Fate/Stardust Vendetta―星屑の復讐僤――   作:ソクリ

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第24話「Last Stardust」①

――王都ルプス・コローナ・正門前――

 その女を一目見た時のことを、いまだにスブタイは忘れることができない。数多のモンゴル高原を駆ける戦士を見てきた。彼らは皆、一様に強大であり、共に切磋琢磨をする仲間たちであった。

 

 そこに大陸から渡ってきた者たちが現れる。彼らは自分たちが戦に負けた者たちであると語った。後に侵略王となる男、テムジンは彼らを迎え入れた。敗北者であったとしても島国よりこちらの大陸にまで流れてきた者たちを迎え入れない道理はない。

 

 自分たちの新たな同胞として、自分たちの新たな戦力として彼らを迎え入れたことに何ら思惑があったわけではないのだ。

 

 だが、すぐにテムジンたちは自分たちがとんでもない存在を拾い上げてしまったことを知る。流れてきた暗殺一族七星、その中に潜んでいた恐るべき才覚、七星桜華の存在を知ることによって。

 

 スブタイはその時のことを良く覚えている。テムジンたちの軍団の中でも負けなしで知られていたスブタイがあっさりと土を付けられた。柔い女の細腕でありながら、これまでにスブタイが鍛え上げてきたあらゆる技がその女には通用しなかったのだ。

 

 理解できた者はいないだろう。いったいこの女は何者なのだと、誰もが理解に苦しんだ。しかし、幸運なことに彼女は拾い上げてきたテムジンの軍団の傘下に入ることを拒絶しなかった。

 

 七星桜雅と七星桜華、そして暗殺一族七星の残党たち、彼らを吸収したことによって、イェケ・モンゴル・ウルスはさらなる躍進を続けていくことになる。勿論、桜華という圧倒的な戦力が加入したからと言って、それで戦の趨勢が変わるなどと言う馬鹿げたことは起こりはしない。

 

 ただ、勢いづいたのは間違いない話である。圧倒的な力を誇る女傑、間違いなく歴代の七星の中でもっとも血と才覚に愛された女、時代は違えど、ロイ・エーデルフェルト同様に魔術の世界にその名を刻むべき逸材であったことは誰もが認める事実であった。

 

 故にこそスブタイは七星桜華がこの聖杯戦争で目覚めた時点で既に勝負は決したものであると考えていた。如何に遠坂桜子が強かったとしても、桜華には及ばない。この聖杯戦争に参加したマスターの中で桜華を越えるほどの実力を持つ者はいない。

 

 もしも、そんな存在がいれば、1人でこの聖杯戦争の趨勢をひっくり返すことができるはずだ。だからいない。星灰狼の最大の矛が覚醒を果たした時点で余計なことを考える余地などどこにも残ってはいなかったのだ。

 

「……ありえない」

「いいえ、ありえます。私のマスターは、遠坂桜子は勝つつもりでこの戦場に臨んでいますから!!」

 

 七星桜華へと一閃を与えた。加えて、いまだに戦線を維持し続けている。無論、スブタイとてアステロパイオスを相手に敗北する気持ちなど微塵もない。だが、桜華の実力を知っている者であれば誰もが目を疑うだろう。ありえない、そんなことはと。

 

 対して、アステロパイオスは平常心のまま、むしろ、自分の主を誇らしいとすら思って双槍に込める力をさらに強めていく。

 

『マスター、私は貴女のように愛する人と添い遂げることは出来なかった。何をどう見繕っても、私は愛する人と戦うことを選び、そして討ち取られました。それは英霊になってからも抱く未練です。叶えたいと思っているわけではないのです。終わってしまった話ですから。それでも、未練は残る。だから、私は貴女にはそうなってほしくはない。

 私の願いは、貴女が無事に愛する者の下へと帰ること、どうか、私の夢を貴女に託させてほしい。身勝手な願いではありますが、それが私の願いなのです』

 

 自分の夢を託した相手は、今もなお輝きを放っている。如何に絶大な敵であったとしても、その胸に燻る未来への希望がある限り、戦っていける。

 

 だったら、自分が負けるわけにはいかない。英霊としてスブタイに決着の刃を放つ。

 

「私はこの戦いの先に私の夢を叶えることができる。それを阻ませはしない」

「奇遇だな、私も夢を叶える瀬戸際に来ている。この夢を手放すつもりはない!」

「ならば、互いのマスターに恥じない戦いで決着をつけるしかないッ!」

 

 再びの激突、サーヴァント同士の戦いも苛烈さを余計に増していく中で、桜子と桜華は共に急激な成長を果たしていく。武術における最も成長要素を高めてくれるのは、切磋琢磨することができる敵手の存在である。

 

 桜子と桜華は共に成長の方向性は違えども、死線を潜りながら戦う中で急激に力を増している。積極的な攻撃に出ているのは桜華であり、桜子はほとんどが防戦一方である。

 

