〜〜〜〜〜〜〜
2時間後。
久しぶりに悠とも再会し、近くのファミレスでお腹を満たした。
そして、懐かしい香りがする河川敷に来ていた。
悠「...ちょっと寒いな。場所変えない?」
颯「久しぶりだし、もう少しだけ。お願い」
悠「...」
颯「...」
悠「...てか、何それ?」
颯「『どこでもムギちゃん』」
悠「...お前らしいな」
颯「な、名前つけたの俺じゃないから!」
それにしても、ここに来るとやっぱりいろんな記憶がよみがえってくるんだな〜。
ここにタイムカプセルでも埋めとけば良かった。
颯「う〜ん...」
悠「...どうしたの?」
颯「めちゃくちゃ些細なことなんだけど...」
悠「うん、聞くよ」
颯「...告白した日、紬に言われた言葉が今でも気になってて、忘れられなくてさ」
悠「何て言われたの?」
颯「俺、流れ星に何の願い事するのか聞いたんだ」
颯「そしたら紬のやつ『秘密』だって。
いや〜、1か月くらいずっとモヤモヤしてたね」
悠「んー...」
颯「まあ...分からずじまいだったんだけど...」
悠「...」
颯「...深く考えないほうがいいのかなぁ」
悠「...」
おい!何俯いてるんだ、反応してくれ〜
オメーが聞くって言うから言ったのに!
颯「...って、聞いてる?」
すると悠は、何か閃いたように顔を上げた。
悠「...叶った、って喜んでると思うよ。紬ちゃん」
颯「えっ...?」
悠「紬ちゃんに取った行動振り返ってみなよ」
颯「えっと...」
悠「...紬ちゃんのその願い事は何だったのか...分かるかもよ」
颯「え?じゃあ悠はその『究極の願い事』は何だったのか知ってるの...?」
悠「...『究極の願い事』?」
颯「あのね、紬は初めてのものにすごく興味を持つ子でさ」
颯「『焼きそば食べてみたい』とか、子どもっぽいところもあって。いつも気兼ねなく言ってくれたんだ」
悠「...」
颯「...だけどその時の、その願い事だけ何なのか言わなかったんだよ」
悠「なるほど」
颯「言えないなんて、究極レベルに達した願い事でしょ!?」
悠「そうだろうな。紬の究極の願い事なら、颯汰すらも叶えてあげるの難しいんじゃない?
まあ、俺は何なのか知らないけど」
颯「『颯汰には言うだけ無駄だ!』って紬が思ったってこと!?
そんな子じゃないぞ...?」
悠「...いや、そんな究極の願い事ほど、颯汰が考えそうな内容だったりしてな〜」
颯「逆に、か」
悠はそう言って腕時計を見ると、僕に背中を向けた。
悠「明日早いし、もう行くわ。
またどこかで」
颯「...」
悠「じゃあね。颯汰と紬ちゃん」
颯「ばいばい...」
悠は僕が持ってるぬいぐるみに挨拶すると、足早に帰っていった。
...てか悠のやつ、見ないうちに大人っぽくなってるし!
俺なんて、こんな年になっても未だに熊のぬいぐるみ抱いてるからなぁ。全然大人になれてないや。
颯「まあ...いっか」
颯(う〜ん、暇だから、もうちょっとだけブラブラしてたいな...)
ぬいぐるみを抱えたまま、夜道を歩いていた。
大丈夫、周りには誰もいないから。
颯「......あ!!」
思い出したかのように、いいことが思いついた。
せっかく地元に戻ってきたのに、なぜコレが思いつかなかったんだろう。
颯「学校に行こう!」
〜〜〜〜〜
颯 (お〜!久しぶりだな〜)
数十分ほど歩き、校門前に着いた。
颯 (全然変わってないんだ。
...まあ、3年しか経ってないからね)
この学校に通っていた頃は、何となくで過ごし、勉強も中途半端だったのに。
卒業した今になって、一度でもいいから授業を受けたいと思っている自分がいた。
この学校のお世話になった僕も、今は部外者。
許可取らなきゃ校舎には入れない。
それに、こんな時間に長居すると、お巡りさんに不審がられるからさっさと帰ろう。
颯 (...さあ、やることないし、帰るか)
颯「...ふあ〜、眠い〜」
今日は一日中予定が入っていたし、こんな時間だからやっぱり眠くなってくる。
颯 (立ちながら寝れそう...)
眠い目を擦りながら、歩き出した。
その時。
少し前方から、誰かが走ってきていた。
颯 (誰だ...?こんな時間に)
よく見えない。
その人影はだんだん近づいてくる。
僕は少し恐怖を覚えたが、どこか違和感を覚える。
颯「...?」
近づいてきているのに、足音は全然聞こえてこない。
すると、人影は誰なのか判別できるところまで来ていた。
颯「...??」
颯「どうなってんの...!?」
ついに、それが誰なのかが分かった。
だけどそれは、信じられないことだった。
颯 (...俺!?)
高校生の時の自分が走ってきていた。
しかも、ちゃんと桜高の制服着ている。
僕は思わず目を擦り、辺りを見渡した。
やっぱり景色は夜。誰もいない。
眠気が原因で見えているわけでは無さそう。
颯「颯汰〜」
声量を抑えて、自分の名前を呼んでみた。
何だか変な気分。
すると僕の幻影は、僕に向かって...
颯 (おいおい、まじかよ)
突進して――――
颯 (...あれ?ス、スルーされた...)
幻影は僕のことを一切見ることなく通り過ぎ、校門前で立ち止まった。
僕は、立ち止まった幻影の辺りを見てみた。
颯「...えっ」
するとそこには、幻影の紬が立っていた。
幻影の颯汰は、紬に向かって両手を合わせて何かを言っている。
そんな様子を見た幻影の紬は、優しく微笑んでいた。懐かしい笑顔だ。
颯 (謝ってるのかな...)
颯 (...紬、嬉しそうだなぁ)
颯 (...あ)
すると二人の幻影は、手を繋いで歩き出し、夜の闇へと消えていった。
颯「あ!待って!...」
僕は二人を追おうとした。
だが、瞬きをした瞬間、二人の幻影は完全に姿を消した。
颯 (...何だったんだろう)
それにしてもなぜ、こんな幻覚のようなものが見えたのだろう。
僕が過ごした『ある日』の記憶が、頭の中で甦った?
それとも、このクマのぬいぐるみが見せてくれた?
そんなの非現実的だし、僕の過去だとしても、あのような事をした覚えがない。
颯 (...おっと)
いろいろと否定しちゃった。
そのことを後悔した僕は、心を入れ替え、夜空を見上げた。
颯 (雲がひとつも無いって気分がいいな)
この広い夜空に、たったひとつ、きれいな星が流れることを願って。
颯「...またね」
終わり!
ありがとうございました。