幻の流れ星   作:きなこモチ

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出会い

颯「はぁ、暑い...」

 

 

 

 

2012年4月、高校2年に進級した 田村(たむら) 颯汰(そうた) は、講堂での始業式が終わり、新しい教室に戻ると、長かった始業式と暑さで少し疲れていた。

 

 

 

 

颯(やっぱり、知らない子しかいない...人見知り治さないと...)

 

 

 

 

颯汰には小学校からの友達の 河野(こうの) (ゆう) がいるが、2年連続で別のクラスになり、再び離れてしまった。

 

 

 

 

机で腕枕をつくって寝ていると、ふと隣の子の視線を感じた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

颯「なぁ」

 

 

 

 

悠「ん?」

 

 

 

 

颯「悠は新しいクラス、どんな感じなんだ?」

 

 

 

 

悠「うん、隣の子が面白くてさぁ、接しやすいんだよ!当たりクラス引いた気がする」

 

 

 

 

颯「本当か~?」

 

 

 

 

悠「本当だよ!そういう颯汰はどうなんだよ」

 

 

 

 

颯「...問題ないよ」

 

 

 

 

悠「...本当か~?」

 

 

 

 

颯「うん...」

 

 

 

 

 

学校が終わり、悠と帰っていた。

口では「問題ない」とは言ったものの、本当はうまくやっていける気がしない。

 

 

 

悠は明るくて、初対面の子でも、自分から話しかける性格から、いろんな子と仲が良い。

 

 

 

 

でも僕は、自分から話しかけるのが苦手だから、相手が話しかけてくれるのを待ってしまう。

 

 

 

 

颯(なんで悠はこんな僕と一緒にいてくれるんだろう。一緒にいて楽しいのかなぁ。嬉しいけど...)

 

 

 

 

途中で悠と別れ、自分の家に着くとすぐにお風呂に入り、クラスメートにどういう風に話しかけようか考えていた。

 

 

 

 

また一人、かなぁ...

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

ジリリリ...

颯「やべっ!もうこんな時間!」

 

 

 

 

 

翌朝、僕は学校を遅刻しそうになり、朝ご飯を食べずに急いで家を出た。

 

 

 

 

 

呼吸を整えながら教室に入り、自分の机にカバンを置くと、まだ名前も知らない右隣の席の女子生徒に声をかけられた。

 

 

 

 

颯「ハァ..ハァ..ハァ..」

 

 

 

 

「急いできたんですね。でも1時間目まであと30分くらいありますよ?」

 

 

 

 

颯「えっ?あっ、ホ、ホントだ..。

...き、今日提出の課題がまだ終わってないから、朝早く来てやろうと思って」

 

 

 

 

「今日提出締め切りの課題はないですよ?」

 

 

 

 

颯「あれ、そうだっけ?」

 

 

 

 

 

「ウフフッ..なんだか面白い方ですね。」ニコ

 

 

 

 

颯「!……」///

 

 

 

 

走ってきたので体が火照っていたが、その一言でまた火照るのが自分でもわかった。

 

 

 

面白い人だとか言われたことないから恥ずかしかったけど、ちょっと嬉しかった。

 

 

 

でもなぜか、馬鹿にされたような気もしたので、僕は冗談で怒ってみせた。

 

 

 

 

颯「き、君も、来るの早いよね!なんで?」

 

 

 

 

「...時計を見間違えて早く来ちゃった」

 

 

 

 

颯「え」

 

 

 

 

思わず吹き出しそうになった。

 

 

想像すると可笑しく思えて、なんだか可愛いなと思った。

 

 

でもそれは、お嬢様のオーラが漂う容姿を見ただけでは想像出来ないと思う。

 

 

 

これが『ギャップ萌え』ってやつか?

