応で切り抜けることができないとわかれば、即座に魔力のすべてを速度に置き換えて、斬撃結界を突破する。式神がオートで斬撃を放つとしても、その魔力を流すのが桜子である以上、反応速度の面で、散華が上回っているのならば、避けることは難しくない。

 

「これが現実ですよ、桜子さん。貴女がどれだけ考えを巡らせたところで、無駄なんですよ。分家が宗家に勝つことなんて―――」

「スイッチ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

「くっ、っっ!!」

 

「私だけじゃ勝てないかもしれない。けれど、これは聖杯戦争、だったら、私はマスターとして貴女を倒すわ、七星散華!」

 

 迫ってくる散華に向かって、横合いからランサーが飛び込み、二振りの槍が散華の身を裂く。魔力による回復は当然行われるが、桜子と対峙した中で、まったく手傷を負わずに戦ってきた散華にあっさりと手傷を負わせたことは、彼女にとっても驚きであり、圧勝ムードを崩す意味で十分に意味がある。

 

「お姉さん、貴女はフラウと、きゃあああ、いきなり刃が飛び出してきたのよ!」

 

 そして、ランサーが散華へと向かった分は桜子が、魔力刀を放って、アサシンを牽制する。アサシンは天然の災厄ではあるが、技量という点では散華に頼らざるを得ない程度でしかない。

 

 七星散華とアサシンの陣営は、その戦闘力のほぼすべてを散華に頼り切っている。桜子と散華では散華に軍配が上がるとしても、サーヴァントを交えた状態での戦いとなると、その戦力差は逆転する。ランサー:アステロパイオスは生粋の戦闘者、散華と戦うことは十分にできるのだ。

 

「サーヴァントと自分の立ち位置をスイッチさせることで戦力の不利を補う。なるほど、考えてくれましたね。さしもの、私もサーヴァント相手に戦うとなると、少し自信を失ってしまいます。それでも、目的を違えることはありません。いいですよ、マスター同士の戦いで勝つことができないから、サーヴァントを交える。立派な戦い方じゃありませんか」

 

 言うとすぐに散華は再び、あくまでも桜子を狙うという目的を変えることはなく刃を振るう。当然にアステロパイオスも対応するが、今度は散華も攻撃に対して反応し、槍と刀が激突し、そこに割って入らんとする桜子へと身体を逸らしながら、槍を受け流し、刃を通そうとする。

 

「まさかッ!」

「私の射程に入るなんて、それこそ愚策ですよ!」

 

 ランサーと二人同時に攻撃を仕掛ければ優位を取ることができるなんて浅はかな考えに過ぎないと言わんばかりに、散華はランサーの攻撃を受け流しつつ、桜子へと迫る。

 

 単純な連携など、彼女の前では一人であろうが二人であろうが関係ない。彼女は暗殺一族七星の最新型、もとより、複数人数との戦闘等お手の物、そして格上であろうとも、七星の血が機能している限り、彼女は十全に戦うことができる。

 

「フラウ、ほら、貴女も怯まなくていいんですよ。ただ、私たち四人で踊ろうというだけです。誰も、貴女を放置なんてしませんよ」

「そうね、その通りよね、マスター、ええ踊るわ。フラウも好きに踊ってしまうわ。だって、この方たちはみな、フラウと踊ることができるのですから!」

 

 散華の言葉に歪な笑みを浮かべながら、アサシンが反応する。

 

「ええ、ええ、その通りだわ。マスター、貴女と一緒になってからとっても刺激的なことばかり。好きなようにしてもいいのよね! フラウは心のままに踊っていいのよね、あの時のように、いつもいつだって、フラウは踊りたいように踊って来たのですもの」

 

 アサシンの言葉から感情が高ぶっていることが分かった。その感情と同期するかのように、彼女の立っている場所の周囲がどんどん腐食していく。これまで手で触れる事さえなければ、腐食の効果が発現することはなかったはずである。しかし、今や、目の前で起こっている事象はこれまでの認識していた事実を大きく変えようとしている。

 

「私のフラウを甘く見ることなんて許しませんよ? どうぞ、二人で必死に闘ってください。その特権を持っているのは貴方達だけではありませんから」

 

