ネーナ・トリニティに憑依したけど死にゲーでは?   作:砂岩改(やや復活)

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ありがとう

「情けねぇ!」

 

「ライル…」

 

 ロックオンはケルディムの装甲を力一杯殴り付け、悔しさに震える。それを見ていたアニューも涙を流しながら慰める。

 宇宙には木っ端微塵になったアインとアルケーの破片が漂い、生存は絶望的であった。

 

「刹那に合わせる顔がねぇ…」

 

ーー

 

 それを観測していたのはプトレマイオスⅡも同じであり、アインの信号消滅とネーナの生体反応が消失したことを確認していた。

 

「そう…」

 

 スメラギはそう小さく呟くと黙り込む。

 ネーナの印象は決して良いものではなかったし、握手を交わしてから日も浅い。だが過去への贖罪と未来を切望していた彼女が居なくなったのは悲しかった。

 

「刹那に…何て言えば良いかしら」

 

ーー

 

「……」

 

 どうも最後の最後に油断して死にかけてるネーナです。

 起動しているセラフィムが見えるからそんなに離れていないだろうが通信手段も、帰還手段も無し、その上、腹には大きな破片が体に突き刺さっている。

 

(大怪我過ぎて痛くねぇや)

 

 すごく眠い、これ寝たら死ぬやつだと思いながら思い出に浸る。

 

 まぁ、なんだかんだ大好きなガンダムの世界に来れたのは嬉しかったな。大変な方が多かったけどモビルスーツには乗れたし、刹那達みたいな原作キャラと交流を持てたのは貴重な体験だった。

 どうせ二度目の人生だ、好きに生きて好きに死ぬつもりだったが少しだけ無念だ…。

 

「刹那…」

 

 彼、悲しむかな。悲しんでくれるだろうか、悲しんで欲しくないけど…。

 なんとまぁ、矛盾とはこの事だろうか。

 皆には幸せになって欲しい、原作より少しでも、それだけのことをソレスタルビーイングの皆含め、してきたはずだ。

 

「けほ、けほ…」

 

 力なく咳をするとバイザーに血が付着する。

 あと数分と言ったところかと思っていると目の前にダブルオーが現れ、優しく掌に包まれる。

 

「流石…」

 

「ネーナ!」

 

 慌てた様子でコックピットから出てくる刹那を眺めるネーナは力なく笑いかける。

 体を貫かれ、生気が失われていくネーナの姿に刹那は動揺を隠せなかった。

 優しく、しっかりと彼女を抱きしめると自然と涙が溢れていた。

 

「刹那…」

 

 涙を流す刹那を見ていると罪悪感が込み上げてくる、自分は他人に泣かれる人間じゃないと思うがこうして泣かれると少しだけ嬉しくもあった。

 自分のやってきたことは無駄じゃなかったと、そう思えたから。

 手足を動かすことすらままならない体で出来るのは話すことだけ。

 

「ネーナ!」

 

「ありがとう…」

 

 血を吐きながら感謝を紡ぐ、どうあがいても死は避けられない、まだリボンズが片付いていないし、ELSの事もあるのに時間が足りない。

 

「俺は!まだ!」

 

 刹那自身も感情が昂りすぎて言葉が上手くでない様子だ、イノベイターに進化した刹那は淡白なイメージがあったがそんなこともないのか。

 彼はイノベイターへと進化した、人より鋭敏な感覚を持つことになる彼は新たな孤独と向き合うことになる。

 

(せっかく平和になったのに…寂しいじゃない)

 

 映画では彼はすごく寂しそうだったと思えてくる。

 

「一人で…抱えないで。貴方は…一人じゃない」

 

 眠い、すごく眠い。

 

「私がずっと…そ…ばに……いる」

 

 死者の慰め程度だが少しでも彼の心が安らかであるようにと願いながら眠る。

 

「ネーナ、ありがとう」

 

