深緑閣下は強い奴に会いに行く   作:CanI_01

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カーリオン研究所 二層目

一層目、二層目と言う違いは管理上の名称に過ぎない。

部外者の入場が許される区域を一層目、許されない区域を二層目と呼称しているのだ。

これにより二層目では自動銃座や軍事用ドローンなど殺傷兵器の運用が許可されると共に警備部隊の武装がミリグレード仕様へと変わり、セレディの近衛部隊である憤怒の騎士団を中心に警備対応が行われる。

スパイダーの情報共有と支援砲撃を受けた上でのヘビーサイバー部隊による戦闘は多くの場合戦闘にすらならず一方的な殲滅戦になることも珍しくはない。

場合によっては殲滅戦すら回避されるケースも多々ある。

 

のんびりと歩を進めるヴァストグリーンを阻止したのは防火用シャッターの様に見える防爆シャッターだ。

核の直撃にも耐えうるとうたわれているゼーダークルップの防爆シャッターである。

前後の道がシャッターで塞がれたのだ。そして、静かにその空間に流れ込むニューロスタン。

閉じ込められた事に気がついてもヴァストグリーンに歩みは変わらない。

ヴァストグリーンはシャッターに触れ一瞬瞑目すると次の瞬間にはシャッターが消え去る。そして吹き去る一陣の風。

それはシャッターが気化したかのような不思議な光景。

それが摂理だと言わんばかりにヴァストグリーンの歩みは変わらず進む。

 

憤怒の騎士団はエリート部隊である。

彼らは元々ロンドンに拠点をおくヌビア人のエスニックギャングであったがセレディに目をかけられ彼の直営部隊となった経緯がある。

他社の者やランナーの中には所詮はギャングと考え侮る者もいるが往々にしてそんな連中は身を持って彼らの優秀さを知ることになる。

魔法使いにはセレディもしくはその配下のドラゴンから手解きを受け更に最新鋭の身体改造を施される。

セキュリティハッカーはネオネットの最新鋭装備とトレーニングを施され、GODとすら渡り合えるとうそぶくウィザード集団だ。。

コーポレートサムライとなった彼らの肉体に埋め込まれるのは常に最先端のデルタグレードを試験運用し洗練した戦術と泥臭い忠誠心に従い戦場を展開する。

 

そんな特殊部隊を敵に回し戦えば、生き延びることすら困難となる。

仮にそれが社外であっても関わりたいと考える存在は少ないだろう。

ましてや、今回は万全のセキュリティの施された自社社屋である。

相手がアレスのファイアウォッチやレンラクのレットサムライであっても敗北する事はないだろう。

 

彼らはヴァストグリーンの移動方向から判断しいくつか用意している迎撃ポイントにて展開を行う。

的確な遮蔽ポイント、複数の自動銃座、自在に行える照明コントロール、そして人数。

必勝を期するために手を抜かず努力し油断をしない。

基本に忠実で搦手に頼らない。

そんな正攻法こそ最も成果を出すことができる。

彼らはまさにその通りに万全の体制で待ち受けている。

そんな中にヴァストグリーンは変わらぬ歩調で踏み込んでくる。

罠に気がついていないのか、あるいは踏み破れると言う自信の現れか。

 

そこは一見倉庫の様に見える50m四方の部屋だ。

一見棚が並び射線を妨げるように見えるが特定のポイントからは射線が通るようにできている。

更に数十台のカメラによる視覚支援を通すことで最悪見えない状態からでも柔らかい荷物を撃ち抜くことで狙撃が可能となっている。

10人を超えるアレスアルファを構えるコーポレートサムライと、数人のバーンアウトメイジ、レンジャーアームズSM-5を構えるコーポレーサムライ、4機の自動銃座。

待ち受けている間にメイジ達は可能な限りの支援魔法をサムライ達に、その武装に施している。

 

それらが一斉に牙を剥く。

 

彼らも一層目の戦いは見ている。近接させずに片付けることがてきるかこそが争点となるだろう。

 