「七星散華も本領を発揮し始めたか」

「そのようだのぉ、あの娘が本領を発揮すると、スラムが全滅してしまうかもしれんが、まぁ、そうなればそうなったでまた新たな人間たちを補充すればよいか。国王もさして気にはするまい」

 

「興味深いことを口にするな、まるでその言葉にはスラムの人間には、ここにいるだけで存在価値があるような言い方じゃないか」

 

「そう聞くこと自体がそなたが答えに近づいておることの証左であるともいえるのぅ、ロイ・エーデルフェルトよ。ここは掃き溜めよ、セプテムという国にとって不要になる者、存在してはならぬ者たちを捨て去り、そして浄化という名目でそうした者たちを鎮圧していくための場所。ここに堕ちた者たちに這い上がるための方法などあるまい。ここはこの国にとっての墓場だ。臭いものに蓋をする類の、な」

 

 ペラペラとキャスター:ヘルメス・トリスメギストスはこのスラムという場所の意味をロイに告げる。何もロイの動揺を誘いたいという思惑があるわけではなく、単純に事実を告げている世間話に等しい。キャスターにとって、失敗作の烙印を押された者たちになどさして興味はない。彼女が興味を持つのは、人類の英知を以て、人類の限界を踏み越えようとする者だけなのだから。

 

「それにしても器用なものだのぉ、我がマスターと戦闘を繰り広げながら、妾の攻撃をも退けて見せるとは」

 

「余所見をしている場合か」

「貴方の相手はマスターではなく、私達です」

 

 ロイの周囲に次々と展開していく魔方陣から連続攻撃が放たれているが、その間隙を縫うようにセイバーが一糸乱れぬコンビネーションでキャスターを討ち取るための刃を放つ。ポルクスの剣技がキャスターの首を捕らえたと思った瞬間、まるで最初から配置されていたようにキャスターの身体が粘土状のものへと変わり、溶けて地面に消える。

 

 すろと、足下から魔方陣がせり上がり、二人の動きを一瞬にして束縛した。

 

「くははははははは、殺意を剥き出しにするでないわ。妾もお主らもこの戦いにおいては端役に過ぎぬであろう。決着を急ぐな、もっと遊ぼうではないか。神霊たるお主らと戯れることが出来るだけでも聖杯戦争などという暇つぶしに参加した甲斐があるわ」

 

 王都正門で侵略王の右腕ともいえるジュベを相手に圧倒したセイバーをまるで赤子の手を捻るように翻弄するキャスターの手腕はやはり頭一つ抜け出ている。

 

 もしも、敵側に侵略王という圧倒的な存在がいなかったとすれば、彼女こそが七星側最高のサーヴァントであったかもしれない。そう思わせるほどに、キャスターのポテンシャルは底が知れない。

 

 先ほどの大規模魔方陣を使い、戦力の転移、足止めをしながらの攻撃、ライダーは人造七星というバックアップがあるからこそ、暴れ続けることができるという保証があるが、彼女はマスターであるカシムが自身の戦闘のために魔力を使ってることからも分かるように、バックアップらしいバックアップを受けていない。

 

 それにも関わらず、まったく魔力が尽きる様子すらも浮かべない。むしろ、どうしてそんな事態になりえるのかという態度にすらも見えてくる。

 

「サーヴァントはサーヴァント同士に戦わせておけばいい。己はロイ・エーデルフェルトを倒す事だけに集中する」

「勝てないよ、どれだけ強化したところで、君では俺には勝てない」

 

 グロリアス・カストルムでの戦い同様に、カシムを封じるために足下から生じた流体魔術による攻撃、それがカシムへと殺到した瞬間、その鋼鉄の身体を焼くはずであった流体魔術の影響が、弾かれるように消失していく。

 

「何……?」

 

「防御力への懸念があった。お前と戦う以上、あらゆる魔術が己の身体に降り注ぐ危険性があり、己にそれを防ぐ手立てがない。であれば、どうするのか。これが答えだ。己の身に七星の魔力を纏わせた。コーティングとでも考えてくれればいい。このフィールドが展開している限り、ロイ・エーデルフェルト、お前の魔術は己の身体に触れることはできない」

 

「随分と用心深いじゃないか。それが七星の戦いかたなのかい?」

「好きにさえずればいい。お前という最強を屠ることができる七星こそが最強であると知れ」

 

