パッシブスキル『スーパーアーマー』を手に入れた我氏、いつの間にか龍騎士団の長になってました   作:サンサソー

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お待たせです。ゆらぎ荘の帝王様の方をメインに、こちらもちょくちょく更新していきます。その他はたまに更新。


クマさんのリベンジ

「━━━というわけで、俺はギアルトリア魔闘会に出場することになった」

「ドランっ!ボクも出たい!」

「オレもオレも!」

「……ダメだ」

「「ええ〜!?」」

 

 クリスティーヌ様がお帰りになられた後、鍛錬に混ざってきたクロエとカムイに魔闘会のことを話した。

 予想通り戦闘狂のカムイは出たいと言い出したが……クロエも言うとは意外だな。

 

「……クロエはなぜ出たいんだ?」

「オレは━━」

「……お前は予想がつく」

「え〜?聞いてくんないのかよー」

「……予想がつくと言っただろう。クロエ、よくよく考えると今も鍛錬をしている理由はなんだ?もうお前の目的は果たされた……これ以上強くなる必要も無いだろう?」

「ええと……単純に、ドランとカムイが修行してるなかボクだけ何もしないのが嫌なんだ。それに強くなったら、カムイをドランから引きはがせるし」

「おい待て最後!オレを引きはがすってどういうことだよ!」

「キミはいっつもドランに引っ付いては戦おう戦おうと叫ぶじゃないか!そんなの見てられない!」

「仕方ないじゃないか!森での一件以来、まだ1度も戦えてないんだ!」

 

 躍起になって言い争う二人。確かに俺はまだカムイと戦っていない。あの森での一件からそこまで期間が空いてる訳でもないし、力を伸ばせたと実感できていない状態で戦うのは一つも利益を生まない。

 

 ただ同じように戦い同じように負ける。そんな惰性溢れる戦いなどカムイは満足しないだろうし、俺だって納得のいかない敗北を刻むことになってしまう。

 

 互いに利のない戦いをしているほど暇じゃない。

 

「……何はともあれ、お前たちが参加するのはダメだろう。魔物が人間の大会に出場するなんて前代未聞だぞ」

「前代未聞なら出てもいいだろ〜?前例がないならダメな理由もないじゃないか」

「……俺の両親としか接していないから忘れているようだな。本来、魔物とは人間の敵というのが常識だ。こうやってお前たちが過ごせているのは、屋敷の人間がお前たちのことを外に漏らしていないからだ。騎士団出動の大事なんだぞ」

「………………」

 

 カムイが黙った。おそらく何度も人間と戦った経験があるのだろう。その際に、自らに向けられた敵意と殺意。自分たちがどう思われていたのかを悟るには十分。

 

「……わかったな。隠れて過ごすのは息苦しいと思うが、そこは我慢を……」

「ねえねえドラン」

「……なんだ」

 

 俺の話を遮り、クロエが口を挟んできた。そこ顔にはカムイのような苦々しいものではなく、純粋に不思議に思っている表情だった。

 

「あのさ、愛玩の契約をすればいいんじゃないかな?」

「愛玩の契約?」

「……魔物を飼う際に、術式が彫られたアクセサリーを与え、飼い主の命令を聞かせるようにする儀式の一種だ。そういえば、お前は人間に育てられたんだったな」

「うん」

 

 しかし、大丈夫なのだろうか。愛玩の契約は人間が魔物を制御する(・・・・)ためのもの。魔物側からしたら屈辱以外の何物でもない。それの、クロエは一度捨てられている。当時の飼い主ともこの契約は結んでいたはずだ。

 

「……ドランが何を思っているのかは想像つくよ。でも……ボクは大丈夫。二回目だし、キミの言う…上級?の魔物のボクたちなら抗うこともできるだろうし。なにより、ドランとなら…契約してもいい」

「……そうか。そうだな、あの簡易術式程度で上級の魔物を縛れるほどの力は無いだろうし、お前の信頼を受け取るべきだな……カムイはどうだ」

「ん〜……オレはさ、今まで戦いを繰り返してきた。立場・縄張り、その全てを力で示してきた。だからさ、お前とまた戦わせてくれよ。それで勝ったら、オレはその愛玩の契約とやらを受ける。これだけは譲れない」