 

 

 

 

この子の事、ちゃんと見てなかったけど、スタイルも顔も良くて、魅力的だなって思った。目をそらしてしまう。

 

 

 

 

「あ、そういえば。お名前は?」

 

 

 

 

颯「田村 颯汰 です。よ、よろしくお願いします」

 

 

 

 

紬「琴吹(ことぶき)(つむぎ) です。よろしくお願いします~」

 

 

 

 

紬さんって、どんな人なんだろう。

 

 

 

 

 

誰かのことを、深く知りたいという感情が芽生えたのは本当に久しぶりだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 

紬「颯汰さんって、部活入ってるの?」

 

 

 

颯「部活はしてなくて、一ヶ月くらい前からバイト始めたんだ」

 

 

 

紬「そうなんだ」

 

 

 

颯「紬さんは何か部活やってるの?」

 

 

 

紬「軽音部に入ってるの!」

 

 

 

颯「すげー...意外!」

 

 

 

紬「それよく言われるわ~」

 

 

 

颯「軽音部...ってことは楽器やるんだよね。何の楽器やってるの?」

 

 

 

紬「キーボードやってるの」

 

 

 

颯「へぇ~!キーボードか~

生演奏聴いてみたいな~」

 

 

 

紬「うん、今日も放課後に音楽準備室で練習するから聴きに来て~」

 

 

 

颯「え、いいのか!?」

 

 

 

キーンコーン...

 

 

 

颯「ってもう昼休憩か」

 

 

 

授業中はずっと、紬さんとおしゃべりをしていた。

 

 

 

これから昼食の時間だが、紬�さんの知らない一面を知ることができて、既に満腹だった。

 

 

 

颯(...あれ?弁当が無い...)ガサゴソ

 

 

 

紬「...?どうしたの?」

 

 

 

颯「弁当、忘れたみたいで...」

 

 

 

紬「...ちょっと食べる?」

 

 

 

颯「いやいや悪いよ!遠慮しとく」

 

 

 

紬「私、こんなに食べれないし...」

 

 

 

颯「じゃあ、お言葉に甘えて...

ありがとう」

 

 

 

紬「ううん、気にしないで?」ニコ

 

 

 

颯(本当優しいな、紬さん。

今度お返ししないとな。)

 

 

 

颯「この玉子焼き、おいひぃ~♪」

 

 

 

紬「良かった~」

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

午後の授業が終わり放課後になると、僕は約束通り、紬さんと軽音部の部室へ向かった。

 

 

 

颯「し、失礼します...」

 

 

 

颯(!...男子がいない...)

 

 

 

「おっ!いらっしゃ~い!ムギ、その子が

颯汰君か?」

 

 

 

紬「そうよ~」

 

 

 

律「じゃあ自己紹介するか!

私は、田井中(たいなか) (りつ)!よろしくな!

んで、こっちがベースの 秋山(あきやま) (みお) に、ギターの 平沢(ひらさわ) (ゆい)!」

 

 

 

澪「よろしくな」

 

 

 

唯「よろしくね~!」

 

 

 

颯「よろしくお願いします...って、えっ?部室でお茶なんかしてもいいの?」

 

 

 

唯「大丈夫だよ!ほら、あーん」

 

 

 

颯「いやいやいや、た、食べないからね?」///

 

 

 

唯「なんで~?おいしいのに~」

 

 

 

ガチャ

 

 

 

律「お、さわちゃん!」

 

 

 

颯(絶対怒られるぞ...!)

 

 

 

唯「先生は、イチゴ味かミカン味のどっちがいい~?」

 

 

 

 

 

さわ子「え~、マロン無いの~?」

 

 

 

颯「...ここは喫茶店なのか?」

 

 

 

紬「あっ、皆!颯汰君に私達の演奏を聴いてもらいましょう?」

 

 

 

唯「あ、そうだったね。ケーキが美味しくて忘れちゃってた」

 

 

 

澪「忘れるなよ...」

 

 

 

律「よし、演奏するか!」

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

ジャジャジャーン!!