 しかし、桜子の攻撃の数が徐々に、徐々にではあるが増えてきている。桜華の隙を拭うように時折放たれる桜華の反応速度すらも上回る、発動から攻撃までの間が一瞬すらあるかもわからない視線誘導による魔術斬撃、それこそ、桜子の思考を完全に読み取らない限り、絶対に反応することができない攻撃を相手に、桜華も冷や汗を覚える。

 

「ここまで、ここまでやってくれるだなんて、素晴らしいわ、桜子!」

 

「私は全然素晴らしくなんてない。こんな力、別に欲しかったわけじゃない。七星の力によって救われたことはあった。七星の力が無かったら、このセプテムで出会った人たちと出会うこともなかった。感謝はしているよ、でも、私は欲しかったわけじゃない。私は、ただ、私の人生を当たり前に生きたいだけなんだから」

 

「そんなの勿体ないわ、貴女は私にも比肩しうるだけの存在、この時代で覇を握ることだってできるだけの才覚を持っている。そんな人間が人並みの幸せを掴むなんて馬鹿げている。自分の生きる意味を捨てているにも等しいのよ!」

 

「私の生きる意味は私が決める。貴女に指図される謂れはないわ。私は、歴史に名を残すような誰かになんてなれなくていい。閃光のように煌びやかな英霊のようになんてなれなくてもいい。私はただ愛する人と大切な家族とありふれた平凡な日々を生きることが出来ればいいの、私はそれで満たされるの!! 世界に与えられた役割なんて知ったことか!」

 

「まったく、戦がない時代と言うのも考え物ね、あなたほどの傑物に才能を無駄に称させるだけの発想しか与えることができないなんて、本当に宝の持ち腐れよ?」

 

 桜華は会話をしながらでもいまだに余裕がある、対して桜子の消耗は時間を経るごとに大きくなっていく。どうしようもないほどに敵手は強く、対峙しているだけでも精神力の消耗は相当だ。散華との戦いで七星の血を完全に開放していなかったら、ここまで耐えきることなど不可能であったことは間違いない。

 

(戦えてはいる、でも逆に言ってしまえば戦えているだけでもある。勝利を望むのなら、今、ふわふわと掴めているのかもわからない私の力を完全にするしかない)

 

 恐らくの感覚ではあるが、もしも、この力を完全に自分のモノにすることが出来たのならば、おそらく勝負はそう長くはかからない。僅かな一瞬の必殺をどちらが先に手に入れるのかの戦い、桜子が辿り着くことが出来なければ、当然ではあるが、桜華が先に辿り着くだけのこと、そうした時にはもはや手の内ようもなく桜子は敗北するだけである。

 

 まったくもっての理不尽だが、まぁ、戦闘などと言うのはそういうものだ。如何に相手をうまく倒すことができるのかに全てが掛かっている。ここで桜華を相手取ることを決めたことに異論はない。結局のところは誰かが戦わなければならず、そして役目を果たせるのが自分以外にいなかったというだけのことだ。

 

(想うことは色々あるけれど、仕方ないよね。これが私たち七星の運命なんだから)

 

 このセプテムに来て、大陸に渡った七星と戦うことが分かった時から、どこかで自分も避けることができない戦いへと踏み込むことになるだろうという予感は覚えていた。それが散華との戦いであると思っていたが、実際には七星桜華との戦いこそが、桜子にとって、絶対に避けることのできない戦いであったと言えるだろう。

 

 この宿命を乗り越えない限り、アフラ・マズダの下へと辿り着くことはできない。それだけではなく、勝たなければ、侵略王の軍勢がこの世界を蹂躙する可能性だってあり得る。それは嫌だ、認めたくない。だって、桜子はこの世界のことが好きなのだから。滅んでほしいなんて思えるはずがない。

 

(それはきっと、君も同じでしょうレイジ君。何もかもがなかったとしても、原動力が復讐であったとしても、君はこの世界を守るために戦っている。リーゼリット様の闘う理由を肯定した。そこに答えがあるはずなんだって、私は信じているから……!)

 

 信じている、自分たちは絶対にこの状況を乗り越えることができるのだと。しかし、現実はそこまで甘くはない。どれだけ願いを込めたところで、実際には何もかもが無力であるということは起こりえる。強いものが当たり前に強い。弱者がどれだけ必死になったところで強者には及ばない。持たざる者は燃える者に勝利することはできない。

 

 それこそがこの世界の摂理、それを覆すために此処まで戦ってきた。レイジ・オブ・ダストの身体は限界だ、限界が近い。燃やし尽くす事の出来る魂の総量そのものが少なくなっている。止まればそこで意識ごと消えてなくなってしまいそうな感覚だった。

 

