幻の流れ星   作:きなこモチ

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覚悟

ある日の朝、登校中にて。

 

 

 

 

健「颯汰、やっとだな」

 

 

 

颯「ああ!やっとスッキリだよー!」

 

 

 

 

紬と久しぶりに会ったあの日から、2か月が経った。

 

 

 

僕の右腕の怪我が完全に治り、今日から包帯を外して外出している。

 

 

 

 

健「それで、この前のクリスマスはどうだったんだ...?」

 

 

 

 

颯「あ、そうそう!

この前紬を探してるときに俺途中でバイト行ったじゃん?

その勤務中の俺のレジに律が並んできて、俺にプレゼントくれたんだよ!」

 

 

 

 

健「何くれたの?」

 

 

 

 

颯「クリスマス当日まで開けるなって言うからさ〜。

当日は紬の病院に行ったんだけど、その時開けたらまさかの紬とお揃いのシャーペンが入ってたんだ!」

 

 

 

 

健「え?ホントに!?

律のやつ、クリスマスの日は颯汰が紬に会いに行くのを見越して言ったんだな〜」

 

 

 

 

颯「...だとしたら、読まれてるの悔しい〜」

 

 

 

 

健「でも良かったじゃん!おそろのシャーペン使えるなんて」

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

健「...お前何ニヤニヤしてんだよ〜!」

 

 

 

颯「当たり前だろ〜?」

 

 

 

健「まあ、な」

 

 

 

颯「♪〜♪〜」

 

 

 

 

健 (颯汰のやつ、ここ最近テンション高くて変なやつになってきてんだよな〜!

...でも、気持ちは分かるよ)

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

紬は今も入院中だ。

そのため、今日も学校に来ていない。

 

 

 

 

だけど、僕の今の気持ちは前までとは違う。

 

 

 

ときどき紬から、病院でのリハビリの様子を動画で教えてくれるし、たまに僕達も紬のお見舞いに行っている。

 

 

 

 

心がとても軽くなったというか、ゆとりができたというか...。

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

健「...どうした?急に立ち止まって」

 

 

 

 

 

だけど、それと同時に僕には やらなければならない事ができた。

 

 

 

 

犯人が分かった以上、誰一人残らず捕まえてやる。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ガラガラ

 

 

 

 

颯健「「おはよ〜」」

 

 

 

「おはよう!」

 

 

 

颯「まだ他の子達は来てないの?」

 

 

 

「うん、まだだよ」

 

 

 

颯「そっか」

 

 

 

 

タッタッタッ

 

 

 

 

自分の机にカバンを置こうとした時、走る足音が廊下から聞こえてきた。

 

 

 

 

ガラガラ

 

 

 

 

唯「あっ、いたいた!おはよう!!」

 

 

 

颯「お〜!」

 

 

 

健「おはよう!てかここ来るの珍しいね。

どうしたの?」

 

 

 

唯「ね、聞いた??」

 

 

 

颯健「?」

 

 

 

唯「ムギちゃん明日から来れるんだって!」

 

 

 

颯「...ホントに!?」

 

 

 

唯「うん!LINEで教えてくれたよ!」

 

 

 

颯「...あっ、ホントだ」

 

 

 

 

携帯を確認すると、紬からLINEが来ていた。

 

 

 

 

『明日から学校に行きます。

でも、車椅子での登校になると思う。

あと、颯汰君と一緒に過ごす事について、両親から許可が下りました。

少しの間、よろしくお願いします。』

 

 

 

 

相変わらず事務的な文面で書かれていた。

 

 

 

 

颯 (うはぁぁ〜〜!!)♪

 

 

 

 

紬からの久々のメッセージで一人舞い上がってしまう。

 

 

 

 

健「それじゃあ、明日から紬ちゃんと一緒に学校来るってことだよな?」ヒソヒソ

 

 

 

颯「うん」

 

 

 

健「...嬉しいのは山々だけど、今までより慎重にならないとな」ヒソヒソ

 

 

 

颯「...もちろん」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

その日の放課後、校門前にて。

 

 

今日は軽音部は休みらしい。

 

 

それで律は澪と、梓は同じクラスの子と帰っているらしいので、僕と健と唯ちゃんで帰ろうとしているところだ。

 

 

 

だが、健がまだここにいない。

 

 

 

 

颯「健のやつ、遅いなぁ」

 

 

 

唯「まだ教室かな?」

 

 

 

颯「だと思う。先生に課題提出しに行くとか言ってた気がする」

 

 

 

 

ピコン!

