神様からの特典を確認し、夏休みということもあり子供らしく外で遊ぼうと考え、自分の部屋からリビングへ移動したところお父さんが熱い視線でテレビを見ていた。
何を見ているのだろうと覗き込むとテレビでは夏の甲子園の中継が放送されていた。
お父さんも野球が好きなのかなと思い声をかけてみる。
「お父さん何観てるの??」
「うん?比呂か。これはな甲子園と言ってな高校野球の全国大会だよ。昔からある大会で日本の夏の風物詩みたいなものさ。」
「へぇーお父さんは野球好きなの??」
「野球大好きだぞ。こう見えて父さんはな高校の時今テレビでやってる甲子園にも出たことがあるんだぞ!」
「!?お父さん凄いね!!」
まさかお父さんが甲子園に出ていたとは驚きだ。
これまでの記憶を遡っても野球のやの字も出て来なかったからである。
「野球って面白いの??」
「もちろん面白いぞ。比呂も一緒に観るか?」
「うん!お父さんがそんなに言うなら一緒に観る!!」
満面の笑みで伝えるとお父さんの顔も笑顔になった。
お父さんと一緒にテレビで甲子園を見ていると出ている高校は前世の高校とは多少違う名前の高校が多かった。
そういえば何が原作の世界かは行ってみてからのお楽しみと神様が言っていたな。
「どうだ比呂野球は面白いか?」
お父さんは、僕に野球を好きになってもらおうとテレビの中継を見ながら野球の楽しさを教えてくれた。
「うん!面白いと思った!お父さんの高校?はこの大会に出てるの?」
「今年は出てないかな。お父さんが出たときの録画したビデオがあるから比呂見てみるか?」
「うん!観てみたい。」
お父さんが、見せてくれたこのビデオがこの世界を知るきっかけとなりまた人生の目標となった。
『夏の高校野球選手権も残すところこの試合を含めてあと2試合。準決勝第二試合 西東京代表 青道高校 対 神奈川県代表 横浜翔西高校 この試合の注目はここまで1人で投げ抜いてきた《魂のエース》片岡鉄心投手対横浜翔西が誇るクリーンアップトリオ諸星・橘・野田が率いる強力打線の対決です。』
『解説の古田さんこの試合の注目ポイントはどこでしょうか?』
『そうですね。なんと言っても数々の強豪校を倒してここまで勝ち上がってきた青道高校の片岡選手の出来が試合の鍵となるでしょう。これまで戦ってきた高校のバッターとは一つレベルの違う横浜翔西高校の諸星選手、橘選手、野田選手をどう抑えるのか、更に、周りを固める選手も普通の高校なら四番を張っていてもおかしくない選手だらけですからね。一瞬足りとも気の抜けない強力な打線ですから片岡選手の出来に懸かっていると言っても過言じゃないでしょう。』
『なるほど。大会記録を更新している横浜翔西の打線は脅威ですからね。今日の試合片岡選手がどう抑えるのかが青道高校の勝利の鍵ですね。さぁ楽しみが尽きない準決勝第二試合間もなく試合開始です。』
解説を聞いて驚いた、ダイヤのAの青道高校監督片岡鉄心が選手としてテレビに映っていたこと。更に、隣で一緒に見ている父親もこの試合に相手チームの四番として出ていたのだ。
「あっお父さんが映ってる!しかも四番なんてすごいね!!」
興奮気味に伝えるとお父さんはハニカミながらこう言った。
「うーん、お父さんよりも三番の諸星と五番の野田の方がすごかったからね。お父さんはこの時三年生だから四番を打ってただけだよ。試合を見てればわかるよ。」
謙遜しながらそんなことを言っていた。
そうなのかな?と疑問に思いながら父親の試合を初めて観る為テレビに集中した。
試合が始まり初回、青道高校の攻撃は三者凡退で終わった。その裏、横浜翔西の攻撃。父親のプレーもそうだが片岡監督のプレーも初めて見るため凄くワクワクしていた。