「っっ……まだ、まだだッ!!」

「ああ、まだ戦えるね。それで? 俺の槍術にまったく対応できていない。適当にあしらうだけでも十分だ。リーゼリットの力を共有しても尚、これとは、どうやら、カシムとの戦いで使い果たしてしまったみたいだな。愚かしいよ、桜華の戦いを見れば、カシムも自分が如何に悲しい夢を見ているかを知っただろうに。そんな相手に対して、お前は俺に対抗しうる力を使い潰してしまったんだ」

 

 カシムが目指した最強など桜華を例に出せば、あっさりと崩れる程度のモノでしかない。もしも、カシムが翻意を示すようであれば、桜華をぶつければいいと思っていた程度には、灰狼にとってはカシムもその程度の間柄でしかなかった。自分たちの友情が崩れなかったことに関してだけは、レイジに感謝をするべきだろうと場違いな感謝をしている辺りに、灰狼の自分と桜華、そして侵略王たち身内以外への冷酷さが現れている。

 

「リーゼリット女王、君は最後まで付くべき相手を間違えたね。くだらない倫理観に囚われて、道を踏み外してしまった。七星としての君には栄光が約束されていたというのに、それとも、まだ戦えと彼に命令するのかい? このような死に体に?」

「…………」

 

「逃げてもいいさ。サーヴァントを手放してくれるのならね。リーゼリット女王、君が我々の都合のいい操り人形になってくれるのなら、彼一人くらい逃がしてやってもいい。十分死に体だが、数日間は寿命を延ばすこともできるだろう。どうだい、結果の見えている戦いをさせる必要もないだろう?」

「貴方は……そうやって、自分が慈悲を与えているとでも思っているんだね?」

 

「実際に慈悲に違いないだろう。このまま戦えば彼は死ぬ。死なせないようにすると言っているんだ。何を不思議がることがある?」

「そうだね、それは優しさかもしれない。でも、変わらない、あなたがこれまでにやってきた魂の陵辱と何も変わらない。レイジ君に死ぬよりも苦しい罰を与えることになる。私はもう嫌なの! レイジ君は勝つわ、それを私が信じられないでどうするの!」

 

「愚かだね、君は最後まで愚かな女だった。結局のところは好意を持った男を信じたいというだけのセンチメンタリズムだ。愚かな男と愚かな女、俺は桜華のように戦闘に美学を見出してはいない。目的を達成するための最短ルートを進むことができるのならば相手などどうでもいいと思っているからね。そういう訳で、王よ。こちらは先に終わらせてしまいますよ」

 

「逸るな、灰狼よ。何、こちらも終わるとも。さして難しい話ではなかった 十全な魔力供給が与えられる余と、半端なそなた、もはや前提の時点でどちらが勝っているのかは決まっておったのだ」

「まだ、終わったわけではあるまい……!」

 

 威風堂々とアヴェンジャーの前に立ち尽くする侵略王、その身体には幾何かの裂傷傷が刻まれている。しかし、致命傷に至るダメージを与えられておらず、ライダーには切り札であるイェケ・モンゴル・ウルスを召喚する固有結界すらも備わっている。

 

 アヴェンジャーの勝ち筋は唯一、グーリーアミールによるダメージの反射であるが、それを召喚するだけの余裕をこの侵略王が与えてくれるはずもない。一対一の戦闘を強いられた時点で実の所、アヴェンジャーに勝ちの目は全くなかった。

 

「それが草原の王と一度は呼ばれた者の姿か。憐れだな、それではお前を信じてついてきた者たちも救われなかろう。敗北をその身に刻まれる経験は余もしている。そこに理解は示すとも、しかし、それは最後に勝つからこそ意味が生まれる。途中で果てるのであればそれは只の徒労だ。アヴェンジャーよ、今の貴様のようにな」

 

「………我は、己の非運を嘆いた」

「………」

 

「一代で帝国を築いた。偉大なるハーンよ、我は規模こそ違えど、貴殿と同じことをしたのだ。だが、我はハーンになることは出来なかった。貴殿が生み出した帝国は貴殿の血を引いていなければハーンを名乗ることは出来ぬと告げた。笑ったとも、生まれたその瞬間から、我は望む者を手にすることもできない、同じ所業を為し遂げながらも、劣化品でしかないという扱いを受けたのだ」

 

 英雄チンギス・ハーンの生み出した大帝国を乗り越えるには、人間の人生はあまりにも短く、そしてティムール亡き後のティムール帝国はあまりにもあっさりと崩壊を迎えた。内部分裂を繰り返しながらも数百年生きながらえたモンゴル帝国とはあまりにも差が開け過ぎている。

 

「我だけではない。復讐に人生を捧げながらも、祖国に裏切られ、勝利を手放すことになったハンニバル、人の悪意によって主を見捨て、汚名と後悔を座に登録されても抱き続ける他なくなったユダ、我らはみなすべて、人生という戦いの敗北者であった。

 決して満たされぬ、決して救われぬ、無意味であったと罵られる道を歩んできた者たちであった。二度目の生で再び覇道をと声を荒げる貴殿が、我は心底羨ましいと思えた」

「命乞いか? それとも泣き言か?」

 

「――――否ッ!! そのような愚かしさを抱えた我らに主は、レイジ・オブ・ダストは道を示した。無意味であろうとも、無価値であろうとも、誰でなかったとしても、己の裡にあった願いに殉じることの意味を、誰よりも無力で小さき、あの男が示したのだ!!