「そうかい。だが、残念ながらその言葉は現実にはならないよ。何せ、俺はお前に負けるつもりはないからだ」

 

 傲岸不遜、ロイ・エーデルフェルトの言葉にはある種の傲慢さすらも滲み出ている。それを後押しするだけのキャリアと実際の強さを彼が併せ持っているからこそ、成立するその在り方はカシムの新機能をあっさりと流した。

 

 ガシンという音が鳴り響くと同時に、カシムの背部スラスターが火を噴き、一気にロイの下へと距離を詰めて、攻撃が繰り出される。流体魔術を使って躱すロイ、そして躱した先にあった建物の壁が一撃で吹き飛び、改めてその攻撃力のおぞましさを理解させる。

 

「触れれば砕けるな、触れればだが」

「追い詰められているのは自分であると自覚をするべきだ。攻撃が通用しないとなればお前は逃げ回ることしかできない。いずれは追いつく。今、この瞬間にも己の身体に内蔵している自己学習AIが貴様の行動パターンを学習している。動き回るほどにお前はその総てを丸裸にされるだけだ」

 

「そうかい、ならばやってみせろ。お前に俺の総てを明かすことができるのなら。そんなに浅い底ではないと思うぞ?」

 

 もっとも、以前の戦いよりもカシムを撃退する上での難易度が跳ね上がったことは言うまでもない。流体魔術によって撃退をすることが出来たのは、カシムがロイの魔術をその身で受けたことがなく、その苛烈さを知ることが出来ていなかったからである。

 

 今のカシムはその苛烈さを良く理解している。故にこそ、ロイの攻撃力を封殺したうえで、嬲り殺しにする方法を選んだのだろう。以前の失敗を糧として勝利するための方法を積み上げる。研究者としての側面が強いカシムらしい判断であると言えよう。

 

(対処は出来るだろう。しかし、厄介なのはむしろ、キャスターの方だ。あれが水を差すようなことになれば、どれだけ王手をかけたとしても失敗に終わる可能性は高い)

 

 聖杯戦争のマスターを守る為にどんな手段でも使うということになれば、さしものロイも対処することが出来なくなる。セイバーがキャスターを抑えている間にカシムを倒し、キャスターも消滅を狙う。それが間違いなくこの場における最適解であることは間違いない。

 

(ふむ、冷静じゃのぅ、我が主の改造で少しは変化が見れると思うたが、まだまだ予想の範疇内であったということであれば、よくよくこの先の展望を考えておるというべきところであろうが、鼻につくと言えば確かにその通り、あちらのように情熱的に闘ってもらいたいものであるのだがな)

 

 キャスターが意識を向けるのは散華と桜子の戦場ではなく、憎しみと殺意を込めて激突しあう二人の少年の戦いでもなく、その更にもう一つの戦場、星灰狼とターニャ・ズヴィズダーの戦場である。

 

「話には聞いておったがな、想像以上ではある。仕上がりも中々出来てきておるではないか。くっく、さすがに千年もの時間を賭けて醸成されてきた悲願、イレギュラーが起こったところでお前にとっては然したる問題ではないということかのぅ、星灰狼よ」

 

「七星流剣術―――花散!!」

「七星流槍術―――穿牙!」

 

 それぞれの技を放つ前の言葉が聞こえるとともに、技が激突し、火花散らしながら戦闘を継続させていく。ターニャと灰狼の戦いはそのような激突である。自分の武器である長槍を手にし、策謀家ではなく一人の戦士として戦場に立っている灰狼に対して、驚くべきことにターニャは戦う事が出来ているのだ。

 

 果たして七星の血が為せる技なのか、あるいはレイジと共に、共に明日を迎えることを願う少女の想いが、灰狼の想像をも超えて自我として走り出したのか。

 

 ルチアーノの時のように不意打ちでもないというのに、現役の七星の血族であり、この聖杯戦争という舞台で最も、七星の中で最強に位置するであろうと目されている人物と戦えていることは凄まじいの一言であった。

 

「そこまでして、彼が大事かい? 彼のことなど忘れてしまえば、君はもっと楽になることができる。君自身として当たり前の時間を過ごすことができるはずなのに。復讐に取りつかれた男のことなどさっさと忘れてしまった方がいいじゃないか」

 

