パッシブスキル『スーパーアーマー』を手に入れた我氏、いつの間にか龍騎士団の長になってました   作:サンサソー

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 みんな聞いてくれ。

 クロエが俺とナイトベアの間に駆け込んできたかと思ったら、光り輝いて少し小柄な少女になってしまったんだ。

 

 俺自身も、何が起こったのか分からない。痛みか何かで幻覚でも見えているのではないかと思ったが、ナイトベアが驚いているところからして現実のようだ。

 

 短めの黒髪には黒い犬耳があり、翠色の瞳と黒いしっぽが特徴の、見方によっては少年とも言えるような容姿だ。

 

 そして際どいところは毛皮で覆っている当たり、ナイトベアと同じように進化したのかもしれない。

 

「……クロエ、なのか?」

「そうだよ。ドランはちょっと休んでてよ。ボクがアイツと戦ってくる」

「……あと20分、耐えれるか?」

「お安い御用さ」

 

 クロエはナイトベアへと近づいていく。俺は近くの木へ背を預けると、身体を楽にした。

 

「お前は……さっきの狼か。まさか進化するとは思わなかった」

「進化……これが進化なんだね。なんで人型になってるのかは疑問だけど」

 

 魔物が人型になるのは魔法力が関係するとナイトベアは言っていたな。

 

 魔物が進化するために必要な魔力は、自然吸収と捕食に別れる。

 

 自然吸収とは、大気にある魔法力と魔力の元である『マナ』を吸収し変換するという方法だ。

 

 使用して減ってしまった魔法力や魔力が、時間がたてば回復する原理がコレだ。俺が魔法力をほとんど有していないのは、魔法力を周囲から吸収し保有できる能力が著しく欠如しているかららしい。

 

 その点、魔物はその吸収率が人間や他の動物と比べてとても高い。周囲の動物からも微弱ながら吸収できるため、活動で消費しても余りある魔力を補給できる。こうして、進化のための魔力は自然と溜まっていくのだ。

 

 おそらく、クロエは元の飼い主や俺と長い間いたせいで、いつの間にか魔法力を吸収していたのだろう。

 

 魔物を飼うという酔狂な見たことも聞いたこともなかったし、実際に数は少ない。それに、飼っているとはいえ魔物と長時間触れ合おうとする人間はいない。

 

「まったく……20分で何が変わるんだ?体力を回復させてもその状態じゃあオレには勝てないぞ」

「さあね。ボクもドランが戦ったところは、狩りとシリューとの戦いしか見たことがない。でも、何かあるからこそボクに任せてくれた……なら、ボクも応えないとね!」

 

 クロエが身体を低くする。ナイトベアもクロエの動向を注視し、すぐに反応できるように構えた。

 

 クロエは構えたナイトベアへ軽く笑うと……消えた。

 

「っ!?」

 

 驚いたナイトベアはすぐさま辺りを見回すと、1本の木の上に巨大な黒狼を見つけた。

 

 大きさは獣形態のナイトベアと同等。その黒い巨体からは考えられないほど澄んだ翠色の瞳がナイトベアを見つめている。

 

「へ〜……大した速さだよ。オレが見えなかったとはね…」

「まあね。スピードはボクの持ち味だってドランも言ってくれたし」

 

 クロエが木を蹴ると、その脚力で木がへし折れた。ナイトベアは近くの木を引き抜くと、空高く跳躍したクロエへ投げる。

 

 クロエは器用に投げられた木を足場にしながらナイトベアへと近づき、そのままの勢いでナイトベアと衝突した。

 

「グマァアアッ!?」

 

 ナイトベアの肩にツノが突き刺さる。苦悶の鳴き声をあげながら、クロエへと剛腕を振るうも軽々と避けられてしまった。

 

「どんなに強い攻撃でも、当たらなければ意味はない。さあさ、ボクに当ててみなよ」

「コイツ……」

 

 クロエが駆け巡る。ナイトベアはそのスピードに完全に翻弄されていた。

 

 時折、クロエがナイトベアへ爪やキバで攻撃しつつ素早く離れる。ヒットアンドアウェイをすることで、自分よりも遅いナイトベアの攻撃をうまく躱していた。

 

(いける。ボクも、ドランの役に立てるんだ!)

 

 ナイトベアの背後に回りこみ、飛びかかる。その爪を伸ばし、突き立てようとしたところで━━━━━━、

 

「調子に乗るなぁ!!」

「ぐあっ!?」

 

 大きく後ろへと腕を振るったナイトベアに叩き落とされてしまった。

 

 勢いよく地面へ打ち伏せられたクロエは、受け身も間に合わずに激突しその衝撃で人間形態へと戻ってしまう。

 

「ゲホッゲホッ!?」

「死角を突こうとするばかり、背後からの攻撃が多い。フェイントもしてこないあたり、まだお前はヒヨコだな」

「ゲホッ!……はあ、やっぱりまだまだ経験不足だったかぁ…」

 

 それだけではないな。クロエは進化したばかり……つまり、大きくなった身体と力にまだ慣れていなかった。

 攻撃に移るまでがいつもより長かったのは、自分も初めて力を使ったことで使い心地に戸惑いがあったのだろう。

 

「さて、これでお前との戦いも終わりだな。アイツをオレのねぐらに連れていくとするか」

「……名前も知らないんだね」

「あ?ああ、確かにそうだな。まあオレも名前なんて無いし、『お前』とかで呼び合えばいいだろ」

「はあ、ダメだねそれじゃあ。名前っていうのは、付けられた側にとってはとても大切なものなんだよ」

「大切?たかが呼び名だろ?」

「それでも大切なんだよ。人間にとっては、親が自分のために悩んで、生まれて初めて与えてくれる特別なものなんだ。ボクのは人間の元飼い主に貰ったものだけど、なかなか気に入ってるんだ」

「へぇ〜……これから死ぬっていうのに、殺そうとしてる敵に助言を送るなんてどうかしてるな」

 

 ナイトベアの言葉にクロエはキョトンとした後、愉快そうに笑った。

 

「ボクは死なないよ。これからやりたいこともいっぱいあるし、ここで死んでなんかいたくない」

「まだやる気か?」

「う〜ん……いや、ボクはもう動けないや。もう立ち上がれもしないし」

「はあ?ならなんだよ、オレに見逃してもらおうとでも思っていたのか?残念だが、オレもかなり傷つけられたからな。見逃す気はさらさらないぞ」

「別に、見逃してもらおうと思ったわけじゃないよ」

 

 クロエがこちらを見て笑いかけた。

 

「20分。ボク、役に立てたよね?」

「……ああ、充分だ」

 

 ナイトベアの背後に立っていた俺は両腕を大きく振り上げた。

 

 ナイトベアが俺の声に気付きこちらへ振り返る。だが、もう遅い。

 

【スーパーアーマー】【鉄壁】【剛力】【筋骨増強】【倍加】【貯蓄】発動。

 

 驚き固まっているナイトベアへ、勢いよく両腕を振り下ろした。ナイトベアは容赦なく地面に叩きつけられ、地面には軽くクレーターができる。

 

 その中心で俺が腕を上げると、そこには地面に半ば埋まり気を失ったナイトベアがあった。

 

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