季節は春を迎え俺も4年生に進級した。
秋から冬にかけて水泳などによる体力の強化や道場に通いながら身体の軸を中心とした身体の使い方の練習、お父さんによる打撃のメニューとやることが多く時間があっという間に過ぎた。
日々の練習によって少しずつ自分のものになる感覚が出てきた。
ステータスの表示も入団してから一年経ち良い感じに成長したと思う。
現在のステータスはこんな感じだ。
最高球速:100km/h (カテゴリー上限:120km/h)
制球:C
スタミナ:C
弾道:3
ミート:B
パワー:C
走力:C
肩力:B
守備力:C
捕球:B
また、秋の大会を経験した為か特殊能力も増えていた。
特殊能力
・鉄人
・鉄腕
・鉄仮面
・ノビ○
・チャンス◯
新たに『チャンス◯』を手に入れた。
『チャンス◯』の詳細はこんな感じだ。
『チャンス◯』
・この能力を持つとチャンスに強くなる。
・ランナー2塁以上の時、ミートとパワーが上がる。
・この能力は成長するにつれ進化する。
今回手に入れた『チャンス◯』は『ノビ◯』と同じく進化する特殊能力だった。
ただ、詳細にあるランナー2塁以上の時ミートとパワーが上がるという点は、ケースバッティングとかの練習の時には感じることが出来なかったので試合の時にどうなるのか楽しみである。
こうして一冬越えて野球選手として成長したが成長出来なかったこともある。
それは身長だ。
同級生の健はもう160cmを越える身長に達し、祐吾も平均より少し高くなったにも関わらず俺の身長は平均にも届かない。
しかも、2歳年下の妹とあまり変わらない身長で泣きたくなった。
その事をお父さんに相談するとお父さんの子供の頃も俺と同じく背が低かったらしい。
今の身長が178cmくらいのお父さんがそう言うなら今後の成長に期待したい。
◆
現在、俺は夏の大会へ向けて変化球を1つ覚えようと思い悩んでいた。
将来的に覚えたい球種はいくつかあるが今はストレートを生かす球種がいいと考えていた。
そこで佐藤先輩に相談してみた。
「夏の大会へ向けて1つ変化球を覚えたいと思うんですけど何がいいと思いますか?」
「比呂が変化球ね。具体的にどういう目的で投げたいと思ってるの?」
「ストレートを生かす変化球が欲しいなと思って、一応考えていたのはカーブなんですけど。」
「なるほどね。比呂のストレートにカーブが加わればあの大和先輩でも手を焼きそうだね。でもそこまで考えているのに相談するってことは何か理由があるからだよね?」
「そうですね。夏の大会までにストレートも磨かないといけないと思うんです。でもそれにプラスして腕の使い方が違うカーブもとなると夏の大会までにものに出来るか不安なんですよね。」
「ストレートの精度も上げたい部分だよね。球速は去年より上がったけどまだコンスタントに投げられていないからね。そうなると━━━」
佐藤先輩が言いかけようとした時、遠くから俺達の様子を見ていた人物が近づいてきてこう言った。
「比呂にはチェンジアップが良いんじゃないか?」
「あっお父さん。」
「こら比呂今はチームの練習中なんだからお父さんはやめなさい。」
「すみません橘コーチ。でもなんでチェンジアップがいいと思うんですか?」
そう聞くと理由を説明してくれた。
「たしかにカーブも緩急をつけるのにはいい変化球だと思う。更に軌道も他の変化球と違うから目線を外せる利点もあるから。」
「ただ比呂が懸念していたようにカーブは腕の使い方が他の変化球と比べて違うから夏の大会じゃ全国までに使えるレベルには間に合わないと思う。」
「そこでチェンジアップだ。腕の振りもストレートに近いし腕への負担も少ない。握り形次第では空振り取れるくらいに変化するし緩急を使いたいなら尚更いい変化球だと思うよ。」
「たぶん佐藤も同じくことを言おうとしてたと思うけど急に現れて遮っちゃってごめんね。」
「いえ、橘コーチが言いたい事全部言ってくれたので大丈夫です。それに夏の大会までに間に合わせるとなるとチェンジアップしかないですからね。」
こんなやり取りがあり、夏の大会へ向けてチェンジアップの習得に向けて練習を重ねるのであった。
◆
俺が入団してから1年が経ち、今年も新入団する選手達が入ってきた。
後輩となる3年生達を見ていると小柄などこかで見たことあるピンク色の髪の子がいた。
その子を見ていると後ろから佐藤先輩と小湊先輩に声をかけてきた。
「比呂、何見てるの?」
「あっ佐藤先輩と小湊先輩。いや、あそこにいる子どこかで見たような感じがして。」
「あーあれは亮介の弟の春市だよ。もっと近くで見たらそっくりだよ。僕も亮介の家遊びに行った時はびっくりしたから。」