 だから――――我らは此処まで来ることが出来た!! 誰も彼もが彼を失敗作であると取るに足らない星屑であると蔑んできた。見る目がない、曇っていると言わざるを得ない!

 無明の荒野に投げ出された男が、自分の胸の光だけで進むことの困難を、残酷さを理解できぬからこその浅慮であると理解しろッッ!!」

 

 ティムールは吼える、自分たちが未だにどうして戦っているのかをはっきりと声で吐き出す。最初は呼び出されただけの関係であった。復讐者であったとしても、自分たちが彼に従う理由などないと思っていた。

 

 しかし、旅を続け、レイジの姿を見るたびに、裡に浮かんでくる心に宿る熱いもの、いつかの時代に置き忘れてきてしまった炎が、燻っているのを理解できた。

 

 ああ、だからこそだろう。無価値なのだ、無意味なのだ。どれ程戦った所で、報われないことなど自分たちが一番よく分かっている。聖杯は手に入らない。自分たちの願いはかなわない。かつての生前同様の絶望がこの先に待っているのだ。

 

しかし、それがどうしたッ

 

「無価値で結構、無意味で十分、それでも我らは戦い続ける。レイジ・オブ・ダストが走り続ける限り、我らは、我らだけは共に無明の荒野を駆け抜ける!!

 理解されなくて構わん、これは我らだけの問題だ。救われたのだ、その恩に報いているだけに過ぎんのだから!!」

 

 例え、生前と同じ無意味を味わうことになったとしてもここまで駆け抜けてきたことに意味があった。レイジの道に終わりを与えるために、たった一つの救いを与えるために、戦っているのだ。

 

 どんな言葉を向けられようともアヴェンジャーは止まらない。聖杯戦争の趨勢とてどうでもいい。復讐の刃を完遂させる。それだけが彼らに与えられた終着点である。

 

「見事だ、生前の立場などかなぐり捨てて、主のために全身全霊を吐きだすその気概、貴様を愚かと嘲笑ったことを余は謝罪しよう。無価値などではない、駆け抜け続けた先に待つ光を求め続け、ついぞ手に入らなかったその嘆きは余もその身に覚えているとも。

 されど、貴様に手を差し伸べることは、無礼極まりない。同じ夢を追いかけた者として、葬ろう」

 

「まだ、終わったなどと思ってくれるな、侵略王……!!簡単に終わるなどと思ってくれるな、貴様たちが侵略してきた国々の総てがお前たちに屈服したのだとしても、我らは最後まで抵抗する。同じように潰すことができるのか、試してみるがいい!!」

 

 劣勢であることなど百も承知、レイジと自分たち、どちらが先に命を終えるのかの競争であろうか。ならば、必死に駆けて主に発破をかけようではないか。我慢比べには自信があろう。元より自分たちが劣っていることなど百も承知なのだ。その上で挑戦をしている。この場の誰もがそうだ、挑戦者として勝者になるべくして戦ってきた者たちへと挑戦をしている。

 

「いいだろう。戦士には戦士の礼を尽くさなければならない。余はこれより世界に向けての覇を唱える。モンゴル高原に覇を唱えた者たちに脆弱な者など誰一人としていなかったということを胸に、世界へとこの足を延ばそうではないか」

 

 侵略王の戟が振り上げられる、ティムールも偃月刀を手に抵抗の意思を見せるが、侵略王は次でティムールの偃月刀を完全に破壊できると確信している。

 

 同様に灰狼も槍を構えて、レイジへと手向けの一撃を放たんとする。思えば長い因縁であったが終わる時と言うのは存外あっさりしているものだなと灰狼は思う。

 

 主従共に、決着の一撃を放たんとするその刹那に――――

 

『ふん、ティムールの奴に言いたいことを全て言われてしまったな』

『ああ、そうだね。しかし、それならそれで手間が省けたというものさ。僕たちは僕たちにしかできないことをすればいい』

 

 アヴェンジャーの中にいる二人、ハンニバルとユダが反応し、声を上げる。レイジの決定も、ティムールへの提案もすることなく、彼らは当たり前のように自分の宝具の使用を行う。

 

『行くぞ――『雷鳴が如く―――不滅の進軍(カルタゴス・ハンニバル・バルカ)』』

『『裏切りの銀貨三十枚(イーシュ・カリッヨート)』、ようやく狙っていたことができるね』

 

「お前たち、何を――――」

 

 ティムールの驚きの声を無視するように能力が発動し、ティムールとレイジの身体を発動した宝具の力が包みこんでいく。

 

