パッシブスキル『スーパーアーマー』を手に入れた我氏、いつの間にか龍騎士団の長になってました   作:サンサソー

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人生の転機は暴力の中に

 ある日のこと。

 少年後半にまで成長した俺は、1人で出かけ、母上の負担にならないように薬草を摘みに行っていた。その帰り道、俺は子どもたちに絡まれていた。

 

「おい、できそこない!」

「お前みたいな奴がいるから、僕たちは気分が悪くなるんだよ!」

 

 火が、風が、電気が、あらゆる属性の魔法が俺を襲った。痛みはあるが、もうこの程度、慣れたものだ。いや、今までと比べると温いかもしれない。腕を折られたり、内臓に響くようなパンチを受けていないからな。

 

「ちっ!こいつ、全然反応しなくなったな」

「あ〜…なら、アレ試してみようぜ!」

「おお、アレか!よし、やろう!」

 

 貴族の子どもたちが腕を上げる。すると、そこには俺の2回りほど大きな火球が生成された。

 

 魔法は、下級のものでも魔力耐性のない平民を軽く吹き飛ばす威力を誇る。今、子どもたちが俺に向けているのは中級の炎魔法『ブレイズ』。それが2つ、まず人間が当たれば命はない。

 

「……お前たち、まさかソレを…」

「そうだ!お前みたいな奴が、生きてることがおかしかったんだ!」

「死んじゃえばいいんだよ!そうすれば、父上たちも喜ぶ!」

 

 子どもとは、実に残酷な一面を持つ。大人が嫌いなら僕達も嫌い。大人がいじめるなら僕達もいじめる。あんななりそこないは死んでしまえばいいと聞けば、やってもいいんだと実行に移す。

 

 親はエンドリー家よりも力のある貴族。ならば揉み消されてしまうのも容易に想像がつく。

 

「……こんなところで死んでたまるか」

「あっ!逃げた!」

「捕まえろ!」

 

 あんなもの、受けるわけにはいかない。だが、俺が逃げようとした直後、地面が弾け、無数の破片が俺の足に刺さった。

 

 爆発魔法『ボンバー』か!!これは下級に分類される爆発魔法。周りを見渡すと、一人の男性の手が光っている。これを好機と見て、俺を始末するつもりらしい。

 

 他の人々も止めようとしない。それどころか、悠々と話をしながら俺を眺めている。

 

「あれ!動かなくなった!」

「よし、今だ!」

 

 火球が俺へと放たれる。足を封じられた俺は為す術なく炎に飲まれてしまった。

 

 肌が焼ける。呼吸ができない。身体も満足に動かせなくなってきた。

 

 いやだ、まだ死にたくない。父上と母上を残して、こんなところで…!

 

 なんで、こんなに苦しまないといけないんだ……。俺は、何かダメなことでもしたんですか。神様、なんで…なんで……。

 

 感覚が段々と薄れていく。瞼がだんだんと重くなり、俺は意識を━━━

 

 

『パッシブスキル【スーパーアーマー】を獲得しました』

 

 

 意識がハッキリする。肌を焼く痛みはあるが、呼吸もちゃんとできる。動かせないと思っていた、炭化し始めている腕や足が動かせる。

 

「……熱いな」

 

 このままでは流石に死んでしまう。動きづらいが炎の外に出てみると、信じられないような目を子どもたちと大人たちが向けてきた。

 

「な…なんで動けるんだ…」

「おい、あの足で歩いて出たのか!?」

 

 大人のざわめきがイヤによく聞こえる。耳も炎で使い物にならなくなったと思っていたが、以前よりもハッキリと聞こえてくる。

 

 そんな俺の耳は、バタバタと何かが駆けてくる音を拾った。

 

 人ごみをかき分けて鎧を着た女性が現れた。この人は……確か、王宮に仕える有名な人だったはず。う〜む、頭はまだうまく働かないな。

 

「私はクリスティーヌ騎士団、団長ヘレン・クリスティーヌである!この騒ぎは何事か!」

 