「そうなんですね。通りで見たことあると思った。じゃあ弟君入ってきたなら亮介先輩って呼んだ方がいいですか?」
「別にいいけど。じゃああいつに挨拶させるかな。おーい春市こっちこい。」
そう言うと亮介先輩は春市を俺達がいる所へ呼んだ。
「あっ亮ちゃん・・・じゃなかった何かあった兄貴?」
「比呂がお前のこと気になってたみたいだから呼んだ。挨拶しろよ。」
「(この人が兄貴が言ってた橘先輩か。)今年から入団しました小湊 春市です。よろしくお願いします橘先輩。」
「(おー生春市ちょっと感動だな。)おう!よろしくな春市。」
また原作キャラに会えて嬉しくなる比呂であった。
その後、去年と同様にポジション毎に新入団選手が別れて練習に入る。
俺もブルペンで投げようと思い向かっていると後ろから声がかけられた。
「おいお前ピッチャーか?これからブルペン行くなら受けてやるよ。」
そう言われ振り向くと新入団選手らしい奴がそこにいた。
「それ俺に言ってる??」
「そりゃそうだろここにはお前しかいねぇじゃねぇか。」
「じゃあお願いしようかな。俺は橘 比呂よろしく。ところで名前は?」
「あっ名前言ってなかったな。俺の名前は袴田 智よろしくな。」
「(袴田か。監督の息子かな?)じゃあブルペン行こっか。」
そう言ってブルペンへ向かった。
◆
ブルペンでは健と祐吾がすでに投げていた。
2人とも去年より実力を伸ばし、祐吾はスタミナの向上とコントロールにも磨きがかかり球速も80km/hを越えてきた。
健は相変わらずスタミナお化けで、コントロールも荒れ球ではあるがここぞという時には狙ったところへ投げらるコントロールを身につけた。
2人をステータスで表すとこんな感じ。
三矢 祐吾
最高球速:85km/h (カテゴリー上限:120km/h)
制球:B
スタミナ:D
真鍋 健
最高球速:95km/h (カテゴリー上限:120km/h)
制球:D
スタミナ:B
更に2人は夏の大会へ向けて変化球の習得にも力を入れている。
器用な祐吾の持ち球はこんな感じ。
・ストレート
・ツーシーム
・チェンジアップ
・カーブ(現在練習中)
祐吾は、初めての紅白戦で投げたツーシームと秋以降に自分で練習していたチェンジアップをものにしている。
現在は目線を変えるカーブの練習中だ。
健の持ち球はこんな感じ。
・ストレート
・スライダー(現在練習中)
健はインコースを強気に攻めるピッチングをものにしつつあり変化球は決め球でスライダーを練習している。
そんな中ブルペンで練習している2人の目に飛び込んできたのは新入団選手のキャッチャーと一緒にブルペンに入ってきた比呂の姿であった。
「健君あれって比呂君だよね?なんで新入団選手連れてブルペンに入って来たんだろ。」
「大方、比呂のあの身長だから同じ新入団選手だと思われて声でもかけられたんじゃね。でもあの新入団選手も可哀想だな初めてじゃ比呂のボールは無理だろ。」
「たしかに。あの様子だと健君の言う通りかも。けど比呂君もそれ分かってるから全力では投げないんじゃないかな。」
「それは言えてるな。監督も見てることだし無茶はしないか。」
2人はそう言って比呂達の様子を見守った。
◆
俺は新入団選手の袴田を連れてブルペンに入った。
ブルペンでは健や祐吾、先輩達がすでに投げていたので肩を早めに作って準備に入った。
何球か投げて肩が出来たので袴田に合図を出し座ってもらう。
袴田がどれだけ捕れるのか分からなかったので5~6割で投げた。
シュッ パン
「(ふーん柔らかいキャッチングするな。これならもう少し力入れても大丈夫そうだな。)」
そんな事を思いながら俺はピッチング練習を続けた。
健や祐吾の他にも俺達のピッチング練習の様子を見守る人がいたそれは監督だ。
「(比呂は智が新入団の選手と分かって投げてくれているな。ブルペンに入って来た時は驚いたがあいつどれだけ比呂ボール捕れるのか興味あったから手間が省けたな。ただあのバカ息子は口の聞き方がなってないからそこが心配だ。)」
そんな風に思っている監督を他所にボールを受けていた袴田は比呂にこう言った。
「お前チビの癖にそこそこいいボール投げるじゃん。まあ俺がバッターなら余裕でホームランにしてやるけどな。」
俺は最近の悩んでいた身長のことを年下に言われてカチンときた。
表情に出していないが俺の雰囲気が変わったことを様子を見ていた3人は察した。
「「「(比呂のスイッチが入った。あいつ終わったな。)」」」
俺は先程までとは違うダイナミックなフォームから9割まで力を入れたボールを投げ込む。
ビュッㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤドカン
投げられたボールは袴田が構えたミットを通過し見事にマスクに激突し後ろに倒れた。
投げ終わり袴田が後ろに倒れているのを確認すると頭に上っていた血がサーと引くのを感じた。
「(ヤバいやっちまった。)袴田大丈夫か!?」
袴田に近いて声をかけるとピッチング練習を見ていた監督もやってきた。
「あー気にするな比呂。うちのバカ息子が生意気言ったのが悪い。これに懲りて礼儀を学んでくれたら嬉しいがな。」
「いや自分も大人気なかったというか。声かけられた時に先輩だと言えば良かったと思うんで。」
「それでも同じように生意気言ってたと思うから気にしないでいい。おい智早く起きろ!」
「うっ....いてて。」
立ち上がった袴田を見ると幸い怪我などはしていなさそうで安心した。
「怪我はしてなさそうだな。どうだった比呂のボールは?」
「あんな速いボール見たことなかった。気がついたら目の前にあってマスクに当たってた。」
「比呂はまだ4年生だかストレートは全国でも上位のレベルだからな。お前が捕りやすいように力抑えて投げていたのに生意気なこと言うからあんなことになるんだぞ。」
「っ!?(先輩だったのかよ。しかもあんなボール投げれるのに1つしか学年変わらないとかマジか。)」
袴田は俺が4年生という事実に驚いたようだった。
「袴田に怪我が無くて良かったよ。力入れて投げてごめんね。」
比呂はほっとした笑みを浮かべながらで袴田に謝ったが袴田から見た比呂の目は笑っていなかった。
「いえ、先輩とは知らず生意気言ってすみませんでした。(この人絶対怒らせたらいけない人だ。次やったらただではすまないかも。)」
その後まだ練習初日ということもあり大事をとって袴田は見学に回った。
◆
ピッチング練習のあと俺はグランドに戻ってバッティング練習に混ざった。
するとゲージの外で順番を待っていた佐藤先輩が俺を見つけてニヤニヤしながら声をかけてきた。
「比呂聞いたよ。早速新入団の選手をシメたんだって?」
「いやいやそんな事してないですよ。結果的にはそう言うことになりましたけど。というより佐藤先輩なんで知ってるんですか?」
「さっき健が面白おかしく報告に来たからだよ。亮介とか大和先輩にも話してたかな。」
「あいつ余計なことを報告しやがって。絶対大和先輩とかいじってくるじゃないですか。」
「まあいつも大人な比呂が、後輩に身長のこと言われてキレるなんて珍しいからじゃない?いつもなら聞き流すように努力はしてるから。」
「俺にも色々あるんですよ。特にここ最近は身長の件に関しては。だからちょっと我慢出来なくなってしまったと言うか。」
最近悩んでいたこともあり袴田に言われて過剰に反応してしまったことを反省する比呂であった。
「比呂にも年相応の反応があっていいと思うけどね。ところでそのキャッチャーの新入団選手はどうだった?」
話は変わって新入団のキャッチャーに興味を持っていた佐藤先輩が袴田について聞いてきた。
「そうですね。キャッチングが柔らかくて投げやすかったですよ。鍛えていけば来年以降佐藤先輩の立派な後釜になると思います。監督の息子らしいですよ。」
「ふーんそんな選手なんだね。僕も監督の恩返しの為にも卒業するまでに鍛えてあげなきゃね。もちろん比呂達にも協力してもらうけど。」
「わかりました。佐藤先輩が抜けたあとのことを考えると後釜となる選手を鍛えるのは大切ですからね。」
袴田の知らないうちにレギュラー捕手と次期エース候補達による特訓が決定した瞬間であった。
佐藤先輩から袴田について聞かれたので俺は春市について聞いてみた。
「ピッチング練習でノック見れなかったですけど春市はどうでした?」
「そうだね。僕もプレーを見るのは初めてだったけど守備は上手かったよ。亮介の動きに似てたかな。」
「へー佐藤先輩がいうなら相当上手そうですね。今年もいい選手が入って来ましたね。」
「まぁ今後の楽しみではあるけどね。けど僕達はまず夏の大会で結果出さないと。去年の先輩達に全国制覇の宣言しちゃったんだから。後輩のこともいいけど来週からの対外試合で結果残さないと大会のメンバーから外されちゃうよ。」
「それは分かってますよ。去年のリベンジもあるんですから必ずメンバーに選ばれて全国で活躍してみせます。」
こうして後輩となる新入団選手が加わり比呂のリトルでの2年目が始まるのであった。
今回はここまでです。
中途半端かもしれませが次回以降は対外試合や予選の話に行ければと思います。