 

 

 

 

颯「...健からLINEだ」

 

 

 

唯「何と...?」 

 

 

 

颯「『宿題してないのバレたから先帰ってて』

...だって」

 

 

 

唯「まだやってなかったんだ!」

 

 

 

颯「宿題やれよ〜、もぉ〜。女の子待たせやがって〜」

 

 

 

 

健のメッセージを読み終えると、僕らは歩きだした。

 

 

 

 

唯「まあ忘れることもあるさ!私のことは気にしなくて―――」

 

 

 

健「違うよ、唯ちゃん」

 

 

 

唯「え?」

 

 

 

颯「あいつは忘れたんじゃなくて、やりたくないからやってないだけだよ」

 

 

 

唯「...やっぱり、面倒くさがりなところは私譲りだね!」

 

 

 

颯「あんた達どういう関係なんだ...

じゃあ、あいつが謝るかわりに俺がアイス奢るよ!」

 

 

 

唯「ほんと!?

わ〜い!ありがと〜!!」

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜、ご注文お決まりでしたらお伺いします」

 

 

 

 

颯「...じゃあ、キャラメルリボンを一つください」

 

 

 

唯「...う〜ん、どうしよう」

 

 

 

 

颯「どれにする?」

 

 

 

唯「これが食べたいんだけど、これも美味しそうだし...」

 

 

 

颯「...2つ食べれそう?」

 

 

 

 

唯「食べたい!...けど...」

 

 

 

 

颯「すみません。コレとコレを一つずつください」

 

 

 

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

唯「え!?いいの?」ヒソヒソ

 

 

 

颯「いいよ!

唯ちゃんには色々お世話になってるから。いつもありがとう」

 

 

 

唯「う、うん...」

 

 

 

「お待たせいたしました。またお越しくださいませ」

 

 

 

颯「ありがとうございます。

...はい、ど〜ぞ」

 

 

 

唯「ありがとう〜」

 

 

 

 

僕は店員からアイスを3つ受け取り、そのうちの2つを唯ちゃんに渡した。

 

 

受け取った唯ちゃんは、満面の笑みを僕に向けた。

 

 

 

 

再び歩き出したその時、背後から僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

 

 

悠「あれ?颯汰じゃん!唯ちゃんも!」

 

 

 

 

颯「おー!久しぶりだな〜!」

 

 

 

 

唯「...あ」

 

 

 

 

颯「悠もアイス買いに来たの?」

 

 

 

 

悠「食べないよ〜!こんな寒い時期に」ハハハ

 

 

 

 

颯「確かにな」

 

 

 

 

唯「...」

 

 

 

 

颯「あ、そうそう!朝に唯ちゃんから聞いたんだけど、ついに明日から紬が学校来れるんだって―――」

 

 

唯「そ、颯汰君...!」ボソ

 

 

 

 

颯「だよね!唯ちゃん」

 

 

 

 

唯「...う、うん」

 

 

 

 

悠「...そうなの!?良かったじゃん!!

紬ちゃんがいないと、颯汰に覇気が無いというか、パワーが無かったから俺も嬉しいよ!」

 

 

 

颯「仕方ねぇだろ!?

元から暗い性格だし、ましてや俺の動力源が居なかったわけだからさ」

 

 

 

 

悠「でももう今は連絡つくんだろ?」

 

 

 

颯「うん。

久しぶりに電話できた時、安心したからなのか電話切ってからちょっと体調悪くなっちゃってた」

 

 

 

悠「何だそりゃ!可愛いやつだなお前は!」

 

 

 

唯「...」

 

 

 

悠「...唯ちゃん?どうかした?

食べないと溶けちゃうよ?」

 

 

 

唯「...悠君は、まだムギちゃんと会ってないの?」

 

 

 

悠「うん、まだだよ。

...どうして?」

 

 

 

唯「...ううん!何でもない」

 

 

 

颯「...?」

 

 

 

 

唯ちゃんは何かを隠しているような笑顔を見せた後、不安げな表情に変わり、自分の持つアイスを見つめていた。

 

 

 

 

悠「颯汰は、もう紬ちゃんと会ってるよね?」

 

 

 

颯「うん」

 

 

 

悠「だよな。

今の颯汰は元気そうだし、紬ちゃんも元気そうでなにより」

 

 

 

颯「なんで紬まで分かったの?