「ぬぅぅぅぅ」

 

 同時に攻撃を放とうとした侵略王の身体が馬ごと吹き飛ばされる。まるで、この力の発動を邪魔する者は誰一人として許さないとばかりの反応であった。

 

 そして、包み込んだ光によって、レイジとティムールの身体が急速に癒されていく。言うまでもなくその力はハンニバルの宝具、これまでに与えられてきたダメージを踏み倒して、力を回復する能力に他ならない。

 

 しかし、アーチャーとの戦いでもその恩恵に授かったアヴェンジャーであるからこそ、分かる。これは違う。あの時の宝具の効力とは全く異なる何かの力が自分たちを覆っているのだと。

 

「何を、した……お前たち!?」

 

 その異変はレイジも感じ取っていた。アヴェンジャー以上にレイジにとっては痛感できるものである、何せ、自分の身体を蝕んでいる命の灯が消えかかっている感覚が抜けていく。むしろ、身体の中に魔力が充てんされていき、糸が途切れればそのまま動けなくなってしまいそうだったレイジの身体に力が戻ってくるような感覚であった。

 

『本当は、君の身体を修復して、後は好きなように生かしてあげるという選択肢もあった。ただ、君はそれを認めようとしないだろう。だから、少しだけ、僕も逆転させる法理を変えた。君の寿命は相変わらず変わらない。きっと、この戦いが終わった時には何も残らないだろうね。ただ、この瞬間、この時だけは、君の身体とキミの心、その総てを完璧な状態、いいや、君の持てる力の総てを最大限発揮できるように書き換えた』

 

 ユダの宝具は、絶大な力を発揮する事象の書き換え、力を発揮する回数が少ない代わりにその能力は絶大、かつて、侵略王の攻撃から逃れ、潜伏期間を得ることが出来たように、その力の範囲が限定的であればあるほど、及ぶ影響が小さければ小さいほどに、理不尽な願いであってもそれを貫き通すだけの力がある。

 

 たった一人の人間の力への影響、世界にかすり傷も残せないほどの変容を行うことはユダからすれば造作もない。そこにハンニバルの力が加わる、身体能力と精神的能力の回復、レイジとティムールに対して行われている力は、その重ね掛けであり、レイジが定められた末路へと突き進むことを許容したうえでユダとハンニバルが出した結論であった。

 

 たとえ、何も残せなかったとしても、自分たちの定めた末路に突き進むこと、ティムールが叫んだことは、二人にとっても同意できる内容であった。

 

 レイジ・オブ・ダストが自分たちのマスターで良かったと思っているのはティムールだけではない。彼らもまた、愚直に。真摯に末路を理解しても尚、自分の願いに殉じようとするその在り方に救われていたのだ。

 

『馬鹿なことをするもんだと思うが、まぁ、儂らも大して人のことは言えんからの。それは正しいんだと思っているのなら、それを貫き通せばいい。英雄として召喚されて、自分の身体もないもんではあったが、それはそれとして楽しめたがな』

 

『僕はもう二度と主を裏切るようなことはしたくない。それが君の望みであるならば、どれだけ愚かであったとしても、それを貫けばいいよ。これは僕たちから君たちへと送る最後の力であり、僕たちの総意だ。あとは―――君たちがやり通せ』

 

 瞬間、アヴェンジャーの身体の中から、ハンニバルとユダの気配が薄れていく。この宝具の力を使ったことで自分たちの力の総てを出し尽くしたかのように、彼らはこの結末すらも理解したうえで、力を使ったのかと思うほどに。

 

「お前たち――――」

 

『儂のような大英雄をいつまでも中に抱えておったら、身体が重くて仕方なかったであろう。後はお前の好きにやれ、ティムール。お前が勝とうとしていた相手だろう。お前が勝たずしてどうする?』

 

『どうせ、この瞬間が最後なんだ、なら、総てを出し尽くせ。この戦いが僕たちがここまで歩んできた戦いの集大成なら、勝てるに決まっているさ。だって、僕たちは何度だって、勝てないと言われてきた戦いを覆してきたじゃないか……』

 

 願わくば、最後まで見届けたい。その気持ちはハンニバルとユダも抱いているが、それで全員が共倒れになるような結末を彼らは望んでいない。

 

 自分たちが志半ばで途絶えたからこそ、報われて欲しいという気持ちはある。願いはかなえられずとも、ここまで歩んできた時間の総てが無駄になるわけではない。

 

『だから、勝ってこい、レイジ、ティムール』

『地獄の先に花を咲かせるんだろう?』

 

 大層な別れの言葉や涙なんてものは必要ない。彼らはそんなものは望んでいない。ただ、自分たちが突き進んできた道のりの終着点に辿り着ければいい。それができれば満足なのだと思い、そして、その身がアヴェンジャーとしての霊器から消失していく。

 

 ――此度は中座されるようなことはなかった。むしろ、最後に背を押すことが出来た。

 