されどヴァストグリーンは歩を進める。まるで王者のように。

 

オートパイロットの自動銃座が制圧射撃を行う。戦場においては無限とも言える弾薬補充機構を備えた自動銃座だ。決着がつくまで弾幕を張り続けることも可能だろう。

足を止め弾幕から回避すればそこを撃ち抜く。さもなければ、この鉄のシャワーによりミンチとされるだろう。

しかし、その予想は大きく外れることになる。

ヴァストグリーンに降り注いだ弾丸は全てが肉体に到達する前に無力に弾き返される。

固定化された鎧の呪文により意思なき弾丸は全てが打ち払われる。

しかし、並の術者であれば鎧の呪文は補助に過ぎない。

かつてティルタンジェルのハイブリンスであったルー・シェアハンドは狙い澄ましたスナイパーの狙撃を鎧の呪文により弾いたと言われている。ヴァストグリーンは不死のエルフと呼ばれるシェアバンドと同等以上の腕を持つミスティックアデプトなのだろうか。

日々高度な魔術に接している彼らだからこそ、ヴァストグリーンの非常識さを痛感する。

彼らもプロだ。ばら撒いた弾が貫通しないのであれば、その装甲すらも貫通する精度で弾丸を叩き込めば良いのだ。

 

フルオートでの一斉射撃がヴァストグリーンに襲いかかる。先程の制圧射撃が大人しく見えるような弾丸の密度だ。

されど、ヴァストグリーンの歩調は変わらず最小限の動きで弾丸をかわしてゆく。

非常識な人外の動きである。

それに続いて高階梯のイニシエイトをしたメイジから魔力波が迸る。

回避を許さぬ直接攻撃呪文であれば非常識な体術も意味を成さないだろう。

その目論見から火力の低い直接戦闘呪文を全力で叩き込む。

術者の中にはドレインにより倒れた者もいる。

 

「なかなかに良い道を歩んておるな。しかし、俺に届かせるにはまだまだよな。」

 

その言葉が示す通り微風を受けたような風情。

魔術師達のドレインの方が被害は大きそうだ。

そこに完全遮蔽の背後からの狙撃が叩き込まれる。

それまで遅滞なく攻撃を捌いていたヴァストグリーンがにわかに強い動きを示す。

しかし、その動きは一瞬足りず死の弾丸はヴァストグリーンの額に直撃する。

一筋の血が流れる。

10数人で取囲みながら1筋の血を流すことしかできない。

絶望感が憤怒の騎士団を襲う。

 

「避けきったつもりであったが、見事な腕よ。お前達の鍛錬に敬意を評し少し本気で行こうか。」

 

まずは魔法使いが絶望した。

ヴァストグリーンの放つ膨大な魔力に。

その魔力が解き放たれると同時に憤怒の騎士団達の意識は闇へと沈んだ。

 

「これを参考に精進するがよかろう。」

 

そして、ヴァストグリーンは変わらぬペースでさらなる奥を目指す。

 




隔壁の解除方法
アースドーン時代にあった元素魔術師10サークル呪文、地と風のバリアント。
金属を気体に変化させる呪文。
質量保存則は有効なので風は起きる。
オリジナル設定。

ファイやウォッチ
アレスの子会社ナイトエラントが擁する精鋭部隊。
親会社のアレスが軍需産業の雄であることから潤沢な装備と軍人上がりの精鋭ぞろいである。

レッドサムライ
レンラクの誇る要人警護部隊。
紅い武者鎧風にカスタマイズサレタミリグレードアーマーを身に着けていることで有名。

アレスアルファ
世界で最も売れているアサルトライフル。

レンジャーアームズSM-5
史上最強のスナイパーライフル。

ティルタンジェル
北米にあるエルフの国。
最近民主化した。

ルー・シェアハンド
かつてティルタンジェルを建国し国家元首を務めたエルフ。
民主化に伴いその地位を追われている。
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