俺は紬と感情リンクしているのか!?」

 

 

 

悠「颯汰が分かりやすいヤツってだけだよ」

 

 

 

颯「余計な一言だよー!」

 

 

 

唯「...」

 

 

 

悠「...それじゃあ、俺はこの後用事があるし。お二人さん、またね」

 

 

 

颯「うん、バイバイ〜」

 

 

 

唯「...あ、バイバイ!」

 

 

 

 

別れを告げ、悠をその場に残したまま僕らは歩き出した。

 

 

 

 

唯「...」

 

 

 

颯「唯ちゃん、具合悪い...?」

 

 

 

唯「...ううん!全然大丈夫だよ!

昨日のテストの内容思い出しちゃって、赤点取らないか不安になっただけ!」

 

 

 

颯「なんだ〜。大丈夫だと思うよ!

ほら、心配事の9割は起こらないって言うじゃん!

...まあ、今さら後悔しても遅いけどね」

 

 

 

唯「励ましの言葉の後のソレは、怖さ倍増だよ...」ビクビク

 

 

 

 

 

 

悠「唯ちゃ〜ん!!」

 

 

 

唯「?」

 

 

 

 

後ろを振り向くと、悠が何かを持って走ってきた。

 

 

 

 

悠「ごめんね。話長くてアイス溶かしちゃったよね」

 

 

 

唯「え...?」

 

 

 

悠「近くでたい焼きの屋台見つけて、美味しそうだから買ったんだ」

 

 

 

唯「...あ、ありがとう」

 

 

 

悠「はい、颯汰もどうぞ」

 

 

 

颯「お、おお...ありがと」

 

 

 

悠「じゃあ、今度こそさらば!Have a nice 鯛!!」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

唯「あはははっ!」

 

 

 

颯「...」ジーー

 

 

 

唯「...うん?」

 

 

 

颯「これから唯ちゃんのこと"1号"って呼んでいい?」

 

 

 

 

唯「イチゴ...?」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

翌日。

紬の家に到着しインターホンを押すと、紬は髪のセット中だったらしく、外で待っていた。

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

紬「ごめんね〜!待った??」

 

 

 

颯「ううん全然!忘れ物ない?」

 

 

 

紬「うん、バッチリ!」

 

 

 

颯「じゃ、行くぜ」

 

 

 

 

僕は紬の乗る車いすのハンドルを握り、押し始めた。

 

 

 

 

紬「颯汰君、右腕の怪我もう治ったんだね」

 

 

 

 

颯「うん、ちょうど昨日外したんだ。

紬のお手伝いに間に合って良かったよ」

 

 

 

紬「そうなんだ。

あと1ヶ月くらいで歩けるようになると思うから...待っててね」

 

 

 

颯「うん」

 

 

 

紬「...あ、そういえば斉藤から聞いたの!颯汰君、最近私の家に来たのよね!?

ハーブティーどうだった?」

 

 

 

颯「めちゃくちゃ美味しかったよ!!

紬って栽培とかやってたんだ〜。

今度の休みに、栽培の仕方教えてよ」

 

 

 

紬「えへへ〜、いいよぉ」

 

 

 

 

そんな話をし、これからの事に少しワクワクしながら電車に乗った。

 

気付くと学校に着いていた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

紬「...すでに結構いるね」

 

 

 

颯「もうこんな時間だもんね」

 

 

 

 

廊下を移動中。

 

 

 

さっき紬と話していた時の楽しい雰囲気は、教室から話し声が少し漏れてくるだけの静かな廊下に、簡単に消えていった。

 

 

 

僕らの教室の前まで来た。

教室内にはクラスメートがすでに半数ほどいる。

 

 

 

颯「よし、扉開けるね」

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

紬はとても緊張した表情で頷いた。

僕もつられて緊張してしまう。

 

 

 

 

ガラガラ

 

 

 

 

颯「おはよう」

 

 

 

 

「「おはよ〜」」

 

 

 

 

紬「...おはよう」

 

 

 

 

 

「「...!!」」

 

 

 

 

中にいたクラスメートは、立っている子も席に座っている子も皆驚いた表情で僕らの方を見つめた。

 

 

 

 

颯 (そ、そんなにビックリしなくても...)