「……なら四の五の言っている暇はないな」

「お、てことは?」

「……外に行くぞ」

「ヤッホオッ!やっとリベンジできる!」

 

 カムイは飛び上がって喜ぶと窓を開けて飛び降りて行った。俺とクロエは

 苦笑いしながら、外へと向かった。

 

 

 

 

「遅いぞドラン!」

「……お前までその呼び方か。まあいい」

 

 庭の片隅で、大剣を構えた俺とカムイが向かい合っていた。

 

 周囲に互いを遮れるようなものはない。つまり、純粋に力と技術のぶつけ合いになるということだ。まともにぶつかると、カムイの馬鹿力で【スーパーアーマー】を破られてしまう。被弾を最小限にして……そうだな、クロエのようにとはいかないが一撃離脱でいけば……。

 

 そう考えていると、急にカムイが地を蹴り飛びかかってきた。そのスピードは、クロエがまだブラックホーンウルフだったころと遜色ないほどのもの。

 

 自然の中ではルールなど存在しない。相手を倒すためならばどんなことも許される。俺が動かなければ、カムイは痺れを切らして突っ込んでくることは容易に想像できた。

 

「カアッ!」

 

 カムイは空中で腕を大きく振ることで回転し、俺の頭へと蹴りを放った。俺は姿勢を低くして躱すと、カウンターとして大剣を下から掬い上げるように振り上げる。しかし、カムイは大剣の腹を手で叩き左へと軌道を変えた。

 

「……むぅ」

「隙ありぃ!」

 

 大剣の腹を叩いたことでもう一度回転したカムイは、ガラ空きになった右の横っ腹に回し蹴りを叩き込んだ。

 

【スーパーアーマー】で耐え、大剣から右手を離しカムイの足を掴む。そのまま地面へ叩きつけようとするが、カムイは大熊の姿へ変身し、俺を押し潰そうとのしかかってきた。

 

【鉄壁】【筋骨増強】発動。

 

 カムイの下敷きになってしまうが、咄嗟にスキルを発動することでダメージを抑えた。

 

【剛力】【倍加】【貯蓄】発動。

 

 さらに三つのスキルを発動し、カムイの巨体を左手で少し持ち上げる。そして、空いた右手に全力を込めてカムイの腹を殴りつけた。

 

「グオォォッ!」

 

 生物は腹が弱い。内臓が密集し柔らかい部分だからだ。しかし、流石は上級の魔物ナイトベア。吹き飛びはすれど空中で体勢を立て直し着地した。

 

「…………」

 

 ダメージが大きい。鍛錬はカムイの力を伸ばし、その威力は以前よりも大きい。こうなったら……やるしかないか。

 

「……カムイ」

「話は後にしてくれ。戦いの最中なんだ……腹の」

「そっち!?」

「……流石にこれ以上戦うと【スーパーアーマー】が剥がれる。怪我を負うと両親が騒いでしまうからな……これで終わりにする」

 

【獣走】を発動。押しつぶされた際に落とした大剣を拾い上げ、一息にカムイへと迫ると高く跳躍した。

 

 発動するのは【スーパーアーマー】【鉄壁】【剛力】【筋骨増強】【倍加】【貯蓄】……そして【痛撃】。

 

「……これに耐えたら、お前の勝ちだ、カムイ!」

「へっ!なら、もろともに吹き飛ばしてやる!」

 

 カムイの体が数度光る。あれは、【急加速】【剛力】【筋骨増強】か!

 

「……オォォオオオッ!!」

「グルォオオオオッ!!」

 

 重力を乗せた全力の一撃と、カムイの巨体による砲弾のような跳躍。

 

 互いがぶつかり合い、凄まじい轟音が響く。競り勝ったのは……。

 

「……すまない父上。また剣をダメにしてしまった」

「…ォ…ォォ……」

 

 俺だ。カムイはひっくり返り、微かに震えた後に動かなくなった。

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