「それは言葉で私を挑発しているつもりなの? だとしたら、そんなことは無意味よ? 約束したもの、この戦いを乗り越えたら、その時には自分たちだけでもう一度やり直そうって! 私は約束を絶対に守る。それがどれだけ不可能なことであったとしても、誓ったのだから、それを果たさなければいけないのよ!」

 

「心がけは素晴らしい。しかし、心がけだけでどうにかできない問題もあるよ。第一、君は私には勝てない。七星の力を表面上しか出せていない君の戦い方など怖れるに――おおっと!」

「誰が怖れるに足りないって?」

 

「ふふ、怖い怖い。まるで戦えば戦うだけ、どんどん感覚が研ぎ澄まされていくようじゃないか。本当にオカルティクス・ベリタスで別れた時とは別人のようだな」

 

 その理由、その原動力は言うまでもなくレイジだ。驚くべきことにターニャが灰狼を1人で抑えている間に、レイジは実験体402号と激突を続ける。

 

 まるでレイジの動きをなぞるかのように、実験体の少年も大剣を振り払い、レイジの大剣と真っ向から激突する。似通った武器をぶつけ合う者たちは、技巧で相手を圧倒すると言うよりも、その武器に込めた執念、あるいは怒りを力にして相手をねじ伏せる。そのような戦い方で決着を付けようとしているのが明らかだった。灰狼とターニャの戦いよりもかなり力押しに近いような戦いをしていることは明白だ。

 

「貴様がぁぁぁぁぁ、貴様が、貴様が、貴様がぁぁぁぁ!!」

「くっっ、身に覚えがないことで怒りをぶつけられたところで、何も響かないな! お前が俺に怒りを向けることは構わない。だが、俺は未だに理由が理解できない。お前は俺の何が気に食わない」

 

「………そんなもの、今更言うまでもないだろう。お前という存在の総てが恨めしい。俺から彼女を奪ったお前が恨めしい。俺が立つべきはずだった場所を奪ったお前が許せない。お前という存在そのものが彼女を不幸にさせる。なのに、なのに、なのに、なのに……、お前だけが何も知らずにのうのうと存在している。

 自分の復讐の旅が正しく、何一つとして間違っていないと信じている。お前のその無知蒙昧さこそが俺には許せない!!」

 

「相変わらず要領を得ないことばかりを口にしやがって……!!」

 

 少年が自分に憎悪を向けていることは分かったが、どうにもその憎悪の源泉が見えてこない。さながら、確信を突くのではなく、わざとその周辺を表現することでレイジを焦らしているのか、あるいはその謎を解くことまでも含めてお前に対しての復讐であると言わんばかりの態度である。

 

(こいつはおそらくだが、ターニャのことに執着している。俺が灰狼の下から、ターニャを連れ出したことに対して病的なまでの執着心を浮かべている。でも、ターニャはコイツのことを知らない。俺も知らない。俺とターニャの村にこんな奴はいなかった。だから、ターニャとコイツガ知り合いであるはずもない)

 

 レイジとターニャは幼馴染であり、同じ村の中で生きてきた。勿論、総ての交友関係を把握していたわけではないが、ターニャと親しかったものの記憶くらいはレイジも残っている。そこに彼の記憶は一切残っていない。あるいは、灰狼の実験場の中でターニャに出会い、身勝手な一目惚れでもしたのだろうか。であれば、自分たちが彼のことを知らない理由は明白となる。

 

「答えろ、お前は何故、そんなにもターニャに執着する! 彼女はお前の何だ!?」

「何であったのかなど分からない。だけど、彼女は俺にとって何よりも大事な人なんだッッ!! 彼女はお前の傍になんていちゃいけない。お前の傍にいることが彼女を不幸へと貶める。だから、お前は彼女には相応しくない」

 

 怒りのまま、吼えて叩き付けられる大剣を受け止めて、レイジはその激情を胸に刻み付ける。

 

「ああ、そうだな、俺のような復讐にしか興味のない人間は彼女には相応しくないさ。彼女は本来、復讐とか戦いとかそんなものに巻き込まれなくても良かったはずだから。だから、ああ、お前の言葉は正しいよ。俺のようなクズ星が彼女の隣にいることが正しくないという言葉、全くその通りだとも」

 