 

 

 

 

タッタッタッ

 

 

 

すると一人のクラスメートが僕らのもとに近づいてきた。

 

 

 

 

「あら...!紬ちゃん久しぶり――

え、車椅子!?どうしたの!?どこにいたの??」

 

 

 

紬「色々迷惑かけて...事故に遭って怪我しちゃったの。でも、話すと長くなるかもしれないから、また後でね」

 

 

 

「そうだったんだ...

話は、言いづらい事だったら無理しなくていいからね」

 

 

 

紬「ありがとう」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

また皆の優しさにホッとしてしまった。

 

 

 

この後の授業でも、教室を移動する時にクラスメートが紬のお手伝いをしたり、紬は今までと同じようにクラスメートと仲良く関わる様子が伺えた。

 

 

軽音部のメンバーに相談したときもそうだったが、紬という守らなければならない人を周囲の人と会わせることに、勝手に敏感になり過ぎてたんだな。

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

 

昼休み。

 

 

 

 

颯「次の体育の合同授業、唯ちゃんと紬は同じで体育館だよね?」

 

 

 

唯紬「「うん」」

 

 

 

颯「それじゃあ、二人とも頑張ってきてね!

唯ちゃん、後は頼んだよ」

 

 

 

唯「任せて!じゃあまた放課後でね!」

 

 

 

颯「はーい!」

 

 

 

 

 

唯「...そういえば今日からマラソンの授業が始まるんだ...やだよ〜」

 

 

 

紬「生憎の晴天ね」

 

 

 

唯「昨日、天気予報で今日の降水確率50%だって言ってて、不安だったから憂とてるてる坊主50個作ったんだよ!

足してちょうど100%にしたほうが安心でしょ〜??」

 

 

 

紬「憂ちゃん手伝ってくれたんだ!

てるてる坊主1個につき1%なのかな?

でも、吊るす方向は間違えてないよね?」

 

 

 

唯「頭が上だったよね」

 

 

 

紬「降って欲しい時は頭が下じゃないかな?」

 

 

 

唯「...あ、間違えて普通に吊るしちゃった。

それじゃあ0%だよね。どおりで降らないわけだ...」

 

 

 

 

 

 

紬「...!!」

 

 

 

唯「...」

 

 

 

 

前から、大きな声で話をする二人の女子生徒が歩いてきた。

 

 

 

 

 

「ねー、次の持久走まじでやりたくないんだけど。保健室行って適当に時間潰さない?」

 

 

 

「いや、休まくても良いんじゃない?

だって次の体育の担当、バレー部顧問のアイツでしょ?

私らの事いちいち見てないじゃん、いつも」

 

 

 

「じゃあ、ゆっくり走るか。補習面倒だし」

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

唯「―――歌いながら走るしかないよね。

...ムギちゃん?」

 

 

 

 

「...ぁ」ボソ

 

 

 

「...」

 

 

 

 

スタスタ

 

 

 

 

「...いい身分だよ」ボソ

 

 

 

「この日のためだけに足折るとか猛者」ボソ

 

 

 

「「っははははは!!」」

 

 

 

 

ムギちゃんはすれ違った二人の後ろ姿を見つめていた。

 

 

 

 

 

紬「...んん...ん...んん...!」

 

 

 

唯「ど、どうしたのっ!?ムギちゃん!?」

 

 

 

紬「ん...んん...」

 

 

 

 

唯「...あ」

 

 

 

 

 

ムギちゃんは、声を殺して泣いていた。

 

 

 

ムギちゃんに何があったのか――。

 

 

 

それは、すれ違った二人が最後に言い放った言葉を思い出すとすぐに気付くことができた。

 

 

 

 

唯「...あの二人、ムギちゃんを傷付けてた人なの?」

 

 

 

紬「うん...んん...」コクリ

 

 

 

唯「じゃ、じゃあ...あの二人の中に、遥って人いた?」

 

 

 

紬「ううん、二人とも違う...けど...」

 

 

 

唯「...」

 

 

 

 

すれ違った二人は、もうどこかへ消えていた。

 

 

 

 

だけど、顔は覚えたよ。

 

 

 

〜〜~~~~

 

 

 

体育が終わり、今日はこれで終業。

更衣室で制服に着替えている。

 

 

 

 

颯「はぁ...はぁ...」

 

 

 

健「お疲れさん!」

 

 

 

颯「ちょ、お前走るの速すぎな...

