パッシブスキル『スーパーアーマー』を手に入れた我氏、いつの間にか龍騎士団の長になってました   作:サンサソー

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魔闘会編も終盤。もう少しで10万文字届くけど、ほんとタイトル詐欺ですね。


封魔シルドロック

「な、何故ここに!?避難するように言ったはずだぞ!」

 

 まず飛んだのはクリスティーヌの怒声。避難するように言ったというのに、全員を連れて戻ってくるとは何事か。

 

 しかしクリスティーヌの怒りを宥めたのは同じ騎士団長のヨルンであった。

 

「クリスちゃん。彼らはもうわかってるのよ。今のあたしたちの状況、そしてどうするのが最善なのか」

「し、しかし……」

「でももしかしもないの!ごめんなさいね皆、あたしたちが戻ってくるまでなんとか耐えていて!」

「お任せを!なんなら倒してしまってもいいのでしょう!」

 

 渋るクリスティーヌの腕を掴み、建物内へと駆け出すヨルン。背を向ける敵を屠るべく、怪物はその手に火炎を点した。

 

 上級炎魔術『アトミックレイ』

 

 反射魔法『マホレクション』

 

 熱線と団長らの間に入る者がいた。第2試合でドラングルに敗北したノルエーマンである。

 

 ノルエーマンを飲み込むかに思われた熱戦は衝突前に跳ね返され、怪物へと直撃した。

 

「魔術を使う相手であれば私の出番。防御は気にするな!攻撃に集中するのだ!」

「感謝するよ!」

「フンッ…」

 

 上級風魔法『トルネード』

 中級雷魔法『ライトニング』

 

 ハイが巨大な竜巻で怪物を飲み込み、スキル『連続魔法』『無詠唱』によって絶え間なく稲妻を放ち続けるロウ。

 

 稲妻は竜巻と融合し中の怪物を苦しめた。

 

「イ゛ヒヒィッ、ジネェッ!!」

 

 上級爆発魔法『エクスプロージョン』

 

 桁外れの魔法力は竜巻の中心で発光、凄まじい爆発を起こした。

 

「ア゛ッハハァッ!」

 

 上級爆発魔法『エクスプロージョン』

 

 2度目の爆発。追い討ちにしては過剰なのではという火力が叩き込まれていく。しかし怪物もまた桁違い。猛攻を耐えきり地面へと魔力を流し込む。

 

 上級炎魔術『フレアストーム』

 

 地面から次々と火柱が襲う。この攻撃は流石に反射できず、全員が回避行動に移る。怪物は空高く舞い上がると、全身を火炎に包み突進を始めた。

 

 狙いは反射魔法を使うノルエーマン。老齢である彼は火柱を避けることで精一杯なようで、上空より迫る火炎弾には気づいていないようだ。

 

「ノルエーマン教授!」

「む?おおっ!?」

 

 ハイの叫び声で顔を上げたノルエーマンは、眼前に迫る怪物に驚愕する。無論回避する暇はない。火炎弾は着弾し炎の爆発を起こした。

 

「教授!?」

「大丈夫、無事よ!」

 

 爆心地から離れた場所、そこにノルエーマンを担いだロザリアの姿があった。

 

「ゲホッゲホッ!これ、もう少し優しく助けて欲しかったぞ。老体に響いた……」

「ワガママが過ぎるわよおじいちゃん。命があるだけ幸運と思うことね」

 

 悪態をつけるぐらいには元気なようだ。獲物を逃した怪物はその爪に炎を纏わせ、軽く羽ばたきロザリアとノルエーマンへ突進した。

 

「……かかったな!」

「ォオオッ!?」

 

 その炎爪が2人へ届く前に、空中で怪物の動きが止まった。見れば糸のように細い魔力線が怪物を絡めとっている。

 

「拘束魔法『バインド』に付与魔法『エンチャント・インビジブル』をかけたのさ。おまけで強化魔法『ブロック』に付与魔法『エンチャント・フレイム』をかけた炎耐性抜群の防御壁がある。もう身動ぎ一つできやしないよ」

「今だ!魔法を叩き込め!」

 

 彼らの得意とする魔法が怪物へと殺到した。身動きの取れない怪物が悲鳴を上げるが決して攻撃の手は緩めない。

 

 あの騎士団長2人がかりで少々劣勢程度でとどめた怪物。その生命力も尋常ではないと理解していたからだ。

 

「糸の様子はどうかね!?」

「まだまだいけますよ。上級魔法でもちゃーんと耐えます」

「くぅ…こんなに一気に魔法力を消耗するなんて初めてだわ。どこの誰か知らないけど、とんでもない事をしてくれたものね!」

 

