ネーナ・トリニティに憑依したけど死にゲーでは?   作:砂岩改(やや復活)

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望まずとも歯車は回り出す

 

 リボンズたちの決戦から2年後、プトレマイオスⅡと合流を果たしていたネーナたちは新造した機体達を搬入していた。

 

「これがスローネフュンフ」

 

 アニュー用に設計された機体はスローネを連想させる赤系ではなくアニューの髪色に合わせた紫を基調としたカラーに塗装されている。

 

「ネーナが言ってた2年後になったけど動きは?」

 

「木星全域を感知できるように衛星は配置済み。廃棄されたエウロパにもセンサーを設置してますから動きがあれば分かるかと」

 

 スメラギとアニューがもしもに備えて今後の事を協議している間、ネーナはクアンタのコックピットに座ってヴェーダのターミナルユニットと同調し調整を行っていた。

 

「どうだ?」

 

「かなりのデータ量を処理してるけど頭痛すら起きないわ」

 

「その為にネーナの脳も調整しているからな」

 

 この2年間でネーナの脳をヴェーダとの激しいやり取りに耐えられるように調整を重ね、今では難なく行えるようになっていた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫よ。心配性ね!」

 

 ずっとこちらを見てくる刹那に笑いかけながら専用のヘルメットを脱ぐ。

 

「心配するだろう。初同期の実験では鼻血と血涙が止まらなかったんだからな」

 

「あれはびっくりしたわね」

 

「他人事みたいだが心配させられた刹那が可愛そうだ」

 

 ティエリアのお小言も慣れ、流しているが確かに刹那には可愛そうなことをしたなと思いながらクアンタのコックピットから出る。

 原作とは違い、複座型に再設計されたクアンタは操縦の全てを刹那が座る前席に任せているが後席はネーナ用のヴェーダと同期しELSの思念を受け止める為の席だ。

 

「ネーナ」

 

「心配しないで、貴方を一人にはしないわ」

 

 最初は原作ティエリアの如くデータとして同行することも考えたがネーナ自身も生身でクアンタに乗り込むことに決めた。

 もし50年に及ぶ大航海を行うのであれば精神衛生上、データ思念ではなく生身の人間がいた方が良いだろうと言う冷静な判断であるがネーナ自身の我儘も含まれていた。

 

 その為、ネーナの後席は体ががっちり固定できるように設計されている。非常時用に操縦桿もあるのだがあくまでも非常時用だ。

 

「クアンタの最終調整のために一度基地に向かうわ。そのついでと言ってはなんだけどヴェーダからテロの予測が出てるの」

 

 フェルトは刹那とロックオンにデータを渡すと刹那の頭に顎を乗せていたネーナも見る。

 

「マリナ・イスマイールってまさか…」

 

「ネーナ?」

 

 気になって飛んできたアニューはロックオンに支えられて停止するとネーナを見る。

 

「これってコロニー公社の視察を巡る問題じゃないの?」

 

「そうだけど。ネーナが言ってたのってまさか」

 

「この事件よ。私が見た未来の事件」

 

 察しの良いフェルトに反応してネーナは同意する。

 それを見てその場にいた全員が表情を固くする。

 

「アレルヤたちに言わなきゃね。一応、召集する旨は事前に伝えているわ」

 

「頼みます」

 

「とにかく刹那とロックオンはそれの対応を。私たちは早く戻ってクアンタの最終調整をするわよ」

 

「「了解!」」

 

ーー

 

 その後、刹那たちを見送り、基地に辿り着いた一行は食事となった。

 

「今さらなんだけどELSの先遣隊と接触した時点で対話は出来ないの?」

 

「難しいわね。私の予測だけどELSは人間みたいに《個》が集まって《群》を成しているのではなく。《群》が《個》として巨大なネットワークを構築して並列思考してるのだと思われるわ」

 

 食堂で炒飯を食べながらフェルトが質問すると厨房で中華鍋を振るうネーナは真剣な表情で答える。

 

「ハイヴマインドと言う事かしら。でもそんな生物が存在するなんて…でもそれなら先遣隊と意識共有をすればなんとかなるのかも」

 

