幻の流れ星   作:きなこモチ

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バレンタイン 3

翌日、学校では集会が開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

ほとんどの人が驚いた様子で、中には涙を流す生徒の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

僕はその時もボーっと、時間が過ぎるのを待っているようだった。

 

 

 

 

他人事のように。

 

 

 

 

 

 

 

集会が終わり、教室に戻ろうとすると、誰かが僕の元へと歩いてきた。

 

 

 

 

 

 

梓「颯汰さん」

 

 

 

 

颯「...?」

 

 

 

 

梓「大丈夫...ですか...?」

 

 

 

 

 

颯「梓ちゃん...ありがとうね...大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

梓ちゃんだった。

 

 

 

 

梓ちゃんは昨日の夜に、律から紬のことを電話で聞いたらしい。

 

 

 

あまり軽音部に顔出していなかった僕でも、梓ちゃんは紬と同い年かと思うくらい仲良くて、お互いに信頼している印象が強かった。

 

 

 

 

辛いはずなのに、自分自身以上に心配して声をかけてくれるなんて、本当に優しい子だなぁ。

 

 

 

 

 

そう感じていた―――――

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

律「ここか...」

 

 

 

 

 

あれから何時間か過ぎ、時刻は午後6時を回っていた。

 

 

 

 

僕の母親の運転で会館に到着した。

 

 

 

 

 

車を降りると、皆は重い足取りで歩く。

 

 

 

 

 

梓「...」

 

 

 

 

 

 

自動ドアの前まで来た時、僕の少し右後方を歩いている梓が突然すすり泣き始めた。

 

 

 

 

 

 

梓「...帰りたい」

 

 

 

 

 

 

律「どうしたの...」

 

 

 

 

 

 

梓「ムギ先輩に会いたくない」

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

梓は自分の頬に伝う涙を拭うと、話を続けた。

 

 

 

 

 

梓「私、連絡取れなくなる少し前に、ムギ先輩と遊びに行ったんです」

 

 

 

 

澪「...えっ」

 

 

 

 

梓「すると、学校にいる時のムギ先輩とは全然違いました」

 

 

 

 

 

 

梓「...」

 

 

 

 

 

 

 

梓「...正直、学校の日に見せるムギ先輩の笑顔、好きじゃなかった」

 

 

 

 

 

 

 

梓「勝手な妄想だけど...何だか、自分を偽っているようで...」

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

梓「だから、ムギ先輩の本性が知りたくて。遊びに誘ってみようと思っていたら、先にムギ先輩に誘われた」

 

 

 

 

 

梓「二人きりの時のムギ先輩は、とてもはしゃいでて、ワガママな一面もあった」

 

 

 

 

 

澪「...」

 

 

 

 

 

梓「その時の笑顔が忘れられなくて...

忘れたくなくて...」

 

 

 

 

 

 

梓「素敵な笑顔のまま、ムギ先輩を心に留めておきたいです...」

 

 

 

 

 

 

 

 

律「...うん」

 

 

 

 

 

唯「私も...」

 

 

 

 

 

 

 

4人は梓の言葉に共感していた。

 

 

 

 

 

どうやら紬は、一人ひとりに「一緒に遊ぼう」と、遊ぶ約束をしたらしい。

 

 

 

 

 

以前、唯は「ムギちゃんに、二人で遊ぼうって誘われた!」と僕に言ってきた。

 

 

その時に、熊のぬいぐるみを貰ったんだとか。

 

 

 

 

 

 

軽音部のメンバー5人で遊びに行くのではなく、一人ずつ、二人きりで遊びに行ったのには、紬なりの理由があったんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

その理由が、ひとつだけ思い浮かんだ。

いや、これ以外思い浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

 

その内容は、さっき梓が言ってた「紬を誘った理由」と同じだろう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、紬の場合は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後になることを覚悟して―――。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

時刻は午後8時、式はもうすぐ終わろうとしていた。

 

 

 

 

梓ちゃんは、紬と会うのはやめておくと言っていたが、僕はもちろん会うつもりだ。

 

 

 

 

会ったほうがいい気がするが、無理するなら会わないほうがいい。

 

 

 

紬もいい気分はしないから。

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

颯 (...梓ちゃんがそんなこと言うから、俺まで心配になってきたじゃないか)

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えていると、その時はやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

紬のもとへ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

颯 「...」

 

 

 

 

 

 

颯 (...昨日ぶりだね)

 

 

 

 

 

 

 

 

何だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕に見せていた時とは違う、優しい顔つきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでいて、僕の事を忘れているような表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと寂しいけど...

 

 

 

 

 

 

最後に顔を見れて満足しているよ。

 

 

 

 

 

 

 

あと...不安だと思うけど...。

 

 

 

 

 

 

これから先のことなんて、心配しなくていいよ。

 

 

 

 

 

 

離れ離れなんて、永遠じゃないもん。

 

 

 

 

 

 

 

寂しくなったらいつでも、僕が会いにいくから。

 

 

 

 

 

 

颯 (...それじゃあね)

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

健「――あ、そういえば颯汰にあのこと言ってなかったな」

 

 

 

颯「?」

 

 

 

健「期末テストの点数の勝負仕掛けたの、実は紬ちゃんだよ」

 

 

 

颯「...そうなの?」

 

 

 

健「颯汰の成績がヤバいってことを言ったら、紬ちゃんが提案してくれたんだ。『これなら勉強頑張ってくれるかな』ってね」

 

 

 

颯 (...そんなこと考えてくれてたんだ)

 

 

 

 

 

颯「...でも、そこにお金賭けるのを提案したのはオマエだろ?」

 

 

健「うん!ははははっ!」

 

 

 

 

颯「はははじゃねーよ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...つーか紬のヤツも、くだらねェこと思いつくんだな」スタスタ

 

 

 

 

 

健「ん...?」

 

 

 

 

 

悠「どこ行くの...?」

 

 

 

 

 

 

そう言うと颯汰は、紬ちゃんの元へ向かった。

 

 

それっきりで、なかなかこっちに戻ってこない。

 

 

 

 

悠「何やってんだろうな...見守るか」

 

 

 

 

 

健 (...ん...?)

 

 

 

 

 

 

颯汰は、紬ちゃんの真横で、床に膝をつけて立ち、机に突っ伏すようにして紬ちゃんの顔をしばらく見つめていた。

 

 

 

 

 

 

悠「...」

 

 

 

 

 

健「...」

 

 

 

 

 

 

健 (なんか...話しかけてるみたい...)

 

 

 

 

 

 

2分ほど経つと、颯汰は戻ってきた。

 

 

 

 

 

健「...何しに行ったの?」

 

 

 

 

颯「...『おしゃべりしたい〜』ってさ」

 

 

 

 

悠「...」

 

 

 

 

颯「...おーい何泣いてんだよー悠ー」

 

 

 

 

悠「泣いてないから!こんなの、泣いてるうちに入らない」

 

 

 

 

颯「はぁ〜?」

 

 

 

 

 

 

 

悠「ただ...」

 

 

 

 

 

 

 

悠「...お似合いだなーって」

 

 

 

 

 

 

 

颯「何だよそれ!」

 

 

 

 

 

悠にそんなこと言われ、少しドキッとしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

健「...紬ちゃんも喜んでるかなぁ」

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