 ――此度は誰かを裏切るようなことにならなかった。むしろ、最後に自分が満足できた。

 

 だから、これでいいのだと彼らはその身体を消失していく。レイジとティムールの肉体の完全なる調整と引き換えにして、その身を消失させていく。

 

 最後の鍵は託された――――その光の導くままに、レイジは自分の意識の中へとこの瞬間に没入した。

 

 それは彼の記憶の中、いいや、レイジ・オブ・ダストと言う存在の記憶ではない。この肉体との本来の持ち主、リーゼリットを救い、彼女に道を示した結果として命を奪われることになった少年の記憶、その記憶が流れる精神世界の中で自我を持ち、その記憶の映像を見るレイジの目の前に彼は姿を見せた。

 

 レイジと全く同じ姿の少年、しかし、どこかレイジよりも毅然とした様子を浮かべている少年、それがこの身体の真の持ち主であり、これまでに何度もレイジの求めに応じて力を与えてきた少年であることをレイジはすぐに理解した。

 

「やっと、会えたな」

「ああ、互いに互いのことを理解していても、俺達は出会うことは出来なかった。お前は俺であり、俺はお前だ。同じように溶け込んでいたものが綺麗に分かれることはできない。これはこの瞬間、この場でだけの奇跡、お前の仲間が与えてくれた唯一無二の機会だろう」

 

「………すまなかった」

「どうして謝る」

 

「知らなかったとはいえ、お前の身体を勝手に使った。何にしてもお前の手を血に穢れさせた。たとえ、お前の命が尽きていたとしても、俺はお前の骸を動かして名誉を傷つけたに等しい。どんな事情があったにしても、それは許されることじゃない」

「結構律儀なんだな」

 

「自分の気持ちに嘘はつきたくない。何もかもが空っぽだからこそ、自分にすらも嘘をついてしまったら、もう俺は自分という者が分からなくなってしまう」

 

「謝る必要はない。お前はお前の出来ることをやってきた。ずっとこの身体の中から意識だけで見てきた。七星の血に混ざりあう形で残っていた俺の意識が、お前に力を貸してきたのは、俺はお前を認めていたからだ。勿論、私怨もある。お前の復讐の戦いを見守っていた理由は義憤からだけじゃない。だけど、ようやくここまで来た」

 

「ああ、あと少しだ。あと少しで俺達の戦いは終わる。だから、あと少しだけ、お前の身体を使わせてくれ」

 

 肉体が完全な回復をしたとしても、それは急速なドーピングだ。ユダは口にした、長く生き残る為の方法を捨てて、この瞬間に総てを捧げるための力を与えたと。それはすなわち、この瞬間を過ぎればすべてが終わるということであるとレイジも理解していた。

 

「――――レイジ・オブ・ダスト」

 

 少年は、自分と彼を区別するように彼の名前を口にした。

 

「彼女を生かしてくれて感謝する。その復讐に正当性があっても、意味があっても、俺はそれだけは肯定することが出来なかった」

 

 あの時に、リゼの命を奪おうとした時に、レイジの身体が止まった瞬間、この身体が拒絶反応を浮かべた。その意味をレイジはやはりかと理解する。

 

「お前は彼女に生きろと言ってくれた。世界を変えるために生き残れと。俺も同じ気持ちだ。彼女なら変えられるとあの日に信じた。足掻いても苦しんでも、それでも、今、お前の隣に彼女がいてくれることこそが、俺が、いいや、俺達が間違っていなかったことの証明になる。好きに使え。彼女のことをよろしく――――」

 

「馬鹿を言え、お前も来い」

 

 言うべきことを言い終えた。あとはレイジに総てを託してまた、七星の血の中へと埋没しようとする少年の手を精神世界の中でレイジが掴む。逃がさないという意志を明確にして。

 

「俺はリーゼリットのことなんて知らない。アイツが求めていたのはお前だろう。だったら、そこから逃げるな。どんなに苦しくても、辛くても、あいつは、402号はそこから逃げなかった。だから、お前もそうだ、一緒に行くぞ!」

 

 本当の意味で求められているのは自分ではないことをレイジは理解している。それでも、彼の意識がない以上、自分が戦う他ないと思っていた。けれど、今、この瞬間に掴んだ手に意味があるのならば、捨ててはならないと思ったのだ。この繋がりもまた自分のサーヴァントが生み出してくれたのであるとすれば、絶対に手放してはならないと思うのだ。

 

 そして、少年にとってもそれは決して悪い話でないことは間違いない。もう二度と言葉を交わす事も出来ないのだと思っていた彼女と、もう一度言葉を交わすことができる時が来るのだとすれば、それは奇跡だからこそ許される事象であると言えよう。

 

「ああ、分かったよ」

「―――行こう、俺達の総てに決着をつけるために!!」

 

 そうして、つかの間の精神世界での邂逅は終わりを迎える。自分たちに交すべき言葉はもうない。後総て戦いの中で発露すればいいのだと信じて。

 

