深緑閣下は強い奴に会いに行く   作:CanI_01

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カーリアン研究所 地下 セレディの巣穴 エントランス

法律上の登記や入る為の権限などの有無の差こそあれ、セレディの巣穴はカーリアン研究所となんら変わらない見かけをしている。

無機質で清潔でドラゴンが歩いて通れる程大きい通路、各所にある監視カメラ、そして隔壁。

隔壁はヴァストグリーンへの効果がないと判ってからは使用されてはいないが。

 

ヴァストグリーンはまるで道を知っているかのように迷わず研究所を抜けこの巣穴へと到達した。

そして、彼がエントランスとも言えるような広大な広間に到着した。

ここがどのような用途なのかは正面で気炎を上げている3人のドラゴンを見れば一目瞭然であろう。

 

最終防衛ラインにして最大戦力の投入に他ならないだろう。

ドラゴンに手を出すなとはストリートの警句だが、それが3人だ。

企業軍であっても撃破できるかは疑わしい戦力だ。

 

しかし、ヴァストグリーンは彼らを見ても特に慌てる様子もない。

 

「出迎えご苦労。ストームマスターに取り次いでもらえるかな。」

 

ヴァストグリーンとしては当然の要求を投げかけるがドラゴン達には侮辱に感じられた。

当然であろう。このならず者に膝を屈し、自分達の主たるセレディの元に案内するように求めているのだ。

多くのドラゴンはブライドが高く、特に若いドラゴンは激しやすい。

結果激怒した彼らがよく考えもせず戦端を開いたのは致し方ないことであろう。

 

「骨も残さず焼き尽くしてくれるわ。」

 

ヴァストグリーンの脳裏にドラゴンの言葉が響き渡ると同時に奔流と呼ぶ勢いで炎が迸る。

どれ程威力があり致命的な炎であってもエリート部隊の銃弾驟雨をやり過ごしたヴァストグリーンにとって避けるほとの容易い一撃。

ドラゴンは強者故の驕りから怒りに任せた一撃を放ってしまったのだ。

もちろん、そのような一撃がヴァストグリーンに届くはずもなくあっさりと避けられてしまう。

 

「愚か者共め。これまでここで出会ってきた若輩種達自らの至らぬ事を理解し鍛錬し、思考し、強さを磨いていたぞ。

それがお前達はどうだ。生来の能力に甘え、思考もせず、安穏と暮らしているのではないのか。

釈明があるのなら聞いてやろう。」

 

その釈明の代わりか2人のドラゴンがヴァストグリーンに火球の呪文を放つ。

当たらないのであれば、避けることができないように焼き払えば良い。

 

ドラゴンの魔力で全力の火球を叩き込めば半径20mは焼き払える。

普通の生物であればまず助かるまい。

それが二重に叩き込まれるのだ。

 

しかし、その爆炎を臨みながらヴァストグリーンはにやりと笑う。

 

「全力を出したことは評価しよう。」

 

ヴァストグリーンの強い意志を込めた瞳に睨まれると1つ目の火球は割れ、その炎はヴァストグリーンには至らない。

まるで意志の力か見えない障壁を構築したかのようだ。

しかし、その力も2つ目の火球には力が及ばずヴァストグリーンが炎に巻き込まれる。

だが、その灼熱の領域に巻き込まれたにも関わらずヴァストグリーンは全身に火傷こそ負っているもののしかと立っており、未だに笑みを浮かべている。

 

ヴァストグリーンは更に笑みを深めると、その体が突然大きく膨れ上がる。

その頭頂に生えた捻れた角はそのまま大きくなり、哺乳類の特徴を有していた顔はまるでトカゲの様に変異しながら巨大化していく。

その身からいつの間にかエグゼクティブスーツは消え去り身体を覆うのは深緑の鱗。腹の部分だけはまるで若葉のような新緑。

その四肢を支える筋肉量はトロールの時と比率は変わらずはち切れる程の筋肉に覆われている。

その姿はかつては地球を支配し、未だに世界に隠然たる力を振るう存在、ドラゴン。

しかも、その体躯は正面の3人に比べて少なくとも二周りは大きい。

古代において、ヴァストグリーン達のような存在をグレートドラゴン、それ以外をコモンドラゴンと呼んだのか体感できることだろう。

その身から迸る圧倒的な存在感は他者を威圧し恐怖を引き起こし絶望させる。

その威厳の対象はドラゴンであってすら例外ではない。

3人のコモンドラゴン達は圧倒的な恐怖感に襲われながらかろうじてヴァストグリーンに向かい合っている。

そして、3人の頭の中にヴァストグリーンの声が響き渡る。

 

「では、死なぬようにな。」

 

その言葉と共にヴァストグリーンの長大な肉体が天井間際まで舞い上がり、矢のように降り注ぐ。

蹴打を叩き込まれたドラゴンは弾き飛ばされ壁に激突すると部屋を激震が襲う。

その揺れを物ともせず残り2人のドラゴン尻尾がヴァストグリーンに襲いかかる。

ヴァストグリーンは一方の尻尾を足場のように踏みしめ鉤爪をドラゴンに振り下ろす。

すると大砲の一撃すら弾き返す龍鱗が紙のように裂けドラゴンは血風を巻き起こしながら倒れ伏す。

更にヴァストグリーンは切り裂いた勢いのまま全身を独楽のように回し猛然たる勢いでその尻尾を最後のドラゴンへと打ち付ける。

龍鱗は砕け散りドラゴンは壁面へと叩きつけられ動かなくなった。

 

「ふむ。まあ、この程度であろうな。」

 

そのままヴァストグリーンは奥へと進むために大きく翼を打ち鳴らし舞い上がった。

 




ヴァストグリーン
アースドーン時代にライアジジャングルを支配していたグレートドラゴン。
人の呼び名はウースン。
鍛え上げた肉体と極めぬいた元素魔術、強力な元素精霊を使役していた。
再びドラゴンの時代を気づくことを希求していた武闘派ドラゴン。
シャドウランでの公式設定はなくオリジナル。
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