パッシブスキル『スーパーアーマー』を手に入れた我氏、いつの間にか龍騎士団の長になってました   作:サンサソー

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後書きはちょっと読まなくても大丈夫です。夜にちょっと…ね…。


獣騎士

 誰もが予想しなかっただろう。開始早々、得物をぶん投げるなど。

 

「ぬっ!?」

 

 凄まじい速度で飛ぶ特大剣を、ノルエーマンは紙一重で躱した。しかし避けられてしまうことは予測済み。

 

 俺は床に深々と突き刺さった特大剣の柄を掴み、弧を描くように空中で方向転換し着地。その勢いで特大剣を引き抜くと、ノルエーマンへと振り下ろした。

 

 しかし魔法障壁が展開され、刃が阻まれた。本来魔法攻撃を防ぐもののために、特大剣の一撃の前に呆気なく破壊されたが、その場から退避するには十分な時間。特大剣が床を砕く頃には、ノルエーマンは間合いから脱出していた。

 

『なんという力、そして身軽さか!投擲した後に加速、風の魔法力も使わず、ただその力だけで空中を舞います!しかしその攻めは何より力強く、そして容赦がありません!あの巨大な剣で攻撃されれば、瞬く間に『身代わりの札』の寿命は尽きてしまうでしょう!』

 

 ノルエーマンは冷や汗を流しながらも、未だに微笑みを浮かべている。何やら対抗策があるのか、はたまたこの状況でも余裕を持てるだけの経験をしてきたのか。

 

「キミにはバトルロワイヤルの時から注目していたよ。控え室の騒動といい、ただの有象無象とは明らかに違うと思ったのでね」

「……そうか」

「そう、その鉄仮面。何を考えているのかも分からないのが余計にやりづらい。視線は常に私の目に、私の全体の動きは視界の端に映ったものから情報を得て捌いているな」

「………………」

 

 この男、凄まじい観察眼を持っている。先程の僅かな立ち会いの中で俺の細かな動作から戦闘法まで見抜いたか。

 

 さすがはギアルトリア魔闘会に、老齢の身で出場しているだけのことはある。

 

「しかしな!私も万が一を備えているのだ!魔法主体のこの世の中、しかしキミ程でなくとも物理攻撃をしてくる輩はたまにおるのでな!」

 

 ノルエーマンの身体を白い光が包み込み、弾ける。なんだ?図鑑にすら乗っていない、初めて見る魔法だ。そういえば聞いたことがある。魔法研究所は新たな魔法を開発するところだと。

 

 どこも外見に変わった所は無いように見えるが、何かしらの魔法を使用したことは確か。警戒するに越したことはない。

 

「聞いた話だが、キミは魔法力が少なく魔法が1つも使えんらしいな。バトルロワイヤルでも物理攻撃一辺倒だったのも頷ける」

「……何が言いたい」

 

 顔が歪み額に青筋ができる。怒りの表情を見たノルエーマンは、いやいやと手を振った。

 

「すまんすまん。今の発言に嘲りは無い。まあ、あれだ。私が言いたいのは……キミに勝ち目は無いということだ」

「……もういい」

 

 確かに現状確認のために言っただけなのだろう。だが人のコンプレックスをここまで刺激してくれたんだ。癇に障ってしかたがない。

 

 スキル【獣走】発動。

 

『おおっとドラングル選手!姿勢を低くし、まるで獣のように駆け出した!早い早い!弾丸の如く迫るドラングル選手。対しノルエーマン選手は……おおっ!?まったく動かず!腕を広げ、まるで迎え入れるように立ち尽くしています!』

 

「さあ、来るがいい」

「……なめるな」

 

 俺はノルエーマンへ振るおうとしていた体勢を変え特大剣を床へ走らせる。抉り取られた床の破片はノルエーマンへと凄まじい速さで飛んだ。

 

 破片が驚愕したノルエーマンと衝突したその時。破片は粉々に砕け塵となった。

 

『な、何が起きたと言うのでしょう!ドラングル選手が剣を床へ振るうことで放たれた礫は、ノルエーマン選手を傷つけるどころか粉々になってしまいました!』

 

「ほう、寸前で気付くか」

「……誘いに乗ってやっても良かったが、あからさま過ぎだ。何かあることなど誰だろうと分かる」

「ふむ。魔法の研究だけじゃなく、コミュニケーション能力も鍛えねばか。うむうむ、勉強になった、ありがとう」

 

 先程の魔法。そして飛び込みの一撃は躱していたというのに、今回はワザと受けようとするその姿勢。破片が砕けた様子を見ると、やはり何かしらの迎撃手段であったか。

 

