幻の流れ星   作:きなこモチ

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バレンタイン 2

颯「くそっ...!」

 

 

 

 

 

僕の体は血だらけになっているが、そんなのどうでもいい。

 

 

 

 

 

命が無事なら。

 

 

 

 

 

 

僕は紬の首の後ろに手をまわし、優しく抱いた。

 

 

 

 

そんなことしても意味がないことは分かっている。

 

だけど、こうしていると生き返ると願っている自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

それに...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬の体温を感じたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが最後かもしれないから...。

 

 

 

 

 

 

 

悠「おい颯汰!今すぐ離れろ!!!」

 

 

 

 

 

 

「離れたほうがいいですよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

俺は別に医療従事者でも何でもないから、今の紬の状態がどうだとか分からない。

 

 

だからって、諦めたわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

悠「電気ショックが流れます!皆さん離れてください!」

 

 

 

 

 

 

 

...だけど、この姿を見ると、何だか助からないような気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

霞んで見える目の前の光景をよそに、僕はただ泣いているだけだった。

 

 

 

 

 

 

悠「こっちです!」

 

 

 

 

颯「...!」

 

 

 

 

 

蘇生を続けていると、救急車やパトカーが駆けつけてきた。

 

 

 

 

 

 

颯「お願いします...絶対に助けてください」

 

 

 

 

悠は救急隊員に事故の状況や紬の容態を聞かれ、付き添いとして救急車の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

紬と悠を乗せた救急車は、サイレンを鳴らし、あっという間に姿を消した。

 

 

 

 

 

颯 (頼む...助かってくれ...)

 

 

 

 

 

 

果たして、俺のとった行動は正しかったのか。

 

 

 

 

 

 

紬の一生が、俺に―――。

 

 

 

 

 

そんなことがずっと頭によぎり、不安で不安で仕方がない。

 

 

 

 

 

けどもう、紬が生きて戻ってくるのを信じるしかない...。

 

 

 

 

 

 

 

 

辛いけど軽音部の皆にも連絡しなきゃ...。

 

 

 

 

 

 

プルルル

 

 

 

 

 

 

 

颯「もしもし...り、律...?」

 

 

 

 

律 "もしもし...颯汰?"

 

 

 

 

颯「あ、あのさ...つ、つむ...が」

 

 

 

 

律 "ど、どうした!?

何言ってるかわかんないから、まず落ち着こ...?"

 

 

 

 

颯「う、うん...」

 

 

 

 

律「大丈夫か...?

...で、どうしたんだ?」

 

 

 

 

 

 

颯「...実は、紬が―――」

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

律「は...?!」

 

 

 

 

 

唯「...どうしたんだろう?」ヒソヒソ

 

 

 

 

 

 

澪「珍しいな、律が焦るなんて」ヒソヒソ

 

 

 

 

唯「確かに、私も見たこと無いかも」ヒソヒソ

 

 

 

 

 

律 「まじかよ...」

 

 

 

 

律「 ...じゃあ、私たちも搬送先の病院へ向かうから。颯汰は今、病院にいるのか?」

 

 

 

 

澪「病院...?」

 

 

 

 

律「本当に...?す、すごいな」

 

 

 

 

唯「...?」

 

 

 

 

律「悠は救急車に乗っていったのか。

じゃあ、悠に搬送先を聞いてそっちに向かうか。後で合流しよう。じゃあ!」

 

 

 

 

プツー

 

 

 

 

唯「律ちゃんどうしたの...?」

 

 

 

 

律「ムギが事故に遭ってたらしい」

 

 

 

 

唯澪「「えっ!?!?」」

 

 

 

 

澪「ムギ...居場所が分かったと思ったら...」

 

 

 

 

唯「...とにかく、ムギちゃんのとこへ急ごう!」

 

 

 

 

律「ああ!」

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

悠が向かっている病院に着き、その後律達とも合流した。

 

 

先に悠達が到着していると思ったが、なぜか僕達の方が早かった。

 

 

 

 

まあ、もうすぐ来るだろう...