 アニューも海老チリを食べながら考えると回鍋肉を皿に盛ってやって来たネーナは悩む。

 

「可能性は0じゃない、だから試すのよ。可能ならそれがベストだけど端末が遠ければ遠いほど無駄な情報が増えてヴェーダと私を通じても処理しきれないかもしれないわ。それなら直接ELSの本体と接触して対話を行った方が成功率が高い。と言うのがヴェーダと導きだした結論よ」

 

「確かに不確定要素は出来るだけ排除した方が良いです!」

 

「その未来予知が正しければ本隊はまだ木星のワームホールを移動してきていない。思念に距離が関係あるか不明だけどそもそもELSが不確定要素の塊だからこそ万全を期すのは道理ね」

 

 ネーナの回鍋肉をアテに酒を飲むスメラギ。

 

「本当にネーナが居なかったらこれだけの準備は出来なかった。ネーナの見た未来だとその予知が無かったわけだろ。その時の俺たちはどうしてたのかね」

 

 ラッセの言葉に全員が頷く。

 

「まだ決まった訳じゃないんだけど…」

 

「あ、コラお前達。飯こんなに食いやがって。ネーナが当番の時は遠慮しろって言ったろ!」

 

「時間に遅れるのが悪いのよ」

 

 皆の反応に照れているとイアンたちも食堂に到着し悪態を吐きながら料理をよそう。

 

「ネーナのご飯、美味しいからね」

 

「フェルトも美味しいわよ」

 

「ネーナに教えて貰ったからよ。まだまだ…」

 

 遠慮がちに言っているフェルトだがアニューに化粧やら美容やらを教えて貰い。ネーナにも料理やコミュニケーションを教わる彼女は誰から見ても良い女だ。

 

「自信を持ちなさい。貴方は良い女よ、私が男だったら嫁に欲しいわ」

 

「そうそう、自信は大切よ!」

  

「「ねー!」」

 

 相変わらず仲の良すぎるネーナとアニューにフェルトは呆気にとられながらも思わず笑うのだった。

 

ーー

 

「ネーナ!」

 

「来たわね」

 

 刹那達がマリナのコロニー公社訪問のミッション中に木星に送っていた衛星から通知が届き、エウロパに設置していたセンサーの反応が途絶した。

 

「タイミングも状況も完璧ね。これでネーナの予知が現実になったわ。N32プランを開始する、これで良いのね」

 

「えぇ、犠牲は覚悟の上です」

 

「分かった。刹那達が帰還次第、木星へと進路を取るわ!」

 

 エウロパ、第一陣は原作通りに連邦軍に対処させガデラーザを使わせる。

 破壊した破片落下による一般人イノベイター達に対しては様々な協議の結果、黙認と言う形にすることにした。

 ELSが人間を襲うことになってしまうがその後の地球圏の事を考えるとELSと共生した人間が居たほうが良いとの結果に落ち着いたからだ。

 

 だがこのやり方はネーナの納得のいくものではなく、リボンズたちイノベイドと同じような事をしていないかと不安になっていたが最終的な地球圏発展のために目を瞑るしかなかった。

 

(落ち着きなさいネーナ・トリニティ。これからとんでもない数の人間が犠牲になるのよ)

 

 この2年間、文字通り最善を尽くした。後からこうすれば、ああすればと思うことはあるがその時の判断で自分は最善を尽くしたと言う。それは間違いなく事実だ。

 

(進むしかないわ)

 

 





スローネフュンフ

アニュー・リターナー用に開発された第5世代スローネ。
スローネツヴァイ、アルケーの基礎設計踏襲しつつイノベイドMS技術を取り込んで開発された機体。
対ELS用に1対多数を前提とした設計で疑似太陽炉であるがツインドライブシステムが搭載されており高い出力を持つ。
 スローネの最終形態でありリボンズガンダムの後継とも言える機体。

 対ELS用に両肩にGNフィールド発生装置と搭載、武装も全てエネルギー系の武装にしてある。
 長期戦に備えて粒子タンクを背面に設置、使いきったらパージも可能。
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