パッシブスキル『スーパーアーマー』を手に入れた我氏、いつの間にか龍騎士団の長になってました   作:サンサソー

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投稿すれば他の小説の投稿が遅くなる。難題だ。


バトルロワイヤル終了

 特別区に住まう貴族専用の部屋にて、エンドリー夫妻とクロエ、カムイが試合を観戦していた。

 

「あなた……わたくし、不安になってきたわ」

「大丈夫だ。ドラングルは強い。それに『身代わりの札』もあるんだ、怪我も無いだろう。きっと勝ってくれるさ」

 

 そうは言いながらも、ロブはソワソワと膝を揺らしている。息子が戦っている場面を見たことがない2人は、やはり気が気でないのだろう。

 

 そんな2人とは対照的に、クロエとカムイはソワソワというよりも、むしろワクワクとした様子で画面に釘付けになっていた。

 

「凄いなぁ……あんな魔法を使う人たちと、ドランは戦うのかぁ」

「……戦いを見てたら、身体が疼いてきちまった。今からでも乱入してやろうか」

「ダメだよ!?」

 

 若干危険な者も1名いるが、さすがに弁えているのか椅子から動かないカムイ。しかし疼いているのは本当らしく、時折身体をブルリと震わせては獰猛な顔をしていた。

 

『ギアルトリア魔闘会、第4ブロック、バトルロワイヤル!試合、開始!』

 

「お、始まったぞ」

「おおお、色んな魔法が飛んでて綺麗だねえ」

 

 火炎や稲妻が飛び交い、リング上を彩る。それらは人を簡単に殺せるほどの中級魔法であるのだが、これを見て綺麗と言えるのはさすが上級の魔物と言ったところか。

 

「にしても、あの威力の魔法が飛び交ってたら直ぐに終わりそうな気もするんだがな」

「魔法障壁とスキル【魔法防御壁】で魔法の威力を削いでいるんだ。この魔闘会に出場し、上を目指すならば必須のものだよ」

「へ〜」

 

 こちらへ向かう全ての魔法を回避し魔法を当てるのは至難の技。であれば、それに対する手段を用意するのは当然と言える。

 

「さてさて、ドランはどこかな」

「……あ、見つけたわ。クロエちゃん、あそこ」

 

 ミーティアが指さしたのはリングの端。そこには確かにドラングルの姿があった。

 

「あ、ホント……だ…」

「ん?どうしたクロエ。アイツがどうし……」

 

 2人が固まる。目線の先、ドラングルはリングと場外の境界を背にし、4人程の参加者に追い詰められていた。

 

 

 

 

「控え室での騒動を見てよ、やっぱり危険なんだよお前さん」

「すまねえが、俺らのためにここで落ちてもらうぜ」

 

 バトルロワイヤルではなんでもありだ。敵を他の参加者に擦り付けるのも、戦っている参加者を後ろから奇襲するのも、参加者同士で手を組み数に任せて強者を倒すのも。

 

 しっかし、まさかまだ動いてないというのに複数人に囲まれるとはな。

 

「もう下がれない。詰みだな」

「そら、トドメだ!『ブレイズ』!」

 

 中級炎魔法が放たれた。俺は横へと回避するが、やはり読まれていたのか中級雷魔法『ライトニング』が襲いかかる。

 

 背に付けていた特大剣を外すと、『ライトニング』を受け止めた。

 

「…っはあ!?」

「……返すぞ」

 

 稲妻が剣から俺へと伝わる前に、男たちへと剣を振るう。稲妻は斬撃となり、彼らを飲み込んだ。

 

「……まずは4つ」

 

 男たちの姿は無い。スキルを発動する間もなく中級魔法を食らい、札の転移が発動したのだろう。

 

 しかしここはバトルロワイヤル。敵を倒せばすぐに接敵だ。こちらへと飛来する魔法を捌きながら、俺は参加者たちへと躍り懸かるのだった。

 

 

 

 

「はぁ……一時はどうなるのかと思いましたわ」

「まったくだ。開始早々リング端で囲まれるなど、心臓に悪いぞ」

 

 胸を撫で下ろすエンドリー夫妻。ドラングルが危機を乗り越えたことに心底安心している様子だ。

 

 しかし、クロエとカムイの表情は晴れなかった。いや、困惑していると言うべきか。

 

「……なあ、クロエ」

「うん、言いたいことはわかるよ」

 

 凄まじい勢いで迫るドラングルを、男が初級魔法の弾幕で迎える。ドラングルは高く跳躍すると背後に着地。初級魔法による爆発で姿を見失った男は、特大剣による一薙ぎで札を破られ転移した。

 

 エンドリー夫妻からすれば、ドラングルは順調に見えた。攻撃を一撃ももらわず、次々と参加者を落としている。

 

 しかし、2人は違う。ドラングルの戦い方に違和感を持ったのだ。

 

 ドラングルが魔法の弾幕の隙間をくぐりぬけ、特大剣でまとめて薙ぎ払う。それがこの試合でドラングルが繰り返している動きだ。

 

「やっぱりおかしいな」

「うん、いつもの戦い方じゃない。あのドランが、敵の攻撃を()()()()なんて」

 

 スキル【スーパーアーマー】

 それは発動中に食らった敵の攻撃に怯まず動けるというもの。他のスキルとは違い、いくら時間が経とうと自らの意思で解除しない限り発動し続けるという性質を持つ。

 

 ドラングルは他の防御スキルと組み合わせ、鉄壁の耐久力を誇る。敵の攻撃を受け止め、または敵の攻撃に被せて攻撃を叩き込む戦法を得意とする。

 

 しかしこの試合では、ドラングルは回避に徹していた。【スーパーアーマー】も【魔法防御壁】もあるというのに、わざわざ魔法を躱し剣を振るっているのだ。この2つを使えば、怪我をダメージに変換することで『身代わりの札』の命も長らえるというのに。

 

「何か考えがあるのかな」

「さあな。まあ、トーナメントでわかるだろ」

 

 気づけば、リング上に残っている人数もあと僅か。ドラングルは息も切らさず、粛々と次の獲物へと飛びかかるのだった。

 

 

 

 

『バトルロワイヤル第4ブロック、これにて終了です!他の試合とは打って変わって恙無く終了。それでは選手、退場!』

 

 被弾無し、スキルも見せていない。上々の結果だ。

 

『それではこれより昼休憩とさせていただきます。トーナメントの抽選はお昼休憩を返上してベテルギアス陛下に済ませてもらいましょう』

『え、聞いてないんじゃけど』

『陛下、マイクをオンにしないでください』

 

 最後まで締まらないなぁ……。

 


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