 少々余裕が出来たのか愚痴を混じえながらも、魔法の連打は衰えない。だんだんと悲鳴も小さくなり、ようやく決着がつくかと皆がトドメの出力を上げようとしたその時。

 

「ォォオオオオッ!」

『!?』

 

 魔法の着弾する中心、怪物が再び赤い波動を放ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリスティーヌとヨルンは、強化魔法『クイック』をかけ廊下を全速力で駆けていた。

 

 廊下はこれ以上ないほどに通りづらい。踏む足場が少ないのだ。

 

「……っ」

「これは、酷いわね……」

 

 転がっているのは警護に当たっていた騎士団や係員の死体。その死に方は酷く、中にはバラバラになっているものまであるという、とても人の仕業とは思えない所業であった。

 

「避難に人数の大部分を当てていたとはいえ、我らの騎士団員がここまで一方的にやられるなんてね……」

「敵はそれだけの力を持っているということよ。聞けば暗殺者まで動かすらしいし、伏兵に気を付けながら最短で向かうわよ」

「……わかっている」

 

 怪物と戦っていた時の爆発から大分時間が経っている。せめてベテルギアス帝だけでも生き残っていて欲しいと、惨状を見て半ば落ち込んでいた。

 

 やがて階段に辿り着いたその時、再び頭上から爆発音がした。それはまだ帝王の座す部屋は落とされていないことの証明であり、未だ戦い続ける者たちがいるという2人を鼓舞するものであった。

 

「っ!急ぐわよ!」

「ああ!」

 

 飛行魔法『フライ』まで唱え、凄まじい勢いで上階へ進んでいく。最上階に差し掛かると、壁ごと扉が破壊されている部屋が目に入った。帝王の部屋である。

 

「決して帝王様に近づけるな!後ろに引くなよ、なんとしてでも死守するんだ!」

 

 まだ敵の手に帝王は渡っていない。部屋が落ちる前に2人はなんとか間に合った。

 

 破壊された壁から2人は突入し、目を見張る。そこには翼を持ち角の生えた人ではないモノが、騎士団員らに襲いかかっていたからだ。

 

「行くぞヨルン」

「ええ。遅めのパーティー参加といきましょう」

 

 放たれる中級魔法が人ならざる者どもを薙ぎ払う。2人の姿を目にとめた団員たちはすぐに盛り上がった。

 

「団長!ご無事でしたか!」

「お二人がいれば百人力だ!」

 

「各騎士団ごとに集まり、簡易の陣形をとれ!」

「帝王様を挟むように展開するのよ!急ぎなさい!」

『はっ!』

 

 騎士団長が戻ったためか素早く動く団員たち。怪物どもは奇声を上げ襲いかかってくるも、彼らの守りを崩すことは難しく、やがては全滅することとなった。

 

 全員が一息つき、クリスティーヌがベテルギアス帝へと声をかけようとしたその時。拍手の音とともに部屋へ入ってくる者があった。

 

「ブラボーブラボー。悪魔の群れをこの程度の手勢で捌き切るとは、さすがはマヌカンドラ帝国が誇る二大騎士団だ」

「っ!何者か!」

 

 男が口にした言葉から察するに、マヌカンドラ帝国の者ではないと瞬時に判断したクリスティーヌ。その一喝を受けてもなお余裕の笑みを崩さない彼こそ、この騒動を引き起こした張本人なのだろう。

 

「外はトーナメント参加者たちが押し止めているのか。全く、器としても出来が悪いとは。あの小僧も使えん」

「……参加していたあの少年のことか」

「ああ。帝国貴族に取り入り、あの小僧を参加させた。全てはこの時のために。せっかく上級悪魔の依代にしてやったというのに力も引き出せていないが、そろそろよい時間だろう」

 

 帝国側にこの男たちを手引きした裏切り者がいる。その事実に狼狽する団員たち。しかし男はベラベラとまだ喋り続けた。

 

「まあその貴族も利用する価値が無くなったのでな。隠居してもらうことになった。後は、そう。ベテルギアス帝と二大騎士団長を消せば私の使命は達成される」

「貴様一人でそれが叶うとでも」

「できるとも。言ったろう?『よい時間』だと」

『ォォオオオオッ!』

 

 外で暴れていた怪物の咆哮。次いで赤い波動が再び闘技場を包み込んだ。

 

 真っ先に異変を感じたのはクリスティーヌとヨルン。自身の内にある魔法力を意識するも、うんともすんとも言わない。

 

「古来より炎は浄化を担い、そして封印の象徴でもある。さあ、上級悪魔『封魔シルドロック』の本領発揮だ」

『ォォオオオオッ!』

 

 封魔と呼ばれた怪物が咆哮する。拘束魔法を引きちぎり、再びその暴力が振るわれようとしていたのだった。


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