 ようやく口を開いた実験体の言葉、お前はターニャの隣に相応しい人間ではないという言葉に、レイジは激昂するでもなく、否定するでもなく肯定の言葉を向けた。

 

 ああ、だって、その通りだ。自分のような存在が、本来、花を咲かせた世界で生きるはずの彼女の隣に相応しいはずがない。世界に、人に滅びを与えることしかできない復讐鬼、復讐の果てに花を咲かせるなんて荒唐無稽な願いを持つ滑稽な道化、どのように思われたとしても、相応しくないという事実は誰よりもレイジが一番胸に刻み込んでいる。

 

 けれど、それがどれだけ正しかったとしても、ターニャを手放す選択は出来ない。ターニャにはもう自分しかいない。村の人間たちを全て殺され、そしてようやく少しずつでも未来に目を剥けようとしてくれているこの状況で自分たちからターニャを遠ざけることは、ターニャにとって深い心の傷を生み出すことになるだろう。それを認められない。それを許してはならない。

 

 だって、彼女をもう一度幸せにすることが出来なければ、地獄の先に花を咲かせるなんて言えるはずがないのだから、

 

「俺は諦めない。地獄の先に花を咲かせることができるんだって彼女に証明しなくちゃいけない。きっと俺が助け出すって、何もかも全部上手くいくって約束したんだ。だから、お前の憎しみがどれだけ正しかったとしても、お前にターニャを譲るつもりはない……!」

「違う、俺が言いたいことはそういうことじゃ――――」

 

「無駄よ、無駄無駄。どれだけ言葉を重ねたって平行線のまま、相手を排除するしかないのだったら本気でやりなさいよ。憎いんでしょう、この子が」

「なっ、ぐっ、がああああああああああ」

 

 瞬間、声が聞こえてくると同時にレイジの背中に衝撃と痛みが走る。それもそのはずだろう。レイジの背中は人知れず近づいてきた女によって切り裂かれ、その切り裂かれた傷口から鮮血が迸ったのだから。

 

「貴様、何奴――――ッ!」

「あらあら、我らを継いだ草原の王が誰だなんて悲しいことを言わないでほしいわね。あたしはジェルメ、我らが大ハーンの側近の1人よ、弟の方が有名になりすぎて、あたしは大したことのないようなもんだけどね」

 

『こやつ、アサシンのサーヴァントか』

「ぐっ……っっっ」

 

『まずいな、さっきの攻撃、完全に意識の外から行われただけにレイジも防御が出来なかった。傷は相当深いよ』

 

「ジュルメ、余計なことはするな……!」

「余計なことだなんて寂しいことを言うじゃないか、あんたがサッサと勝負を付けないからこうなるんだよ。獲物なんてのはいつだって早い者勝ちだ。呑気にべらべらと恨み言ばっかり口にしているあんたが悪いよ」

 

「っっ……!」

「ま、だからってあたしも鬼じゃないよ。最後のトドメくらいはあんたにさせてやるさ。さ、手傷を負って弱った奴ならあんただってあっさりと討ち取れるはずさ」

「言われなくても、そうするさ」

 

 ジュルメ、アサシンのサーヴァントであり、ジュベと同じく四駿に数えられる侵略王の側近の女はおそらく、実験体402号と呼ばれた少年の監視役兼世話役なのだろう。

 

 レイジを狙う理由など、いずれ侵略王の邪魔になるからに違いなく、最後のトドメを彼に任せる辺りに、自分の役目を忠実に果たそうとするきらいが良く見える。

 

「レイジ……やれるのか?」

「やるさ、逃げるわけにはいかない。ここには星灰狼もいる。立ち止まっているわけにはいかない。今度こそは奴を殺す。そして、ターニャを救うんだ」

 

「お前に彼女は救えない。お前の為すことは総て、彼女を追いこむだけだ。だから、潔く滅びろ。彼女を助けるのは俺がやる」

 

 最初に顔を合わせた時のような剥き出しの殺意ではなく、静かな殺意を燃やしながら実験体402号は目的を果たすために動く。

 

 手負いのレイジは退くつもりはない。しかし、その表情は青ざめ始めており、明らかに先ほど与えられた傷が深いことを示していた。

 