 ああ、そうそう。侯爵家のクリスティーヌ様だ。やっと思い出せた。

 

「…っ!?キミ、その状態は!?一体何があった!」

「……そこの2人に、魔法を撃たれて……あそこにいる人にも…」

「…っ!」

 

 クリスティーヌ様が睨みつけると、男性はあれやこれやと言い訳をするも、後から来た赤い鎧の騎士団に捕縛された。

 

 子どもたちの方は、何も悪いことはしていないと叫びながらも連行され、俺の方を見て何度も魔法を飛ばそうとしてきた。まあそれも、騎士団の方々が取り押さえてくれたが。

 

「キミ、王宮に来てくれないか?その傷を治療したい」

「……わかりました」

「うむ……しかし、その足では歩きづらかろう。肩を貸すよ」

「……ありがとうございます」

 

 俺の右腕を肩にまわし、歩幅を合わせてくれる。女性の方にこういったことをさせてしまうのは男としてみっともないとも思えるが、こういう目上の人の言葉には素直に従った方が良いと、父上から教わった。

 

「キミは、エンドリー家の人かな?」

「……はい」

「やはりか。このような仕打ちを受けて、悔しくないのかい?」

「……悔しくないといえば嘘になります。でも、そんなことを気にしている余裕は無いです。両親の仕事を少しでも減らして、楽をさせてやりたいので……それに」

 

 こんなこと、幼少期から続いていたことなんだから。

 

「……こういうことには、その…慣れています」

「……っ」

 

 あれ、何かダメなことでも言ってしまったのだろうか。クリスティーヌ様の顔が悲しそうに歪んでいるが……。

 

「キミ、騎士にならないか?」

「……騎士ですか?」

「ああ。キミは、自分の受けた仕打ちに怒るのではなく、両親の役に立ちたいと思えるような人だ。そんな人はなかなかいない。騎士にピッタリなものだと私は思うぞ」

「……少し、考えさせてください」

「ああ。さぁ、王宮まであと少しだ。気張れよ」

「……はい」

 

 大きな門が見えてくる。俺はクリスティーヌ様に助けられながらも、王宮にて治療を受けることができた。

 

 それにしても、驚いたな。俺をエンドリー家の者と知りながらも、あそこまで親身になってくれるなんて……ほかの方々も蔑みの目線を向けず、優しく接してくれた。

 

 両親以外で、俺にこんなにも優しくしてくれる人は初めてだ。

 

 父から聞いたことがある。騎士というのは、人々と主を守護する高潔な者であるのだと。

 

 人々から迫害される俺にも、ここまで良くしてくれるのだ。ならば、苦しみを知る俺が騎士になれたら……どれだけの人を救うことが出来るのだろうか。

 

 それはきっと……素晴らしいことなんだろう。

 

「やあ、良くなったみたいだね」

「……はい、おかげさまで」

「よかったよかった……え〜と…」

「……あ、申し遅れました。俺はエンドリー家のドラングル・エンドリーと申します」

「ああ、私はヘレン・クリスティーヌだ。ここで騎士の端くれとして精を出している」

「……存じております。父上からよく聞かされました」

「たはは…照れるな。それで、考えはまとまったかい?」

「……はい」

 

 本来ならば両親にも話してからにしたかったが、次にいつ会えるのかも分からない。いや、きっと会うことは無いだろう。ならば、今ここで返事をするのが良いと、俺は思った。

 

「……俺は、騎士になりたいです。貴女のような、人に寄り添い導ける、立派な騎士に」

 

 俺の返事に、クリスティーヌ様は照れたように笑い、手を差し出してくれた。

 

「歓迎するよ。陛下には私から言っておくから、期待するといい」

「はい、よろしくお願いします」

 

 手を握り返すと、クリスティーヌ様は微笑んだ。俺は、この人の期待に応えたい。そして、両親も人々も、全てを守れるような騎士になるのだと、心から誓った。

 

 こうして、俺は騎士を目指すことになったのだった。

 

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