「アヴェンジャー、令呪を以て命じる! 総てを出し尽くせ!! これが俺達の最後の戦いだ!!」

「―――応!!」

 

 精神世界より帰還してすぐに、レイジの掌に刻み込まれた令呪総てが光を灯し、アヴェンジャーへと魔力が流しこまれていく。これまで三体のサーヴァントを維持するために使われていた魔力の総てが今や、ティムールの身体へと流し込まれ、魔力は万全の状態で動いている。

 

 故にこそ使える。レイジより流し込まれた魔力によって、周囲の世界が変質していく。

 

「くく、そうか、そうか。そうであったな、当然だ、貴様も草原の王を名乗るのであれば、仕えて当然だ。我らは共に世界を蹂躙する覇者なのだから!!」

 

「我が身は覇軍の総税、あらゆるものを滅ぼし、あらゆるものを蹂躙し、草原に覇を唱えし者、しかしてこの身は王にはなれず、従えるは屍の軍勢、されど、この軍勢こそが我らの証――――、王非ざる身にして王たらんと、今、ここに我らは逆襲せん!!

第一宝具展開―――『災禍及ぼす白の軍(ティムーリ・ラング)』!!」

 

そこに姿を見せたのはおぞましいほどの屍の軍勢であった。次々と浮かび上がってくる戦に総てを費やし、そして最後には塵も残らなかった者たち、歴史の勝者でありながら、真の光になれなかった者たちの成れの果てがここに顕現していく。

 

それは軍勢、それは固有結界、ティムールの空虚な心象風景の象徴であり、彼が王であったことの何よりも証明である。

 

「我が蹂躙は世界への牙の突きたて、我らは生きるために進軍し、我らは世界に覇を唱える。それはすなわち、己の生存権を拡大するために、欲し、願い、そして手にする。

 さぁ、同胞たちよ、余と共に来るがいい。あの日の誓いを果たすために、あの日の先へと駆けるために!! 我らは此処に再び、世界へと挑戦する!!

 第二宝具『蹂躙せよ、覇を唱えし草原の狼たち(イェケ・モンゴル・ウルス)!!』」

 

 呼応するように、侵略王もまた宝具を展開する。彼にとっての圧倒的な王としての軍勢、ランサーを敗北に追い込んだ侵略王の真の宝具が重ねあわせのように展開していく。

 

「我らは共に覇者、であれば、このような方法でしか優劣をつけるしか出来まい。戦争だ、侵略王。この戦の果てにこそ、聖杯戦争の勝者が決まると知れ」

 

「昂る、昂って来るぞ、アヴェンジャー、ティムールよ、やはり貴様は草原の雄だ。盛り上げ方と言う者を良く熟知している。そうでなければならん、こうでなければならん。そうだ、そうだ、これこそが、我らが求めた闘争である。一秒とて待つことは出来ん。さぁ、始めるぞ、我らが友たちよ!!」

 

 回線の合図など鳴らす必要もなく、侵略王の号令と共に戦乱が始まりを迎える。最早灰狼の言葉すらも聞こえていないのではないかと思うほどの熱気に充てられて、草原の王である者たち二人の激突が始まりを迎える。

 

「そうだ、お前はそれでいい。勝てよ、アヴェンジャー、俺も絶対に勝つから」

「アヴェンジャーの宝具で何をしたのかは知らないが、今更お前の結末が覆るようなことはないぞ、体力を回復したところで、お前に何が―――――ぐぅぅッ!」

「星灰狼、俺には時間がない。決着を付けよう。俺の総てを使って、お前を倒す」

 

 灰狼がレイジへと言葉を口にしている間に、蛇腹剣の刃が灰狼の身体を切り裂く。油断をしていたわけではない。だが、灰狼の反応よりも早くレイジは攻撃を放ち、そして、灰狼は目を見開いた。レイジのスペックは知り尽くしている。例え、どんな奇跡が起こったとしても自分が負ける可能性など万に一つもないというのに、何かうすら寒いものを感じてしまう。

 

 何か理解できない何かがレイジの身体の中に渦巻いているようで……

 

「レイジ君……?」

 

 その変化はリゼも当然に感じ取っていた。何かこれまでのレイジではない何かを彼が持ち合わせてしまったことに、その変化の意味を感じ取ることが出来ずに困惑するリゼに――

 

「大丈夫だ、きっと上手くいく」

「―――――――」

 

 その言葉だけでリゼには理解できた。それはかつてあの夕暮れを前にして少年がリゼへと言い放った言葉、決して忘れることのなかった情景が一気にリゼの中に浮かび上がってくる。

 

「本当に、キミ、なの?」

「ああ、随分と時間が経ってしまったが、まぁ、そういうことだ。今度は一緒に戦ってくれるんだろう。もう、守られるだけの自分じゃないんだろ?」

「………うん!」

 