 

 

 

 

 

 

 

そう悠達を待っているところだけど―――。

 

 

 

 

 

 

 

律「―――でも、何もできなかったわけじゃないでしょ...?」

 

 

 

 

颯「うん...悠に気付かされて、やることはやれた。

 

でも...紬の状態があまりにも...」

 

 

 

 

唯「...」

 

 

 

 

澪「...」

 

 

 

 

律「...だ、大丈夫だよ!

颯汰は頑張って助けようとしてくれたんだ。優しいムギなら応えてくれる...」

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

すると、しばらく喋っていなかった唯が口を開いた。

 

 

その内容は、当然皆も気になっていることだった。

 

 

 

 

 

 

唯「...ちょっと遅くない...?」

 

 

 

 

 

颯「連絡、来ないな...」

 

 

 

 

 

澪「...なんかイヤだ...怖い...」

 

 

 

 

 

颯「この病院だって言ってたけど...」

 

 

 

 

唯「...」

 

 

 

 

律「もう少し待ってみるか...」

 

 

 

 

 

病院に着いた僕らは、後から来る悠達を待っているところだけど...。

 

 

 

紬が運ばれてから、もうすぐ2時間が経とうとしている。

 

 

 

 

 

さすがに遅すぎる。

 

 

 

 

 

先に着いているのか...?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...あ、そういえば。

 

 

 

 

 

 

 

颯「処置してる時、紬がこんなの握ってたんだけど...」

 

 

 

 

澪「え...」

 

 

 

 

唯「う...血...

 

ねぇ、ムギちゃんは本当に大丈夫なの...?

嫌だよ...そんなの――」

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

中に着てる服の状態を見て皆が怖い思いをしないよう、悠から借りたコートを羽織っている。

 

 

 

そのコートのポケットから、ある物を取り出した。

 

 

 

 

 

律「手紙...?」

 

 

 

 

颯「まだ読んでないけど...それっぽい」

 

 

 

 

 

自分の目で読める気がしないので、律に渡した。

 

 

 

律は「私が読むの...?」と聞くと、それを受け取り、恐る恐る開いた。

 

 

 

 

律「ええと...」

 

 

 

 

 

 

律「...『皆さん、本当にごめんなさい』」

 

 

 

 

 

 

律「『そして、颯汰君。ごめんなさい』」

 

 

 

 

 

 

 

律「『...でも、どうかお許しください』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

律「『実は』...」

 

 

 

 

 

 

 

 

律「...えっ」

 

 

 

 

 

颯「...?」

 

 

 

 

 

 

 

律「『いじめを受けていることを颯汰君に言ったら、颯汰君の命は無いって言われちゃって...』」

 

 

 

 

 

 

颯「は...?」

 

 

 

 

 

 

――――――6月の頃――――――

 

 

 

 

女A「分かってるよね?」

 

 

 

紬「...」

 

 

 

女A「お前の大好きな颯汰君?...に、私らの事言ったらどうなるか」

 

 

 

紬「...わ、わからない...です」

 

 

 

 

女A「颯汰君の命が!あら危な〜い♪」

 

 

 

 

紬「あのっ!!

...颯汰君だけは...やめて...ください...」

 

 

 

 

 

女A「何言ってるの?

そんなの、君次第だからね?」

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

女A「颯汰を生かしたければ、言わなきゃいいだけじゃん」

 

 

 

 

 

女A「言わなかったら今まで通り、私らと()()だけ」

 

 

 

 

 

 

女A「ま、言うとなれば...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女A「...紬ちゃんが颯汰を殺したも同然だね」

 

 

 

 

 

 

紬「...!」

 

 

 

 

 

 

女B「...見て!嬉しそうな顔してくれたよ!」ヒソヒソ

 

 

 

女A「ああ!この顔いつ見ても面白いよね!」ヒソヒソ

 

 

 

 

女AB「「っははは!」」

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

男「よぉー!...って、また琴吹と遊んでるのかー!」

 

 

 

 

女A「しーっ!!大声出さないで!」

 

 

 

 

男「ごめんごめん!っていうか早く帰ろ」

 