 

 

 

 

律「...どうだった?オリジナルなんだけど..」

 

 

 

颯「..すごく良かったよ!!」

 

 

 

唯「良かった~!」

 

 

 

紬「上手く出来た~!」

 

 

 

律「いや~、良いと言ってくれて嬉しいな~!唯には、あんまり上手くないってハッキリ言われたからな~!」

 

 

 

澪「そういえばそんなこと言ってたな~」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

律「あ、颯汰君ちょっと来て」

 

 

 

颯「う、うん...?」

 

 

 

僕は田井中さんに部室の端へと連れられた。

 

 

 

律「ちょっと聞きたい事があってさ。

1年の時は、ムギや私達と同じクラスじゃなかったよね?」

 

 

 

颯「うん、今年が初めてだね...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

律「...ムギの事、何とも思わないの??」ニヤニヤ

 

 

 

颯「...どういうこと?」

 

 

 

律「ちょっとは、可愛い~とか思ったりしないのかなって。外見だけじゃなくて中身も良いよあの子」

 

 

 

僕は律さんのその言葉を聞くと、唯さん達と楽しそうに話す紬さんの横顔を見ながら思い出した。

 

 

 

 

颯(そういえば今日、お弁当分けてくれたなぁ...)

 

 

 

律「あ、あとひとつ。この事言おうか迷ったんだけど...」

 

 

 

颯「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

律「...実はムギ、1年の時からいじめにあってるの」

 

 

 

 

 

 

颯「えっ...」

 

 

 

その言葉を聞いたとき、胸が一瞬締め付けられた。

 

 

 

律「だから私と一緒に、ムギを守ってほしい」

 

 

 

律「1年の時に、目撃した女子から聞いたんだけど、人のいないところで受けてるみたいで。」

 

 

 

律「たまたまその女子がその現場を見て、電話で誰かに連絡しようとしたら、いじめてる人に気づかれて『言ったらどうなるかわかるよね?』って言われたらしいの。」

 

 

 

律「1年の時は私が一緒にいたんだけど、今はクラス離れちゃって。」

 

 

 

律「だから、ムギと同じクラスの人で頼めるのは颯汰くんしかいないの。帰り道も一緒に帰ってあげて?」

 

 

 

律「それは、いじめてる人から守るためだけでなく、心の支えとしても。」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

律「私もいじめてる人を特定したいけど、それらしい人が見つかんなくて」

 

 

 

律「...ごめんね。私もできることはするから」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

律「あ、この事は周りには内緒ね...?もちろんムギにも、『聞いた』って言わないでね。」

 

 

 

颯「...わかった」

 

 

 

澪「何してるんだ?そんなとこで」

 

 

 

律「ああいや、何でもない~、ってもうこんな時間か。そろそろ帰んなきゃだな~」

 

 

 

中野(なかの)(あずさ)「やっぱり今日も練習しないじゃないですか~」

 

 

 

律「って梓、いつの間にいた!?」

 

 

 

律さんが目撃者から聞いたという事は、紬さんは口封じされているようだ。

いじめる人の言うことなんか守らなくていいのに。

 

 

 

僕はいつの間にか真剣な表情で、唯さん達と楽しそうに話す紬さんの横顔を見つめていた。

 

 

 

紬さんを守らなきゃ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

颯「紬さんってさ、休みの日は何してるの?」

 

 

 

紬「日中はお買い物かな。夜は外に出て、星見てる」

 

 

 

颯「...紬さんって星見るの好きなんだ?」

 

 

 

紬「うん、夜の空気とかすごくいいなあって」

 

 

 

颯「俺も。心が綺麗になるよね」

 

 

 

紬「うん、その日あったイヤな事とかを消してくれる...」

 

 

 

 

颯「...紬さん、ちょっと喫茶店に寄らない?俺、家に帰っても暇だからさ。紬さんがこの後用事なければ...大丈夫??」

 

 

 

紬「うん、大丈夫だけど...」

 

 

 

紬さんはなぜか暗い顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

颯「だけど...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬「...紬って呼んで欲しいな~」ニコ

 

 

 

颯「えっ?で、できないよ!いきなり呼び捨ては...。あ、そういえば友達にはムギちゃんって呼ばれてるよね?」

 

 

 

紬「...」ムク-

 

 

 

颯(か、可愛い...)

 

 

 

放課後は軽音部におじゃましていたので、初めて紬さんと一緒に帰ることになった。

 

 

 

この日はバイトが休みなので紬さんと喫茶店に寄り、LINEを交換して別れた。

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