4番目くらいに走り終わってなかったか?」

 

 

 

健「実は、陸上部の子にいろいろ教えてもらってたんだ!」

 

 

 

颯「なんか、ずりぃ」

 

 

 

健「それを実践して、足壊さないように走り込んでたんだよ。半年くらい前から」

 

 

 

颯「...あ、そうなんだ。

隠れてやってたんだ」

 

 

 

健「うん、河川敷でね」

 

 

 

颯「... あ、ちょっとトイレに行ってくる。

着替え終わったら先に教室戻ってて」

 

 

 

健「おう」

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

颯 (...あ、早く着替えないと帰りのホームルーム始まっちゃう)

 

 

 

颯「...?」

 

 

 

 

手を洗い廊下に出ようとすると、廊下から会話が聞こえてきた。

 

 

 

 

「――いや、なんか信じらんない」

 

 

 

「でもアイツだと思う。逃げるように去っていったんだけど、俺には悠としか思えない」

 

 

 

颯「悠がどうしたの?」

 

 

 

 

そう言って廊下に出ると、話し声の正体は健だと気づいた。

 

 

 

 

健「...颯汰まだ着替えてなかったのか?」

 

 

 

颯「健こそ何してるんだ?」

 

 

 

健「更衣室に体操服忘れたから取りに来た」

 

 

 

颯「忘れる!?普通!

...そんなことは置いておいてさ。

悠がどうしたの?

信じられないとか、どうとか言って」

 

 

 

健「...悠のやつが紬ちゃんの携帯壊した犯人かもしれないんだ」

 

 

 

颯「...は?

えっ、悠...なのか...?

俺、紬から遥ってやつが壊したって聞いたぞ?」

 

 

 

健「でも、俺見たんだよ。

あいつのポケットから紬の携帯落ちたの」

 

 

 

颯「...それ、いつだよ」

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

 

健「紬を見つけたあの日」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

放課後。

 

 

 

 

悠「―――失礼しました」

 

 

 

「...あ、君」

 

 

 

悠「はい?」

 

 

 

 

授業中に提出できなかったプリントを出し、職員室を出ると俺の苦手な先生が話しかけてきた。

 

 

 

 

「部屋を出るときは『失礼しました』じゃなくて『失礼します』だからね。

その癖直しなさいよ?」

 

 

 

悠「...す、すみません」

 

 

 

 

悠 (...何なんだよ。いちいち細けぇんだよ!!)

 

 

 

 

...なんてこと、正論ぶちかまされて言えるわけがないんだよな〜。

 

 

 

 

悠 (早く帰って寝るか...)

 

 

 

 

タッタッタッ

 

 

 

 

悠「...ん?」

 

 

 

 

颯「...」スタスタスタ

 

 

 

 

悠「お、颯汰!一緒に帰ろうぜ!

もしかしてお前も課題―――」

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

グイッ

 

 

 

 

悠「...お、おい!颯汰!?どうしたんだ!?

おい!危ねぇって!!」

 

 

 

颯「お前...」

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

 

 

悠「いってぇ!!」

 

 

 

 

颯汰は俺の胸ぐらを掴んだ。

その勢いはすごく、よろけて倒れてしまった。

 

 

 

 

悠「ど、どういうボケだよ!

恥ずかしいって!!ちょっ、場所変えよ??な!?」

 

 

 

 

颯「お前、どういうことだよ」

 

 

 

 

悠「はっ!?っ...?」

 

 

 

 

颯汰は悪ふざけで俺の胸ぐらを掴んでいるのだと思い、俺は笑って誤魔化そうとした。

 

だが俺は、なかなかやめない颯汰を見て本気なんだと気付いた。

 

 

 

 

颯「全部、お前が原因だったんだな」

 

 

 

悠「なっ...何がだよっ!」

 

 

 

颯「お前のせいで、紬が...

しのうと――」

 

 

 

 

「ん...?

ちょ、ちょっと何してるんだ!!

やめなさい!!!」

 

 

 

 

悠 (せ、先生...!)

 

 

 

颯「ふんっ...」

 

 

 

 

俺の胸ぐらを掴む颯汰の両手を解いてくれたのは、さっきの苦手な先生だった。

 

 

先生が止めに入ると颯汰は抵抗することなく、すぐに俺から両手を離す。

 

 

 

颯汰は涙を浮かべ、俺を睨みつけた。

 

 

 

 

颯汰のやつ、一体どうしたんだよ...

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