初練習から一ヶ月が経った。
新入団した俺達もチームの全体練習にも慣れてきた。
先輩達は、夏の大会のベンチ入りメンバーを目指して練習に熱が入っている。
そんな中、俺はというと3年生になり本格的に野球の練習をするようになり土日はチームの練習、家ではお父さんと一緒にお父さんに言われた練習をこなしている。
またチームの練習がない平日は、水泳などの習い事に時間を割いている。
ただ、このスケジュールだけを聞くと遊ぶ時間がなさそうに見えるが、ちゃんと休む日も設けて習い事がない日など友達と遊ぶ時間はちゃんと確保している。
お父さん曰く、身体を休めることも練習だと言うことらしい。
そして今俺は、初日のブルペンで指摘されたスタミナとコントロールの改善の為練習をしている。
同級生の健や祐吾もそれぞれの課題が指摘されているので現在俺と一緒に別メニューを行っている。
ピッチャーの俺達は、試合で投げるのは来年になると監督に言われている。
その為ピッチャーとしての能力を1年をかけて向上することを目標としている。
ただチームでの紅白戦など実戦形式の練習は秋以降行っていくとのこと。
俺の練習メニューはというとまず体力をつける為に走り込みをしている。
走り込みと聞くと長距離を走るイメージかもしれないが野球のプレーの中で長距離を走るということはない。
今やっていることは短い距離を何本も走ることをしている。
ただそれだけだと飽きてしまうので20mの間隔でマーカーを置いて片側にボールを5個ほど置き反対側のマーカーにボールを時間制限付で運ぶという練習などバリエーションを持って行っている。
体力の向上や野球における瞬発力を鍛える為だ。
この練習は、体力面で課題を指摘されている祐吾も一緒に行っている。
コントロールの向上では、バランスボードやバランスボールを使ってその上でバランスを取ったりしてバランス感覚と体幹を鍛え、シャドウピッチングやネットスローで投球フォームを固めている。
こちらはコントロールの課題がある健も一緒に行っている。
同年代のライバルがいることでお互い刺激になって成長を促進させている。
ここで俺のライバル達を紹介したいと思う。
真鍋 健 右投げ右打ち
健は、俺達3人の中で一番背が高く小学校3年生にして150cm後半の身長を誇る。
また3人の中で体力が一番あり一緒に練習をしても疲れているところを見たことがない。
ピッチングに関しては上から投げ下ろすフォームをしていたがコントロールが全然つかなかった。
ピッチングを見た監督曰く健の身体の使い方が横回転らしく縦に身体使うフォームとの相性が悪いみたいだ。
その為、いまはサイド気味の投球フォームを取得しようと努力している。
球質は重く、キレイな回転のストレートではないのでサイド気味にすることでよりバッターは打ち辛くなりそうだ。
ステータス的にいうとこんな感じだと思う。
真鍋 健
最高球速:75km/h (カテゴリー上限:120km/h)
制球:F(G寄りに近い)
スタミナ:D
続いて祐吾に関して
三矢 祐吾 左投げ左打ち
祐吾は、普段は気弱で弱々しい雰囲気があるがピッチング練習をしているときはその雰囲気が全く無くなる。
俺達3人の中でコントロールが一番良く投球フォームに関してもクセがなく監督曰く怪我をしにくい理想的なフォームとお墨付きを貰うほどだ。
更に、このチーム唯一の左投げ投手ということもあり監督の期待も高い。
ただ体力が無く健とは対照的に練習が終わるといつも倒れている。
その為体力向上の為のメニューを多くこなしている。
投げるボールは、球速こそないもののボールの回転がキレイでなおかつ回転数も高いので落ちないストレートを投げる。
ものすごくノビを感じる訳ではないのだが球速の割にストレートが落ちないのでバッターは戸惑うと思う。
ステータス的にいうとこんな感じ
三矢 祐吾
最高球速:60km/h (カテゴリー上限:120km/h)
制球:D
スタミナ:F(G寄りに近い)
このライバル達に負けないよう俺は練習に力を入れるのであった。
本格的に野球を始めて一ヶ月。土日の練習以外で俺がなにをしていたかというと、習い事の水泳では体力の向上と無理なく全身を鍛える為に頑張り、コントロール向上の為に監督から身体の軸の話をしてもらったのである先生に話を聞いていた。
ここは山本武術道場。
ここでは柔道や合気道などあらゆる武術の鍛練や指導を行ってくれるところである。
ここもお父さんが小さい頃お世話になったところであり勧められたので通っている。
今日俺が話を聞きにきたのはここの道場の師範山本 源三さんだ。
源三さんは、身体構造に精通し指導した教え子の中にはオリンピックに出場している選手もいるほどだ。
「こんにちは先生。今日は聞きたいことがあり、話を聞いて頂きたいのですが。」