『植えつけられた七星の魔力を使って回復自体はしているはずだ。それでも隠すことが出来ないほどの傷、戦闘継続は間違いなく悪手だね』

「だが、この状況で撤退できるほどの余裕はない。何せ、撤退をしようとなれば、あれを何とかしなければなるまい」

 

 そう、この状況で撤退をするにはもう一つの懸念点があった。それは最初から予想していた懸念ではなく、後から乗じた懸念、すなわち戦力を見誤っていたと評するしかない問題である。

 

 それはライダー陣営、キャスター陣営との戦いではなく、マスターばかりが注目するアサシン陣営との戦いでこそ怒っていた。

 

「あはは、あっはははははははは、いいわ、楽しいわ。何にも気にせず踊り続けるなんて、なんて素晴らしいんでしょう。マスター、マスター、貴女と一緒に来れて本当にフラウは幸せよ。だって、だって、私、ずっと願っていたんですもの。自分のやりたいように踊りたい。踊り明かしたいって、あっはははははは」

 

 それは一言で表現すれば死の舞踏である。踊り続ければ踊り続けるほどに腐食していく世界、彼女という存在そのものが人間にとっての害悪であり、存在そのものが世界にとっての毒であることが認定されてしまったからこそ、彼女は概念として滅びの化身となってしまった。本来であれば、人間にだけ有効であったはずの彼女の毒はいつからか、概念として世界そのものを侵食する毒へと変わったのだ。

 

 これまではずっと抑えつけられていた。しかし、七星散華の命令に従う形で彼女はその抑えを解き放った。

 

「うっ……くぅ………」

「これ、腐食だけじゃない。気分が悪い、吐き気とか倦怠感とかそういうのがあの撒き散らしている空間から漂ってきて……」

「サーヴァントにも、影響が出ています。なんという毒、これほどの毒が……」

 

 桜子とルシア、そしてサーヴァントであるランサーまでもがその撒き散らしている瘴気によって、思わず吐き気を覚える。身体中が倦怠感を覚え、毒への耐性を魔力によって持ち合わせているはずの彼女たちでさえも眩暈や身体の痛みすらも覚えるほどの瘴気、それを身体の中に抱えているなど、まともな人間であるはずがない。

 

「誤解、していました。彼女の腐食能力は、それ単体で成立する能力ではなく……、あの体の中を構成している毒素そのものが触れたことによってその対象の身体の中に入って、いたから……」

 

 触れたことで相手を腐食させるのは、自分の身体の中にある毒素を接触感染することによって、相手の身体が毒素に耐えきることが出来ずに崩壊をしていたからであると仮定すれば、これほどの広範囲に一気に広がっていく毒素を放出することができる存在も理解できる。

 

 間違いなく人間ではない、人間はこれほどの毒素に塗れて生きていくことができない。であれば、神話の存在、あるいは…あるいは……、

 

「感染症の化身……」

 

 ポツリとルシアが呟く。

 

「なんだか、胸のどこかで引っかかっていたんだけど、ようやく思い出したわ。そのストローハット、少女の姿をしている存在、これでも聖職者だからね、伝説だろうとなんだろうとそういう話は耳にしたことがあるよ。

 かつて、中世の時代に欧州で猛威をふるった黒死病、まだ感染症なんて概念がない時に、人々はそれを1人の魔女の仕業だと断定した」

 

 病とは悪魔に魅入られた魔女によってもたらされるモノ、神の恩恵すらも届かない、生まれてきてはならなかったものによって、世界にもたらされるという考えこそが十字教世界を席巻した時にそれは生まれた。

 

 その魔女は 空を飛び、青い炎に身を包んで疫病を広め、人々を殺していった。その魔女の名は―――

 

「―――ペスト・ユングフラウ、黒死病の化身、それこそがアンタの正体だ、アサシン!」

 

「あっはははははは、お姉様、お姉様、フラウの名前を知っているのね。知っているのね、なら踊りましょう、踊りましょう。この蒼い炎が燃え盛り続ける限り、フラウと踊り続けましょう!」

 

 彼女はルシアの言葉を肯定し、世界に毒が巻き散らかされていく。ここまであえて抑えつけられてきた力はここに来て、遂にその発露を止めることはない。

 

「私のフラウを舐めないでください。小手先の策で私達を打倒することなど出来ませんよ?」

 




七星側はこれで総てのサーヴァントの真名判明かな?

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