 謝罪ではなく感謝を告げる。その方が彼女が喜ぶと思ったからだ。眠るように静かになった彼女をもう一度、強く抱きしめるとダブルオーへと戻る。

 

「……」

 

 オーライザーにネーナを座らせるとプトレマイオスⅡに戻ろうとするがセラフィムが狙撃によって破壊されてしまい、そのままリボンズ戦へと移行するのだった。

 

ーー

 

「起きたか」

 

「は?」

 

 死んで目が覚めたら全裸のティエリアがこちらを覗きこんで来ていた。思わず変な声が出るが仕方ないだろう。

 

「どうやら成功したようだな」

 

「露出趣味は黙ってあげるからとりあえず服着たら?」

 

「失礼な、君も似たようなものだろう」

 

 よく見たら自分も全裸なのを見て驚くネーナだったがまたいつの間にか服を着ていた。

 

「これってまさか、ヴェーダ?」

 

「そうだ」

 

 まぁ、確かにこのタイミングでティエリアがいる場所と言えばヴェーダの中ではあるがまさか自分がそこにいるとは…。

 

「正直に告げると僕も驚いている」

 

 そもそもヴェーダに意識のストックをしていたのはリボンズだけのはずだった。ティエリアは正規のイノベイドだからヴェーダに侵入できたがネーナは違う。

 計画外の非公認のイノベイドであるためヴェーダに意識をストックしておくことは不可能であった筈だった。

 

「リボンズのおかげか、確かにデータはあった。だが君がこうして我々の知るネーナとして意識を保っていられる事の説明が出来ない」

 

 まさに奇跡とも言える事態にティエリアも驚きが隠せないがネーナには少しだけ心当たりがあった。

 

「まさかクリア報酬って…」

 

 サーシェスを殺した時、脳裏に浮かんできたクリア報酬が支給されますと言う文言。これの事であれば説明がつく。

 だが、こうなるとそれ以上にヤバイことがある。

 

「え、これもう一回刹那と会えと?あんな恥ずかしい事、言っといて?」

 

「予備の肉体があったから既に転送の準備は出来ている」

 

「待ちなさいよ、心の準備が」

 

 このティエリアとか言うやつ鬼畜か?準備が出来てるじゃないのよ。

 

「顔を見せてやれ」

 

「ちょ!」

 

 文句の羅列をティエリアにぶつけようとしたらその前に転送されまた意識が持っていかれる。

 

(次会ったら永遠に愚痴、言ってやる)

 

 そんなことを考えながらネーナは流れる意識の中で目を閉じるのだった。

 

ーー

 

「んあ?」

 

「ネーナ!」

 

「あ?」

 

 プトレマイオスⅡの医療室、いつの間にかそこに寝かされていたネーナは起きるや否やアニューに抱きしめられ意味も分からずに彼女の抱擁を受ける。

 

「え?ここは?」

 

「トレミーよ。刹那を回収していたらヴェーダから通信があってね。指定座標にカプセルに入っていた貴方を発見したってこと」

 

「良かった、本当に良かったぜ…」

 

 スメラギの説明を受けているとその後ろにいた右目が包帯で覆われているロックオンも安堵したように座り込む。

 どうやら自分が目覚めるまでずっといたらしい。

 

「死ぬ直前にヴェーダに登録されたらしくて意識をそのままに新しい肉体に転送されたのよ。奇跡だわ」

 

「本当に…みんな。生きてるのね」

 

「うん!」

 

 泣きながら強く抱きしめるアニューに抱擁を返すと落ち着けるように背中をさすってあげる。

 アニューを落ち着けるのにかなりかかってしまい、その間、知らせを受けたソレスタルビーイングの面々が代わる代わる訪れ、なんだがむず痒い気持ちになる。

 

「……」

 

 だが一人だけ、刹那だけは病室に来てくれなかった。

 スメラギに聞くと刹那自身、リボンズとの戦闘で負傷して療養しているが特に動けないとかそう言うことはないらしい。

 

ーー

 