「おう比呂か。教え子の話くらい聞くぞ。何が聞きたいのだ?」
「先週からお父さんと同じく野球を本格的に始めてピッチャーをやりはじめたのですが、コントロールが上手くいくときといかない時があり監督からのアドバイスの中に身体の軸の話が出てきたので先生に話を聞きたいなと思いまして。」
「なるほど。身体の軸は武術だけに関わらず全てのスポーツに共通する部分だからの。まだ比呂には身体の軸について話してなかったのう。」
そういうと先生は説明をはじめた。
「比呂は軸と聞いてどんなことを想像する?」
「うーん一本の棒みたいな感じですかね?五重塔の心柱みたいな。」
最近テレビで見て軸ってこういうものだよなと思ったから。
「なるほどの。じゃあ身体の軸と聞くとどうだ?」
「背骨をイメージしてしまいますね。」
「大体の人がそう考えるだろうな。でもわしが考える軸とは首の付け根、みぞおち、股関節、膝、足底この5つのポイントのうち3つが線上に揃っていれば軸が形成される。」
「それはなんでですか?」
「比呂が言うように背骨だけを意識していたらほとんどのスポーツで動きがぎこちなくなってしまうだろ?比呂はピッチャーらしいがずっと背骨をピンと張った状態で満足いくボールが投げられるかの?」
想像してみるが絶対ムリだと思った。
「動きの中でこの3つのポイントを揃えるよう意識すると動きに安定感が出るんだ。更に、人によって身体の動かし方は変わるのでその人にあった型が存在する。ある程度パターン化出来るので試して見るか?」
その後、先生の指導のもと自分の型の診断とどのように動かせば力を発揮しやすいかなど教えてもらった。
ただ、一朝一夕で覚えられることではないので道場での鍛練の時に継続して教えてくれることとなった。
家に帰り、お父さんを呼んで庭で投げてみることにした。
先生に教わったポイントを意識することによって投げ終わりのばらつきが大分減ったので大きな収穫だった。
日課となっているお父さんの指導ではバッティングにもピッチングにも通じることを習った。
「比呂が本格的に野球をやるようになったからいままでよりも本格的な指導をしたいと思う。今日の話はピッチングにもバッティングにも通じるところだから良く聞いてくれ。」
「わかった。」
「今後これが出来るようになれば必ずお父さんのようにはなれるからな。まず比呂にはこれをやってもらう。」
そういうとお父さんは、腕を前に出して自分の正面で手の平を合わせて横に広げ、また自分正面に戻るよう手の平を合わせる動きをした。
一連の動作を目を閉じたままで。
この行動に頭の中で?マークがいっぱい出てきた。
これが出来ればお父さんのように必ずなれる?
誰にでも出来ると思うんだけどと思っていた。
そんなことを考えているのを見透かされてるかのように言われた。
「比呂こんなこと誰でも出来ると思ったろ。比呂やってみろ但しやる時はお父さんのように目を閉じたままでな。」
そう言われ目を閉じ同じ動作を行ってみると。
「あっズレてる。」
「そうだろう。目から情報が入ってきている状態だとこの程度の動きならズレることはないが目を閉じてこの動きをするにはイメージが必要になる。ただこのイメージと身体の動きにズレがあると比呂のように合わせた手がズレてしまうんだ。」
「そうなんだ。」
「このイメージ通りに身体が動くというのは非常に重要だ。例えばバッターだと高校生くらいになれば150km/hとか投げてくるピッチャーもいるだろその場合ミットまでは投げられてから約0.4秒ほどでミットに届く。そんな時、目から入ってきた情報を処理してからバットのスイングをするのははっきり言って無理だ。投げるまでにある程度予想をして準備をしていなければ。予想=イメージに身体がついてこれなければ打つことは出来ないからな。」
「そうなんだね。じゃあピッチャーとしてはどうなの?」
「ピッチャーとしてはイメージ通りに身体が動くということは自分の理想的フォームの再現性が高くなることだ。例えば疲れてきてフォームが崩れた際にすぐ修正が出来たり、同じフォームから変化球を投げれたりと様々だな。比呂からすればコントロールが良くなることもイメージ通りに身体動かすことに繋がるな。」
なるほどと思った。このお父さんが言っていることを実践することが出来れば野球選手としての力が何倍にも膨れ上がりそうだ。
こうして俺は日々新たにレベルアップするために毎日色々なことを教わりその習熟の為に練習をするのだった。
そして季節は夏となる。
主人公の練習メニューが主になってしまいました。
小学校の頃から詰め込み過ぎだと思われるかも知れませんが1年やそこらでこの全てが物になるとは思っていません。
現在は種蒔きしていると思っていただければと思います。
チーム以外の練習メニューの管理はすべてお父さんが行っている設定です。