横浜翔西の一番が打席に入る。その1球目、アウトローへのストレートが唸りをあげるかのようにキャッチャーのミットに突き刺さった。
『1回の裏、横浜翔西の攻撃。一番ライトの袴田が打席に入ります。青道高校エース片岡、第1球投げました。アウトコース低めに146km/hのストレートが決まり1ストライク。いやー素晴らしいコースに素晴らしいボールが決めりましたね。』
『そうですね。これはバッターは手が出ませんね。スピードもそうですがコントロール、球威そのどれもが素晴らしいですね。』
そのような解説を聞いてるうちに一番、二番と連続三振に打ち取り2アウト。打席にはお父さんが凄いと言っていた三番の諸星が打席に入った。
『青道高校エースの片岡、危なげなく横浜翔西の一番・二番を連続三振に打ち取り2アウト。ここで打席には横浜翔西史上最強と名高いクリーンアップトリオの三番諸星が打席に入ります。解説の古田さん諸星選手のどこが素晴らしいでしょうか。』
『そうですね。諸星君の素晴らしい点は類い稀なるミート力と技術です。どんなボールにもついて行け、そして、三振が少ない。更にボールのどこをどういう風に打てば打球が飛ぶのかを熟知しています。パワーだけで言えば四番の橘君や五番の野田君に一歩劣っていますが、その抜群のミート力と技術で長打力は引けをとりません。』
『なるほど。今大会打率チームトップの.782の諸星。今年の春から夏にかけてまだ公式戦で1度も三振をしていませんね。この怖いバッターを相手に青道エース片岡どんなピッチングを見せてくれるのでしょうか。』
その第1球、左打者の諸星のインコースへこの日最速の148km/hのストレートを投げ込む。対する諸星も打ちにいき鋭い打球がライトのファールゾーンへライナーで飛んで行く。前世でも見たことがないほどのスイングと打球こんな高校生がいるかと鳥肌がたった。
その後、カウント2ボール2ストライクになり迎えた第5球。本日まだ投げていなかった長身から振り下ろされる切れ味鋭い縦のカーブがアウトローへ。
打者の諸星も一瞬ボールを見失ったような反応を見せ手が出ず見逃し三振に切って取られてしまった。
『2ボール2ストライクからの5球目。片岡の得意球、縦に鋭いカーブがアウトローへ決まり三振!!諸星手が出ませんでした。今大会初三振を青道エース片岡から奪われる形となりましたね。』
『そうですね。このカウントまで内角に速いボールを何球も見せられて速い球と内角を相当意識させられましたからね。そして、あのカーブ。1度も浮き上がってから急速に落ちてくるあの独特なカーブをアウトコースの抜群のところに投げ込まれたらいくら諸星君でも手が出ませんね。』
まだ、1回の表裏だけしか見てないがとてもハイレベルな攻防をみて鳥肌がずっと立ちっぱなしだった。
こんな世界で野球が出来るのかと期待と興奮が爆上がりだった。
「お父さん相手のピッチャーの人凄いね!!お父さんが言ってた諸星さんて人も凄いバッターだって思ったけどそれ以上に凄かった!!」
「そうだな。この夏対戦したどのピッチャー...いや、今まで対戦したどのピッチャーより青道の片岡君は凄かったよ。」
前世の記憶がある僕からしたら片岡監督を片岡君と呼ぶお父さんがちょっと違和感あるけどその言葉と表情を見て本当に凄かったんだなと想像が出来た。
「次の攻撃の時お父さんからなんだよね?次の攻撃が楽しみだな。」
「そうだな。お父さんは、もう結果を知っているけど比呂は知らないからな。このあとどういう試合になるか楽しみにしてな。」
そんなお父さんの言葉を聞いて、ますますこの後どうなるのか楽しみになるのであった。