 こっちも受肉?したばかりで足の動きがぎこちないため苦労しながら外が見えるブロックまで行くとそこには沙慈とルイスがいた。

 

「居たのね」

 

 てっきり連邦軍に保護されたと思っていたがルイスの病状もあって一度、合流したのだろう。

 

「貴方が」

 

 初めて生身同士で会う。以前とは違い、ルイスに殺意がない。沙慈と分かり会えたからなのかそれとも別の感情なのか分からないが自分には言わなければならないことがある。

 

「あの…」

 

「やめて」

 

 だがその言葉はルイスに遮られる。

 

「貴方の事は大嫌いだし、一生許さない。今でも殺したいぐらい」

 

 沙慈を強く抱きしめたままネーナを強く睨み付けるルイス。

 

「貴方を殺してもパパとママは生き返らない。褒めてくれないかもしれない。だから一生、私と沙慈の人生に関わらないで」

 

 酷く冷たいルイスの言葉にネーナはなにも言わずに聞く。

 

「これ以上、貴方に人生を狂わされたくない」

 

 当然だ。謝罪は所詮、謝罪したものが楽になるのであってされた側が癒されるわけではない。自分の浅慮さに嫌気を憶えながら黙って立ち去る。

 

ーー

 

 生き残ってしまった以上、この十字架を一生背負っていかなければならない。寿命すらなくなったこの身には丁度よいかもしれないなと思いながら部屋に戻るとそこには直立不動の刹那が待っていた。

 

「刹那…」

 

「……」

 

「刹…うっ……」

 

 無言のまま抱きしめられ固まるネーナ。と言うか抱きしめる強さが強すぎて息しづらい。

 

「刹那?」

 

「……」

 

 かなりの罪悪感を刹那に感じつつ、もがくが全く動けないし刹那は動く気配すらない。

 

「ごめんなさい。正直、私も死ぬと思ってたから」

 

「……」

 

 うーむ、これは困ったぞ。マジでどうすれば良いか分からん。

 そんな事を考えていると刹那が小さく震えているのが分かる、泣いている感じではないが、とにかく自分のせいでこうなってるのは確かだ。

 

「ソラン…」

 

 右腕を無理矢理、抜け出させて刹那の頭を撫でてやると拘束が緩み、息がしやすくなる。

 

「大丈夫よ。私はもう居なくならないわ」

 

「あぁ」

 

 次は左腕を抜け出させて背中をトントンしてやる。子供をあやすようにしてやると刹那も安心したような雰囲気を感じる。

 

「側にいるわよ…」

 

 これ、ほとんど告白ではと思いながらも刹那がそんな状態ではないので優しく語りかけてやる。時間が経つといつの間にか2人はベッドに腰掛けて思い出話になっていた。

 

「エクシアと一緒に来たのは驚いた」

 

「いや、アレは事故だったのよ!好きでやるわけないじゃない!」

 

 時折、刹那も笑う姿を見て、安心していると刹那はゆっくりと話し始める。

 

「俺も罪を背負っている」

 

「…」

 

「父と母を俺はこの手で殺した」

 

 話としては知っていたけど刹那からこの話をされるのは初めてだ。たとえ洗脳されていたとしても自らの意思で殺したのは間違いない、そんな事実が彼を苦しめているのだろう。

 だがよく考えると自分と似てる気がする。その時はなにも悪くないと思ってた。でも今はこうして後悔してる。

 全く知らない憑依した自分が思うことは必要ないかもしれないがそれを他人事と思える気持ちにはなれなかった。

 もはや、俺はネーナであり、ネーナは俺なのだ。

 

「私たちは一生消えない傷を自分でつけた。でも、そんな私たちも未来へと歩いていけるわ。貴方が示したように、皆と同じように歩んでいきましょ」

 

「ありがとう」

 

 自分達は変わらなければならない。だが自分の全てを変える必要はない。

 

「だから私は貴方の全てを愛すわ」

 

 

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