 

 

女A「うん」

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

女A「...じゃあね!紬ちゃん」スタスタ

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

女B「...まじでやる?」ヒソヒソ

 

 

 

女A「何を」ヒソヒソ

 

 

 

女B「颯汰を――。」ヒソヒソ

 

 

 

女A「やるわけないじゃん。

絶望に満ちた顔をするのが面白いから、冗談で言ってるだけ」ヒソヒソ

 

 

 

 

 

 

 

女A「金持ちで余裕だからか、大切な人がいるからか知らないけど」

 

 

 

 

 

 

 

女A「あの幸せそ〜な顔を見てると、イライラするんだよ」

 

 

 

 

 

 

女B「分かる、わざわざ自慢してくるなよな、顔で」

 

 

 

 

 

 

女A「はははっ!!」

 

 

 

 

 

 

女A「...そうだ!この前言ってた服買いに行こ〜!このお金で!」

 

 

 

 

女B「うん!他の人達も呼ぼ!」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

『大切な人の命が救えるのなら、私、いくらでも耐えられると思ってた...』

 

 

 

 

 

 

 

『皆と過ごす日々が本当に楽しくて――』

 

 

 

 

 

 

 

『颯汰君と一緒に眠ったあの時、気付かれないように泣いちゃった...』

 

 

 

 

 

 

『颯汰君の温かさに、なんだか安心しちゃって。』

 

 

 

 

 

 

『それに、颯汰君の笑顔を見るたび、嫌なことを忘れることができた』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だけど...』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だけど...やっぱり耐えられなくって...』

 

 

 

 

 

 

 

 

『...私がもっと強ければ、こんなことにならなかったのに』

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

『...私、気付いたの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『...いなくなれば、全てが解決することに』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう苦しまなくていい

そして、颯汰君は救われるんじゃないかって...』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もっと、一緒にいたかった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

律「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も考えることが出来ず、言葉が出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

紬を守るどころか、守られていたなんて...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬は、いつも笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

"こんなにも元気な子が、いじめに遭ってるとは...な..."

 

 

 

 

 

そう思ってしまうこともあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど本当は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕に気づかれないように...悟られないように...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやって笑顔を作っていた日があったと思うと、胸が締め付けられて涙が溢れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唯「ムギちゃん...どうして...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルルル...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

律「あ...悠...」

 

 

 

 

颯「...!!!」

 

 

 

 

 

悠という名前を聞いて、全身の血の気が引いた。

 

 

 

 

今、悠だけが紬の命運を知っている。

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

律のスマホのスピーカーから漏れる音声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

律「悠...!今どこにいるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠 "救急車の中......"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

律「えっ―――」

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

律「それって...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠 "今.....息をひきとったって..."

 

 

 

 

 

 

律「え...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

澪「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唯「ムギ...ちゃん...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唯「しんじゃだめーーーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな...

 

 

 

 

 

 

助からなかったなんて...

 

 

 

 

 

 

 

俺は...

 

 

 

 

 

 

 

 

紬の人生を壊してしまった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬が自分の人生を壊そうとするのを、俺は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...許してしまった

 

 

 

 

 

 

 

何が『紬に相談されるまで待つ』だよ...

 

 

 

 

 

 

紬の様子がおかしいと感じたこと、何度もあったじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな異変に、紬のSOSのサインに気付いていたはずなのに...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、見て見ぬふりをしていた...ということだよな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことが頭によぎった今、目に見えている世界が歪み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

立っていることもままならなくなり、僕は膝から崩れ落ちてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唯はその場でしゃがみ、澪は唯を抱いて慰め、律は泣きながら電話の対応をしている。

 

 

 

 

 

 

 

でもそんな中、僕だけ悲しいという感情が無いのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

我慢してるわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういう感情を抱く余裕がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

頭の中は真っ白だった。

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

気付くと僕は、地面に両膝をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (許してくれ...

本当に許してくれ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (全部俺が悪かった...本当にごめん...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (だから、お願い...死なないで...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (別れたくない...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (...ごめんなさい)

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...!!!」

 

 

 

 

 

 

 

颯 (何で...こんな時に...)