 証明なんて何一つなかったとしても、その言葉だけで信じることができる。それだけの意味がある。さぁ、最後の決戦だ。役者は揃った。

 

「これが最後の戦い、俺達が放つ星屑の怒りだ!!」

 




【CLASS】アヴェンジャー

【マスター】レイジ・オブ・ダスト

【真名】ティムール/ハンニバル・バルカ/イスカリオテのユダ

【性別】男性

【身長・体重】170cm・59kg

【属性】秩序・中庸/混沌・中庸/秩序・悪

【ステータス】

 筋力C 耐久C 敏捷B

 魔力C 幸運B 宝具B

【クラス別スキル】

復讐者:A
復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:C
 復讐者の存在を忘れ去った者に痛烈な打撃を与える。
 アヴェンジャーの存在を感知していない相手に対しての攻撃の際、各ステータスが1ランク上昇する。

自己回復(魔力):E
 現界に必要な魔力を補うと考えればDランク程度の単独行動スキルに相当する。

【固有スキル】

軍略:A+
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 自らの対軍宝具の行使や、 逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。ティムールとハンニバル、類まれなる二人の将の相乗効果によって本来以上の力が生まれている。

カリスマ:B
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、大国の王にふさわしいランクと言える。

戦闘続行:C
 執念深い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

アルプス越え:A+
ハンニバルが司令官として指名された際に初めて挑んだ難行に由来するスキル。
あらゆる地形を無視した大移動が可能。幸運判定を必要とするが、成功すれば魔術師の創った陣地さえも踏破できる。

????:A+


【宝具】

第一宝具『災禍及ぼす白の軍(ティムーリ・ラング)』
ランク:B  対軍宝具
ティムールの歩んだ覇道の具現。おおよそ七万の骸骨兵士からなる万能型の宝具である。この宝具を支えるのは生前の骸骨の怨念である為、その規模に対して燃費が良い。数千という規模の骸骨軍隊を作り上げることも可能であるが意思のない存在である為、ティムールの的確且つ明確な指示が無ければ満足に動く事はない。

第二宝具『災禍秘めし黒の櫃(グーリ・アミール)』
ランク:B+ 対人宝具
墓を暴くものへの呪いの言葉が記された、ティムールが眠る棺。
この宝具の発動までに、対象者がティムール自身に与えた傷を棺の解放と共にそのまま相手へと返す呪詛返しの力。相手の力が強大であればあるほどにその効力は高まり、侵攻してきた相手へと破滅を齎す。
ただし、そのダメージ自体はティムールにそのまま残るモノであるため、幾度も使えるわけではなく、相手を確実に破壊する、あるいは最後の手段として使うのが定石ではあるが、アヴェンジャーは第四宝具との重ね掛けによってこのデメリットを踏み倒している。

第三宝具『雷速の山脈踏破(アルプス・バルカロード)』』
ランク:A+ 対地形宝具
不可能と思われていたアルプス越えを成し遂げたハンニバルの逸話を宝具として昇華したもの。自身と自分の配下、仲間をあらゆる場所へ一瞬で移動させる。一種のワープ能力。
移動可能範囲は広く自身の視界に入る場所は自由に移動できる。視界に入っていない場所で自身が訪れたことがない場合に移動する場合は魔力を多く消費することになる。
移動×距離×人数で消費魔力が計算されるため大人数で長距離の未知の場所へと移動すると魔力を大量に使うことになる。

第四宝具『雷鳴が如く―――不滅の進軍(カルタゴス・ハンニバル・バルカ)』
ランク:B+ 対人宝具
 歴史上最高峰の戦略家であると謳われるハンニバル、その真価は何処にあるのか? その真骨頂は継続戦闘能力にこそあり。何度ローマと戦い、ローマの中で過ごしても、最後までローマの脅威として、ローマを恐怖へと陥れた存在であるハンニバルを象徴した宝具、これまでの戦闘で消耗した傷を魔力によって一瞬にして自己回復する。その逸話から消費する魔力も通常の自己回復よりも少なく、肉体回復の手段としては最上位に位置する宝具であると言えよう。

第五宝具『裏切りの銀貨三十枚(イーシュ・カリッヨート)』
ランク:EX 対概念宝具
イスカリオテのユダが、かつてイエスを裏切り銀貨三十枚で彼を司祭に引き渡した事の具現。銀貨三十枚を払う(消費する)ことである事物に対する『裏切り』を再現・可能とする宝具、世界そのものを裏切り、あらゆる軌跡を引き起こすが、銀貨の枚数はユダと契約したマスターの生命力に依存しており、宝具を使えば使うほどに魂の輝きを失っていく。
レイジ自身の魂では1~2回使用することが限度である。この宝具の影響を回避するには対魔力の度合いではなく、あらゆる可能性を否定するしかない。または同ランクの結界宝具、聖域の再現者、或いはイエス以上の神性の持ち主であれば回避が可能

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