「何をしたのか分かるかね?」

「……物理攻撃一辺倒の俺では勝ち目が無いと言っていたというのに、説明はしてくれないのだな」

「無論だ。私はこれでも教授でね。問題の答えは自分で考えさせねば」

「……俺は講義など受けるつもりはないのだが、な!」

 

 再び駆け出す。特大剣を振るう、と見せかけてその場で手放し、腹へと蹴りを放つ。フェイントを入れれば対応できないかとも思ったが、その考えに反し俺の足は凄まじい衝撃に襲われた。

 

「ぐっ!?」

「残念だね。中級雷魔法『ライトニング』!」

 

 至近距離から稲妻が放たれるも、咄嗟に【魔法防御壁】【状態異常無効】を発動し魔力ダメージのみ食らう。軽減されたとはいえ中級魔法。『身代わりの札』もいくらか削られた。

 

「ほう、耐えたか!」

「………………」

 

 下がり距離を取りながら、抉られた部分から破片を掴み投げつける。しかし、先程のように破片は粉々になってしまった。

 

「無駄だよ。キミが答えに辿り着かない限り……いや、辿り着いたとしても、攻略は不可能だ。キミは魔法が使えないのだからね!」

「……つまり物理攻撃は防げても、魔法は防げないと」

「その通り。つまり、魔法による攻撃手段を持たないキミになすすべは無い。勝ち目が無いと言った意味がわかったかね?」

「………………」

 

 俺は何も言わず、得意げなノルエーマンへと特大剣を構え突貫する。

 

『ドラングル選手、再び迫ります!何か対抗手段を見つけたのでしょうか!?』

 

「愚か者め!この魔法は私が対物理攻撃にのみ注力して作り上げた傑作だ!突破できるものか!己の豪打で吹き飛ぶがいい!」

 

 俺は床に素早く手をやり、取った物を投擲した。芸がないと、ノルエーマンは構わず魔法を放とうとする。

 

「中級炎魔ぼっ!!?」

 

 投げられたソレが粉々になった瞬間、炎の魔法力が解き放たれノルエーマンを焼いた。下級程度の魔力量だが、【魔法防御壁】どころか魔法障壁すら展開していなかったノルエーマンには効いただろう。

 

『なんと!?ドラングル選手、投げたのは床の石材ではありません!魔石です!炎の魔法力を封じ込めた魔石をノルエーマン選手へと投げつけたのです!』

 

 床から抉りとった石材を拾う際に、販売されていた魔石を紛れ込ませた。これは魔法の触媒となる杖に用いられるものであり、闘技場内で販売されている物だ。試合中に攻撃として使用することも認められている。魔法の方が威力は高く、使う者はほとんどいないが。

 

 しかし、ノルエーマンを仰け反らせ隙を晒すことはできた。であれば後はこちらのものだ。

 

 俺は【獣走】を発動しノルエーマンへと迫る。それをなんとか察知したノルエーマンは高らかに叫んだ。

 

「ま、まさか魔石とはな!だが、2度も同じ手は喰らわんぞ!」

「……だろうな」

「ほ?」

 

 俺は何も投げず、さらには特大剣をも手放した。そしてノルエーマンの脇腹を両手で掴む。

 

「……先程の言動から察するに、物理攻撃を反射しているようだな。では、これならばどうかな?」

「う、おおおお!?」

 

 魔法一辺倒の老人など軽い。ノルエーマンを高く放り投げた俺は、跳躍し再びノルエーマンを両手で掴む。

 

「な、ま、まさかっ!?」

「……そら、反射してみせろ」

 

【剛力】【筋骨増強】発動。

 

 ノルエーマンの魔法のカラクリはわかった。魔法かけられた対象へ向けられた物理的ダメージを衝撃波として反射するというもの。故に投擲物などにも対応できるが、逆に自身が武器のように扱われてしまえば、逆に物理攻撃を行う側となってしまい自分に衝撃波が襲うことになる。

 

 落下の速度を乗せて、ノルエーマンを床へと振り下ろした。床に叩きつけられ、通常であればそのまま埋まるところだが、床はヒビ1つ付かずノルエーマンがもう一度バウンドした。衝撃によって気絶したノルエーマンを、転移の光が包むのだった。

 

『必勝策、破れたり!ドラングル選手、獣の如く攻め、反射魔法の糸口を見つけ出し見事攻略!トーナメント第2試合、これにて決着です!』

 

 観客の歓声が上がる中、俺は特大剣を拾い上げ背中へと掛ける。此度の戦闘の反省をしながら、リングを後にするのだった。

 




このあとがきは削除しました。はぁ、いけませんね。本気でやってることに無言低評価で返されると、かなりガックリ来るので…。

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