 

 

 

 

 

 

 

告白したあの時に言われた言葉が、頭の中でよみがえってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"...いつも、ありがとう"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優しい声で伝えてくれた言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣いて感謝されたことなんて、人生で初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"絶対に俺が守らなきゃ"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の底からそう思えた瞬間を、思い出した僕...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (...ま、まだ...まだ間に合う...よな...)ダッダッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (これからも感謝してもらうんだから...)

 

 

 

 

 

 

よろめきながら立ちあがり、律達に声もかけず、全力で走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

紬のいる場所なんてわからないけど、走っていればすぐに見つけられるだろうと思った。

 

 

 

 

 

"紬〜?"

 

 

 

 

"うん!なあに?"

 

 

 

 

 

 

紬を呼びかけるといつも、こうだった。

 

 

 

 

 

 

紬の姿が見えなくなって、探すのに大変だったことなんてなかった。

 

 

 

 

 

なのに...

 

 

 

 

 

「はぁ...はあ...はあ...」

 

 

 

 

 

 

もう、どれくらい走ったのか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...うわっ...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな時に、転んでしまうなんて...

 

 

 

 

 

颯「いってぇ...

 

ううっ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時―――

 

 

 

 

 

 

 

心のどこかにあった、光と言われる何かが、一瞬にして消えるのを実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「紬...俺に教えてくれたじゃないかよ...」

 

 

 

 

 

 

颯「保育士になりたいって夢...」

 

 

 

 

 

 

 

颯「一生懸命勉強してたじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

颯「しんだら解決するなんて思わないでよ...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「そんなの...俺どうすればいいんだよ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「夢に向かって頑張る姿、好きだったのに...」

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時みたいに...

 

 

 

 

 

手を差し伸べてくれることなんて...ないよね...

 

 

 

 

 

 

 

颯「もうっ...ダメだ...ぁぁ...っ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

紬との、最後の会話が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 「つむ...ぎ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

くだらない喧嘩だったなんて...

 

 

 

 

 

 

 

もっと一緒に過ごしたかったな。

 

 

 

 

 

 

 

颯「うっ...」

 

 

 

 

 

 

 

琴吹紬。

 

 

 

 

僕の人生を、明るく照らしてくれた子。

 

 

 

頑張ることの意味を教えてくれた子。

 

 

 

 

僕がいろんなことを教えたようで、実は、この子からたくさん教わった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな子に...

 

 

 

 

 

 

僕の心とは裏腹に、この穏やかな場所で...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「......ばいばい...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さよならを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、どれくらいの時間が過ぎたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

気づくと僕は、玄関の前に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 (服洗って、お風呂に入るか...)

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

 

母「あら、おかえり―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングに入ると、母親が家事をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

母「...ど、ど、ど、どうしたの!?血だらけになって!?」

 

 

 

 

 

 

 

颯「紬に...別れを告げてきた...」

 

 

 

 

 

 

 

 

母「......どういうこと?」

 

 

 

 

 

 

颯「...遊びに行った帰り道、何やら騒がしくて」

 

 

 

 

 

 

 

颯「見に行ったら、紬が事故に遭ってた」

 

 

 

 

 

母「...」

 

 

 

 

 

 

 

颯「目の前のことが先なのに...もしものこと想像してしまって...」

 

 

 

 

 

 

颯「何もできなくて、助けてあげられなかった...」

 

 

 

 

 

 

颯「やっぱり、俺がボーッとしてたのが、いけなかったのかな...」

 

 

 

 

 

 

颯「ううっ...だから...さっき―――」

 

 

 

 

 

 

母「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、母親は何も言わず、僕を抱きしめた。

 

 

 

 

 

颯「...!!」

 

 

 

 

 

 

僕の心には、塞ぎようのない穴が空いてしまったというのに、なぜか心は少し安らいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

それと...

 

 

 

 

 

 

 

観覧車に乗った時の紬と、同じ気持ちになれたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

颯 (情けねえなぁ...俺)

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